
以前、下着とパジャマで有名な株式会社ワコールと体重計で有名なオムロンヘルスケア株式会社が、「春の睡眠の日」である3月18日に向けて、パジャマに着替えて眠ることで睡眠にどういう影響が現れるのかを調べるため「パジャマと眠りに関する共同実験」を行いました。
その結果、パジャマに着替えて眠ることで寝付くのが早くなり、夜中に目覚める回数も減少したとの報告が上がっています。
ではなぜ、パジャマに着替えるだけで睡眠に差が出るのでしょう。
スウェットやジャージなど他の衣類で寝ると睡眠の質が落ちるのはなぜなのでしょう。
そこで、パジャマを着て寝ることのメリット、スウェットやジャージをパジャマにしてはいけない理由、睡眠に適したパジャマの選び方などをご説明していきます。
不眠症で寝付きの悪い方、夜中に何回も起きてしまう方、スウェットやジャージをパジャマ代わりにしている方、必見です。
ぜひ参考にして、質の良い睡眠を手に入れてください。
この記事の目次
若い年代に多いパジャマ離れ
2013年にワコールが行ったアンケート調査では、男女約1000人中パジャマで寝る人が、冬は42%で夏は22%というものでした。
また他の調査では、新社会人約300人中の半数近くが、就寝時にスウェットやジャージを着て寝ていることが分かりました。
動きやすいということで部屋着にしており、そのまま寝るというパターンが多いようです。
夏は、涼しさから半袖のTシャツと短パンが好まれています。
ですが、睡眠時に着ている衣服によって眠りの質が変わるとしたら?
もしかしたら、その不眠症や中途覚醒などの睡眠障害は、眠る時の衣類が睡眠に適していないために安眠の邪魔をしている可能性があります。
「パジャマと眠りに関する共同実験」の結果
ワコールとオムロンヘルスケアの共同実験は、国内に住む20~40代のパジャマを着て寝る習慣がない男女30人を対象に行われたものです。
2週間という期間を設けて、最初の1週間は普段から着ている衣類のままで就寝して、残りの1週間はパジャマを着て就寝、その後どう差が出たのかを調査しました。
まず、普段着ている衣類を着て寝た時の寝付くまでの時間が平均47分、対してパジャマを着用して寝付くまでの時間が平均で38分、約9分間短縮されたことになります。
「中途覚醒」という夜中に何回目が覚めるかの実験では、普段着ている衣類を着て寝た時には平均3.54回で、パジャマを着用して寝た時は平均3.01回と、約15%減少しています。
これはあくまでも平均値で、人によっては明らかな違いがあった人もいました。
また、睡眠効率(就寝時間すべてから、寝付くまでの時間と夜中に目覚めた時間を引いた実質的な睡眠時間)は、普段着ている衣類を着て寝た時が84%なのに対してパジャマを着用して寝た時は87%と、3%もアップしています。
「そんなに驚くような違いじゃない」と思われるかもしれませんが、この実験は2週間と期間が決まっています。
しかし、この数値の違いは改善されない限りずっと続きます。
毎日毎日数%の違いが蓄積されていくのです。
それが何年も何十年も続いていけば、身体には負担が溜まる一方で、それは睡眠負債となり、ひいては睡眠障害を引き起こす要因にもなりかねないのです。
スウェットやジャージをパジャマにしてはいけない理由
そもそも、スウェットやジャージは眠ることを前提として作られた衣類ではありません。
動きやすいという利点はありますが、何回洗ってもくたびれないよう分厚い丈夫な生地で作られており、縫い目も頑丈で通気性や吸湿性には優れていないのです。
そのため、身体から発せられる熱はこもってしまい、体温が下がらずに眠りにつきにくくなります。
吸汗性もほとんどないので、身体に汗が張り付いて不快に感じ、眠りが浅くなって目が覚める原因となってしまいます。
またゴムの締め付けもきつめの物が多いのですが、寝ている間中ずっと血管を圧迫するのも良いことではありません。
朝起きた時に身体が痛かったりだるかったりするのは、睡眠中の血行不良によるものが多いのです。
縫い合わせ部分の厚みによって圧迫され、血行が悪くなっていることもあります。
就寝中の身体の締め付けや不快感は、深い眠りの邪魔をして睡眠の質を落とすことになり、寝付きが悪くなる入眠障害や、夜中に目覚めてしまう中途覚醒といった睡眠障害の要因となるものです。
寝る時は、睡眠に適したパジャマに着替えて寝る習慣をつけましょう。
パジャマを着て寝るメリット
