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オレキシン受容体拮抗薬とは?作用機序と効果・副作用

  • 最終更新日:2017.10.24
  • 公開日:2017.10.23
オレキシン受容体拮抗薬とは?作用機序と効果・副作用

次世代の睡眠薬として「オレキシン受容体拮抗薬」という睡眠薬が期待されています。

しかしこのオレキシン受容体拮抗薬、従来の睡眠薬と何が違い、どのような効果が期待されているのでしょう。

また、副作用はないのか、そして、そもそも「オレキシン」とはどのような物質で、どのような仕組みによって睡眠へと誘われるのでしょう。

不眠症や過眠症などの睡眠障害に悩まされている方にとって強い味方となってくれるのか、オレキシン受容体拮抗薬の作用機序や効果、気になる副作用なども併せてご紹介していきたいと思います。

オレキシンとは

オレキシンとは、1998年に発見された脳内物質の一つで、覚醒において重要な役割をもつ神経伝達物質でもあります。

オレキシンは視床下部の神経細胞で作られており、興奮性の神経伝達を行ってさまざまな神経細胞を活発にします。

オレキシンには、覚醒している状態を保って安定化させる働きがあり、日中に増加して夜間には減少します。

そのため、通常私たちは昼間には元気に動き、夜になると自然に眠くなるのです。

しかし、オレキシンには感情の乱れや空腹を感じると活発になる特徴もあります。

たとえば、お腹が空いて眠れない、怒りが収まらずに寝つけないなど、これらは覚醒維持物質であるオレキシンの働きによるものと言えます。

つまり、オレキシンとは睡眠と覚醒に大きな影響を及ぼす脳内の物質で、「眠い状態」と「覚醒状態」の切り替えに重要な働きをしているのです。

また、オレキシンは睡眠と覚醒以外にも、感情・疼痛・体温調整・体内時計のリズムなど、さまざまな機能に関係していることが明らかになってきました。

それによって、不眠症や概日リズム睡眠障害などの睡眠障害はもちろん、うつ病や不安障害、摂食障害や肥満などにも効果が得られる薬が開発される可能性も秘めていると考えられています。

 

オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)の種類

オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)の種類

 

オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒に大きく関わる「オレキシン」の働きを弱めることで眠りを促す、不眠症などの睡眠障害に対する効能や効果がある睡眠薬です。

従来の睡眠薬とはまったく違う作用機序の睡眠薬として注目されています。

2014年11月に、オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)は商品名「ベルソムラ」として日本で発売されることになりました。

今のところ、オレキシンに関係する薬の種類としては睡眠薬のベルソムラしかありません。

ベルソムラは、寝つきの悪い「入眠障害」にもある程度の効果が見られますが、とくに有効なのは睡眠途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」です。

 

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」の作用機序

覚醒維持物質であるオレキシンは、神経系のオレキシン受容体と結合することで脳を覚醒させると考えられています。

そこで、オレキシンがオレキシン受容体と結合するのを阻害して、オレキシンの作用を弱めようというのが、オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」です。

脳の覚醒を難しくして、睡眠状態へと切り替わるよう促す働きがある睡眠薬となります。

オレキシンにはAとBの2種類があり、オレキシン受容体にも「オレキシン1受容体(OX1R)」と「オレキシン2受容体(OX2R)」の2種類があります。

OX1RにはオレキシンAが、OX2RにはAとBのどちらも同じように作用しますが、OX2Rの方が影響が大きいと言われています。

ベルソムラは、OX1RとOX2Rの両方を1:1であらかじめブロックしてオレキシンが作用するのを阻止するため、「DORA(両方のオレキシン受容体拮抗薬)」とも呼ばれています。

結果的に、オレキシンの覚醒作用が抑えられ、睡眠状態へ切り替わりやすくなり、自然な睡眠へと導いてくれるのです。

 

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」7つのメリット

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」7つのメリット

 

1,服用したその日から効果がある

ベルソムラは、服用した日から睡眠効果が得られるとされています。

これが、同じく自然な眠りを促すメラトニン受容体作動薬の「ロゼレム」と大きく違う点です。

ロゼレムは安全性に優れるお薬ではありますが、効果が実感できるのに2週間ほどかかると言われています。

しかしベルソムラは、飲んだその日から効果があるという性質を持っています。

副作用がほとんどないのに効果はある、睡眠薬としてバランスの取れたベルソムラは、これからの不眠症治療において重要な役割を持つことでしょう。

 

