
摂食障害と聞くと、過食症や拒食症のように重篤な食べ物に対する病気を思い描く方も多いことでしょう。
過食症は、一度にたくさん食べてしまい、食べたことをなかったことにしようとおう吐したり、下剤を使うなど食べ物を排除しようとする精神的要因の大きい病気です。
その一方拒食症とは太ることを恐れ、食べることを拒絶し、周囲から痩せすぎていると言われてもその体重を維持しようとする病気です。
睡眠関連摂食障害は、夜中眠っているのに知らないうちに飲食してしまう症状のことです。
では具体的には何が原因で、治療法はどんなものなのか?
そんな疑問の多い睡眠関連摂食障害について、今回は見ていくことにしましょう。
この記事の目次
睡眠関連摂食障害はどんな病気?
睡眠関連摂食障害は、その名のとおり睡眠時に起こる飲食行動を指す言葉です。
摂食障害の中には、夜中になると食べずにはいられなくなる夜間摂食症候群と言う病気がありますが、これは拒食症や過食症と同じく精神的要因が大きい摂食障害と言われています。
ですが、睡眠関連摂食障害はこれらの摂食障害とは大きく異なります。
夜間摂食症候群同様、夜中になると食べ物や飲み物をあさってしまいますが、寝ている時に起こる行動で、摂食障害と言う言葉はついてはいても、どちらかと言うと夢遊病に分類されます。
眠っている状態で食べてしまうため、食べたことさえ覚えていません。
睡眠関連摂食障害の症状とは?
睡眠関連摂食障害は先ほども説明した通り、夜中にムクッと起き出し、食べたり、飲んだりする睡眠障害です。
本人は寝ているため食べた記憶が全くありませんが、冷蔵庫などの食べ物がなくなっていたり、食い散らかした後があるため、家族と同居しておらず一人暮らしなどの場合でも比較的発見が早いと言う特徴があります。
睡眠関連摂食障害は食べるだけなので、そのまま放置しても問題ないと思われがちですが、記憶が全くない時に行動を起こすので、安全なものばかり口にするとは限りません。
アレルギーがあるのに、そのアレルゲンを含む食品を食べてしまったり、本来は口にしないであろう洗剤やたばこなどを食べてしまうこともあり大変危険です。
症状が悪化するとこれを毎日繰り返す方もいて、時には食べ物を買いに外出までしてしまう方も。
まさか、そんなウソみたいな話と思うかもしれませんが、この睡眠関連摂食障害は一種の夢遊病であるため、危険な行為をしてしまうこともあるのです。
火を使って調理をしたり、車を運転してしまうケースもあり、事故に発展することも考えられます。
ただ食べるだけと安易に考える訳にはいかない睡眠障害なのです。
では、睡眠関連摂食障害はどんな方が陥るリスクが高い睡眠障害なのでしょうか?
睡眠関連摂食障害になりやすい人とは?
睡眠関連摂食障害は睡眠中に食べ物をあさってしまう睡眠障害でもあるため、自分には関係ないと思っている方も少なくないでしょう。
しかし、この睡眠関連摂食障害を最も多く発症しているのが、若い女性です。
全体人口の約5%が発症していると言うデータもあり、近年ではその数も増えていると注意勧告されています。
若い女性がどうして夜中寝ているはずなのに、食べ物を食べ始めてしまうのでしょうか?
次からはその原因について見ていくことにします。
睡眠関連摂食障害の原因とは?
睡眠関連摂食障害はなぜ起こってしまうのでしょうか?