パジャマは質のよい睡眠のために工夫を凝らして作られた衣類です。
寝ている間の姿勢の変化や寝返りがスムーズにできるよう、肌に余計な刺激を与えず血管を圧迫しないよう、睡眠中に汗をかいても不快感で目が覚めたりしないよう、生地やデザインや縫製など随所に配慮が行き届いている「眠るための衣服」なのです。
そして、それらの工夫によってさまざまなメリットを得ることができます。
寝付きがスムーズになる
眠りにつくためには体温の低下が必要です。
身体の熱を放出して体温を下げることで、脳も身体も休息に入ります。とくに、寝付いてからの1~3時間は大量の汗をかき、身体の深部の熱を一気に下げて深い眠りにつくのです。
この時の汗は寒い冬でも200ml以上になり、吸水性や発汗性のないスウェットなどでは汗を吸い取らないばかりか体温も下がりません。
肌がベタついて寝苦しくなり、よけいに眠れなくなってしまいます。
入眠障害でお困りの方は、汗を吸い取って素早く蒸発させてくれるパジャマを着て、スムーズに寝付けるよう改善しましょう。
姿勢を変えたり寝返りをうつのが楽になる
寝ている間、同じ姿勢で何時間もそのままでいると、翌朝になって腰や肩などが痛い時があります。
私たちは、睡眠中に10~30回ほど寝返りをうつのが良く、寝返りをうたないと下になっている身体の部分の血流が妨げられるため痛みが出てしまうのです。
しかし、身体にぴったりしたデザインや分厚い生地のものは、姿勢を変えたり寝返りをうつ邪魔になります。
薄手で伸縮性があり、ゆったりしたデザインのパジャマなら、横向き寝でもあお向け寝でも寝返りも楽にうてるので、安眠を妨害することがありません。
夜中に目覚めにくくなる
寝苦しくなって目が覚める、身体の痛みで目覚めるなどの中途覚醒の症状は、自分の身体に合ったパジャマを着て寝ることによって緩和されることがあります。
パジャマは、睡眠中の汗をしっかり吸って乾かすので眠りやすい体温にしてくれます。
暑さや不快感で眠り続けることができずに目が覚めてしまうということはありません。
また、体勢を変えたり寝返りをうつのも眠ったまま無意識のうちにできますので、何時間も同じ姿勢のままで寝ることがなくなります。
翌朝、身体のどこかが痛かったり痺れているといった症状が解消されて、脳も身体もしっかり休ませることができるでしょう。
睡眠モードに入りやすくなる
よく「睡眠儀式」や「スリープ・セレモニー」という言葉を耳にしますが、これは眠りにつく前の決まった行動で、この行動をしたら睡眠モードに入るという習慣付けのことです。
寝る前に日記をつける習慣がある人は日記を書くことが睡眠儀式となり、寝る前に軽いストレッチをする習慣がある人ならそれが睡眠儀式となります。
脳が「これが終わったら寝よう」と自然に切り替わるのです。
そして、普段着からパジャマに着替えることも立派な「睡眠儀式」になります。
夕方から着ている普段着を着替えずに寝ようとしても、同じ条件のままなので交感神経から副交感神経に移行しづらく、脳も身体もリラックスしきれていません。
パジャマに着替えるという行動で条件が変わり、普段着=起きている時間、パジャマ=寝る時間という切り替えが楽になるのです。
毎日パジャマに着替えて「さぁ寝よう」と声に出してみれば、不思議とあくびが出てくるようになるかもしれませんよ。
睡眠に適したパジャマの選び方
睡眠に適したパジャマといっても、その要素はいくつかあります。
快適な睡眠を手に入れるためには、どのような点に注意してパジャマを選べばいいのかをご紹介しますので参考にしてみてください。
素材
パジャマの素材選びで大事なのは肌触りです。
長時間肌に触れているものですから、肌に合っていないとストレスになってしまいます。
ネットで買ったりせずに、直に触ってみて心が休まるような優しい風合いかどうかをチェックしましょう。
次に、吸水性・吸湿性・放湿性・通気性・保温性に優れているものを選びます。
寝ている間にはたくさんの汗をかきますので、汗を吸い取ってくれる吸水性や湿気をとってくれる吸湿性が不可欠になります。
そして、吸った汗を蒸発させて乾かしてくれる放湿性や通気性も大事です。
また、冬には温かさを逃がさない保温性も必要ですね。
オススメなのは綿やシルクで、とくに綿は肌触りが良く吸水性と吸湿性が抜群です。
通気性も高く、蒸し暑い夜でも肌にベタつくことなく安眠できます。