2,入眠障害と中途覚醒の両方に効果がある

ベルソムラは、なかなか寝つけない「入眠障害」と、夜中に目覚めてしまう「中途覚醒」のどちらにも効果があります。

とくに中途覚醒には有効で、たとえ眠っている途中で目覚めてしまっても、再び眠りにつきやすくなります。

 

3,睡眠の質が良くなる

ベルソムラを服用するとレム睡眠とノンレム睡眠が増加します。

とくに、ノンレム睡眠の中でもリラックス状態である「徐波睡眠(ステージ3と4)」を増やす作用があるので、眠りが深くなり睡眠の質が良くなります。

 

4,耐性や依存性などの副作用がほとんどない

ベルソムラは、薬を飲み続けると身体が慣れてしまって徐々に効果が感じられなくなる「耐性」や、薬に頼りきって抜けられなくなる「依存性」はほとんどないと考えられています。

薬をやめた際の、より強い不眠になる「反跳性不眠」や、禁断症状が起きる「離脱症状」もなかったと報告されています。

 

5,健忘やふらつきがない

これまでのベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系に多かった健忘やふらつきといった副作用がないのは大きなメリットです。

とくに高齢の方が薬を服用した場合、たとえ朝起きた時に薬の効果が残っていたとしても、ふらついて転倒する心配が少なくなります。

ただし、眠気が残っていてふらついてしまうケースは考えられますので注意しましょう。

 

6,方日数の制限がない

ベルソムラは脳に作用することで精神機能に影響を与える向精神薬ではないため処方日数の制限がありません。

ですから、60日や90日といった長期での処方も可能です。

依存性もほとんどないので、睡眠が安定すれば通院回数を減らしたり服用を中止することもできます。

 

7,今までとは違う新しい作用機序の睡眠薬であること

これまでの睡眠薬は強制的に脳を鎮静化させて眠気をもたらしていました。

しかしベルソムラは、脳の覚醒状態を抑えて睡眠状態に切り替えることで眠りを誘う睡眠薬です。

身体の仕組みを利用した作用機序なので、自然に近い眠りの状態に導いてくれます。

睡眠リズムが整いにくい「概日リズム睡眠障害」など、今までの睡眠薬では効果が得られなかった患者さんにも効く可能性があると期待されています。

 

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」のデメリット

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」のデメリット

 

症例数が少ない

ベルソムラは発売されてから歴史が浅いため、症例数が少ないのが欠点とも言えます。

副作用が少ないのに効果はあるとはいえ、この先新たな副作用が出てこないとも限りません。

重篤な副作用が見つかる可能性は低いですが、ゼロとも言い切れないのです。

どの新薬でも同様に言えることですが、症例を重ねていく上でさらに効果や副作用が明らかになっていくことでしょう。

 

悪夢を見ることが多い

ベルソムラにはノンレム睡眠の中でもリラックス状態である「徐波睡眠(ステージ3と4)」を増加させる作用がありますが、同時にレム睡眠も増やします。

レム睡眠時には夢を見やすいため、悪い夢を見る方が多いと言われています。

私たちはレム睡眠でもノンレム睡眠でも夢を見るのですが、レム睡眠の時に見た夢の方が鮮明に覚えている場合が多いのです。

そして、不眠症の患者さんにはストレスを抱えている方が多く、過剰なストレスや不安が悪夢を見させているのではないかと考えられます。

 

グレープフルーツジュースやお酒は控えなければいけない

ベルソムラは主に肝臓のCYP3Aという酵素で代謝されていきますが、医薬品や食品の中にはこのCYP3Aを強く阻害して代謝の邪魔をするものもあります。

代謝されにくくなると、ベルソムラが血液中に長く留まることになり、ベルソムラの最高血中濃度が一気に上がって副作用も出やすくなってしまうのです。

水虫治療などに使われる「イトリゾール」や抗生物質の「クラリス」などが併用禁忌の薬となっていますが、グレープフルーツもCYP3Aを強く阻害することが分かっています。

