
トリプトファンという栄養素は睡眠と深い関係があり、高い睡眠効果を生む栄養素の代表格とされています。
薬ではなく私たちが普段食べる食品から快眠をもたらす栄養素であるトリプトファンを体内に摂取できることは体にも優しいので是非試してみたいものです。
トリプトファンは色々な食品に含まれていますが、どのような食品を意識して食べると睡眠効果が得ることができるのでしょうか?一緒に見ていくことにしましょう。
この記事の目次
睡眠の3要素
睡眠に欠かせない要素として有名なものは、メラトニン、セロトニン、トリプトファンです。
主にこれらの3つの成分が非常に密接な関係を保つことで睡眠効果を得ることができます。
メラトニン
メラトニンというのは脳の器官である松果体から分泌されるホルモンで、睡眠ホルモンなどとも呼ばれています。
メラトニンは体温を下げたり、自律神経の副交換神経を優位にすることにより気持ちをリラックスさせたり、呼吸や心拍、血圧を下げ睡眠に適した体を作ります。
通常メラトニンの分泌量は日中は少なく、夜になると徐々に分泌量を増やし、夜の9時頃から11時ぐらいの間に眠気を起こします。夜になると段々眠くなってくるのはこのメラトニンが分泌されているからです。
夜に眠くならないという人はメラトニンの分泌量が少ないのが原因と考えられます。
メラトニンは不規則な生活をしていると夜になっても分泌しませんし、日中にしっかり活動しないと分泌量も増えません。
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セロトニン
セロトニンは眠気を起こすメラトニンを作るための材料になります。
メラトニンの分泌を増やしたいのであれば、まずセロトニンを増やすことが大切です。
セロトニンを増やすには太陽の光を浴びて、しっかり日中に活動することが大切です。
トリプトファン
眠気を起こす物質であるメラトニンを分泌させるためにはセロトニンが必要ですが、そのセロトニンの材料になるのがトリプトファンです。
トリプトファンは必須アミノ酸で主に食べ物のたんぱく質に多く含まれています。
トリプトファンは体内に入ると、脳に運ばれてセロトニンに変わります。セロトニンが夜になると睡眠のために必要であるメラトニンに変化します。
トリプトファンがないとセロトニンもメラトニンも分泌されないという点で、睡眠に欠かせない栄養素ということになります。
トリプトファンは残念ながら体内では作ることが出来ない物質であるため、トリプトファンを含む食品を摂取することが大切になってきます。
どのくらいトリプトファンを摂取すればいい?
睡眠のために必要なトリプトファンの1日の摂取量は、その人の体重によって変わってきます。
おおよそ体重1キログラムに対して2ミリグラムほど量が必要とされていますので、体重が50キロの人は1日100ミリグラムほどのトリプトファンが必要となります。
しかし、不眠症の人やうつ病の人が睡眠を取ろうとすると普通の人より困難になってくるため、トリプトファンもこれ以上の摂取を心がけることが大切で、1日に500~600ミリグラムほどの量を摂取することが睡眠には大切であるとする説もあります。
トリプトファンはいつ摂取すればいい?
