
生理の前になるととても眠くなるという人がいる反面、全く眠れなくなるという人もいます。
生理前に眠れないという症状は実はPMS(月経前症候群)の症状の一つなのです。
PMS(月経前症候群)には様々な症状がありますが、不眠の症状と生理はどのように関係しているのか見ていきましょう。
この記事の目次
PMS(月経前症候群)とは?
PMS(月経前症候群)という名前は知っていますか?
徐々に認識度も上がり、何となく知っているという人も多いと思います。
PMSとは「Premenstrual Syndrome」という英語を略したものですが、日本語では月経前症候群とされ、月経の前10日ぐらいから起こるからだと心の不調を言います。
この月経前症候群は月経が始まると段々不調が消えていくというものがほとんどです。
月経前になると何となくイライラしたり、胸が張ったり、お腹が痛くなったりという症状を抱えている女性は多いものですが、PMS(月経前症候群)という病名があるということを知らずに人知れず悩んでいる人もまだまだ多いというのが現状です。
精神的な症状としては、イライラしたり、憂鬱になったり、泣きたくなったり、怒りっぽくなったり、落ち着かずに集中できない、やつ当たりしてしまうということがあります。
身体的な症状としては、乳房が張ったり、痛くなったり、倦怠感があったり、頭痛、むくみ、のぼせ、体重増加、腹痛、腰痛、体重増加などがあります。
その中でも非常に眠くなるという症状の人もいますし、逆に眠れない不眠の症状を訴える人もいます。
月経前になると何となく眠れないという不眠の症状は、れっきとしたPMS(月経前症候群)の症状なのです。
一般の不眠とどう違うの?
PMS(月経前症候群)の症状があるという人は8割にもなるという調査結果があります。
また、女性のうちで月経前に睡眠に関しての変化を感じている人は4割ほどいます。
睡眠の変化としては、ほとんどの人が月経前に眠くなるという症状が多いのですが、月経前に不眠になったり、月経の時に不眠であるという人も少数派ながらいます。
一般的な不眠症としての症状はいくつかありますが、PMS(月経前症候群)での不眠は、なかなか眠れない入眠障害や夜中に何度も目が覚める中途覚醒を訴える人が多いとされています。
月経が始まる1週間から前日にかけて入眠できなかったり、夜中に目が覚めることが多くあります。
この不眠の症状も月経が始まると症状が全くなくなったり、緩和する人がほとんどです。
このような場合は、やはり不眠の症状は月経が関係しているということが考えられますので。PMS(月経前症候群)の症状と言えるでしょう。
PMS(月経前症候群)でなぜ眠れないのか?
PMS(月経前症候群)には様々な症状がありますが、そのほとんどの原因は女性ホルモンのバランスの崩れが影響しています。
月経前に不眠になるという症状も月経前に起こる女性ホルモンのバランスの変化が原因となって起こると考えられます。
女性ホルモンには黄体ホルモンといわれるプロゲステロンと卵胞ホルモンといわれているエストロゲンがあります。
月経前の時期はプロゲステロンが増加し、エストロゲンが減少しますがこれら2つ女性ホルモンそれぞれが月経前に眠れなくなるという不眠の症状を起こしている原因になっています。
プロゲステロン(黄体ホルモン)による不眠
女性の体は排卵を終えると黄体期に入ります。黄体期にはプロゲステロンの分泌が多くなり血中濃度が高くなります。
プロゲステロンは体温を上昇させる働きがあります。
このことによって、最高体温と最低体温との間に差があまり出来なくなります。
人間は眠っているときは体温が低く、活動する日中に体温が高くなります。
また、眠る直前は一気に体温を下げることによって眠気が生まれます。
最高体温と最低体温との差が大きいほどスムーズに眠りに付くことができるにも関わらず、プロゲステロンによって常に体温が高い状態が続き体温が下がらないために、起きているときと寝ている時のメリハリが付かないので眠れないという不眠の状態になってしまいます。
