
セントジョーンズワートは和名では西洋弟切草(せいようおとぎりそう)と言います。ヨーロッパでは古くからうつ病に効果のある民間療法薬として使用されてきました。
日本でも同様にうつ病に効果的なハーブとして広く知られるようになり、愛用している方も増えつつあります。
最近では、うつ病の他に、更年期障害、自律神経失調症、ストレスを緩和する効果にも注目が集まっており、またダイエット用のサプリメントとして人気が出てきています。
様々な効能があるとされるセントジョーンズワートですが、不眠症などの睡眠障害にも効果があるのでしょうか?
また、諸外国で民間療法として使われているセントジョーンズワートには、副作用はあるのでしょうか?
睡眠改善への効果と摂取時の副作用について見ていくことにしましょう。
この記事の目次
セントジョーンズワートとは?
セントジョーンズワートは黄色い花を咲かせる根茎性の多年草で、オトギリソウ科の植物です。
和名では「西洋弟切草(せいようおとぎりそう)」と呼ばれています。ヨーロッパや中央アジアに広く分布していますが、アメリカへも伝播して現代では多くの草地で野生化しています。
セントジョーンズワートは地上部全体を刈った後、乾燥させてハーブティーなどにしてから摂取します。
ハーブティーにすると若干苦いと感じる方が多いようですが、嗜好品としてだけでなくうつ病などの精神疾患治療へ効果的と言われ、薬理的な性質を重宝されて長い間愛好されてきました。
セントジョーンズワートの効果
冒頭でも紹介していますが、セントジョーンズワートは軽度から中度のうつ病に効果があるハーブとしてヨーロッパやアメリカを中心に使用されています。
他にも更年期障害、PMS(月経前症候群)、自律神経失調症、ストレスの緩和、ダイエット時のイライラ感、食欲不振などに効果的で、アメリカでは別名として「ハッピーハーブ」、「サンシャインハーブ」と呼ばれており、精神的な側面をサポートするサプリメントとして大変人気のあるハーブなのです。
不眠症などの睡眠障害にも効果があるとされており、その高い効果が期待されています。
睡眠障害・不眠症への効果は?
セントジョーンズワートはうつ病などの精神疾患だけでなく、睡眠障害や不眠症などの症状にも効果があるとされていますが、摂取することで本当に睡眠は改善されるのでしょうか?
そもそもセントジョーンズワートを摂取すると睡眠が改善されると言われる理由には、「セロトニンの増加」があります。
セロトニンが増えるとなぜ睡眠が改善されるのでしょう?セロトニンと睡眠の関係について簡単に触れておきましょう。
睡眠改善にセロトニンが必要な理由は?
セロトニンとはホルモンの一種で、起床時に自律神経へ働きかけ脳を覚醒させる作用があります。
交感神経がしっかりと機能することで、起きている間に人は意欲的に活動することができます。セロトニンはこの交感神経を刺激する働きで体を活動状態に保っているのです。
その後、セロトニンは夕方から夜にかけて次第に減少し、交感神経に代わって副交感神経が優位になります。
この時に分泌されるのがメラトニンという睡眠ホルモンなのですが、メラトニンはセロトニンと相対して分泌される性質を持っているため、セロトニンの分泌が少ないと、夜眠るためのメラトニンも減少してしまうのです。
つまり、セロトニンが多いとメラトニンも多くなり、睡眠改善にはセロトニンを増やすことが効果的というわけです。
セントジョーンズワートはセロトニンを増やす
セロトニンが増えることで、睡眠ホルモンであるメラトニンも増え、尚且つセロトニンにはリラックス作用をもたらす働きがあります。
不眠症や睡眠障害を患っている方の中には、ストレスを多く抱えていることが原因の場合もあり、セロトニンには興奮することであらわれるドーパミンや、不安や恐怖などの影響やストレスを受けることであらわれるノルアドレナリンの過剰分泌を抑制してくれる働きがあるのです。
セントジョーンズワートを摂取すると体内にセロトニンが増えるため、その結果、睡眠の質を上げるホルモンを増幅させる効果と、セロトニン自体の持つリラックス作用やストレス緩和の作用が働くので、不眠症などの睡眠障害に非常に効果的です。
セントジョーンズワートは毒草?
