
睡眠薬として知られているルネスタは、2012年にエーザイから発売されたまだ新しい薬で、非ベンゾジアゼピンに属する薬です。
アモバンの効力である「S体」をそのまま抽出して作られた薬でもあるため、睡眠効果はアモバンに非常に似ていますが、飲みにくかった味なども軽減されており、副作用もアモバンと比較にならないほど安全性の高い薬となっています。
ここでは、ルネスタの特徴をはじめ、その強さや効果、詳しい副作用などについても見ていくことにしましょう。
この記事の目次
ルネスタの特徴
ルネスタの一般名はエスゾピクロンと言います。
ベンゾジアゼピン受容体に作用して、神経伝達物質であるGABAの働きを強め、脳の活動を抑えることで、睡眠をもたらしてくれるお薬です。
最近の睡眠薬にはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬がよく使われていますが、ルネスタは非ベンゾジアゼピン系に属する睡眠薬です。
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比べ、ω1受容体にだけ作用するため、ふらつきなどの睡眠薬で心配となる症状が少なく、穏やかに作用します。
ルネスタの錠剤は1㎎、2㎎、3㎎の3種類が現在処方されています。
ルネスタの用法
ルネスタは成人の場合、1回2㎎。高齢者の場合、1回1㎎が通常処方されています。
症状によって増やしたり、減らしたり量を調節することもありますが、その上限は成人で3㎎、高齢者で2㎎までとなっています。
食事と同時、または食後すぐに服用すると空腹時と比べて、血中濃度が低下してしまうことがあるため、服用を避けるよう指導されています。
ルネスタの強さは?
睡眠薬の強さはその作用時間によって分類されています。
分類の基準についてまずは見ていくことにしましょう。
睡眠薬の分類は以下の4種類に分けることができます。
睡眠薬の強さ | 出現時間 | 持続時間 |
---|---|---|
超短時間作用型 | 10~15分 | 2~4時間程度 |
短時間作用型 | 15~30分 | 6~10時間程度 |
中間作用型 | 30分 | 20~25時間程度 |
長時間作用型 | 30分~1時間 | 24時間以上 |
持続時間は半減期を基準に計算しており、薬の濃度が半分になるまでかかる時間を示しています。
その薬の強さを知る目安となりますが、ルネスタは、この中でも超短時間作用型に分類されます。
超短時間作用型は、出現時間が短いため、寝つきが悪い入眠障害に効果を発揮してくれる睡眠薬と言えます。
また、すぐに効いてくれるため、ベッドに入る直前に飲む薬とも言えます。
ルネスタは、超短時間作用型の中でも1時間ほどでピークを迎え、半減期まで5時間ほどかかる薬です。
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中では、半減期までの時間が長いと言う特徴があります。
睡眠薬の強さのレベルとしては「標準」です。非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、極端に強い睡眠薬ではありません。
持続性も短いことから最大容量飲んだとしても、あまり心配のいらない薬となっています。
ルネスタの効果とは?
ルネスタは非ベンゾジアゼピン系に属する睡眠薬です。
神経伝達物質であるGABAの働きを活発にしてくれ、脳の活動を抑えてくれるため、睡眠を促してくれるのですが、その効果はいったいどのようなものなのでしょうか?
