
むずむず脚症候群という言葉を聞いたことはありませんか?
むずむず脚症候群とはその名の通り脚がむずむずするという症状の病気です。
日中に活動している時は自分の脚がむずむずしている感覚を自覚することは余りありませんが、夜に布団に入って眠ろうとした時に何となく脚がむずむずして落ち着かない、気持ち悪い、眠れない・・・ことがあり、自分の症状に気付くことになります。
特に痛くて耐えられないという状態ではないので多くの人が脚のむずむずした不快な感覚があるにも関わらず放置していることが多いのですが、むずむず脚症候群には何か原因があるのでしょうか?
また、対処法があるのでしょうか?
一緒に見ていくことにしましょう。
この記事の目次
むずむず脚症候群とは?
むずむず脚症候群はレストレスレッグス症候群とも言います。
特に脚に激痛を感じるわけでもないので放置しているという人も多いのですが、日本人の約2~4パーセントほどの人がこの症状を抱えていると考えられています。
むずむず脚症候群については300年ほど前からその症状の認識はありましたが、原因や治療法などは分かっていませんでした。
しかし、最近では研究も進みむずむず脚症候群について様々なことが分かってきました。
むずむず脚症候群の症状としては、じっとしているときや就寝のために横になっているときには足先から範囲が広い人では背中や腕までがなんとなくむずむずしたり、チクチクしたり、じっとしていられなかったり、火照るような感覚や虫が肌を這うような感覚があります。
なんとなく不快と言う場合が多いのですが、人によっては激しく痛みを感じる場合もあります。
就寝するために部屋を真っ暗にして静かにしているときに、下肢に違和感があるということは想像以上に不快で、自分の脚をさすったり、叩いたりしてむずむずする感覚を逃がそうとしますが、なかなか不快感がなくなりません。
気持ちとしては、脚の中に手を入れてさすりたいというような感覚があります。
このためなかなか入眠ができずに不眠気味になったり、不眠症の原因になったりすることもあります。
一般的には夕方から夜にかけて起こりますが、中には日中であってもむずむず足症候群のせいで不快な思いをしたり、じっとしていなくてはいけないのにじっとしていられずに非常に困っている人もいるようです。
治療が必要であると考えられる人は国内に200万人以上いるのではないかとされていますが、実際に医療機関を受診する人もまだまだ少ないのが現状です。
いまだに医療機関を受診しても別の病気と診断されている人も多くいます。
特に中高年の人に多く、男性よりも女性の方が患者数も多く、5割ほど多い患者がいると言われています。
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原因は?
むずむず脚症候群の原因などはっきりしたことはまだ分かっていないこともたくさんありますが、医学の発達と研究により徐々に解明されてきつつあります。
原因がはっきりしないという「一次性」のものと、以前からある病気の症状や治療などによって起こるとされる「二次性」のものがあります。
一次性のむずむず脚症候群
原因がはっきりしない一次性のむずむず脚症候群ですが、ある程度の原因が考えられます。
まず、一つは遺伝的な要因です。
家族や親戚などでむずむず脚症候群である人がいるとむずむず脚症候群になる人が多いので先天的にむずむず脚症候群の要因を持っている人は発病する場合があるということです。
二つ目は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンの機能障害ではないかと考えられます。
ドーパミンというのは快楽を感じたり、細やかな動作や抹消神経からの情報を脳に伝えるとされている脳内ホルモンですが、このドーパミンの経路に不具合が起こり、むずむずとした不快を感じるというものです。
また、ドーパミンのもとである鉄分が体内不足している場合、ドーパミンの分泌が減るために脚がむずむずするような不快な感覚が生まれるといわれています。
二次性のむずむず脚症候群
むずむず脚症候群が鉄欠乏の人や腎臓の機能不全のために人工透析をしている人、また、ビタミンや葉酸の欠乏が起こりやすい妊婦にもむずむず脚症候群の人が多いとされています。