人間にとって体温の上下変動は密接に睡眠と関係しているということです。
エストロゲン(卵胞ホルモン)による不眠
エストロゲンが月経前に減少するということでセロトニンという脳内物質の分泌が悪くなります。
セロトニンという脳内物質は睡眠には非常に関係の深い物質です。
セロトニンは昼間に分泌されますが、夜になるとメラトニンという睡眠物質を作るための原料になります。
メラトニンが分泌されないと睡眠ができなくなるので非常に睡眠のためには必要な脳内物質ということになります。
一般的な不眠症もメラトニン不足のために起こりますが、PMS(月経前症候群)の場合、月経の前にエストロゲンが減少することによってセロトニンの分泌が減少し、結果的にメラトニンが不足して不眠の状態になっているということです。
エストロゲンは生理が始まると増加してきますので、PMS(月経前症候群)による不眠の人は生理が始まるとまた元の通り眠れるようになります。
PMS(月経前症候群)の症状が原因になっている不眠
月経前は心と身体の調子が不安定になったり、不調になる人も多いのですが、その症状自体が身体にとって負担となって眠れないという不眠の症状の原因になっている場合があります。
例えば、PMS(月経前症候群)によって下腹部が痛かったり、頭痛があると、その事が原因して眠れないことがあります。
また、イライラしたり、不安な気持ちになり何となく眠れないということも起きてしまいます。
このようにPMS(月経前症候群)が間接的に原因となってあまり眠れないという不眠症状出てしまうことはよくあることですが、これらの月経が始まって体調が普段の通りになると不眠が解消されます。
強烈な眠気と不眠は表裏一体
PMS(月経前症候群)の症状としては、不眠を訴える人よりも強烈に眠気を感じるという人が多いのですが、これら2つの現象は一見全く逆の状態に思えるようで、実は表裏一体の関係にあるとも言えます。
プロゲステロンが月経前に増加することによって体温が上昇し、体温が下がらないことが不眠の原因になっているのですが、人間は生きていくためにやはり睡眠が必要不可欠ですので、夜にあまり熟睡できなかったり、眠れない状態になると日中に強い眠気が生じます。
よってPMS(月経前症候群)によって昼夜が逆転しやすくなり、夜に良質の睡眠がとれないことで日中常に強烈な眠気に襲われるというのは当然のことなのです。
プロゲステロンの増加によって体温の高温期が続くと夜に活動的になり子作りをしやすい環境を身体が本能的に作っているということです。
また、反対に昼間は強い眠気を出して安静にしておくようにコントロールされています。
プロゲステロンは人間が子孫繁栄のために、女性が妊娠し出産しやすい状況を作っているということで、非常に神秘的な現象とも言えるのです。
PMS(月経前症候群)による不眠を解消する方法
太陽の光を浴びる
PMS(月経前症候群)によってプロゲステロンが増加するとセロトニンの分泌が減少します。
セロトニンは別名睡眠ホルモンといわれているメラトニンの原料となりますので、セロトニンの減少は必然的にメラトニンと減少につながります。
女性の体において、月経前にプロゲステロンが増加することは止められませんが、自己努力によってセロトニンの減少を食い止めるようにすれば少しでも不眠対策になります。
セロトニンは日中に作られますが、特に朝にしっかり太陽の光を浴びることが重要です。
不規則な生活は不眠の原因になりますが、その多くは朝に太陽をしっかり浴びていないこと、また、日中にしっかり活動していない事が原因です。
朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を15分から30分ほど浴びるとセロトニンの増加につながります。
夜になかなか寝付けないと質の悪い睡眠になっていますので朝に眠かったり、なかなか目が覚めないこともありますが、無理をしてでも規則正しい時間に起きて活動することが大切です。
運動をする
人間の眠気というものは体温が下がる時に生じます。
