
睡眠時間は7時間から8時間が理想的とよく耳にするけれど、「そんな睡眠時間じゃ、全く足りない」という方や、「そんなに長い時間なんて、寝ていられない」という方もいると思います。
7時間から8時間というのは人の睡眠時間の平均で、必ずしも自分に当てはまる理想の睡眠時間とは限りません。
運動量や代謝量などに個人差があるように、睡眠時間もその人によって理想的な時間が違います。
睡眠時間が長い人や短い人の場合、平均的な睡眠時間をとる方と何か違いは出てくるのでしょうか?
ここではそんなロングスリーパー、ショートスリーパーについて見ていくことにしましょう。
この記事の目次
睡眠時間の平均ってどのくらい?
人間の睡眠時間の平均時間は7時間から8時間と言われています。
NHK放送文化研究所が5年ごとに行っている日本人の生活時間2015の調査によると、平日の平均睡眠時間は7時間15分となっており、土曜日の平均睡眠時間は7時間42分、日曜日は8時間3分ということが分かりました。
睡眠時間には男女差もあるようで平日の朝、化粧など朝の準備に時間のかかる女性の方が男性よりも睡眠時間が短く、平均はそれぞれ女性が7時間10分、男性が7時間21分となっています。
このことを見ても分かる通り平均と言える睡眠時間はやはり7時間から8時間と言えそうです。
そのためこの7時間から8時間を睡眠時間の基準とし、この時間より睡眠時間が長い方をロングスリーパー、この時間より短い方をショートスリーパーと分類しています。
ロングスリーパー、ショートスリーパーの基準とは?
睡眠の平均時間を基準にして、それより睡眠時間の長い方と短い方に分け、ロングスリーパー、ショートスリーパーと分類していますが、その基準は
・ロングスリーパー 9時間以上
・ショートスリーパー 5時間未満
となっています。
ちなみにロングスリーパーの人口は5%~10%と言われており、ショートスリーパーの占める割合も同じく5%~10%です。
睡眠時間が長い人、短い人
平均睡眠時間は確かに7時間から8時間ですが、誰もが同じ睡眠時間を取っているとは限りません。
有名人でもナポレオンやエジソン、野口英雄、モーツァルト、森鴎外などがショートスリーパーであると明かしていて、平均の睡眠時間が2時間から3時間という方も少なくありません。
反対にロングスリーパーとして知られている有名人には、アインシュタインやミハエル・シューマッハ、ダイガー・ウッズがおり、シューマッハなどは最低12時間の睡眠が必要と言うから驚きです。
この2つの眠りの差が現れてしまう原因とは何なのでしょうか?
睡眠時間と性格の関係性
睡眠は脳や体の疲労を取る時間と言うこともあり、脳の疲労と睡眠時間には深い関係があるようです。
東邦大学名誉教授鳥居鎮夫氏の眠りの科学によれば、内向的だったり真面目な性格だったりするとどうしても悩んだり、心配することが多いため、ロングスリーパーになる傾向が強く、ショートスリーパーは自分を大切に考え、悩みごとなどすぐに忘れてしまう脳の疲労が少ない方が多いそうで、外交を得意とする方、くよくよしない方が多く見られるそうです。
性格というものは持って生まれたものと言うこともあり、なかなか変えることもできません。
こうした生まれ持った差が、ロングスリーパー、ショートスリーパーを作り出していると考えられています。
遺伝子の突然変異が影響していることなどが最近の研究では見つかりつつあり、先天的なものがやはりそれぞれの眠りの原因となっているようです。
こうした原因についてはまだはっきりした結論には至っていませんが、眠りのリズムについてはある程度明らかになってきています。
では、平均より睡眠時間の長いロングスリーパー、睡眠時間の短いショートスリーパーの眠りにはどんな違いがあるのでしょうか?
一緒に見ていくことにしましょう。
睡眠時間が長い方、短い方の眠りの違いとは?