その他、パーキンソン病やうっ血性心不全、関節リウマチ、脊髄の病気の人にも症状を訴える人が多いです。
むずむず脚症候群以外の体の疾患によって、抗精神病薬や抗ヒスタミン薬、抗うつ薬などの薬を処方されて服用している人にもむずむず脚症候群の人が多いのが特徴です。
薬でなくても、カフェイン、アルコール、ニコチンなどの体内摂取をしている人はむずむず脚症候群になる要因があるとされています。
自宅でできるむずむず脚症候群の対処法
このようなむずむず脚症候群ですが、自宅で可能な対処法がいくつかあります。
自分で行える対処方について、見ていくことにしましょう。
カフェインやアルコールの摂取制限
脚がむずむずしてただでさえ眠れないのに、睡眠に悪影響を及ぼす物質の摂取は制限しましょう。
カフェインは神経を興奮させる働きあるので睡眠には向かない物質です。
コーヒーや紅茶、日本茶、栄養補給ドリンク、カフェイン入りのジュースなどは夜にあまり摂取すべきではありません。
また、寝つきが良くなるということで寝酒を飲むという人も少なくないと思います。
確かに、アルコールは入眠をスムーズにするので寝つきがよくなると言う方もいますが、体内に入ったアルコールを排除しようと身体が働くので脳も身体もしっかり休息することが出来ず睡眠の質が下がってしまいます。
夜中に何度も起きてしまったり、朝早く目覚めたりしてしまいます。
脚がむずむずして不快であるのに睡眠の質まで落とすようなことはしたくはありませんよね。
脚がむずむずする人は眠る前にカフェインやアルコールを摂取するのは極力控えましょう。
たばこを止める
タバコに含まれるニコチンが血液に入ることで睡眠の質を落としますし、体調も悪くなります。
健康上良くないとされている物質も多く含まれているたばこですので、安眠のためにも、夕方以降はできるだけタバコの吸うのは止めましょう。
適度な運動
運動をすることで睡眠ホルモンであるメラトニンをたくさん分泌するためのセロトニンが分泌されます。
朝に起きてしっかり太陽の光を浴びて日中は積極的に活動することで夜の睡眠の質が上がります。
ただし、運動をすることによって睡眠の質は良くなりますが、あまり極度に激しい運動をすると逆に体力が消耗されて睡眠の質が下がりますので注意しましょう。
適度の運動という点を理解した上で、体を動かしましょう。
好きなことに集中したり、熱中するのもセロトニンの分泌につながります。
楽しく日中を過ごすことも大切です。
バランスの良い食事
睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌するために必要なセロトニンですが、セロトニンを分泌するためにはトリプトファンというアミノ酸が原料として必要です。
このため、トリプトファンは睡眠に必要な栄養素と考えられています。トリプトファンは色々な食品に含まれています。
特に、肉類や魚介類に含有量が多いのですが、肉や魚類など動物性のたんぱく質はトリプトファンが脳内に移動するのを阻止する要因と考えられていますので動物性の食べ物ばかりを摂取するのはよくありません。
他にも野菜や果物、きのこ類、乳類、豆類などにもトリプトファンが含まれていますので色々な食品から満遍なく摂取するように心がけることが大切です。
鉄分の補給
二次性のむずむず脚症候群は鉄分の不足が原因で症状がある場合が多いので、鉄分を多く含む食べ物を食べたり、鉄剤を飲んで鉄不足にならないようにしましょう。
入浴
入浴には睡眠に良い影響を与えることがたくさんあります。
まず、身体をしっかり温めることができるので、身体中の血液の流れを良くします。
睡眠ホルモンであるメラトニンを作るために必要な栄養素などを血液に乗せて脳まで運ぶことができます。
また、お湯に浸かることで精神が落ち着きます。睡眠に入るためには自律神経が交感神経から副交感神経へ上手く移り変わることが大切ですが、入浴はリラックス効果もあるので非常に適しています。
睡眠は日中に上がった体温をしっかり下げることで深い睡眠になりますが、睡眠の1時間ほど前も入浴することで体温を少し高くしておくと、睡眠時に体温が下がることで眠りやすくなります。
脚がむずむずする場合は体が急速に眠りの状態に入ることで感覚が鈍ります。
どの程度の症状で病院を受診したらいいの?