睡眠効果を期待して摂取するトリプトファンですが、いつ摂取しても効果は同じというものではありません。
トリプトファンを摂取するタイミングを知っているのと知らないのでは大きく効果が違ってきます。
トリプトファンを摂取する目的はセロトニンの分泌を促すためです。セロトニンは人間が朝に起きて太陽の光を浴びて日中にしっかり活動することで分泌量が多くなると言われています。
そのため、セロトニンの分泌を助けるためにもトリプトファンは午前中にしっかり摂取しておくとセロトニンの生成をより助け、睡眠効果に繋がります。
朝食を食べないと言う人はトリプトファン不足によってセロトニンの分泌が減ってしまう恐れもありますので朝食を抜く生活は改めて、夜の睡眠のためにしっかり朝食を食べて出かけましょう。
トリプトファンを多く含む食品
トリプトファンは数多くの食品に含まれています。
穀類、イモ類、豆類、木の実類、野菜、果物、きのこ類、魚介類、肉類、卵類、乳製品と含まれている食品の種類も非常に多くあります。
・ 肉類
食品中でもトリプトファンの含有量が多いのが肉類です。
その中でも特に、牛のレバー、豚のロース、鶏のむね肉などは多く含みます。
他にも、鶏、豚、牛のひき肉、鶏のモモ肉、牛のリブロース、牛のハツ、サーロイン、タンなどの部位もトリプトファンが豊富です。
・ 魚介類
魚介類はヘルシーながら肉類と同じように動物性のたんぱく質にトリプトファンが多く含まれています。
かつお、マグロ、すじこ、たらこ、ぶり、ひらめ、いわし、さんま、カニ類、ホタテ貝、イカ、キス、えび、あじ、サザエ、うになどはトリプトファンの含有量が多いです。
・ 穀類
穀類は日本人にとって日頃から摂取しやすい食材で、トリプトファンも多い食品です。
米や小麦などは主に炭水化物ですが、炭水化物は体内に入ると消化され糖に分解されます。この糖はトリプトファンが脳内に取り込まれるために非常に重要な役割を果たします。
トリプトファンは脳に運ばれ、セロトニンをつくり、そのセロトニンが睡眠に直接関わるメラトニンを作ります。
トリプトファンをいくら体内に入れても糖がないと脳内に取り込まれないので、意味がありません。
その手助けをする糖を補うためにも穀類を取ることが大切です。
穀類でトリプトファンの含有量が多いのは、パスタ、そば、白米、食パン、うどん、とうもろこし、そうめんなどです。
・ 乳製品
乳製品はトリプトファンが豊富です。乳製品の主な原料である牛乳を単に毎日コップ1杯摂るだけもトリプトファンを補給しますので効果があります。
また、牛乳をそのまま飲めないと言う人は、ナチュラルチーズやプロセスチーズ、ヨーグルトなどもおすすめです。
・ 野菜類
健康によい野菜類ですが、トリプトファンを含む食品としては含有量が少ないかもしれません。
しかし、ほうれん草、もやし、大根、キャベツ、たまねぎ、なすび、ピーマン、人参、レタス、トマト、かぼちゃ、きゅうり、アボカドなどはトリプトファンを比較的多く含む食品です。
・ 豆類・木の実類
野菜類がトリプトファンをあまり含まないのに対して、同じくヘルシー嗜好の人に大人気の豆類や木の実類はトリプトファンを多く含む食品が多くなっています。
豆腐や豆乳、納豆、油揚げ、アーモンド、くるみ、ごま、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ひまわりの種などはトリプトファンを多く含みます。
牛乳なども多く含みますが、苦手だという人は牛乳の変わりに豆乳を飲むことを習慣化すると良いと思いますし、小腹がすいた時はお菓子などを食べずに、アーモンドやナッツなどの木の実類を食べるとトリプトファンを多く摂取できます。
・ くだもの
果物も野菜同様にあまりトリプトファンを多く含む食品は少ないのですが、バナナはその中でも比較的トリプトファン含有量が多いので、積極的に食べると良いでしょう。
また、バナナはトリプトファンをセロトニンに変えるための糖を同時に摂取できますので効率的です。
また、バナナは非常に栄養豊富ですし、エネルギー補給の食品としても注目されています。
くだものでバナナの他にも、いちご、パイナップル、すいか、りんご、みかん、グレープフルーツなどがトリプトファンを含む食品です。
バランスの良い食事
トリプトファンは色々な食品に含まれていますが、特に肉類や魚介類が豊富に含まれています。
しかし、肉や魚介類と言った動物性のたんぱく質から中心にトリプトファンを摂取しようとすると無理があります。
また、動物性のたんぱく質はトリプトファンが血液中から脳へ移動するときに阻害するリスクもあるとされています。