ここでは、ルネスタの効果を分かりやすく説明していくことにしましょう。
1.即効性がある
ルネスタは、即効性が期待できる睡眠薬です。
睡眠薬の中には飲んでから眠くなるまでに時間がかかる薬もありますが、超短時間作用型の睡眠薬であるため、薬を飲んでから効くまでの時間が短いのが大きな利点です。
「眠りたいのに眠れない」と言うのは実に辛いものですが、飲んでからわずか1時間で薬がピークに達してくれるため、間違いなくすぐ眠れる睡眠薬と言えます。
同じ容量の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるマイスリー程即効性はないとされていますが、さほどの違いでもないため、使用感はあまり変わらないでしょう。
入眠障害にお悩みの方にはもってこいの睡眠薬です。
2.持続時間が長い
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中で最も持続時間が長い睡眠薬であることもルネスタの特徴と言えるでしょう。
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は入眠までスムーズなことがメリットですが、持続時間が短いことがデメリットでした。
他の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の持続時間の平均は2時間から3時間なのに対し、ルネスタは半減期まで5時間となっています。
もちろん、半減期を過ぎても薬の効果は完全になくなるわけではありませんので、理想的な睡眠をとることができると言う訳です。
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は中途覚醒には効果が期待できないため、他の睡眠薬に完全に頼る形でしたが、ルネスタであれば中途覚醒にもある程度の効果が期待できます。
3.朝スッキリ起きることができる
ルネスタは非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるため、朝まで眠気を引きずる心配はあまりありません。
半減期が5時間と継続するにもかかわらず、朝起きるころにはスッキリ目覚めることができるのも嬉しい点です。
ただし、仮眠などの場合には、服用は避けるようにしましょう。
4.転倒などのリスクが少ない
ルネスタは、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬ですので、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比べ、ω1受容体への結びつきが強く、ω2受容体への作用が少ないため、筋弛緩作用などの心配が少なくなっています。
多少薬を飲む時間が遅くなってしまい、朝目覚めることになってもふらつきや転倒を懸念することも少なく、高齢者などでも気軽に使用できます。
強い睡眠薬の副作用である、ふらつきなどが心配と言う方にとっては、良い睡眠薬と言えるでしょう。
5.睡眠の質が上がる
ルネスタは非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬でもありますので、徐波睡眠、いわゆるノンレム睡眠を増加させる効果があります。
ノンレム睡眠を上手に取ることができれば「良く寝た」と感じることができ、「睡眠の質」に結びつきますので、睡眠薬を飲むことでこの徐波睡眠を増やすことができる点は大きなメリットと言えます。
不眠症の多くの方が抱えている「睡眠の質」にまで効果を発揮してくれるのもルネスタの効果の一つです。
6.依存性の心配がない
ルネスタは非ベンゾジアゼピン系ですので、数多く処方されている睡眠薬の中では、依存性の少ない薬です。
もちろん、多めの量を長く飲み続けることで耐性はできてきますが、それでも依存が少ないことはルネスタの良いところです。
容量用法を守って使用することが前提となってきますが、眠れない時に使うのであれば、問題ない薬です。
ルネスタの副作用とは?
ルネスタは超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるため、極めて安全性の高い薬と言われていますので、副作用と言えるものはあまりありません。
ですが、人によっては稀に症状となって現れることもありますので、参考のために考えられる副作用についても紹介しておくことにしましょう。
1.前向性健忘
腸短時間作用型などの、作用の短い睡眠薬に多いと言われている副作用です。
一般的な健忘の症状には激しい物忘れなどが見られますが、ルネスタなどの副作用である前向性健忘は、薬を飲んだ後に行動していたり、話していたことを記憶していないという症状になります。
薬を服用するまでのことは覚えていても、服用後の出来事を全く覚えていないと言う一種の記憶障害です。
「昨日、○○って言っていたよね」と言われて初めて気が付く症状ですが、これは、超短時間作用型の睡眠薬であるため、薬が素早く脳に到達し、眠りの効果を強制的に作らせるので、一時的に脳の働きを抑えてしまうからと考えられます。
非ベンゾジアゼピン系のルネスタでは、あまり見られない症状ではありますが、可能性はなくはありませんので一応頭に入れておくと良いでしょう。