その原因を順に詳しく紹介していくことにしましょう。
1,無理なダイエット
睡眠関連摂食障害の原因の一つに過度なダイエットがあると言われています。
本当は体が食べ物を必要としているにもかかわらず、痩せたいと言う気持ちで極端に栄養を減らしてしまっていると体は危機を回避しようと考えるのです。
その結果、無意識な状態で食べるという行動を取ってしまいます。
それが、睡眠関連摂食障害なのです。
食事は生きるために必要な作業ですが、それができないことは予想以上に大きなストレスとなって蓄積されます。
蓄積されたストレスが爆発するように、睡眠関連摂食障害になってしまうのです。
ダイエットが原因となる睡眠関連摂食障害は、体重を気にする方の大半が女性と言うこともあり、女性に多く見られる睡眠障害ですが、男性でもある日突然、睡眠関連摂食障害を発症することがあります。
2,寝不足
最近では不眠症などの睡眠障害が増えつつありますが、こうしたことが引き金となって起こる寝不足も睡眠関連摂食障害を引き起こす要因と言われています。
寝不足をしている方がすべてこの睡眠関連摂食障害になるわけではありませんが、寝不足は過食の引き金になると言われており、その原因は体の中に蓄積されるストレスにあるとされています。
ストレスがたまるとホルモンバランスが大きく崩れてしまいます。
食欲を抑制するホルモンであるレプチンが減り始め、その代わりに食欲を増やしてしまうグレリンというホルモンの分泌が極端に増えてしまいます。
そのことで自分の食欲を抑えることができなくなり、起きている時には制御できていても、寝ている時にグレリンが働き、夢遊状態で食べると言う行動に走ってしまうのです。
寝不足はこの睡眠関連摂食障害に限らず、高血圧など色々な病気のリスクを高めると言われていますので、毎日7時間から8時間、質の良い睡眠をとることが大切です。
3,心的ストレス
精神的にダメージを受けるとそれも睡眠関連摂食障害のリスクを高めます。
心の栄養が満たされていないことを食欲で満たそうと、睡眠関連摂食障害になってしまうのです。
寝不足同様、ホルモンの分泌が増加したり減少したりと変動してしまうことが要因ではないかと考えられています。
睡眠関連摂食障害の原因として紹介したダイエットや睡眠不足も、心のストレスを増幅させてしまうことがありますが、そうしたストレスの多重負荷が睡眠関連摂食障害をより引き起こす原因となります。
睡眠関連摂食障害の予防と改善法
ダイエットや睡眠不足、心的ストレスが原因となって起こる睡眠関連摂食障害ですが、いったいどうすれば睡眠関連摂食障害の予防、改善ができるのでしょうか?
次からは睡眠関連摂食障害の予防法と改善法について見ていくことにしましょう。
過度なダイエットをしない
やはり、睡眠関連摂食障害の原因としても挙げられている極端なダイエットをしないようにすることが一番です。
今は、女性の美に対する意識も向上し、日常的にダイエットをしていると言う方も増えてきていますが、やはり過度なダイエットは危険です。
特に睡眠関連摂食障害などを引き起こすと意識とは関係なしに行動を起こしてしまいますので、思わぬ事故を起こすこともあり、命まで落とす可能性があります。
運動などのダイエットをメインに、しっかり食べながら続けていけるダイエットが理想と言えるでしょう。
寝不足にならない
寝不足も睡眠関連摂食障害の原因ですので、睡眠不足にならないことも睡眠関連摂食障害の予防・改善法と言えるでしょう。
しかし、不眠症などの睡眠障害を患っている場合、心掛けたからと言って簡単に寝不足を克服できるわけではありません。
時間をかけ不眠症などの睡眠障害を改善していくしかありませんが、不眠症を自覚しているのであれば、昼寝など、寝不足を解消する方法はゼロではありません。
昼間10分や15分寝るだけでも寝不足を大きく補うことができますので、ぜひ試してみるといいでしょう。
関連記事
>>睡眠不足は太る原因!睡眠とダイエットの深い関係
ストレスを溜めない
心的ストレスも睡眠関連摂食障害の原因です。
心にストレスを溜めないようにすることも予防と改善のためには必要です。
週に一度だけでもいいので、自分の好きなことに時間を費やしてみたり、イライラした日などには友人とカラオケに行き、大きな声を出すだけでもストレスは発散できます。
また、毎日少しの運動をすることで、ストレスが適度に追い出され、ストレスをため込むこともないと言われていますので、習慣としてみても良いでしょう。
自分一人で続けるのが難しいと言うのであれば、スポーツジムなどに入会してみるのもおすすめです。
関連記事
>>ストレスと不眠症の関係とは?原因と正しい解消法
それでも、ダイエットしたいと言う方のために!
