NHKきょうの健康 睡眠の悩み「これで解決 睡眠薬を正しく使う」番組内容とまとめ
- 最終更新日:2017.05.02
- 公開日:2017.04.27

2016年1月13日(水)放送
<スタジオに登場した専門家>
三島 和夫(みしま・かずお)
国立精神・神経医療研究センター 部長
専門:精神科、特に睡眠の治療や研究
経歴:1987年秋田大学医学部卒業
放送のテーマは、不眠症の治療で使われる「睡眠薬の種類」と「効果的な使い方」についてです。
睡眠薬にはどのような種類があるのか?
また、それぞれの睡眠薬の特徴や、どのように使えば効果的なのか?
番組内容の概要と、気になる症状やワードについて更に調べたことをまとめてみました。
この記事の目次
睡眠薬が効かない?不眠症に効果的な睡眠薬の使い方とは?
一定期間にわたり、不眠の状態が続いてしまうと健康にも大きなデメリットとなります。
少しでも体調を回復させるために、眠るために、睡眠薬を服用していると言う方も多いと思います。
睡眠薬には様々な種類があり、症状や健康状態などに合わせ病院などで処方されます。
ですが、不眠を改善するために、睡眠薬を服用しているはずなのに、効果がないと感じている方も実は多いようです。
睡眠薬を効率よく使用していくためには、正しく睡眠薬を使用していく必要があります。
ここでは、そんな効果的な睡眠薬の使い方について見ていくことにしましょう。
睡眠薬の種類について
まずは、自分の使用している、これから使用していく睡眠薬について知ることが大切です。
睡眠薬と呼ばれているものには大きく分けて4つの種類があります。
それぞれについて詳しく紹介していきましょう。
ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系は脳の興奮状態を抑えるといった働きを持っており、日本国内ではおよそ50年前から睡眠薬として処方されています。
持続時間に関しては短時間タイプのものから長時間タイプのものまでがあり、とても幅広く使用されています。
ただし、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、服用した後でフラフラしてしまうなどといった副作用がある他、一度服用し始めると依存することが多く、やめにくくなってしまうといったデメリットがあります。
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非ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はふらふらしてしまうような副作用が大きく緩和されており、比較的安全性の高い睡眠薬と言えます。
不眠を改善するための様々な作用に特化しているため、服用を始めてから短期間でしっかりとした効果を得ることができるというメリットを持っています。
メラトニン受容体作動薬
メラトニンは睡眠ホルモンとも呼ばれていますが、メラトニン受容体作動薬は、こちらの睡眠ホルモンを体内で分泌させてくれる働きと分泌のバランスを整えてくれる作用が期待できる薬です。
睡眠サイクルが乱れている方や今まで夜型の生活をしていたという方にはとても効果のある薬となっています。
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンは本来眠りから覚める際にしっかりと目を覚ますための働きを持つホルモンです。
このオレキシンが多く分泌されてしまうと不眠の症状が長く続いてしまいます。
オレキシン受容体拮抗薬はオレキシンの働きそのものを抑制し、遮断する作用を持っており、できるだけ眠りやすい状況に傾けてくれます。
オレキシン受容体拮抗薬は2014年に日本でも使用されるようになり、4種類の睡眠薬の中で最も新しい睡眠薬です。
睡眠薬が効いていないと決めつけないことが大切
処方された睡眠薬を服用していても、効果が実感できないという方はいませんか?
睡眠薬を飲んでいるにもかかわらず、効果が実感できないまま長期間にわたって不眠に悩まされてしまうと、そこでのストレスや健康被害も更に大きなものとなります。
「睡眠薬が効いていないのでは?」と感じている方も少なくないとは思いますが、実は睡眠薬そのものがダメという訳ではなく、他に原因が存在しているケースがあるのです。
睡眠薬イコール絶対に眠れる薬と言う訳ではありませんが、万が一「睡眠薬の効果を十分得られていないのでは?」と感じるなら、他の原因についても一度見直してみましょう。
睡眠薬が効かない理由を探ってみよう!