汗に含まれる皮脂や垢もしっかり吸収してくれるので、肌を清潔に保てます。
敏感肌やアトピーの方は、より肌に優しいオーガニックコットン(有機栽培綿)のパジャマが安心です。
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さらに綿は丈夫なので、頻繁に洗濯してもへこたれないという特徴があります。
シルクも肌触りが良く、綿ほどではないにしろ高い吸水性と吸湿性があります。
放湿性や通気性もあるので、肌にまとわりつくような不快感は感じません。
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麻は、吸水性や吸湿性が高い夏向きの素材ですが、肌にチクチクとする感触があり好き嫌いが分かれます。
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また、夏用のパジャマには、寝苦しい夜でも涼しく眠れるように開発されたクール素材のパジャマも市販されているのでチェックしてみましょう。
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冬向きの素材としては、保温性が高いニットや、保温性が高くて汗の匂いがつきにくいウールが挙げられます。
フリースも保温性はあるのですが、汗を吸いにくく静電気が起きやすいという難点があります。
冬でも汗はかきますので、肌にベタついたり蒸れたりして不快になり、眠りを妨げる恐れがあるのでパジャマには不向きだといえるでしょう。
同じく、肌にベタつく・蒸れるといった理由から、ポリエステルやナイロンもパジャマの素材としてはオススメできません。
デザインとサイズ
パジャマのデザインは、身体を締め付けない動きやすいものを選びましょう。
眠っている時はあお向け寝から横向き寝へと姿勢を変えたり、右向きから左向きへと寝返りをうったりと、幾度となく体勢が変化しています。
ですから、もしも身体が締め付けられていたり窮屈なデザインのパジャマを着ていると、そのたびに身体に抵抗を感じて深い眠りから引き戻されてしまうことになるのです。
首元や胸元がゆったりとしていて腕まわりにも余裕があり、ウエストのゴムがきつくなく足が自由に動かせるデザインのパジャマを見つけましょう。
また、あまり生地が厚いものはオススメできません。
布団の中で身体を動かしても布団との摩擦が少ない、寝返りをうちやすい薄手の生地がいいでしょう。
布団やシーツに引っかかるような装飾が多いものも避けてください。
薄手でシンプルなデザインがパジャマには適しています。
そしてサイズですが、身体を締め付けるような窮屈な大きさでは寝苦しくなりますが、大きすぎたり長すぎたりしても身体にまとわりついて、かえって安眠の妨げになります。
寝ている間に胸元がはだけてしまったりお腹が出ていたり、ズボンが足の上の方まで上がってしまったりするようでは、せっかくの吸水性や吸湿性も意味がありません。
ある程度の余裕はあるけれど寝ている間にはだけてしまわないような、適度な大きさのパジャマにしてくださいね。
耐久性
パジャマは睡眠中の汗をしっかり吸い取ってくれますので、汗による皮脂や垢も一緒に吸収しています。
つまり肌を清潔に保つには、パジャマも頻繁に洗う必要があるのです。
とくに夏場は、たとえ洗い替えがあるとしても週に数回は洗わなければなりません。
そのため、パジャマには耐久性も必要とされます。
マメに洗濯しても生地が傷まない、型崩れしない、色褪せない、肌触りが変わらない品質が求められるのです。
パジャマを購入する際には、頻繁に洗濯してもへこたれない強さがあるかどうかも見極めましょう。
まとめ
最近のパジャマは、災害時にはそのまま外に飛び出せるほどデザイン性が高く、一見してパジャマとは分からないほどのものが多くあります。
また、着ぐるみのような可愛らしいデザインのものもあります。
ですが、パジャマは良質な睡眠をとるためのアイテムですので、あくまでも品質に重点をおいてください。
その上でオシャレなデザインや可愛いデザインを選ぶのは良いことだと思われます。
人生の1/3は睡眠時間だといわれていますので、その長い時間を最大限に生かしたいものです。
不眠症などの睡眠障害で大切な睡眠時間を奪われないよう、パジャマを着て寝る、朝は日光を浴びる、適度な運動をするなど、快眠のために生活習慣から改善していきましょう。