
ピラティスとヨガなどを習っている方は別として、全く経験がない者にとってはその違いも分かりにくいですよね。
イメージが漠然としているだけに「ほとんど同じなのでは?」と勘違いしてしまうことも・・・。
眠る前には軽いストレッチが良いと聞くこともありますが、ピラティスとヨガ、果たしてどちらがよく眠れるのでしょうか?
今回は眠りについて考えながら、このピラティスとヨガの違いを踏まえて、それぞれの眠りへのメリットを見ていくことにしましょう。
この記事の目次
ピラティスとは何?
2000年以降大ブームを起こしたピラティスですが、ダイエットメソッドとして認識している方も多いと思います。
しかし、本来ピラティスは真の健康を目指すための身体調節法として開発されました。
ドイツ人従軍看護師ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスが戦争で負傷した兵士のリハビリを目的として作られたのが始まりと言われています。
ピラティスはジムのように負荷を加えてする運動と違って、体と心をコントロールすることでボディを正常な状態に整えていくことをモットーとしています。
筋肉トレーニングなどでは回数や負荷の強さなどが重視されていますが、ピラティスのエクササイズは、どれだけ正確に体を動かしていけるかということが大切になります。
回数などをこなすよりも正確さ、質が重要なエクササイズなのです。
自分の持っている力を使って、健康を維持するための筋力をつけていき、正しい姿勢を習慣化することで、心身ともに輝くことを目指しています。
その結果、ダイエットなどにつながるため、セレブや世間では、ダイエットエクササイズとして定着してしまったようです。
ピラティスはヨガのポーズなどを参考にしており、筋肉を鍛え、呼吸法なども意識して行うことからヨガと「同じなのでは?」と誤解している方も多いと思いますが、ヨガはピラティスとは大きく異なります。
次はヨガについて見ていくことにしましょう。
ヨガとは何?
ヨガの起源は今から4千年、5千年前と言われています。
インドにはインダス川が流れていますが、その川周辺に栄えたインダス文明のころに生まれたエクササイズです。
体の調節を行う「ハタヨガ」と瞑想や真理を追究する「ラジャヨガ」、奉仕の心を養う「カルマヨガ」など色々な形態があり、その中でも私たちが良く目にする「ハタヨガ」は太陽と月を意味する言葉です。
心と体、内と外(自然)、人と人、陰と陽の関係性をコントロールしていくことが目的となっている宗教的行法です。
心身を鍛えることによって精神を高め、悟りを開いていくことが最終の目標となっています。
修行ですから、厳しい試練を乗り越えていく強い精神力と自分自身をコントロールしていくことが何よりも重視されています。
ヨガは一般的によく見かけるポージングだけでなく、細かな姿勢や食事も修行とされています。
正しい姿勢を保つためには、重心を常に意識することも大切で、だからこそ、筋力や深い呼吸である腹式呼吸が必要になってくるのです。
アーサナと呼ばれているヨガのポーズはそのすべてを習得する方法の一つで後々それが健康に役立つことから世界中に広まるようになり、美容、ダイエットのためになると日本でもブームに火が付きました。
双方ともその始まり、考え方は分かっていただけたと思いますが、エクササイズとしてはどのような違いがあるのでしょうか?
その詳しい違いを見ていくことにしましょう。
ピラティスとヨガのエクササイズはどう違う?
ピラティスはエクササイズとして正しい動作を基本としています。
決められた動作をこなすことで体幹を鍛え、筋力をつけていく運動です。
それに対しヨガは形も大切ですが、柔軟性が必要になってくるポーズが多くあります。
ストレッチのようなポーズを取り、呼吸法を整えていくことで、筋力を鍛えることができます。
双方とも求められるものは異なりますが、ポーズが決まっていることやその形を重んじているところ、体幹を鍛えるのにつながるところ、呼吸法を意識して行うことなど似た要素が多いため、イメージが重なる方も少なくないようです。
では、眠りとピラティス、ヨガの関係性についてはどうなのでしょうか。
ピラティスとヨガそれぞれと眠りの関係
ピラティスとヨガに共通することとしてその呼吸法が挙げられます。
深い呼吸をしたり、小刻みな呼吸をしたりと、常にエクササイズとセットになっている呼吸法があります。
実は呼吸と眠りには深い関係があるのです。
なぜなら、腹式呼吸のような深い呼吸は副交感神経を優位に立たせる効果があるからです。
深い呼吸をすることで副交感神経が刺激され、その副交感神経がだんだんと優位に立つことで心身ともにリラックスすることができ、徐々に眠くなっていきます。
ピラティスとヨガは深い呼吸法を用いる運動ばかりではありませんが、やはり精神をコントロールしていくために、深呼吸を取り入れたポーズが多くなっています。
つまり、眠りにも効果的な運動と言えるのです。
ピラティスとヨガ、どちらが眠りに効果的?
