
睡眠負債をためない方法として「昼寝」は有効です。
また、ここ数年で、誰でも手軽にできる能率アップ法としても「昼寝」が良いという事実が広まっています。
昔の日本人の感覚からすると「仕事中にサボって寝るなど言語道断」というところなのですが、最近になって、昼寝をすることによって得られる効果が改めて認められることになり、多くの研究機関や教育現場でも昼寝が取り入れられています。
海外では昼寝が義務付けられている都市や企業もあるようです。
しかし、昼寝も正しい方法でしなければ逆効果になってしまう場合もあります。
昼寝をすることがなぜ良いのか、どのような効果が得られるのかを知り、正しい方法とベストなタイミングでより効果的に昼寝をしましょう。
人はなぜ昼に眠くなるのか?
人間は本来、夜に寝て昼間は活動する生き物です。
それなのになぜ、昼になると眠くなってしまうのか、まずはその仕組みを知りましょう。
体内時計による眠気
私たちはそれぞれ、身体の中に体内時計を持っています。
これは、大昔から遺伝子レベルで受け継がれてきた睡眠リズムで、夜中の22~26時と昼間の12~16時には眠くなるようプログラムされているからです。
そのため、昼間の居眠り運転事故が多いのは14時というデータもあります。
更にこの時間は睡眠によって回復する効率が高いということが明らかになっており、身体・脳の回復や修復のために眠くなるのは本能とも言えるのです。
脳の活動低下による眠気
昼食で体内に食べ物が入ると、消化するために胃や腸に血液が集中します。
すると脳への血流が少なくなって、脳の活動が低下するため眠気が起きます。
また、食べ物が消化されることで血糖値が上がり、体内の睡眠を促す物質が活発になり、さらに眠気を誘うことになります。
睡眠不足または睡眠障害による眠気
日本人は睡眠時間が少ないと言われています。
そもそも普段から充分な睡眠が取れていなければ、昼食を食べて満腹になった時に眠気が来るのは無理からぬことです。
睡眠時間の不足は睡眠の質を上げることで補っていきましょう。
また、慢性の睡眠不足や不眠症から睡眠障害になって眠気に襲われるケースも考えられます。
夜に質の良い睡眠を取るのが難しい方は、時間に関係なく急に眠気が来ることもあり、その場合は早めに専門医の診察を受ける必要があります。
昼寝が良いと言われる理由は?
昼寝が良い理由は、なんといっても昼食後に襲われる猛烈な眠気から開放されるからです。
どんなにコーヒーを飲んで眠気をごまかしても、根本的な解決にはなっていません。
そんな時に短時間でも昼寝をすれば、脳も身体もリフレッシュして眠気を解消することができます。
また、私たちの脳は、1日の中で午前中が一番フル回転して、時間が経てば経つほど脳の機能が衰えていくのだそうです。
脳を働かせるには多くのエネルギーを要するので、午後まで午前中と同じように機能するのは難しいということです。
人間の記憶力は午前中でピークを迎え、昼の12時を過ぎると下降していき、夜にはピーク時の半分程度にまで下がってしまいます。
ですが、ハーバード大学のサラ・メドニック博士の研究によれば「30分の昼寝で午後から夜にかけての記憶力が大幅に向上する」とのことです。
海外には20分で効率良く仮眠をとる「パワーナップ」という方法があり、眠気を解消するだけでなく、仕事の効率アップや心身の健康のためにも大変有効だと定番になっています。
NikeやGoogleがパワーナップを取り入れているのは有名な話ですが、日本でも見習ってパワーナップを採用している企業が出てきているそうです。
昼寝をすることで得られる6つの効果とは?