睡眠薬を服用しているにもかかわらず、ぐっすりと眠ることができないのであれば、以下のような原因が考えられます。
うつ病
精神的に不安定な状態が続き、様々なホルモンのバランスが乱れている場合、睡眠薬を用いて眠るように促しても、なかなか効果が表れないケースがあります。
うつ病になると交感神経と副交感神経のバランスが大きく乱れてしまうため、これが原因となり睡眠薬を服用していても、不眠が続いてしまいます。
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睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群に陥っている方は自分で症状を把握することは難しいものです。
誰かに指摘される、もしくは細かな検査をして睡眠中のリズムをしっかりと把握する必要があります。
知らず知らずのうちに睡眠時無呼吸症候群に陥っていると眠りが浅くなってしまうため、ぐっすりと眠れる時間が少なくなります。
この睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合、睡眠薬を服用しても効果を感じ取れないことがあります。
夜中に何度も目が覚めてしまったり、朝起きた時に体のだるさが抜けておらず起き上がるまでにとても辛いといった不眠の症状に悩まされることになります。
痛みや痒みなどの不快感
眠っている間に体の一部に痒みを覚える、または痛みを覚えるなどといった理由から目が覚めてしまう事があります。
自分の中では無意識であっても、このような不快感があると眠りは浅くなり、意識がないまま身体を掻いていたり、痛みに耐えようとする機能が働きます。
このような影響から、熟睡することができないまま朝を迎えてしまうケースや夜中に目が覚めてしまい、その後眠りにつけないといった不眠の症状を抱えてしまうのです。
頻尿
頻尿で夜中に何度もトイレに起きてしまう方の場合、お手洗いに行く度目が覚めてしまうため、その後再び眠りにつくまでの時間がどうしても長くなります。
体と脳をしっかり休めるための睡眠中に何度も起きてしまうことは、安眠している状態とは言えません。
頻尿の症状があるケースでは睡眠薬の効果も半減してしまいます。
薬の副作用
睡眠薬と併せて他の薬を服用している場合、何らかの形で薬の副作用が出ているケースが考えられます。
薬の副作用には非常に様々なものがありますので、神経や脳を興奮させてしまったり、蕁麻疹などが出て体に痒みを覚える症状を伴うことがあるのです。
こうしたケースでは、睡眠薬がうまく作用してくれません。
他にも吐き気や頭痛、発汗などの副作用も不眠の原因となることが考えられます。
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睡眠薬は勝手に中止してはいけない
睡眠薬を服用していて効果を感じない場合でも、自己判断で薬を中止してしまうようなことは避けましょう。
それまで睡眠薬を服用していた体は、ある程度薬に慣れていることが多く、その最中でドクターの指示なくお薬を突然中断してしまうと、体内のバランスが崩れ、さらにひどい不眠の症状を引き起こすことがあるからです。
また健康面でも様々な支障が出てくることがありますので、中止したいと思った場合には必ずドクターの指示を仰ぎましょう。
睡眠薬の副作用について
「睡眠薬に副作用があるのか?」といった不安は、誰もがお持ちではないでしょうか。
それぞれの薬によって確認されている副作用はバラバラです。また副作用は個人差がありますので、全く副作用がないという方もいれば、ひどい副作用で服用を続けることができないという方まで様々です。
万が一、睡眠薬による副作用が出ているのかもしれないと思った場合には、まずドクターに相談しましょう。
その上で睡眠薬を変更したり、減量したりなどの方法を選択すると良いでしょう。
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睡眠薬が効かないのは耐性ができてから?
睡眠薬を服用してしっかりと眠ることができていても、突然のように睡眠薬の効果を実感できなくなってしまうことがあります。
こう言ったケースでは、睡眠薬に対する耐性がついてしまったためと思ってしまいがち。
もちろん長期間にわたり睡眠薬を服用する事で、ある程度の耐性ができてしまうこともありますが、そうとは限らない場合もあるのです。
その日食べたものや、一日の過ごし方によって薬の効き目は異なると言われています。
一日、ニ日だけ睡眠薬の効きが悪いという場合には、すぐに耐性がついてしまったと決めつけるのではなく、生活を見直してみることから始めてみましょう。
眠る前に興奮作用を持つカフェインを摂取してしまった、アルコールを摂取してしまったなどのケースでは薬の効き目にも大きな影響が出てしまいます。
また、女性の場合、生理周期によってホルモンバランスが変わるため、人によっては生理周期に合わせて睡眠薬の効き目がない、または効き目が弱くなったと感じることも多いようです。
一週間からニ週間にわたり薬の効き目を感じられなくなってから、耐性を疑うことが大切です。
その場合、必ずドクターに相談したうえで睡眠薬の見直しを行いましょう。
睡眠薬がないと眠れなくなるのは嘘?
一度でも睡眠薬に頼ってしまうと体は睡眠薬がなければ眠れないようになると言われる事があります。
しかし、これは断言できるものではありません。睡眠薬というのは体を熟睡させ、休息を取らせることを目的としています。
不眠の状態が続いてしまうケースでは、まずは健康を優先させる必要があるため、睡眠薬を服用することになりますが、食事内容の見直しや生活習慣のバランスを整えることで、最終的には睡眠薬に頼らずに熟睡できるような状況を作ることも可能です。
睡眠薬に対し、一度飲んだら手放せなくなるなどと誤った認識を持つことは避けましょう。
熟睡の実績を積み重ねるための睡眠薬
睡眠薬を服用することは、不眠の状態から抜け出すための第一歩と言えます。
もちろんその他の方法も取り入れていくことが重要なのですが、睡眠薬を服用して「しっかりと眠れることを体に覚えさせる」ことがポイントです。
睡眠薬を服用した上で、昨日も眠れた、今日も眠れた、といった実績を積み自分自身の体がこれを覚えることで自然に眠れる状況へと近づけていくのが睡眠薬なのです。
積み重ねた経験で、体がしっかりと眠れることに慣れるまで睡眠薬の服用を続けることが大切です。
まずは睡眠薬を用いてぐっすりと眠り、体の疲れを取り除いていくことを優先させましょう。
健康を取り戻すことによってホルモンバランスなどが整い、薬に頼らなくてもしっかり眠れるようになっていきます。
まとめ
睡眠薬は正しい知識を持ち、きちんと服用していくことで良質な睡眠を与えてくれます。
誤った認識のまま自己判断で睡眠薬の服用を中止してしまうことや、過剰に摂取してしまうことなどは避けましょう。
一度睡眠薬に頼ることがあっても、その後体調が改善されることで最終的には睡眠薬に頼らず眠れる日々を目指すことができます。
睡眠薬についての不安や疑問はドクターに相談するとともに、お薬を処方する薬剤師さんにも相談してみると良いでしょう。
また、睡眠薬を服用していくにあたり、禁止事項や注意事項についても、しっかりと理解し活用していきましょう。