睡眠関連摂食障害になるリスクがあるからと言っても、やはり女性の場合、ダイエットをしたいと思う方もいることでしょう。
痩せたいと思うなら、ダイエットの方法に少し注意を払ってみましょう。
まずは栄養をしっかり摂ることです。
体が無意識な状態で食べ物を欲しがらないよう栄養をしっかり摂っていくことが大切です。
カロリーを意識したダイエットから栄養に重きを置いたダイエットに変えて取り組むようにしましょう。
栄養分をしっかり摂るために食べ物を口にしてしまうとカロリーがどうしてもオーバーしてしまう場合には、栄養を補えるサプリメントなどを上手に活用していきましょう。
また、運動でカロリーを減らしていけるよう心がけましょう。
理想は食べたものを運動量で毎日消費することですが、働いていたり、するべきことが多いとそれは難しい場合も多いと思います。
そのため手っ取り早く食事の量を制限してしまうのですが、その減らす量を控えて運動と合わせて痩せるよう努力してみましょう。
口から摂る食事が少ないと、体は脂肪をため込もうと痩せにくくなってしまいます。
結果的に良いこととは言えませんので、運動を取り入れダイエットをしていきましょう。
糖質制限ダイエット
糖質制限ダイエットは食べ物に限らず、飲み物や調味料まで糖質を含むものを制限するダイエットですが、このダイエットは食事を減らすダイエットとは違い、しっかり食事をとってもかまわないダイエットです。
ジャガイモなどの根菜、ごはんやパンなどなども糖質が高いため制限しますが、肉は糖質が少ないため食べてOKです。
また、最近では糖質カット食品も増えているため、糖質が少ないものなら、お菓子やお酒も食べたり、飲んだりできます。
女性にとって比較的取り組みやすいダイエットと言えますし、睡眠関連摂食障害のリスクを上げずにダイエットできますので、おすすめです。
長いスタンスでダイエットを
短期間全く食事を口にしないダイエットや単品ダイエットは、睡眠関連摂食障害を引き起こす原因となります。
できることであれば、短期間で体重を減らすと目標を立てるのではなく、半年、1年間で理想の体重を目指せるダイエットにするといいでしょう。
長いスタンスで行うダイエットは、ダイエット後もリバウンドが少ないため、メリットの多いダイエットと言えます。
ぜひ、長い期間をかけて無理のないダイエットをしていきましょう。
食べて長く続けられるダイエットはストレス知らず
食べられないでストレスのたまるダイエットは、睡眠関連摂食障害を引き起こす確率が上がってしまいますので、おすすめできません。
しかし、糖質ダイエットのようなダイエットであれば、豊富な栄養を摂ることができますし、食べられないことに対するストレスも少なく、睡眠関連摂食障害のリスクの少ないダイエットです。
ぜひダイエットをしたいと思うなら食べながら続けることのできるダイエットにトライしてみましょう。
栄養素を十分に摂ることができ、食べながら続けることのできるダイエットには他にも、低インシュリンダイエット、やせおか(やせるおかず)作り置きダイエット、鍋ダイエットなどがあります。
自分に合った長く続けられるダイエットを見つけてくださいね。
まとめ
最近増えている睡眠関連摂食障害は、寝ている無意識の状態のときに食べたり、飲んだりしてしまう睡眠障害です。
朝目覚めて食べ散らかした跡があったり、冷蔵庫のものが減っているようであれば、もしかしたら睡眠関連摂食障害かもしれません。
特にダイエット中の女性はいつ睡眠関連摂食障害の症状を引き起こしても不思議ではありません。
自分が気づいていないだけで、すでに発症していることも考えられます。
栄養素が足りていれば、夜中に食べ物をあさることは決してありません。
過度なダイエットをしている、栄養が極端に偏ったダイエットをしていると言うのであれば、一度ダイエットを中止して、栄養をしっかり補った上で、他のダイエット法に切り替えることを考えてみるといいでしょう。
せっかくダイエットをして美しくなっても、睡眠関連摂食障害を発症してしまっては大変です。
しっかり栄養を摂ることができ、ストレスを溜めないで続けることのできる、自分に合ったダイエット法を選んでみてくださいね。