高温から低温に下がるまでの落差が大きいほど強い眠気が出てスムーズに入眠できます。
PMS(月経前症候群)によって基礎体温が上昇しているために体温が一気に下がらないことが不眠の原因になっているのですから体温を寄り一層上げると最高体温と最低体温の差が大きくなることになります。
体温を上げるには運動をしたりしてしっかり活動することが大切です。
激しい運動でなくてもウォーキングやストレッチでも効果があります。
運動できなくても集中して仕事したり、何かを楽しむことでもかわりになります。
人とコミュニケーションを取る
人と話したり、一緒に行動するということは精神的にも肉体的にも負担になるので好きじゃないという人もいるかもしれませんが、人や動物とコミュニケーションをすることで活動的になります。
気を使って疲れるという人もいますが、気を使ったり考えながら話したりコミュニケーションを取ることは睡眠に一見無関係に見えますが非常に大きく影響します。
また、1日の活動を終えて家に帰ってきてから家族やペット、友人などと気分を楽にしてゆったり食事したり話したりすることで精神的に安定しますので入眠しやすくなります。
栄養素を考える
月経前から女性の体は貧血気味になり鉄分が不足します。
このため脳に充分な酸素が送られないために様々な症状が出ます。
脳の酸素不足を解消するためにも鉄分を意識的に摂るようにすると良いでしょう。
また、睡眠に非常に重要なセロトニンを生産するためにはトリプトファンという栄養素が不可欠です。
トリプトファンは体内では作り出すことのできない必須アミノ酸といわれるもので、主に食事から補給することが大切です。
トリプトファンは非常に多くの食品に含まれている栄養素ですので、食事のバランスを考えて普段から摂取していると不足する栄養素ではありませんが、睡眠の改善とためには1日500から1000ミリグラムほどの摂取が必要です。
特に肉類や魚介類に多く含まれていますが、動物性食品だけでなく豆類や野菜類、果物類、牛乳などからも摂取するようにしましょう。
もしトリプトファンの摂取不足が気になるのなら、サプリメントを活用して意識的に摂取すると摂取不足は解消されるでしょう。

ぬる目のお風呂に入る
眠る前に体温を上げるためにもお風呂に入ることは大切です。
眠る1時間前にはお風呂から出るように逆算してお風呂に入れば特に効果があります。
人間は体温を下げる時に眠気が生じますのでお風呂で温めた体温が大きく下降することを利用して眠りましょう。
一番してはいけないのは眠る直前にお風呂に入って体温を上げることです。
いくら体温が大きく下降することを狙って入浴したとしても眠る直前では体温が下がりきりません。
また、お風呂に入ることによってリラックスするので自律神経が交感神経から副交感神経へとスムーズに移行します。
血行もよくなりますのでぬる目のお湯にゆっくりと浸かるのが良いでしょう。
まとめ
PMS(月経前症候群)によって起こる不眠の多くは女性ホルモンのバランスが大きく影響しています。
月経前に減少するエストロゲンは睡眠ホルモンといわれるメラトニンという物質の原料となるセロトニンの分泌を減少させてしまい、セロトニンの減少がメラトニンの減少につながり不眠の症状が出てしまいます。
また、月経前にはもう一つの女性ホルモンであるプロゲステロンが増加します。
プロゲステロンが増加することによって女性の体は高温期に入り、最高体温と最低体温の差が小さくなってしまうので眠気が起きにくくなり不眠の状態になります。
月経前のこのような現象は食い止めることができませんが、自助努力でこれらを少しでも解消して不眠を緩和させることが大切です。
睡眠に必要であるセロトニンをできるだけ減少させないためには、朝の太陽の光をしっかり浴びて、日中にしっかり仕事したり、運動するようにしましょう。
また、セロトニンの原料となるトリプトファンという栄養素を意識的に摂取するようにしましょう。
また、就寝前には体温が大きく下降するようにお風呂に入って体温を上げるということも重要です。