1,睡眠負債をためない
毎日寝不足が続くと少しずつ疲れが溜まってきて、身体の負担が増えていくのが睡眠負債です。
休日に寝だめしても同じ分だけ睡眠負債を減らすことはできませんが、毎日10~30分程度の昼寝は睡眠負債を減らす効果はあります。
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2,記憶力・集中力・認知力が向上する
脳は、眠ることで記憶の整理や定着を行います。
たとえそれが短時間の昼寝であっても、脳は寝る前に入ってきた情報をきちんと整理して記憶として残しておくのです。
そして起きた時には脳はリセットされていて、新しく入って来る情報を整理していく余裕も生まれ、処理能力が高められることになります。
記憶力や集中力が上がるだけでなく、NASAでは認知能力が40%アップするとの研究結果も報告されています。
3,疲労回復効果がある
昼寝には、疲れた脳と身体を癒す疲労回復効果もあります。
夜の睡眠に比べれば浅い眠りではありますが、脳も身体も休息モードに入ることで、短時間とはいえ充分に疲れを癒すことが出来ます。
それどころか、昼寝をすることで得られる回復効果は、夜の睡眠の約3倍に値するとさえ言われるほどです。
適切な時間での適度な昼寝は、精力的な午後を過ごすための頼もしい味方になってくれることでしょう。
4,ストレスが軽減される
仕事、家事、育児、どんな場面でも何かしらのストレスはつきものです。
慢性の睡眠不足からくるストレスなどもあります。
物事がうまく運ばずにイライラすることもあるでしょう。
そんな時は昼寝することをオススメします。
睡眠はストレスの根源から一時的であれ開放してくれます。
昼寝によって脳がリフレッシュすることで、気持ちも多少落ち着いて楽になります。
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5,心臓疾患にかかるリスクが低下する
昼寝には高くなった血圧を下げる働きもあるため、血圧の上昇が原因の一つだと考えられている心臓病や脳卒中、アルツハイマー病にかかるリスクも低下すると言われています。
アテネ医科大学のアンドロニキ・ナスカ氏やハーバード大学医学部のデーメートリオス・トリチョポロス氏らの研究では、昼寝をまったくしない人より、昼寝の習慣がある人の方が、心臓疾患で死亡するリスクが34%低いとのことです。
6,不眠症や睡眠障害の予防になる
昼寝をすると夜よけいに眠れなくなるのでは、と思われるかもしれませんが、短時間の昼寝なら夜に眠れなくなる心配はありません。
逆に、昼寝をした方が夜に長く眠れるようになったという報告もあります。
とくに、精神的な疲労を抱えている方や、不眠症や睡眠障害になっていることがストレスと感じている方は、昼寝によって精神的な疲労を軽くすることで、夜の寝付きや睡眠の質が改善されることがあります。
深刻な状態になる前に、予防として昼寝の習慣を取り入れてみましょう。
効果的に昼寝をするには正しいコツと最適時間
1,昼寝に最適な睡眠時間
昼寝をする時に気を付けるべきは睡眠時間です。
あまり長い時間だと深い眠りに入ってしまうので、基本的には浅い眠り、つまりノンレム睡眠を行うことが大事なのです。
昼寝がもっとも効果的に作用するのは10~30分ほどの時間と言われています。
ですが、実は年齢によって最適な睡眠時間が多少変わってきます。
年齢が高くなるにつれて深い睡眠に入るまで時間がかかりますので、10代~40代までなら10~20分ぐらいが最適なのですが、それ以降の年代になると20~30分ぐらいは必要となってくるのです。
昼寝をする体勢に入ってもすぐには寝付けないかもしれませんが、何も考えずに目を閉じてじっとしているだけでも、頭と身体の疲れを回復する効果はあります。
2,昼寝をする時の姿勢
昼寝をする時には、どのような姿勢で寝るかも大事なポイントです。
昼寝はメインの睡眠ではないので、深い眠りに入ることのないよう椅子に座ったままで寝ましょう。
ベッドやソファーに寝転んでしまうと熟睡モードになってしまい、10分や20分では起きられなくなります。
たとえ頑張って起きたとしても、目覚めた時には猛烈な眠気に襲われることになるでしょう。
夜の睡眠にも支障が出ますので、椅子に座ったままで机に突っ伏して寝るか、椅子の背にもたれかかって寝てください。
ただ、どちらの姿勢でも首への負担が軽くなるような対策はしておきましょう。
3,昼寝に最適なタイミングは昼食後から午後2時まで
私たち人間には大昔からの睡眠リズムというのがあり、22~26時と10~14時の睡眠は回復効率が高いと言われています。
また、昼食後は食べ物を消化するために胃や腸に血液が集まり、脳の活動が低下して眠くなります。
これらを考え合わせると、昼食後から午後2時までが昼寝をするベストタイミングと言えるでしょう。
会社などで昼寝をする場合は昼休みに限られるかもしれませんが、自宅での昼寝も午後2時ぐらいまでに済ませるよう心掛けてください。
あまり遅い時間に昼寝をすると夜に眠れなくなってしまいます。
