
夜驚症、睡眠時驚愕症という言葉を聞いたことがありますか?
名前だけを見るとなんとも恐ろしそうな奇怪な病名ですが、睡眠中に突然狂ったように泣き叫んだり、パニックを起こすという症状です。
大人よりも3~7歳くらいまでの子供に多い病気です。
夜泣きが酷くなったような症状なので、自分の子どもが夜驚症なのではないかと心配するお母さんも多いかと思います。
夜驚症、睡眠時驚愕症の原因と対策についてご紹介します。
この記事の目次
夜驚症(睡眠時驚愕症)とはどんな病気?
子供がすやすやと眠っていると安心していたら、突然大きな声で泣いたり、叫んだり、特には暴れ出したりというパニックを起こしたりするので、お母さんは大丈夫なのかと心配になります。
一般的には3~7歳くらいの小さな子供に多い症状ですが、大人でも夜驚症になります。
夜驚症は、夜中に突然の叫び声で始まることが多いとされています。
その叫び声も、何かよほど怖いことがあったかのような恐怖の叫び声で周りの人はびっくりします。
目を瞑って眠っているのではなく、明らかに目を見開いて起きているように見えますし、激しい呼吸や汗をたくさんかいて、とても怖い体験をしているような感じです。
お母さんが駆けつけて落ち着かせようとしてもなかなか落ち着かずに反応が鈍いのですが、しばらくすると症状が落ち着きまた再び睡眠へ入っていきます。
朝起きてから、昨夜の叫び声のことを聞いても本人はほとんど何も覚えていないという不思議な現象で、いつもどおりの様子に見えるという赤ちゃんの夜泣きや寝ぼけの酷い状態です。
夜驚症はいつ起こる?
夜驚症は夜の睡眠中に起こりますが、発作の起こる時間帯の多くが寝入りの1~2時間の間で起こることが最も多いとされています。
また、睡眠時間のうち前半の3分の1辺りまでが多いとも言えます。
突然起きるパニック症状ですが、多くの場合が、10分以内で治まり、その後は何事もなかったかの様に再び入眠します。
夜驚症の原因
夜驚症はどうして起こるのかということは、実はまだはっきりとは分かっていません。
夜驚症のほとんどは成長途中の子供に多く症状が見られることから、脳の睡眠機能がまだ発達段階にあることが原因しているのではないか、また、覚醒の機能が発達完了する思春期には夜驚症の症状が消えていくので、このようなことも原因に関係しているのではと言われています。
大人は深い眠りであるノンレム睡眠と浅い眠りであるレム睡眠とは定期的に繰り返して眠っています。
深い睡眠であるノンレム睡眠は脳と体をしっかりと休息させますし、浅い睡眠は、体は休息を取っていても脳は起きていると言われています。
赤ちゃんは睡眠のリズムが大人のように整っていないので夜泣きをしたりしますが、それと同様に思春期の頃までの子供は、レム睡眠とノンレム睡眠とのリズムがしっかり整っていません。
睡眠の機能がしっかり構築されていないので睡眠と覚醒との調節、切り替えが上手くいかないことが多いのです。
このことが原因して、睡眠していると思われる状態でありながら、脳の一部が覚醒し興奮するので睡眠時に突然パニックを起こしたかのように泣き叫ぶという現象になります。
一般的に大人は、覚醒する時は、浅い睡眠であるレム睡眠を経て徐々に覚醒しますが、深い眠りであるノンレム睡眠時で脳が可動していない状態のときに覚醒すると、パニックを起こしたような状態である夜驚症になります。
夜中に酷いパニックを起こして、お母さんは非常に心配しているのに、本人は全く覚えていない、自覚がないということが多いのは、脳がしっかり覚醒していない状態で起こったことなので記憶にないということになるのです。
ストレスを抱えていると夜驚症原因になる?
昼間に酷くお母さんに叱られたり、嫌なことがあると夜の睡眠時に泣き叫ぶということが多いと感じたことはありませんか?
子供が夜中に泣いたり、わめいたり、暴れたりというようなパニックを起こす時は、前の日に嫌なこと、ストレスがかかること、とても怖い思いをしたことが原因して起こる場合が多くあります。
心理的にストレスを抱えた子供は、夜驚症になることが多いということが言えるかも知れません。
大人になると睡眠をコントロールする機能が完成するので夜驚症がなくなるということが多いのですが、子供は大人に比べて夜驚症の原因となる恐怖体験や不安、ストレスを感じやすいということが関係しています。
大人には大したことではなくても、子供にとっては非常に大きなストレスとなることが多いと言えます。
昼間に怖い話を聞いたり、誰かに意地悪されたり、強く緊張することがあったり、逆に大興奮するくらい楽しいことがあったというときも夜驚症の引き金になりやすくなります。
子供でストレスを抱えていたり、強い恐怖体験をしたり、非常に緊張させたり、大きな不安に囲まれたりしている場合は、夜驚症になるリスクが高くなりますので注意しましょう。
夜驚症は遺伝も関係ある?
