
私たち日本人の平均睡眠時間は6.5時間だと言われています。
これは、他の先進国からすれば平均30分ほど短いようです。
そして、日本人の多くが「質の良い眠り」を得られていないと感じているとのことです。
そのせいか、休日には眠りを貪るかのように寝過ぎる人も少なくありません。
しかし、この「寝過ぎ」は身体にとってリスクもあり、そのひとつが腰痛です。
このページでは寝すぎの様々な良くない理由と、それでも眠い時の対処法についてご紹介します。
この記事の目次
寝過ぎが良くない理由とは?
毎日の睡眠を調節しているメカニズムは、大きく2つに分けられます。
1つは睡眠の長さや質を調節する「恒常性維持機構(ホメオスタシス)」です。
これは、日中の活動で疲れた脳や身体を積極的に休ませる「疲れたから眠る」というメカニズムになります。
そもそも人間には、身体の環境をいつも快適な一定の状態に維持する仕組みが備わっているので、睡眠不足や身体が疲れ切っている時などは普段よりも深い眠りが多く現れて、効率的に睡眠が取れるようになっているのです。
風邪をひいたり体調が悪い時にぐっすり眠れるのは、この「恒常性維持機構」というメカニズムのおかげなのですね。
つまり、睡眠は長さよりも内容が問題なので、寝溜めをしてもあまり意味がないということです。
必要以上に寝過ぎてしまうと、夜になって眠れなくなったり眠りが浅くなったりと、その後の睡眠の質を悪くさせてしまいかねません。
また、中途半端な時間に寝起きすると、もう1つのメカニズムである「体内時計(概日リズム機構)」を狂わせる原因にもなってしまいます。
体内時計は「夜になると眠くなる」という生理現象で、朝起きたときにリセットされる仕組みになっています。
ですから、寝過ぎて昼過ぎなどに起きるとうまくリセットされず、それが引き金となって体内時計が狂い、生活リズムそのものが崩れてしまうこともあります。
生活リズムの乱れは不眠症や睡眠障害を引き起こす恐れがありますので、休日の寝過ぎには注意しなければなりません。
寝過ぎることの6つのリスク
夜泣きもせずにぐっすり眠ってくれる赤ちゃんはとても楽で、お母さんにとっては有り難いものです。
「寝る子は育つ」と言われるほど、赤ちゃんにとって眠ることは大事な事なのです。
それはもちろん大人になっても同じで、しっかり眠ることは健康な身体と心に必要不可欠なものです。
ですが、睡眠時間が長ければ長いほど良いというわけでもなく、あまり長い時間眠り過ぎると思いもよらない弊害が出てしまうこともあります。
では、それはどのようなものでしょう。
1.生活のリズムが乱れる
私たち人間の体内時計が、実は25時間だということをご存知でしょうか。
1日は24時間で回っていますので、もし窓も時計もない環境の中でずっと生活していたら、体内時計が25時間である私たちは自然と毎日1時間ずつずれていってしまうのです。
つまり、毎日太陽の光を浴びて「朝」を感じ、同じ時間に食事をして仕事を始め、同じ時間に夕食を摂り眠りにつく、このような習慣があるからこそ生活リズムを保っているということです。
それが、休みの日に寝溜めするように寝過ぎると、その日のリズムがずれ込んでいき翌日にまで影響します。
一度ずれた生活リズムを修正するのはなかなか難しいので、朝寝坊はほどほどにしておきましょう。
2.だるくなる・頭痛がおきる
寝過ぎた後、起き上がっても頭がボーッとしていたりフラフラしていたり、身体がだるくて重いと感じた事はないでしょうか。
適度な睡眠は身体にとって有効ですが、過度の睡眠は身体のリズムを乱してしまうため、倦怠感や脱力感を与える原因になります。
また眠っている間、脳と身体は疲れを癒すために筋肉を緩めて休息状態にあります。
ところが、寝過ぎると脳は覚醒しきれず、休息しているのか活動しているのかわからない状態になってしまうのです。
さらに、長い時間の睡眠によって頭の血管は通常より広がり過ぎてしまい、拡がった血管は近くにある感覚神経(三叉神経)を刺激して、痛みの原因となる神経伝達物質などが放出され、血管の周囲に炎症が広がることで頭痛が引き起こされます。
ちなみに、眠っている間は知らないうちに大量の汗をかいていますが、あまり長時間の睡眠になると軽度の脱水状態につながる場合もあり、頭痛を引き起こす要因となることも考えられます。
3.集中力の低下
寝過ぎた後の倦怠感や、脱力感や頭痛は集中力の低下をも招きます。
たっぷり寝たはずなのに生あくびが出たり、やる気が起きなかったり、頭が痛くて仕事が手につかなかったりと、身体を回復させるために寝たはずなのに逆効果になってしまうのです。