4,昼寝しやすい環境作りをする
昼寝をする時は靴を脱いで、身体を締め付けているベルトや腕時計も外してください。
血行を良くしてリラックスできる状態を作ることが大事です。
また、環境によっては、耳栓やアイマスクで音や光を遮断することも考えましょう。
女性が机に突っ伏して寝る場合、服の小さな折れ目の跡が顔に残ってしまうかもしれません。
ファンデーションが服に付くこともあります。
昼寝用の薄いハンカチなどを用意して、腕に乗せて寝るようにすると、顔に跡も残らずファンデーションが服に付く心配もありません。
5,昼寝をする前にコーヒーを飲んでおく
コーヒーに含まれるカフェインには眠気を覚ます作用がありますが、このカフェインを利用した「コーヒーナップ」という昼寝の方法をご存知でしょうか。
コーヒーを飲んですぐに昼寝をし、20分後に起きるだけという手軽に元気になれる方法です。
コーヒーのカフェインは飲んでから約20分で脳に到達して覚醒効果を発揮します。
ですから、覚醒効果が現れるまでの約20分間を昼寝に当てるのです。
そして約20後、昼寝から目覚める頃にはちょうど脳が活性化して、スムーズに作業に取り組むことが出来るというわけです。
なおコーヒーナップには、エスプレッソのショット、またはアイスコーヒーを飲むのがオススメなのだそうです。
6,寝過ごし防止のために目覚ましをセットする
職場で昼寝をする場合には、周りに人もいますので長い時間寝過ごすことはまずないでしょう。
ですが、20分寝るつもりだったのに気付いたら昼休みが終わるギリギリまで寝ていた、なんて事もあるかもしれません。
念の為に目覚ましをセットしておくのが賢明ですね。
携帯電話やスマートフォンの目覚まし機能でも大丈夫ですので、あまり大きな音で鳴らないよう音量を下げて、あるいはバイブ機能にして近くに置いておきましょう。
自宅で昼寝をする場合はもっと注意しなければなりません。
自宅だという安心感と開放感から「起きなければ」という気持ちが薄れて、ダラダラと何時間も寝続けてしまいがちになるからです。
長すぎる昼寝は夜の睡眠の妨げになります。
しっかり目覚ましをセットして、ベッドやソファーではなく、椅子に座って昼寝をしましょう。
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7,目が覚めたら明るくする
昼寝から目覚めたら、まず太陽の光を浴びましょう。
無理な環境であれば、室内を明るくするだけでもいいです。
明るくすることで睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌が抑えられ、脳が刺激されて活性化されます。
そして、もっと脳に刺激を与えてしっかり覚醒させてください。
たとえば、太陽の光を浴びながら大きく背伸びをする、軽いストレッチで身体を動かす、冷たい水で手を洗う、歯磨きをする、人と話をするなど、ちょっとした眠気覚ましのような行動だけでも脳には刺激になります。
昼寝から起きたらする事を、寝る前にあらかじめメモしておくのも良い方法です。
頭がすっきりした状態で、即座にやるべき事に取り組めます。
脳にはこの上ない刺激となるでしょう。
昼寝をする際の注意点
昼寝は睡眠時間を必ず守って
昼寝に最適な睡眠時間は年代によって少々違いますが、長くても30分以内に収めましょう。
とくに若い方は深い眠りに入るまでの時間が短いので、10~20分で充分に昼寝の効果が得られます。
ご年配の方もなるべく30分以内の昼寝を心掛けてください。
1時間以上の昼寝を繰り返していると、アルツハイマー認知症になる危険性が2倍に増えるとの報告もありますので、睡眠時間の長さより内容を重視した昼寝を目指してください。
昼寝は午後3時までに済ませる
昼寝に最適な時間は昼食後から午後2時ぐらいまでで、午後3時を回ってから昼寝をしてしまうと睡眠のリズムが乱れてしまいます。
遅い時間に昼寝をしたことで、寝る時間になっても眠れなくなってしまうのです。
すると、寝付くのが遅くなって朝起きるのも遅くなり、翌日にはまた午後3時頃に眠気がきて昼寝をしてしまう、こういった悪循環に陥ってしまうこともあります。
この状態が続くと不眠症や入眠困難といった睡眠障害になる可能性も出てくるのです。
昼寝は、午後2時までの早い時間に行うようにしましょう。
昼寝は楽な姿勢で行う
昼寝は椅子に座って浅い眠りを取るのが好ましいのですが、本来、椅子で寝るのはあまり楽な姿勢とは言えません。
ですから、短時間とはいえ少しでも楽な姿勢で寝られるように工夫しましょう。
職場なら首を支える昼寝用のグッズを使用したり、自宅ならクッションなどを使ったりと、首や腰の負担が軽減されるようなアイテムを駆使して、快適な昼寝を楽しんでくださいね。
まとめ
日頃の睡眠不足を補い、睡眠負債を減らすには「昼寝」がとても有効です。
睡眠不足は不眠症になるきっかけとなり、重篤な睡眠障害に発展する危険性もあります。
「最近あまり眠れてないな」と感じたら、無理をして身体をこわす前に上手に昼寝を活用しましょう。