夜驚症には遺伝子も関係していると言われています。
研究はまだ途中段階で具体的な遺伝子は見つかっていませんが、カナダの研究チームの報告によると、ほぼ同じ遺伝子を持っている一卵性双生児のほうが、二卵性双生児よりも二人ともが夜驚症になる可能性が明らかに高いということが報告されています。
遺伝子的な要因があると同時に後天的な環境的な要因で夜驚症になることも多いということも分かっています。
夜驚症の対策
子供の場合は経過観察
夜驚症は思春期を迎えるころには、自然と治るというケースがほとんどです。
これは睡眠機能が未発達であったところが大人になるに連れて完成するからであると考えられます。
このため、夜驚症であってもゆっくりその子供の成長を待って自然治癒するというのを見守る、経過観察法をとる場合が多いです。
子供が夜中に突然パニックになるので、びっくりしたり、心配になって医療専門機関を受診するお母さんも多いかと思いますが、夜驚症という病名は付いても、投薬などをせずに経過観察になる場合が多いようです。
治療をせずに経過観察をしているというのはお母さんたちには不安になるかもしれませんが、子供が夜中にパニックになっても、無理やり起こしたり、暴れないように押さえつけたりしないようにしましょう。
また、激しく動き暴れる場合は怪我をしないように布団の周りを片付けたり、窓から落ちないように鍵を掛けたりして環境をしっかり整えましょう。
毎日、夜驚症でパニック症状があると子供もしっかり睡眠できませんし、親も心配で眠れなくなります。
子供のことを思うあまり親は心配になりますが、子供の前では心配しているという態度を取っては逆効果です。
何事もないような雰囲気作りが大切です。
ストレスを掛けないことも大切ですが、その為に子供がしたがることを先回りして止めさせたり、興奮させないために旅行やレジャーを中止する必要もありません。
子供が悪いことをしたらしつけのために叱ることも止める必要はありません。
あくまでもいつもと同じ、普段どおりでよいのです。
深刻な症状のときは、小児科や精神科などを受診して、投薬して症状をやわらげたり、カウンセリングなどを受けることをおすすめします。
大人の場合
睡眠機能が完成していると思われる大人が夜驚症になる場合は、ストレスなどの心理的要因が多いと考えられます。
自分でストレスや不安、恐怖の原因が分かっているときはストレスの原因をなるべく無くす方法を見つけることが大切です。
思い当たる原因があるならば、できるだけその要因を軽減するようにしましょう。
自分では自覚のないストレスが原因でパニックを起こしているかも知れませんので、精神科や睡眠外来のある病院を受診してしっかり治療を受けるのもよいでしょう。
大人が夜中に暴れたり、大声を出すと周りもびっくりしますし、体をバタバタさせたときに怪我をするかも知れませんので部屋の環境をしっかり整えることも大切です。
西洋医学的な投薬
夜驚症として精神科や睡眠外来で診断が下っても、余程のことがないかぎり経過観察ということになり、投薬は一般的にはしません。
大人の酷い症状には睡眠薬などを処方する場合もありますが、特に子供の場合は発作を起こさないために、不眠症に用いる睡眠導入剤や抗不安薬は安全性が確保されていないという観点からも、薬物投与はほとんどの場合されません。
東洋医学的な投薬
夜驚症のパニックは東洋医学、特に漢方医学で言うところの「肝」が大きく関係しています。
「肝」と言っても肝臓が悪いわけではなく、漢方の「肝」とは、精神や感情をコントロールし安定させるとされています。
「肝」が弱っていると精神的に不安定になったり、ぐっすりと眠る事ができない睡眠障害になったり、体の痙攣にも繋がります。
また、「肝」と共に「腎」への配慮も必要となります。
「腎」は人間の成長や生殖能力に関わります。
人間の体において、「肝」と「腎」は両方とも相互に関係しているので大切とされています。
特に「肝」は夜驚症に関係があり、「肝」が弱ると精神的なストレスに耐えられなくなるのです。
このため、夜驚症の治療として漢方薬を用いる場合、「肝」をいたわり、回復させることを重要視します。
また、「肝」か弱くなると肝に貯められた血が足りなくなります。
この血が足りないと精神的に不安定になり、寝ていても悪夢にうなされたり、熟睡できないということに繋がります。
血を補給するために、用いられる漢方薬として「当帰」「芍薬」「酸棗仁」「竜眼肉」というものが使われ、精神的な不安を和らげて熟睡できるようにします。
また、血を減少させないために補血薬として地黄、芍薬、当帰、酸棗仁、などを使う場合もあります。
このほかにも漢方薬は個人それぞれの症状なのに細かく対応しているので漢方医の要る薬局などに相談してみましょう。
どの程度の症状で専門機関を受診するべき?
夜驚症であることはうすうす分かっていても、どの段階まで行ったら専門の医療機関を受診する必要があるのかということがよくわからないと思います。
例えば、毎日夜になるとパニックを起こし、家族が心配で眠れないという場合や、一晩のうちに何度もパニックを起こしたり、一度パニックになると10分以上治らないという程度も問題です。
また、夜驚症で徘徊のように、外に出歩いたりする場合も危険です。
また、子供などは学校行事でどうしても宿泊が必要になる場合は、その症状が原因で宿泊に抵抗があったり、不安があるときは一時的に薬を処方してもらうことも必要ですので専門機関を受診しましょう。
子供の場合は、小児科か精神科などの外来へ、大人の場合は、精神科や睡眠外来のある病院や、内科などでも対応してくれる場合もあります。
まとめ
夜驚症は一般的には睡眠のメカニズムが発達段階にある3~7歳くらいの子供に起こることが多い病気です。
睡眠をコントロールする機能が未発達であるために睡眠と覚醒のタイミングが合わずに、突然泣いたり、暴れたりするのですが、思春期のころになると大体の人の症状はおさまります。
夜驚症は専門機関を受診してもほとんどの場合が経過観察で投薬などの具体的な治療は行いません。
しかし、毎日酷いパニックが起こり本人も家族もゆっくり眠る事ができない、一晩に何度もパニックを起こし、症状が10分以上治まらないというような時は精神科や睡眠外来のある病院に相談しましょう。
子供の場合は小児科でも大丈夫
です。
夜驚症はストレスも大きく関係しています。
心当たりのある場合は、ストレスの原因を軽減するように心がけましょう。