睡眠中私たちは、眠りの浅いレム睡眠と眠りの深いノンレム睡眠を交互に繰り返していますが、ロングスリーパーとショートスリーパーとでは、このレム睡眠、ノンレム睡眠の長さに違いがあることが分かっています。
ロングスリーパーの場合浅い眠りであるレム睡眠の時間が長くなっていますが、それに対しショートスリーパーは、浅い眠りの時間を最小限に抑えた眠りをしています。
ノンレム睡眠の性質も異なり、ロングスリーパーの方はノンレム睡眠のステージ1、2と言った浅い眠りを多く必要としています。
反対にステージ3、4の深い眠りの長さはほぼショートスリーパーと変わらないようです。
深いステージの眠りは眠り始めの3時間以内に最も多く現れるため、眠っている時間が短くても、長くても時間的には差がないのです。
ここからも分かるようにショートスリーパーは、レム睡眠が極端に短く、浅いノンレム睡眠時間も少ないですが、深い眠りであるステージ3、4と言った眠りを十分得ているため、スッキリ起きることができます。
ショートスリーパーは効率よい眠りの取り方をしていると言えそうです。
次からはそれぞれの眠りのメリット、デメリットについて見ていくことにしましょう。
ロングスリーパーのメリット
ロングスリーパーのメリットとして考えられるのは、創造性が豊かになるところと言えるでしょう。
ロングスリーパーはレム睡眠が多いこともあり、ショートスリーパーや平均的な睡眠を取る方と比べ、頻繁にしかも長い時間、夢を見ます。
そのため、独自の思考が身につき、芸術的センスが磨かれるそうです。
水木しげるさんもロングスリーパーだそうですが、あの発想力は夢がヒントになっているのかもしれません。
また、睡眠時間が多いとスポーツのパフォーマンス力が上がるそうです。
ダイガー・ウッズや白鵬関などもロングスリーパーとして知られていますが、この長い睡眠が関係しているのかもしれませんね。
ショートスリーパーのメリット
起きている時間が長い
ショートスリーパーのメリットとして考えられることは、やはり起きている時間が多いことと言えるでしょう。
仕事でも勉強でもそうですが、時間をかければかけるほど、成功により近づくことができますよね。
ロングスリーパーにはない使える時間が多いことは、やはりメリットと言えるでしょう。
また、ショートスリーパーの場合、脳にダメージをかけない考え方ができるため、悩みごとが少ないという利点もあります。
強い精神力の持ち主、リスクに負けない強さが備わった方が多いため、事業家や芸能人などでも多いそうです。
有名人では「明石家さんま」「上戸彩」「伊集院光」「みのもんた」「中井正広」「「小倉智昭」「畑正憲(ムツゴロウさん)」「京極夏彦(小説家)」「織田栄一郎(ワンピース作者)」など。
有名事業家では海外では「ビル・ゲイツ」「イーロン・マスク」「ドナルド・トランプ」「孫正義」などがショートスリーパーです。
遅く寝てもスッキリ目覚めることができる
残業などで仕事が遅くなると、どうしても眠る時間は後退してしまいますが、ショートスリーパーメリットはこうした睡眠時間に縛られることなく、いつでもよく眠り、スッキリした目覚めを手に入れられるところです。
例え遅い時間に眠っても、4時間などと少ない時間で快適な状態になるため、朝早く起きても「眠い」「だるい」と感じることなく仕事に出かけることができます。
こんなショートスリーパーになりたいという方も少なくないのでは?
ロングスリーパーのデメリット
誤解が生じる
人より長い時間睡眠が必要と言うことは、周りのそうでない方から見るとやはり「怠け者」「やる気がない人」と取られてしまうことも少なくありません。
人と同じように無理やり起きて、仕事をしていても眠気が襲い、あくびなどをしてしまうため、やる気がないなどと人から誤解されてしまいます。
その分、仕事ができたり、勉強ができれば、問題はありませんが、才能が発揮されないと、こうした悪い評価につながってしまうことも考えられるのです。
こうした点はやはりデメリットと言えるかもしれません。
起きている時間が少ない
ショートスリーパーの方と比べても、平均的な睡眠時間の人と比べても、やはり、どうしても睡眠時間が必要なロングスリーパーは行動時間が人より少なくなりがちです。
勉強をするにも、仕事をするにも貴重と言われる時間を睡眠に当てる必要が出てきますので、やはり何事にも不利になります。
そうしたリスクから、一種の病気として判断してほしいと訴える団体(日本過眠症患者協会)も出てきているほどです。
確かに、ロングスリーパーは、体質的に長時間の睡眠が必要となります。
無理やり睡眠時間を短くしたりすると、体調だけでなく精神的にもダメージが生まれますので、そうした行動は大変危険です。
自分に合った睡眠時間を取るようにした方が良いと言えるでしょう。
病気のリスクが上がる?