このようにセントジョーンズワートは効能のあるハーブとして取り扱われていますが、商業的に栽培されている地域がある一方で、20カ国以上で毒草としてリストに入っています。
実は、セントジョーンズワートには「光毒性」という性質があるので、紫外線に当たると「ヒペリシン」という色素が反応し、これが皮膚に触れると炎症を引き起こします。
セントジョーンズワートを乾燥させるなどの加工をせずにそのまま摂取すると、体内にこのヒペリシンが吸収されるため、直後に日光に当たると炎症などを引き起こす可能性が高く、摂取後は直射日光を避けるのが賢明です。
また、摂取量によっては死に至るケースもあり、特に家畜が摂取すると光過敏感反応、中枢神経抑圧、流産、最悪の場合死亡します。
羊の場合では100gで致死量となり、有用なハーブとして取り扱われる反面、利用方法に気をつけなければいけない植物でもあります。
ハーブなのか、医薬品なのか?
日本やアメリカではサプリメントとして販売されていますが、ドイツでは医薬品として取り扱われています。
セントジョーンズワートはアメリカではサプリメントとして人気があるものの、医学界ではその効果を否定しているのです。
一方ドイツでは、薬用ハーブに関する公的な専門家委員会が使い方を公表している「抗うつハーブ」として認められている医薬品です。
2004年に改正したEU内の医薬品規約にもセントジョーンズワートは「アロエ」、「ジュウヤク」、「カモミール」などと並んで伝統的ハーブ製剤の規約を設けたリストの中に含まれています。
ハーブなのか医薬品なのかの考え方は国によって異なるようです。
他の医薬品の効果を弱くする
セントジョーンズワートには長期摂取を続けることで、様々な医薬品の効果を弱めてしまう作用があります。
そのため、セントジョーンズワートを含むサプリメントには、「セントジョーンズワートを含む旨を明示する」との表示や説明が記載されていて、その他の医薬品と一緒に服用する場合には、セントジョーンズワートの摂取を控えるなどの注意を表示するよう販売元やメーカーへの指導がされています。
逆に相互作用リスクのある医薬品の添付文書には「併用注意」の項目に「セントジョーンズワート含有食品を摂取しないように注意する」と記載するよう厚生労働省でも注意を促す文書が発表されています。
どんな副作用があるのか?
同時に服用することで他の医薬品の効果を弱める働きはありますが、単独での摂取・服用する場合に限り、副作用はほぼないと言われています。
副作用があらわれるとすれば、胃腸の不調、めまい、口の乾燥・乾き、日光過敏症などの症状があらわれる可能性はあります。
いずれも服用することでの症状なので、服用をやめれば副作用であらわれる症状はなくなります。
摂取にあたり注意が必要な方は、妊娠中や授乳中の女性の服用です。
妊娠中にセントジョーンズワートを含むサプリメントなどを摂取すると、子宮の筋肉が緊張し、緊張が強まることで流産してしまう恐れがあります。
また、授乳中の女性は母乳への影響があるため、母乳を介して赤ちゃんに危険が及ぶ可能性があります。
現在、他の薬を服用している場合や妊娠の可能性がある女性は、かかりつけの医師や産婦人科医に相談してから服用するようにしましょう。
睡眠薬との併用について
日本ではサプリメントやハーブティーとしてセントジョーンズワートを取り入れやすい環境にありますが、摂取を始めても「なかなか効果があらわれない」という場合があるかもしれません。
他の医薬品やサプリメントでも言えることですが、効果については個人差があるのは否めません。即効性がある方もいれば長期的に服用してようやく効果があらわれる方もいるでしょう。
しかし、夜眠れないという症状は日中の生活や活動に大きな影響があるだけでなく、そのために健康を害する可能性もある深刻な悩みです。
睡眠改善のために睡眠薬と併用しながらセントジョーンズワートを使っていこうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