食事のバランスも悪くなりますので、植物性の食品も多く食べてバランスよく、色々な食品からトリプトファンを体内に取り込むことを考えた方が効果的です。
食事のバランスが崩れることで睡眠だけでなく、健康面や精神面でもダメージを受けやすい体になるので、1日3食多くの種類の食品を摂取するように心がけ、トリプトファンが常に体内に取り込まれることを意識することが大切です。
大豆や大豆製品などは和食を食べている私たち日本人にとって非常に馴染み深いもので、味噌、しょうゆなど和食には欠かせない調味料になっていますし、和食を食することで常に旬の野菜なども摂取できることにつながります。
外食やコンビニのお弁当などで食事を済ますことが多いと認識している人などは、是非自炊をしてトリプトファンを多く含む食品を使ってバランスの良い食生活を目指しましょう。
ビタミンB6が大切
トリプトファンを食品から摂取することで脳内ではセロトニンを生成し、そのセロトニンが夜になってメラトニンを生成してくれますが、トリプトファンからセロトニンを作るにはビタミンB6という栄養素が必要であることを忘れてはいけません。
このためビタミンB6を含む食品もトリプトファン同様に摂取する必要があります。
ビタミンB6を多く含む食品はバナナ、にんにく、レバー、マグロ、かつお、大豆製品などです。
これらの食品はビタミンB6と同時にトリプトファンも多く含まれる食品ですので特に積極的に食べると良いでしょう。
サプリから摂る
トリプトファンは様々な食品に含まれている栄養素ですので出来れば食事から体内に取り込みたいものです。
しかし、どうしてもバランスの良い食事ができない場合、また、普通のトリプトファンの摂取では睡眠効果が少ないうつ病や不眠症などの人は、食事からトリプトファンを補うだけでなくサプリメントを利用して効率的にトリプトファンを体内に摂取すると良いでしょう。
トリプトファンのサプリメントを摂取する場合は、他のアミノ酸によってトリプトファンが脳内に到達するのを阻害されないためにも空腹時に飲むとより効果的に摂取できます。
また、セロトニン分泌を多くするためにも午前中の摂取をおすすめします。
トリプトファンは糖によって脳内に取り込まれるのを助けられますので、糖を含むものを一緒に補うと良いでしょう。
例えば果物のジュースなどは糖もビタミンB6も含んでいるものがあるので睡眠効果を得たい場合には適しています。
セロトニン不足からの不眠症
トリプトファンを食品から摂取することによってセロトニンが脳内で分泌され、それが睡眠ホルモンと言われるメラトニンの分泌につながりますが、睡眠というのはメラトニンが多くあればぐっすり眠れるというものでもありません。
睡眠には様々な要素が関係していますが、精神が落ち着いていて、情緒が安定していない人はしっかり眠る事ができません。
セロトニンが脳内から多く分泌されることで、私たちは非常に安定した精神状態を保つことができ、日々穏やかな気もちでいられると言われています。そのためセロトニンは「幸せホルモン」などという別名もあるほどです。
幸せホルモンであるセロトニンが不足するとうつ病や精神病を発症しやすい状態になり、そこから不眠症になる人も多いのです。
トリプトファンの摂取によってセロトニンを分泌することそのものが精神の安定につながり、安眠できる体を作るのです。
心と体は表裏一体といいますが、心の安定が心地よい眠りに導き、睡眠効果と共に健全な体を作ります。
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まとめ
高い睡眠効果を得るためにはメラトニンという物質が不可欠です。
そして、メラトニンを分泌するためにはセロトニンの分泌が必要です。
セロトニンの分泌を増やすためには規則正しい生活をして、朝から太陽の光を浴びて日中にしっかり活動をすることと共に、1日3食規則正しくバランスの良い食生活をし、様々な食品からセロトニンを生成するために必要な成分であるトリプトファンを摂取することを意識しましょう。
トリプトファンは、特に肉類や魚類などの動物性たんぱく質に多く含まれていますが、動物性たんぱく質はトリプトファンが脳内に取り込まれるのを妨ぐことがありますので、動物性たんぱく質からだけでなく、植物性のたんぱく質からも摂取するよう注意していきましょう。
また、トリプトファンをセロトニンに変えるためには糖やビタミンB6という栄養素も欠かすことができません。
トリプトファンの含有量を意識しながら、その他の栄養素にも配慮した食生活を習慣とし、安眠できるよう心がけていきましょう。