
人によって寝相というものは様々です。仰向けに寝たり、うつ伏せで寝たり、横向きで寝るという人もいます。
本来は一番自分が眠りやすい、安心できるスタイルで寝るのが良いのですが、ずっと横向きで寝ていると背骨が歪んだり、バランスが崩れたりすることはないのか、内臓に負担がかからないかというような不安を持っている人が多いと思います。
横向きで眠る場合、右向きで眠るのと左向きで眠るのとでは何か違いはあるのでしょうか?
また、どちらの方が寝方としては体にとって良いのか見ていきましょう。
この記事の目次
横に寝る5つのメリット
横向きで寝ることによる5つのメリットをご紹介します。
1.いびきをかきにくくなる
自分で自分のいびきを聞く機会はなかなかないと思いますが、家族からいびきが酷いと言われたことがある人も多いと思います。
いびきは呼吸のための空気の通り道の上気道が狭くなっていると、呼吸して空気が通るたびに喉の粘膜が振動することで発生します。
仰向けで眠っている場合、人間は起きている間は喉の筋肉が働いているので舌を上に押し上げて支えてきますが、寝ている間は喉の辺りの筋肉は緩んでいるので、重さのある舌が喉の方に落ちてきていることが多く、空気の通り道である上気道を狭くしています。
しかし、仰向けで眠っている時には喉の中央に落ちてくる舌が、横向きで眠っていると舌が左右どちらかの喉の奥に落ちます。
舌によって上気道を狭くされていることによっていびきをかいていたものが、舌が片方に寄っていることで上気道が広くなりいびきが軽減されます。
いびきを軽減するためには左右どちらか向きに寝た方が良いというものでもありませんので、自分が楽な姿勢がとることができる方向に眠ると良いでしょう。
2.腰痛が少なくなる
一般的に仰向け寝が腰や背中に負担がかからないと言われています。
人間は立っているときの姿勢が一番自然で楽な状態とされていますので、仰向け寝で眠ることは一番自然に近い状態にしているということになるからです。
しかし、腰痛を持っている人の腰に一番負担が少ない寝方は横向き寝なのです。
腰痛である人は姿勢が悪かったり、背中や腰の筋肉に炎症があったりしてなかなか真っ直ぐに立つこともできません。
腰痛で腰が痛い人を仰向けで眠らせるということは、痛くて伸ばせない腰を無理やり伸ばして寝かせているということになります。
炎症がある場合は、まず炎症を取り除くということが大切で、無理に腰や背骨を伸ばすことが重要ではありません。
仰向けに眠ると言うことは炎症を酷くして治りを遅らせてしまいます。
腰痛がある場合は、無理に痛い腰を伸ばして眠るのではなく、腰が痛くない姿勢を保つために横向きで眠るのが一番です。
さらに、腰痛の人が眠る姿勢として一番良くないのがうつ伏せ寝です。うつ伏せ寝は腰を仰向け以上に後ろにそらして伸ばす姿勢になります。
このため、うつ伏せ寝をすることによって腰に負担がかかり、腰痛が悪化してしまう恐れがあります。
3.精神的に落ち着く
人間は大人になっても生まれる前のお母さんのお腹の中で安心して過ごした時間を体のどこかで覚えているものです。
お母さんのお腹の中の胎児は腰を丸めて横向きになって眠っています。
このような生まれる前の体験から横向きで眠る姿勢が一番精神的に落ち着くという人が多いのではないでしょうか。
それと同様にうつ伏せ寝が何となく落ち着くという人の理由も胎児の時の記憶が原因しているかもしれません。
精神的に落ち着くことがどんな状態なのかということは個人差があるのでなかなか科学的に実証できませんが、良質の睡眠を取るために横向きの姿勢をとると良いと実感する人もいます。
4.睡眠時無呼吸症候群の予防
睡眠時無呼吸症候群というのは、睡眠時に呼吸が一時的に止まってしまうことです。
睡眠時無呼吸症候群には睡眠時に空気が通過する喉の上気道が狭くなることが原因しているものと、脳から呼吸の指令が出なくなってしまうというものと大きく分けて2パターンに分かれていますが、睡眠時無呼吸症候群の人の内の約9割の方が、上気道が狭くなって空気が通らなくなることが原因になっています。
いびきと同じく上気道が狭くなっていることが原因ですが、睡眠時無呼吸症候群の場合、いびきよりも症状が重く、完全に上気道が塞がれてしまっている時間が長いことで呼吸が完全に止まってしまいます。