むずむず脚症候群は主に神経疾患であると考えられますが、むずむず脚症候群という病名さえ知らないという人が多く、まだまだ世間に認知されていない病気です。
しかし、むずむず脚症候群のせいで夜に眠れなかったり、不快な思いに苦しむ人は多いのですが、自分でもその症状が医療機関を受診して治療するほどではないと考えている方も少なくありません。
しかし、眠れなかったり脚がいつもチクチクするというのは、一種の病の兆候であり立派な疾患です。
医療機関を受診し、専門家に診断してもらい治療を受けることが大切で、治療をすれば劇的にその症状が良くなります。
・脚の内側がむずむずして気持ちが悪くなかなか寝付けない
・何度も夜中に目を覚ます
・夕方から夜になると脚に違和感があり、じっとしていられないが歩いているとその感覚が薄れると感じる
・夜に脚がむずむずするために眠れないで日中に眠気や倦怠感や疲労を感じる
・むずむず脚が原因で眠れないことに不安を感じる
・よく落ち込んだりする
・仕事中に脚がむずむずしてしまう
・飛行機や電車や会議中、映画鑑賞中なのに長時間じっとしていられずに脚を動かしてしまう
以上に思い当たる人などは、むずむず脚症候群である可能性が高いので医療機関を受診しましょう。
むずむず脚症候群は何科を受診するべき?
むずむず脚症候群かもしれないと思っている場合は、何かを受診すべきか悩みます。
むずむず脚症候群になって一番困るのは、夜になっても不快でなかなか眠れないということです。
不快から不眠症や睡眠障害になる人も多いことから精神科を受診するのも良いですし、むずむず脚症候群はドーパミンの分泌や機能障害である場合もあるので神経内科を受診するのも良いでしょう。
神経内科はパーキンソン病や頭痛や物忘れなどを治療する内科で神経障害であるとされるむずむず脚症候群は関係が深い診療科でしょう。
しかし、近くに精神科や神経内科がない場合は、普通内科などでも問題はありません。
病院での主な検査はどんなもの?
むずむず脚症候群の症状は脚がむずむずするという一見単純な症状ですが、この症状は他の病気での症状と区別がつきにくいことからきちんとした診断を下すための検査を行う場合があります。
むずむず脚症候群である場合は、脚の不快感から睡眠中に脚の関節などが無意識に動かしていることがあります。
また、睡眠中の脳波や筋肉や眼球などがどの程度の運動をしているかということを調べます。
これらを終夜睡眠ポリグラフ検査といい、病院で一泊して睡眠の状態を調べます。
病院に一泊もできないという人は夜間に1時間だけ目覚めた状態で座りながら行う終夜睡眠ポリグラフ検査というものもあります。
また、アクチグラフと言って日中と夜間で手首や足首に装置を装着して睡眠時と起きている時の運動を測定する方法もあります。
これらの検査が専門医に相談をして受けるむずむず脚症候群の診断法です。
むずむず脚症候群の治療
むずむず脚症候群の治療は原因が何かということによります。
何か他の基礎疾患を抱えていて、そのことが原因でむずむず脚症候群を引き起こしている場合はまずはその疾患の治療が大切です。
また、ドーパミン遮断薬や抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などの薬剤が原因である場合はこれらの薬物の使用中止します。
鉄欠乏が原因の場合は、鉄剤を投与します。
ドーパミンの働きが悪いことが原因している場合はドーパミン作動薬を服用します。
けいれんや痛みを抑える場合、抗てんかん薬がむずむず脚症候群の治療に使われることもありますが、むずむず脚のせいで不眠になっている人には睡眠薬や睡眠導入剤の投与を行います。
まとめ
むずむず脚症候群は、眠る時に脚がむずむずしたり、チクチクしたり、虫が這っているような感覚があったりして非常に不快な病気です。
特に我慢できないような激痛があるわけでもないので、多くの人が病院を受診せずに病気を放置してしまうことがあります。
しかし、この病気を放置すると睡眠の質を下げてしまう可能性が高く、不眠になったり睡眠障害を起こすことも珍しくありません。
自宅でできる対処法を試してみてもあまり効果がない場合は精神科や神経内科を受診して原因を突き止め、治療していくことが大切です。