では、ピラティスとヨガ、いったいどちらの方が眠りに良い作用をもたらしてくれるのでしょうか?
その答えは単純で、どちらも眠りに良い効果をもたらしてくれます。
ただし、エクササイズを行う時間とそれぞれの運動量によっては適さないこともありますので、注意が必要です。
就寝前であれば、筋肉を激しく動かす運動は避けることが大切です。
なぜなら、入眠前は日中働いている交感神経から副交感神経が優位になるように切り替える必要があるからです。
そのため、ゆったりした動きの運動が向いています。
たとえばピラティスやヨガにある瞑想やストレッチを主とする動きであれば、リラックス効果が期待できますので、副交感神経が刺激され、スムーズな入眠につながります。
反対に眠気をなくしたいのであれば、ある程度負荷のかかるエクササイズが適していると言えるでしょう。
筋肉を一定量以上動かすことになりますので、副交感神経よりも交感神経が優位になります。
そのことで目覚めが促されると言う訳です。
ピラティスとヨガはその理念も違って全く異なるものと言われていますが、眠りとの関係性を考えてみると、違いはほぼないと言えるかもしれませんね。
エクササイズを行う時間と運動量に注意すれば、ピラティスとヨガは2つとも眠りに良い影響を与えることができます。
では、実際にどんなピラティスとヨガを眠りのために取り入れていけばいいのでしょうか?
眠るためのピラティスとヨガとは?
眠りに関係なくピラティスやヨガに通っている方の中でも、「エクササイズの最中に眠くなってしまう」と言う意見があるほど、効果が期待できる運動です。
ピラティスとヨガの共通点を見ていくことで、取り入れていくべき項目を理解することができますので、一緒に確認していくことにしましょう。
日中にピラティスとヨガで適度な運動を
日中に軽い運動をすることは、良い睡眠につながります。
睡眠はもともと脳と肉体の疲労を回復させる目的でとるものですから、適度な疲れがあった方が、深い眠りにつくことができます。
また、日中の運動で体温を上昇させておくと、睡眠時に体温が下降しやすくなりますので、入眠がスムーズになります。
快眠を手に入れるためにも、日中にピラティスやヨガなどの有酸素運動を積極的に取り入れていきましょう。
自分で続けていくのが難しいと言うのであれば、ピラティスやヨガの教室に通うと言うのもありかもしれません。
ただし通常レッスンなどで行われるピラティスやヨガは睡眠の3~4時間前までに行うようにしましょう。
仕事の後にレッスンに通う場合は、入眠の時間をあらかじめ考えた上で、教室に通う時間を設定するようにしてくださいね。
ピラティスとヨガで血流を上げて快眠
ピラティスやヨガは正しい呼吸法と普段の生活ではあまり使わない筋肉を動かすため、体全体の血流アップに効果があります。
この血流アップは、入眠の助けとなる大切なもの。よく子供は眠くなると手のひらが温かくなりますが、これは体内の熱を外に放出するためです。
手足の末端部分には「動静脈吻合」というものがあり、そこから熱が放出されるため、体温がきちんと下降し、眠くなるのです。
子供は常に血行が良い状態が続いていますので「動静脈吻合」から効率よく熱が放出されスーッと入眠できますが、逆に血行不良などを起こしている場合この「動静脈吻合」が広がったとしても、上手く熱が放出できません。
つまりなかなか眠ることができないのです。
ピラティスやヨガで血流を効果的に上げ、入眠のためのスムーズな体温調節につなげていきましょう。
就寝3時間前に、瞑想、ストレッチを意識したポーズを
入眠前に効率よく、副交感神経の働きを高めることができれば、心身ともにリラックスでき、心地よく眠りに入ることができます。
そのためにも睡眠の3時間前ぐらいに、ピラティスやヨガのリラックスできるポーズを取り入れていくと良いでしょう。
ヨガの場合、あまり体を動かさず、瞑想を重視するポーズなどがありますので、そういったものをいくつか実践してみると良いでしょう。
ピラティスであれば、ストレッチ効果の高いポーズがおすすめです。
ただし、就寝前2時間を切ったら、静かに時を過ごすようにしましょう。
腹式呼吸で深くゆっくり息をして、セロトニンを増やそう
眠りのためにピラティスやヨガを実践するなら、腹式呼吸で深く長く息を吸って吐くポージングをできるだけ多く試してみると良いでしょう。
深く長く、ゆっくり呼吸すると血液中にはいつもより多くの酸素が取り込まれ、同時にゆっくり吐くことで長く二酸化炭素が止まることになりますが、この二酸化炭素の上昇が快眠につながります。
なぜなら、二酸化炭素を増やすことでセロトニンの分泌が増えるからです。
私たちの頚動脈と延髄には二酸化炭素量を感知し、血液の酸性度に反応する化学受容体があります。
運動して二酸化炭素量が増えると息を早くして酸素を取り込もうとしますが、その重要な指令を出しているのがこの化学受容体です。
化学受容体は二酸化炭素が増えたと感じると同時に縫線核にも刺激を与えセロトニンの分泌を促してくれます。
つまり腹式呼吸で自発的に二酸化炭素を増やすことで、セロトニンの分泌が増えると言う訳です。
神経伝達物質の一つであるセロトニンは睡眠ホルモンと呼ばれているメラトニンの合成に欠かすことのできないものですので、セロトニンを増やせばメラトニンの分泌量も増えると言うことになります。
メラトニンがたくさん作られますので、よく眠れるようになるのです。
深い呼吸をするポージングをできるだけ多く取り入れてセロトニン量を増やしていきましょう。
快眠のためのピラティスエクササイズ!