睡眠薬を使うと眠れはしますが、寝起きが悪くすっきり起きれなかったり、朝吐き気がしたりと睡眠の質の面で改善が難しいということが多くあります。
セントジョーンズワートを併用する場合には、この眠りの質を改善させることが目的になるかと思います。
ところが、睡眠薬とセントジョーンズワートは飲み合わせが良いとは言えず、逆に副作用が強くあらわれる可能性が高まるのです。
具体的には、「口の中の腫れや唇の腫れ」「立っていられないほどの強い眠気」「日中の活動困難」「頭がぼんやりする」などの症状が報告されています。
必ずしも副作用があらわれるとは限りませんが、日中の活動リスクが高まるため、睡眠薬との併用は避けた方が賢明でしょう。
セントジョーンズワートの取り入れ方
セントジョーンズワートは医薬品ではないので入手するのは簡単です。摂取方法としては、サプリメントかハーブティーが一般的です。
好みや生活習慣に合わせてどの方法で摂取するかを検討すると良いでしょう。
諸外国では治療目的に使用されている「医薬品」でもあるので、サプリメントであっても気軽に考えるのではなく、信頼できる商品を選ぶようにすることが大切です。
特にサプリメントは会社によって価格帯が大きく異なるだけでなく、「単純に値段が安いだけ」「海外から輸入して転売しているだけ」「美容関連のサプリとして取り扱っている」など会社によって扱い方も様々です。
効果を期待するのであれば、少し長期的に飲み続けることになりますし、値段が安いサプリメントは良心的に思えますが、配合成分が少なければ効果があらわれないかもしれません。
品質とアフターケアをしっかり行なっている販売店を選ぶように気をつけると良いでしょう。
店舗販売しているサプリメントは、価格は安いですが添加物や化合物の割合が多いものもたくさん並んでいます。
店頭で購入する場合は、ドラッグストアなどの量販店よりも百貨店で取り扱っているサプリメントの方がアフターケアがしっかりとしているケースが多いです。
インターネットなどで事前に評価や会社を調べておくと参考になります。
セントジョーンズワートは単独で摂取している場合では、比較的副作用があらわれる可能性は低いハーブですが、何か問題が発生した場合やトラブルの際に、相談やケアを行なっている会社を選んでおけば安心感があります。
セントジョーンズワートは薬に近いハーブ
セントジョーンズワートをドイツのように伝統的なハーブ製剤として「医薬ハーブ」と位置付けている国もありますが、日本ではあくまでも医薬品ではなくハーブの一種として認められています。
しかし他の医薬品と併用することで効果が相殺されたり、体質によっては副作用があらわれることを考慮すると、薬に限りなく近いハーブと言えるでしょう。
不眠症や睡眠障害を患っている方で、他の睡眠薬などを併用していない場合には試してみる価値はあるかもしれません。
セロトニンが増加するなどの作用やその成分は睡眠改善のための効果が期待できる内容ですし、自身の体質にうまく合致する可能性もあります。
逆に体質に合わない場合には副作用のリスクもある成分なので、服用前にはその作用をしっかりと理解しておきましょう。
まとめ
セントジョーンズワートはうつ病など精神疾患の改善が期待できるとして知られていますが、その成分や効果は不眠症や睡眠障害にも有用性があります。
セントジョーンズワートが睡眠改善へどのように作用するのか、また睡眠薬などとの併用と摂取の際の副作用についてもご紹介しましたが、限りなく医薬品に近いハーブであることを理解した上で使用するようにしましょう。
リスクをできるだけ避けながらも症状を改善するために、有効的に使うのが賢明な方法です。基本的な成分は自律神経を整えたり、ストレス緩和やリラックス作用があるので、睡眠に関連する症状以外でも改善効果が期待できます。
もし他の医薬品を使用していない場合には、まずはハーブティーで取り入れてみると良いかもしれません。
他の医薬品を摂取していたり、現在通院中の場合には摂取前に必ず担当医師に相談した上で、セントジョーンズワートを取り入れるかどうか決めましょう。