このような症状を防ぐためにも、超短時間作用型の睡眠薬はベッドに入ってから飲むようにすると良いかもしれません。
また、夜間起床時にこのような症状が現れることもありますので、そのような場合には薬を見直す必要があるでしょう。
2.苦味
苦味は副作用と言えるかわかりませんが、もともとアモバンは強い苦味がデメリットの薬でした。その薬を品種改良してできたルネスタですので、苦味は軽減されているものの、多少の苦みを感じる方もいるようです。
飲む時はすぐに眠りについてしまうため、あまり感じることはないようですが、翌朝起きてから口の苦みを気にする方がいます。
この苦みは時間と共に消えていきますので、問題はないのですが、不快感を覚えることから、ルネスタの副作用と言えるかもしれません。
他にも口が乾くなどの症状が現れることもあります。
3.耐性
ルネスタは依存性の少ない睡眠薬ですが、長期服用や用法容量を守らない使用、お酒と併用するなどした場合、耐性が付くことがあります。
通常の容量では効果を感じられなくなってしまうため、乱用の引き金となります。
乱用すると例え安全と言われる睡眠薬であっても、強い副作用が出てしまう危険性がありますので、注意しましょう。
ルネスタは、不眠を治す薬ではありません。あくまでも一時的に不眠を解消するための薬ですので、長期服用や乱用は避けましょう。
4.その他の副作用
他にもルネスタには味覚障害や消化不良、倦怠感、頭痛、めまいなどの副作用があるとされています。
ただし、いずれも報告されている例も少なく、過度に心配の必要な症状ではないようです。
また、容量を守らず飲んだ場合にも、こうした副作用の報告がありますので正しく服用することを心掛けましょう。
ルネスタの注意点
ルネスタは喘息や呼吸器系疾患を持った方の場合、症状にもよりますが、慎重に使用する必要があります。
また、心臓に障害のある方や肝臓、腎臓の悪い方や高齢者などの場合、副作用が強く出てしまうことがありますので、少量から使用を始めた方が良いお薬です。
睡眠薬は全般的に、医師から処方されるため、こうした疾患を把握した上で使用を始めることと思いますが、服用が問題となる病気もありますので、自分の症状と共に病気についてもよく医師に相談し、睡眠薬を選ぶようにしてくださいね。
ルネスタはこんな方におすすめ!
ルネスタは超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬ですので、入眠障害のある方におすすめの睡眠薬です。
「眠りたいのに眠れない」「寝たはずなのに、すぐに起きてしまう」と言う方にとっては効果の期待できる睡眠薬です。
また、非ベンゾジアゼピン系の薬ですが作用時間が比較的長めとなっているため、軽い中途覚醒があると言う方にも良い薬と言えそうです。
毎日寝ている間に目が覚めてしまう方には向いていませんが、「寝ている途中で目が覚めてしまうことがたまにある」と言う場合にはルネスタを飲んでみると改善が期待できるでしょう。
特に睡眠薬初心者の方には大変使いやすい薬です。安全性が高く、依存や副作用も少ないため、気軽に使用を始めることができます。
睡眠薬を使ってみたいけれど、怖い、心配と言うのであれば、ルネスタが適しています。症状なども考慮しながら、医師と相談の上、ルネスタを選んでみると良いでしょう。
ルネスタが効かない場合はどうする?
ルネスタは超短時間作用型の睡眠薬であるため、入眠時には高い効果を発揮してくれます。
しかし、安全性の高い薬ではありますが、その反面やはり自分には合わないと感じる方もいることでしょう。
睡眠への効果がないと感じるのであれば、短時間作用型、もしくは中間作用型の睡眠薬への変更が必要と言えるでしょう。
短時間作用型の睡眠薬になると、薬の半減期までの時間が長く、ゆっくりピークを迎えてくれるタイプの薬になるため、睡眠をより長くカバーしてもらうことができます。
短時間作用型にもエバミールやリスミーなど色々なタイプの睡眠薬がありますので、必ず医師と相談の上、自分に合ったものを再検討してみましょう。
まとめ
ルネスタは、超短時間作用型の非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
超短時間作用型のルネスタは、飲むとすぐに睡眠への誘導効果が表れます。
また、非ベンゾジアゼピン系に属するため、作用が緩やかで、ふらつきや転倒などの心配も少なく、高齢者でも安心して使える薬です。
ルネスタは、安全かつ即効性のある睡眠薬ですが、睡眠薬の強さは「標準」で、持続時間も5時間と短い薬であるためと、ひどい不眠症に悩んでいる方や早朝覚醒、強い中途覚醒の方には向いていません。
ただし、入眠障害や睡眠薬初心者の方には非常に向いているお薬です。
非ベンゾジアゼピン系の中では作用時間も長いため、軽い中途覚醒への効果も認められていますので、ご自身の症状に適しているようであれば、ルネスタを選んでみると良いでしょう。
睡眠薬で一番心配な依存性も少ないとされていますが、長期間の使用や乱用は危険です。
脱離症状などもあるようですので、自己判断で量を増やしてみたり、やめたりすることは避けましょう。
あくまでも不眠症の一時的な対処策として、使用するようにしてくださいね。