レム睡眠の時人は脳が起きていて、体が寝ている状態です。
ロングスリーパーはこのレム睡眠時が長いことが分かっていますが、レム睡眠時は、脳が起きているため、交感神経が不安定に働いてしまうことがあり、血圧や脈拍が常に上下してしまうそうです。
そうしたことが原因となって、心疾患や脳疾患の患者が多いことが分かっています。
実際に9.5年間睡を研究してきた研究結果では、ロングスリーパーの方は、脳卒中を発症する割合が平均的な睡眠時間の人と比べ、1.5倍と高いことということが解明されており、こうした病気を発症するリスクが考えられます。
脳卒中などの要因が長い睡眠時間を引き起こしている可能性や年配の方に睡眠時間が多い方が多数いることもこの率を上げているのかもしれませんが、やはり平均的な睡眠時間の方と比べリスクは考慮しておくべきと言えるかもしれません。
※参照:NCBI Sleep duration and risk of fatal and nonfatal stroke
ショートスリーパーのデメリット
人が寝ている時間に起きてしまう
ショートスリーパーにはデメリットもないように感じますが、強いて言うのであれば人が寝ている時間に眠れないで起きてしまうことでしょう。
人と同じ時間に眠りについてもどうしても朝早く目が覚めてしまいます。
趣味など一人で過ごす楽しみがあれば良いのですが、そういった打ち込むことがない場合、時間を持て余すことになりますよね。
朝早いとショッピングに出かけたりすることもできないため、家で過ごしているという方が多いようですが、一般的な睡眠を取る方と違うということは、それなりのデメリットがあるのかもしれません。
ロングスリーパー、ショートスリーパーは寿命が短いってホント?
睡眠は生きていくために大切なことです。
心身を正常に保つために、体や脳を休ませる働きがあります。
そんな睡眠時間が短かったり、長かったりする場合、寿命が短くなると言われています。本当なのでしょうか?
もし本当ならショートスリーパーの方は睡眠時間をより長く取るよう心がけなければならないですし、ロングスリーパーの方は短い睡眠に切り替える必要があります。
確かにJACC Studyの調査によれば、平均的な睡眠時間を取る方と比べ、それよりも睡眠時間が短い方や長い方は、生活習慣病などを発症し、亡くなるケースが多くなっています。
短い睡眠時間の方は普通の睡眠時間の方に比べ1.6倍も死亡する確率が上がります。
また、睡眠時間が長い人の場合、男女平均で1.8倍も死亡率が上がってしまうのです。
しかし、睡眠時間と言うのは病気の影響が少なからずとも関係してきます。
うつなどの精神疾患や喫煙、飲酒、病歴などでも睡眠時間は変化してしまいますよね。
そこでそれらを除くために調査後2年以内に死亡したケースを排除するなど再度計算をしたところ、ショートスリーパーの死亡率は平均とほとんど差がないことが分かりました。
ただし女性の場合、平均的な睡眠時間の方と比べ2倍も死亡のリスクが高くなるそうです。
また、ロングスリーパーでも男女関係なく死亡率が高くなることが計算から割り出されました。
完全にこの結果が、死亡率を表していると断言できるわけではありませんが、リスクの上で考えると多少なりとも可能性はあると言えるでしょう。
やはり平均的睡眠時間である7時間から8時間寝ているほうがリスクも少なく、健康な方も多いため、理想的と言えそうです。
※参照:JACC Stady
まとめ
睡眠時間は生きていくために重要な働きをしているため、自分の意志ばかりでコントロールできるものではありません。
ショートスリーパーは短い時間で十分に元気に暮らすことができますが、反対にロングスリーパーの場合一定時間眠らなくては体に支障が出てしまいます。
ショートスリーパーのように短い睡眠で生きていきたいとそういう体質でもないのに睡眠時間を削ることは危険です。
睡眠時間が短いと必ず体調や精神面に悪い影響が出てきてしまいますので、無理な睡眠時間の短縮はしないことが大切です。
集中力や仕事の効率が下がると言うだけで済む話でなくなってしまいます。
命を落とすことにもなりかねませんので、自分に適した睡眠時間を取ることを心掛けましょう。