仕事の内容によってはケガや事故を引き起こす原因にもなりかねません。
また、ケガや事故とまではいかなくても、ミスが増えたり効率が悪くなったりと自分でもイライラする事が増えてきます。
周りからも怒られたり注意されたりするかもしれません。
そのような状態が続くと気持ちが沈み込んでしまい、うつ病や気分障害といった症状が現れる可能性もあります。
休みのたびに寝過ぎる習慣がある方、普段から寝過ぎる傾向のある方は、生活のリズムが乱れないように睡眠時間を見直してみましょう。
4.不眠症や過眠症などの睡眠障害になる危険性がある
せっかくの休みだから寝溜めしようと起きた時には昼過ぎ、そのままボーッと過ごして夕方になってやっと元気になり、ビデオやテレビを見て夜中まで起きてしまう、
このような休日を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
その結果、翌朝起きるのが辛くなって日中も頭がスッキリしないまま過ごし、そのくせ夜になるとまたなかなか寝付けなくなってしまう、そんな経験はありませんか。
この悪循環を繰り返してしまうと生活のリズムは乱れていく一方で、不眠症や過眠症といった睡眠障害の引き金となり、昼夜が逆転するような生活になってしまう危険性があります。
身体のためには寝溜めは逆効果です。
普段とあまり変わらない時間に起きるように心がけましょう。
5.早死にする病気になるリスクが高まる
アメリカのがん協会が100万人を対象に行った睡眠調査では、6時間30分~7時間30分の睡眠時間の人が死亡率がもっとも低く、7時間30分以上の睡眠時間の人は死亡率が20%も高くなることが判明したそうです。
その要因として、寝過ぎはヘモグロビンA1cの値を高めて糖尿病を発症するリスクが高まると言われています。
さらに8時間を超える寝過ぎになると、糖尿病だけでなく、善玉コレステロールが減って中性脂肪が増え、脂質異常症や肥満になりやすくなり、動脈硬化の病気を引き起こしやすいとされています。
長時間寝過ぎることで身体を動かさない時間が増えて、血流が悪くなり、脳の老化も進行しやすいとのことです。
リスクの高い病気を発症しないためにも休日の寝過ぎには気をつけて、寝過ぎで血液がドロドロにならないよう睡眠時間を守ってください。
6.腰痛になる
寝るというのは身体を休めることですが、寝る動作そのものは腰を同じ姿勢で寝具に押し付け続けることになり、寝過ぎると腰に大きな負担を与えることになります。
腰痛持ちの人が横になって休んではいけないと言われるのは、かえって腰に負担をかけることになるからです。
長期入院などで動けない状態が続くと、それが原因となって腰痛を引き起こすケースも少なくありません。
背骨というのは本来「s字カーブ」を描くことでクッションの役割を果たしていますが、寝過ぎるとs字カーブが崩れてクッション性が悪くなってしまうのです。
寝ている時の姿勢は体重の40%もの重さが腰にかかると言われています。
その重みが腰にかかった場合、クッション性のない状態では大きな負担となってしまい腰痛を引き起こしてしまうのです。
また寝過ぎは、腰痛だけでなく血行不良の原因にもなります。
寝過ぎと自律神経の関係
私たち人間には「副交感神経」と「交感神経」の2つからなる「自律神経」があります。
副交感神経とは「休む神経」で、心や身体をリラックスさせて眠気を誘ってくれます。
この副交感神経のスイッチが入って優位に立つことで眠くなり、日中働いていた脳も身体も休息状態に入ります。
眠っている間は、脳も内蔵も必要最低限の活動で休息や修復を行えるようになっているのです。
交感神経とは「動く神経」で、起きている間のやる気や集中力を高めてくれます。
朝起きて、交感神経のスイッチが入って優位に立つことで元気になり、活動的に動くことが出来るのです。
この真逆な2つの自律神経がうまく自動的に切り替わることで、私たちは毎日を健康的に過ごせるということになります。
ですが、寝過ぎなどでこのスイッチの切り替えが正常に行えなくなると、起きているべき時間に副交感神経の休むスイッチが入っていたり、寝る時間になっても交感神経の動くスイッチが入ったままだったりします。
そのせいで、寝過ぎた後のだるさや頭痛、布団に入ってもなかなか寝付けない、などの症状が起きてしまうのです。
とくに女性の場合は、生理の周期の影響でホルモンバランスが急激に変動することにより自律神経のバランスも崩れてしまいがちです。
また、排卵から生理直前になると眠りを妨げる作用がある黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌されます。
黄体ホルモンには体温を上げる働きがあるため、寝る時間になっても体温が下がりにくくなり質の良い睡眠がとりづらい状態になってしまうのです。
自律神経失調症の可能性も考えよう
自律神経とは、本人の意思で切り替えることの出来ない、身体の状態をコントロールするために自動的に働く神経です。
そして、この自律神経のバランスが乱れてしまうと「自律神経失調症」になります。
症状としては、不眠やイライラ、動悸や息切れ、軽いうつ状態などが挙げられます。
また、朝起きられなくなったり、半日以上も眠り続けるような過度な睡眠も症状として考えられます。
思い当たる節があれば、専門の医師にちゃんと診察してもらうことをオススメします。
ただの寝過ぎと軽く考えていると、そのまま不眠症や睡眠障害になってしまったり生活が昼夜逆転してしまうこともあり得ます。
まずは診察を受けて、健康的な生活を意識して自律神経を整えてください。
毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる、
それを心掛けるだけでも改善されていくでしょう。
寝過ぎの対処法
質の良い睡眠をとる
質の良い睡眠をとるために、夕食は寝る3時間前には済ませましょう。
食べ物を消化するには3時間ほどかかります。
消化しきれていない状態で眠ると、寝ている間にも体内では消化活動をしていることになり、内蔵が休息できずに良い睡眠が得られません。
また、寝る前の飲酒や、お茶やコーヒーも控えてください。
カフェインに覚醒作用があるのはよく知られていますが、お酒を飲むと寝付きが良くなると勘違いしている方も多いようです。
お酒は交感神経を活発にして興奮状態にしますので、寝ている間も神経は休めずに睡眠が浅くなります。
アルコールやカフェインには利尿作用もありますので、夜中にトイレに起きる回数も増えて眠りが浅くなってしまいます。
入浴は寝る1時間前までに済ませてください。
38~40℃のぬるま湯で20分程度の半身浴もオススメです。
お風呂から上がって約1時間後には、副交感神経が優位に立って自然に眠くなるでしょう。
寝る30分前の、ホットミルクやホットココアといった温かい飲み物も効果的です。
また、寝る前10~20分前にヨガやストレッチなどの軽い運動をするのもいいですね。
そして、スマートフォン・パソコン・テレビなどの強い光を放つものは、脳に刺激を与えて眠くなりにくくします。
せめて寝る1時間前には消して、寝室の照明も少し暗めにしておきましょう。
寝付きがスムーズになり、深く眠ることが出来れば、二度寝などせずに快適な1日が送れます。
カーテンを開けたまま寝る
寝室の環境によっては、太陽の光を遮るために遮光カーテンを使用している方もいるかもしれませんね。
ですが、寝過ぎを改善するにはカーテンは開けたまま眠ってください。
朝、太陽が昇っていくと寝室に朝日が入ってきて、自然な明るさで徐々に目覚めることが出来ます。
太陽の光を浴びることは体内時計のリセットにも役立ちますので、日差しを浴びながら大きく背伸びをして1日を始めましょう。
体内時計のずれを直すことは、生活リズムのずれを直すことにもなり、夜にしっかり眠るための予防につながります。
また、朝日のような光で起こしてくれる「光目覚まし時計」などを利用するのもいいでしょう。
通常の目覚ましとは違い、人間の体のメカニズムを意識して作られているので無理なくすっきり目覚めることが出来ます。

それでも眠い時の対処法
普段の生活で睡眠不足を実感している方の中には、それでも休日にはいつもより長く眠りたいと思う方もいるかもしれません。
そんな時は、普段の睡眠時間にプラス2時間までに抑えましょう。
それも、普段より遅く起きるだけでなく、寝る時間を1時間早くして起きる時間を1時間遅くするなど、極端に遅く起きることは避けてください。
また、平日の休み時間などに20分だけ昼寝をするのも効果的です。
頭もスッキリして、その後の仕事や家事の効率も上がります。
平均睡眠時間が3時間で有名なナポレオンも、実は1日の睡眠時間は7時間で、昼寝も日常的にしていたという話があります。
質の高い仕事をするには質の高い充分な睡眠時間を確保することが重要だと言っていたようです。
私たちも是非見習いたいですね。
まとめ
睡眠は私たちが生きていく上で重要なものですが、睡眠不足と同様に寝過ぎも身体に悪影響を及ぼします。
適度な時間で質の良い睡眠、そして適切な時間に眠りにつくことが大切です。
大切な休日を寝過ぎて台無しにしてしまわないよう、早起きの習慣を身につけていきましょう。