そのため、ベルソムラを服用している期間はグレープフルーツは控える必要があります。

また、ベルソムラとお酒の飲み合わせもやめましょう。

アルコールが脳機能を抑えてベルソムラの働きを強めてしまうため、精神運動機能の低下につながります。

ベルソムラを服用する場合は禁酒を心がけてください。

 

価格が高い

ベルソムラは、比較的新しい薬であること・従来の睡眠薬とは作用機序が異なり同じような薬がないこと・副作用が少なく安全性が高いことなどから、他の睡眠薬と比べてやや高価です。

また、ベルソムラは処方箋が必要な薬であるため、診察代や調剤料なども加算されます。

ちなみに現在のベルソムラの薬価は、15mg錠が89.1円、20mg錠で107.9円となっています。

ジェネリックが発売される予定も今のところありません。

ただ、薬価は基本的に2年ごとに改定されるので、次回の平成30年4月には多少安くなる可能性もあります。

 

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」の効果と強さ

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」の効果と強さ

 

睡眠薬には、大きく分けて「バルビツール系・非バルビツール系」「ベンゾジアゼピン系」「非ベンゾジアゼピン系」「メラトニン受容体作動薬」の4種類があり、現在使われている処方としてはベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系が主流です。

しっかりとした効果があり重篤な副作用が少ないのが処方される理由ですが、反面、耐性や依存性は大きな問題となっています。

そして2008年、耐性や依存性の心配が少ないメラトニン受容体作動薬が発売されました。

しかし、副作用の心配が少ない良い薬ではあるものの、効果が弱いため使われにくいという印象が拭えません。

ベルソムラは、これらの睡眠薬とは全く違った作用機序です。

メラトニン受容体作動薬と同じく耐性や依存性などの副作用はほとんどない上に、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較しても引けを取らない、しっかりとした効果を持っています。

 

効果の作用時間

あくまで個人差はありますが、ベルソムラは飲んでから効き始めるまでに10~15分、血中濃度が最大になるのに1~3時間、実際の薬効は6~8時間ほどではないかと考えられています。

服用して効果が現れるまでが速いので、寝つきが悪い入眠障害の方に向いています。

また、6~8時間と作用時間が長いので、夜中に目が覚めてしまう中途覚醒の改善に高い効果があると認められています。

寝つきにも熟眠にも充分な効果が得られて副作用が少ない、バランスの取れた万能型の睡眠薬です。

 

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」の副作用

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」の副作用

 

ベルソムラの副作用としてもっとも多いのは「傾眠」で、約20人に1人の割合で現れています。

日中に眠気を感じる方が少なくないので、服用した翌日は車の運転や危険を伴う作業を控えるようにしましょう。

次いで多いのは頭痛や疲労といった副作用です。

他には浮動性めまい、睡眠時麻痺や入眠時幻覚、悪夢など睡眠に関係する副作用が多いようです。

CYP3Aを阻害する医薬品や食品を併用してしまうと、ベルソムラが代謝されにくくなり副作用も出やすくなるので注意してください。

また、耐性や依存性がほとんど無いとはいえゼロではありません。

長期にわたって服用する場合にはさらに注意が必要です。

ベルソムラは2014年に発売が開始された歴史の浅い睡眠薬で、症例数もまだまだ充分とは言えません。

現段階での副作用の報告がすべてではありませんので、今後も副作用については注意していく必要があります。

また、ベルソムラは身体の仕組みを利用する作用機序であるため、睡眠効果の個人差が大きい睡眠薬です。

それは副作用にも言えることで、人によって副作用の出方が大きく違ってきます。

もし自分の身体に合わないようなら、すぐに医師に相談してください。

関連記事
>>睡眠薬「ベルソムラ錠」が効かない場合って?効果と副作用の知識

 

まとめ

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」は、オレキシンの覚醒作用を阻害することで睡眠へと誘います。

 

オレキシン受容体拮抗薬「ベルソムラ」は、オレキシンの覚醒作用を阻害することで睡眠へと誘います。

飲み始めから速い効果を得られ、深い眠りを増やして中途覚醒を改善する働きがあります。

副作用も少ないため、睡眠薬に抵抗がある方でも試してみやすいのではないでしょうか。

入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害で苦しんでいる方は、一度専門の医師に相談してみることをオススメします。

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