
睡眠薬ネルボンはベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
1963年に第一三共株式会社から発売が開始された向精神薬です。
不眠症の治療に処方されたり、麻酔前やてんかんの治療にも投与される薬です。
主成分はニトラゼパムでジェネリック薬品としてはネルロレン錠やニトラゼパム錠などがあります。
脳の神経の過剰な興奮を抑えることで不安や緊張を和らげたり、寝つきをよくしたり、睡眠を長時間持続させる働きがありますが、副作用があるので使用する場合は注意して服用することが大切です。
この記事の目次
ネルボンの特徴
睡眠薬ネルボンはベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
一般名をニトラゼパムと言い、第一三共製薬から発売されています。
主成分であるニトラゼパムを同一にした塩野義製薬のベンザリン錠という薬もあります。
ネルボンはベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中では比較的安全性が強く、効き目もあるので不眠症の治療薬として処方されることが多い薬です。
また、てんかんや痙攣発作を抑えるために処方されたり、麻酔前の投薬に服用することもあります。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬ですので、脳内のベンゾジアゼピン受容体にネルボンが結合することによって、脳内の神経伝達物質であるGABAの働きを促進します。
GABAは脳内の神経細胞の働きを抑える働きがあります。
脳の機能を低下させることによって眠気が出てきます。
睡眠障害の中でも途中で目が覚めてしまうという中途覚醒の症状の人や、朝方早くに目が覚めてそれから眠れなくなるという早期覚醒の人が服用することで睡眠障害を緩和します。
ネルボンの用法
睡眠障害でネルボンを服用する場合、通常成人は1回5~10mgを眠る前に服用します。
手術前にネルボンを処方する場合は同量を眠る前や手術前に服用します。
就寝前に飲み忘れた場合は、朝までに起きてしまった場合でもそこから改めて服用するのは止めます。
これはネルボンの薬の効果として、夜中に飲むと効果が翌朝まで続いてしまうので、朝起きたときにすっきり起きることができなかったり、眠気が残ったり、倦怠感が出る可能性があるからです。
特に仕事をしている人は夜中に服用すると眠気が残りますし、注意力、集中力、運動能力が低下しますので危険です。
車や自転車などを運転する人は非常に危険です。
飲み忘れてもその日は飲まないようにして翌晩また眠る前に飲むようにしましょう。
医師の指示がない限りたくさんの量を飲んだり、回数を増やしたりして服用することはやめましょう。
ネルボンの強さは?
睡眠薬の強さはその作用時間によって分類されています。
分類の基準についてまずは見ていくことにしましょう。
睡眠薬の分類は以下の4種類に分けることができます。
睡眠薬の強さ | 出現時間 | 持続時間 |
---|---|---|
超短時間作用型 | 10~15分 | 2~4時間程度 |
短時間作用型 | 15~30分 | 6~10時間程度 |
中間作用型 | 30分 | 20~25時間程度 |
長時間作用型 | 30分~1時間 | 24時間以上 |
持続時間は半減期を基準に計算しており、薬の濃度が半分になるまでかかる時間を示しています。
その薬の強さを知る目安となりますが、ネルボンはこの中でも中時間型に分類されています。
個人差はありますが、ネルボンは血中濃度がピークに達するまでの時間は2時間、血液中の成分が代謝により半分になるまでの時間が24時間ほどになります。
血中濃度がピークに達するまで2時間となっていますので、即効性はありません。
そのため就寝直前に飲んでも入眠するまでに効力を発揮することは難しいと考えられます。
しかし、作用時間は24時間とある程度効果の持続時間がありますので中時間型ではなく、長時間型に分類される場合もあります。
夜中に何度も目覚めてしまったり、早朝に起きてしまってそこからなかなか再び眠ることができないという症状の睡眠障害の人が服用することで長時間ぐっすり眠ることができるようになります。
長くぐっすり眠りたいという人には非常に向いている薬ですが、長い半減期があるので服用する量と時間を間違えると日中まで効力が強く残ってしまうことがありますので、注意が必要です。
睡眠薬全体から見てネルボンの薬の強さは普通ぐらいと考えられますが効果を強めたい場合は服用量を増やすことになります。
服用量を増やすと効果が強くなりますが、その分副作用もリスクも大きくなります。
このため、服用量に関しては担当の医師と病状をよく相談しながら決めるようにしてください。
決して自己判断で服用方法を変えないようにしましょう。
ネルボンの効果とは?