この状態を軽減するためには、いびきを軽減するとの同様に横向きに寝て、舌を喉の左右どちらかに寄せることで上気道を少しでも広くすることが大切になってきます。
しかし、いびきよりも状態が悪い睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、しっかり治療するためにも専門の医療機関を受診することが大切です。
5.脳のごみ排出促進効果
脳は睡眠時であっても絶えず生産と分解を繰り返し、代謝を行っています。
脳には、アミロイドβ前駆体タンパク質という成長と修復に必要なタンパク質がありますが、分解されるとアミロイドβというタンパク質を排出します。
しかし、この物質が脳に蓄積することによってアルツハイマー病の原因になるとされており、言わば、脳のごみになります。
睡眠時に横向きで眠ることは、脳のごみであるアミロイドβを最もたくさん排出するという研究結果がアメリカのニューヨーク州立大学のストニーブルック校から発表されています。
この研究では横向きで眠ることは、人間だけでなく他の動物でも一般的な眠る時の姿勢ですが、脳のごみを最も排出するために横向きに眠る動物が多いのではないかとも予測しています。
参考資料 Stony Brook University
http://sb.cc.stonybrook.edu/news/general/150804sleeping.php
右向きで眠ることのメリット(右側を下にして眠る)
横向きでも左右の違いはあるのか?まずは右向きの際のメリットをご紹介します。
1.心臓への負担を軽減する
人間にとって最も重要な臓器の1つである心臓は左胸にあります。
右側を下にして横向きに寝ると心臓が体の中で高い位置にきます。心臓が高い位置にあると心臓への負担が減ります。
また、肝臓という臓器が心臓の近くにありますが、肝臓が比較的大きくて重さのある臓器です。
右側を下にすることによって肝臓の重さが心臓にかからないので心臓が圧迫されないので結果的に体が楽になると言われています。
2.消化吸収を助ける
口から食べたものを消化吸収するための胃や腸という消化器系の臓器の出口は右側にあります。
臓器の出口である右側を下にして横向きに眠ることによって消化機能が上がります。また、胃の袋の形状は左から右へとカーブして腸に繋がります。
胃の袋は左側に大きく膨らんでいるので左側を下にして眠ると胃の袋に食べ物が溜まりやすくなります。
このため、胃の負担を減らすためにも右側を下にして横向きになる方が消化吸収のためには良いとされています。
左向きで眠ることのメリット(左側を下にして眠る)
次に、左向きで寝る際のメリットとはどういったものがあるのか、ご紹介していきます。
1.リンパの流れを改善する
体の左側は重要なリンパがあり、左側を下にして眠るとリンパが排出されやすくなり、流れが良くなるとされています。
また、リンパの排出だけでなく分泌を促進しやすくするという効果も期待できます。
2.血流を良くする
心臓が左側にありますが、体の右側には大静脈などの重要な血管がたくさんあります。
このため、右側を下にして眠ると血管が圧迫されて血流が悪くなるので心臓のある左側をあえて下にして眠る方が良いとされています。
しかし、反面、心臓が下になって他の臓器から圧迫されることで血流が悪くなるのという反論の意見もあります。
3.妊婦と胎児の負担を軽減する
妊婦さんが妊娠後期に仰向けで眠るということは非常に過酷で、なかなか長時間ゆっくり眠る事ができません。
仰向けで眠るということはお腹の重さを腰や背骨で支えることになり、非常に眠り難いので左右どちらかの方向を向いて横向きに寝ることが妊婦さんにとっても胎児にとっても良いとされています。
妊婦さんが横向きで眠る場合は、お腹の重量によって内臓の働きが悪くなったり、血管を圧迫されることによって血流が悪くなることは避けなければいけません。
心臓は左側にありますが、重要で繊細な血管は右側に集まっています。
血流を良くすることを優先する場合は血管を圧迫し難い左側を下にして眠るという体位が良いでしょう。
妊婦にとって血流が良いということは、お腹の胎児に血液を充分送ることができるということで、非常に大切なことです。
また、妊婦さんの眠る姿勢について、19世紀のアメリカの産婦人科医であるマリオン・シムズという人が「シムス姿勢」という体位を推奨しています。