心身をリラックスさせ、快適な眠りを手に入れるピラティスエクササイズを紹介していきましょう。
Cカーブエクササイズ
Cカーブエクササイズは、ピラティスの中でも比較的優しい基本的な運動ですので、誰でも簡単に行えます。
ぜひ快眠のために毎日続けてみると良いでしょう。
その手順を紹介させていただきます。
1.ひざを曲げた状態で、足を肩幅ほどに広げ、手は手のひらを下にして、お尻の横辺りにおきます。
2.床と背中に空間ができないよう注意しながら、ゆっくり息を吐き骨盤を右に傾けていきます。恥骨だけを持ち上げるような感覚で行います。
3.次に息を吸いながら、恥骨、骨盤の順に元の位置に戻してきます。
4.元の位置に戻すことができたら、息を吐き、リラックスします。
5.今度はまた息を吐きながら左側に恥骨と骨盤を倒していきます。
6.息を吸いながら、恥骨と骨盤をもとの位置に戻し、息を吐いてリラックスします。
これを交互に何度か繰り返すだけです。
この時注意することは呼吸を止めることなくゆっくり吸って吐き続けることと、左右の骨盤の位置を同じにすることです。
難しいエクササイズではないので、ぜひ試してみてくださいね。
快眠のためのヨガエクササイズ!
快眠に役立つヨガのポーズと言えばバラーサナ(チャイルドポーズ)です。
その方法をご紹介します。
バラーサナ
1.両足の親指を重ねないように正座をします。
2.正座をしたままの状態で膝立ちまで体を伸ばします。
3.手は天井に向けて伸ばし、その状態で骨盤からお腹、胸の順で、自分の太もも、ひざに体を倒していきます。(手を伸ばした状態がつらい時は手を横においてもOKです。)
4.そのままの状態で深呼吸し、体の力をすべて抜きます。
5.満足できるまで、このポーズを続け、体を倒した順番とは逆に起こします。
この時大切なのは、体の形よりも、深呼吸です。
深く息を吸い、吐いて、心身ともにリラックスさせましょう。
四つん這いの状態からお尻をかかとに近づけ、ポージングしてもかまいません。
自分が簡単にできると思える方法を試してみてくださいね。
また、ヨガの瞑想も快眠のために効果的と言われています。
瞑想とは思考を手放し、何も考えない時間を設けることですが、決まったポージングはありません。
体が緊張していると、心も緊張してしまうため、リラックスできるポーズが理想とされていますので、あぐらなどをかいて背を伸ばして行ってみると良いでしょう。
ただし呼吸法には注意しましょう。
20秒ぐらいかけて深く息を吸い、吐くことを心掛けましょう。
まとめ
ピラティスとヨガはそのルーツも異なり、基本的な考え方も違っていますが、似た要素の多いエクササイズと言えます。
呼吸法を重視してポージングを行う点は「同じかも?」「似ている」と感じる方も多いのではないでしょうか?
そんな2つのエクササイズの共通のスタイルが、快眠には大きく役立ちます。
呼吸法とリラックスできるポージングは副交感神経の働きを促進し、セロトニンの分泌を高めてくれますので、睡眠に高い効果を発揮してくれます。
また、適度に体の筋肉をほぐしてくれるので、血行や体温も上昇し、良い眠りをもたらしてくれます。
ピラティスでもヨガでも自分が好きと思える方で構いませんので、快眠のためにも、ぜひ取り入れてみてくださいね。