中途覚醒・早期覚醒型の睡眠障害の人向き
睡眠障害を大きく分けると、寝つきが悪いタイプと夜中に何度も目覚めてしまい、なかなかぐっすり眠れないというタイプがあります。
ネルボンは後者である中途覚醒型や、早期覚醒型の睡眠障害の人に適している睡眠薬であると言えます。
ネルボンは就寝前に飲んでも即効性がないため寝つきが良くなるわけではありません。
半減期に達するまでの時間が長時間型と同じぐらい長いので、日中にまで眠気が残ってしまうかもしれません。
そのような場合は、担当の医師に相談してネルボンよりも半減期が短い中時間型の睡眠薬に代えてもらいましょう。
本来はぐっすり眠れないという人にはネルボンよりも半減期が短いリスミーやレンドルミン、ロラメット、エバミールなどを処方してもらい様子をみます。
もしこれらの薬でもまだぐっすり眠れないという場合は、半減期が長いネルボンに切り替えるという方法が一般的です。
抗不安薬の効果
睡眠障害になる多くの場合、何か心配事があったり、不安なことがあったりすることに原因があることが多いですが、ネルボンは脳内にGABAを増加させて脳内細胞の働きを鈍らせることで、不安な気持ちをやわらげます。
緊張感で張り詰めた神経を休めることを助ける働きがあるということです。
ぐっすり眠るために就寝前にネルボンを服用して眠れても、起きるとまた不安になるという人にとっては半減期までの時間が長いネルボンを服用すると、起きても薬の効果があることで日中の不安や緊張を改善してくれます。
抗てんかん薬でもある
ネルボンはてんかんの治療薬としても処方されます。
てんかんというのは強い発作があるということは知っているという人がいるかもしれませんが、てんかんの発作は情報伝達のための電気信号が突然乱れて脳内に情報が伝えられなくなったり、身体に命令が効かなくなり体が制御不能になることによって起こります。
脳内の興奮が強く働いたり、興奮を抑える神経の力が弱まって激しく電気信号が乱れます。
ネルボンは脳内のGABAにより興奮している神経を抑えることでてんかんの発作を予防します。
抗てんかん薬としての働きはネルボンだけでなく、ベンゾジアゼピン系のいろいろな薬に効果が期待できます。
長期間の処方ができる
睡眠薬は長期間服用することで依存症になったり、過量服用する危険もあるので医師が処方する場合でも30日分の処方が限界ですが、ネルボンはてんかんの治療薬ということもあるため、90日間の処方ができます。
寝付きやすくなる
ネルボンは入眠に対しては飲んですぐに眠気が出ると言う即効性はありませんが、就寝してから徐々に効果が出てきます。
一旦睡眠の状態に入ると長時間効果が持続します。
毎晩ネルボンを服用して眠ると、徐々に身体の中にネルボンの成分が蓄積されて眠りやすい状況を作ります。
このため、最初は寝つきにはあまり効果が感じられなかった人も徐々に入眠しやすい状態になります。
ネルボンの副作用
日中に眠気が残る
ネルボンは中時間型の睡眠薬ですが、半減期までの時間が長時間型の睡眠薬と同等にあるので夜は長時間眠れてよいのですが、朝になっても眠いという状態になってしまいます。
このため、起床時間なのに起きられない、仕事をしていても集中できず注意力散漫になるという問題点があります。
日中まで睡眠薬の効果が残ることを持ち越し効果といますが、個人差もありますが特に高齢者は肝臓や腎臓の機能が低下しているので薬が身体に残りやすく、朝起きてもすっきり起きることができません。
また、睡眠時間が短いという人は日中に眠気が強くなるのでネルボンは適していません。
ネルボンよりも半減期の短いロラメット、エバミール、リスミー、サイレース、ロヒプノールなどに処方が代えてもらうか、服用量を減らすということで対応することもできます。
主治医に睡眠薬の効果等をしっかり相談して、薬の種類や服用量を調整してもらうことが大切です。
睡眠の質が低下する
睡眠には浅い眠りのレム睡眠と深い眠りであるノンレム睡眠があります。
ベンゾジアゼピン系のネルボンは長時間眠る事ができますが、その睡眠としては浅い眠りであるレム睡眠が多くなり、深い眠りであるノンレム睡眠の時間が減ると言われています。