シムス姿勢は妊娠中期から後期のお腹の大きくなった妊婦さんは体の左側を下にして横向きになって眠るのが良いとするものです。
人間は横向きになったときに気道がしっかり確保できるので一番リラックスできる体位ですし、胎児や羊水の重みで血管が圧迫されやすい妊婦は特に低血圧やめまいの危険があるので血流をよくするためにも左側を下にして横向きで眠ることが大切としています。
参考資料 WIKIPEDIA J. Marion Sims
https://en.wikipedia.org/wiki/J._Marion_Sims
4.安眠効果が高い
左右どちら向きに眠る方が安眠効果が高いかということは人それぞれかもしれませんが、血流の流れを妨げ難いのは左側を下にして眠ったときだと言うのが一般的です。
血流が良いということは体の中に栄養や酸素をしっかり届けることができるという面で安眠効果が高いのです。
5.逆流性食道炎を緩和する
朝起きて胸がムカムカしたり、眠っていても胸焼けがするという人は胃から胃酸が逆流してくる逆流性食道炎の可能性があります。
逆流性食道炎の人の場合は、まず就寝前は最低でも3時間は食べたり飲んだりということを避けて、胃をなるべく空の状態にしてから眠ることが大切ですが、胃から胃酸が逆流しないためにも、基本的に就寝する場合は左を下にして眠ると良いでしょう。
胃は、眠っている間も形は変わりません。
胃は右側に入口、左すい出口があるため、右側を下にして眠ると逆流性食道炎の人は逆効果で胃酸が逆流しやすい状態にして眠っていることになります。
胃や腸は左側に出口があるので消化吸収を助けるためには右側を下にして眠ると良いのですが、逆流性食道炎で胃酸が逆流しやすい人は逆になります。
横向きで眠るときのデメリット
逆に、横向きで眠ることによるデメリット、注意すべき点をご紹介します。
1.骨盤や背骨が歪む
人間の体が一番自然な姿勢というのは、2本の足でまっすぐ立っているときの姿勢です。
このため、本来は睡眠時でも一番楽で良い姿勢とされている直立の姿勢に一番近い仰向け寝で眠ることが良いとされています。
横向きで眠ると背骨や骨盤などが不自然な自然になり睡眠時など長時間に渡って横を向いていることは骨盤や背骨の歪みに繋がります。
このような背骨や骨盤などの歪みを起こさないためにも、横向きで眠る時は、ずっと同じ方向を向いて眠るのではなく、寝返りをうって逆方向を向いたり、時には仰向けになるなどして体のバランスをとることが大切になってきます。
2.しわやたるみの原因になる
体を横にした場合、顔や体の下にした側の皮膚に重さの負担がかかってきます。この重さの負担によって横向きで眠ると、しわやたるみ、ほうれい線の原因になります。
また、長期間に渡って、ずっと同じ方向で横向きになっていると顔が変わってしまうほど歪みが生じます。
しわやたるみが気になる人は横向きに眠る時は、左右を交互に眠ったり、寝返りをうつなどして、長時間同じ皮膚に負担をかけないように注意が必要です。
横向きに眠る工夫
姿勢を気にしたり、内臓の働きを妨げないようにするために意図的に左右どちらかの方向を向いて眠りたいという人もいます。
しかし、個人それぞれで眠りやすい方向や落ち着く方向、体位は違うためになかなか眠っている間の姿勢をコントロールできません。
このような場合は、抱き枕やクッション、タオルなどを上手に工夫して体を支えるために使うことが大切です。
左を向きたい時は右の腰や背中の部分にクッションなどを入れて体を傾けたり、抱き枕を抱いて眠るなどしてみると良いでしょう。
また、横向きで眠ると仰向けで眠るよりも体重を支える面積が狭くなるので、片方の肩や腰に負担が大きくかかります。
これを回避するためにも、狭い面積でも体重を分散させて体を支えるマットレスなどを使用すると体に負担をかけることなく横向きで楽に眠る事ができます。
まとめ
横向きで眠る場合、左を下にするか、右を下にするかということはそれぞれいろいろなメリットやデメリットがありますので、自分の体の状態をよく考えて横向きで眠る向きを考えましょう。
一番大切なことは自分がしっかり安眠できることです。
体のために一定方向で横になって眠ることも大切ですが、その為に充分に眠れなくなっては意味がありません。
左右どちらの方向が自分に向いているかということを考えながら、眠りやすい方向をいろいろと試してみましょう。