人間が朝すっきりと覚醒するためには長時間眠る事も大切ですが、それよりも最初の深い睡眠であるノンレム睡眠でいかに深くぐっすりと眠ることができるかということが一番大切です。
このためネルボンを服用して長時間眠ってもなかなかすっきりとしない、疲れが取れないということがあるのはネルボンによる睡眠によって睡眠の質が低下していることが原因です。
眠っているのに実際には疲れが取れていないというのは、本人にとって非常に不安が大きくなりますので、薬の種類を変えてもらうのも良い改善方法でしょう。
立ちくらみ、ふらつき
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には催眠作用の他にも、筋弛緩作用、抗不安作用、抗てんかん作用などがあります。
睡眠効果だけが必要だとしても、筋肉の緊張を和らげてしまうので足がふらつくことで転倒するということも良くあるので注意が必要です。
夜中や朝に起きてトイレに行こうと立ち上がろうとすると立ちくらみを起こしたり、ふらつくことで転倒して骨折するという危険もあります。
一時的な健忘
ネルボンはその効果が長時間続くので自分では意識がないのに人と話したり、歩いたりします。
意識がもうろうとしているなかで行った行動は忘れてしまうので一過性の健忘になることがあります。
睡眠薬での睡眠は、薬の効果で睡眠状態に入っているので脳を何となく眠らせている状態になります。
脳がはっきり覚醒しないので記憶に残りません。
健忘の状態になってしまう場合は、主治医によく相談してネルボンに似た睡眠薬のユーロジンやドラールというものに処方を変えてもらうか、服用量を減らしてもらうかして対応しましょう。
決して自己判断で服用方法を突然変えないように注意してください。
依存性や耐性
長期間ネルボンなどの睡眠薬を服用していると、その薬なしでは眠れないという依存性があります。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性が少なくなったとは言え、全く依存性がなくなったわけではありません。
また、同じ量のネルボンを服用していても長期間服用することで徐々に耐性が付いて効果が下がってきます。
ネルボンは睡眠薬の強さとしては普通程度ですが、医師の指示通りに服用していないと依存性や耐性があり危険ですので気をつけましょう。
その他の副作用
ネルボンの他の副作用として、頭痛、興奮、不快感、不機嫌、血圧低下、過剰反応、呼吸抑制、口が渇く、食欲不振、便秘、嘔吐、下痢、発疹、頻尿、発熱、夜尿などがあります。
ネルボンが効かない場合
ネルボンは食事と一緒に服用すると、その効果が通常の30パーセントにまで低下すると言われていますので、食事の時間にネルボンを服用するのは止めましょう。
また、ネルボンを服用していても効果があまり感じられない場合は、主治医ともう一度相談して他の睡眠薬と変えてもらいましょう。
ドラールなどもっと長時間効き目がある睡眠薬に変えるのも良い方法ですが、薬の効果がしっかりと実感できるまでやはり1週間ほどの時間は必要ですので、しばらく様子を見ることも大切です。
ネルボンはこんな人におすすめ
ネルボンは睡眠障害の中でも特に夜中に何度も起きてしまう中途覚醒の人や、朝早くに起きてしまう早期覚醒の人に向いています。
ネルボンを1週間ほど服用していると、身体の中に成分が蓄積されることで入眠もスムーズになっていきます。
しかし、効果が長時間に渡ってあるため朝にしっかり覚醒できないこともあるので、仕事を持っている人や運転する人には向かないかもしれません。
まとめ
ネルボンはベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
ゆっくり作用する睡眠薬となっているため、入眠障害などには向いていませんが、飲み続けることで、睡眠障害の改善ができます。
副作用は比較的少ない安全性の高い睡眠薬であるため、長期間使用することも可能ですが、自己判断で使用量を増やしたり、中断してしまうと副作用が出ることあります。
必ず医師の指示に従って容量、用法を守るようにしましょう。