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高照度光療法は不眠症にどれくらい効果がある?

  • 最終更新日:2017.07.03
  • 公開日:2017.04.12
高照度光療法は不眠症にどれくらい効果がある?

「高照度光療法」は光療法とも呼ばれ、不眠症や睡眠障害・季節性うつ病の改善に効果があると注目されている治療方法です。

太陽光に近い強さの光を一定時間与えて体内時計のズレを治して元に戻すというもので、日本だけでなく世界中で研究が進んでいます。

 

高照度光療法のメカニズム

高照度光療法のメカニズム

 

高照度光療法では、まず目から太陽のような強い光を与えて脳内の体内時計をリセットさせます。

最低限の明るさとしては2,500ルクスなのですが、弱い光だとそのぶん時間がかかってしまいますので、実際には5,000ルクス~10,000ルクスといった高照度光の光を使うのが一般的になっています。

2,500ルクスとは晴れた日の室内ぐらいの光です。

5,000ルクスが雨の日の屋外の光、10,000ルクスで朝日ほどの明るさとなります。

光は体全体に浴びせるのではなく目だけにあてます。

目から取り込まれた高照度光は網膜を通って、強い光を感じると体内時計をリセットする「視交叉上核」へ届きます。

さらに光はメラトニンの分泌を調整する「松果体」へとたどり着きます。

この強い光によって体内時計がリセットされ、メラトニンが分泌するのを抑えるのです。

眠気を誘う作用をもつメラトニンの分泌は止まり、約14~16時間後にふたたび分泌を始めます。

つまり高照度光療法とは、目から強い光を与えることで、脳の中枢部にある体内時計をリセットさせて、眠りを誘うメラトニンの分泌をコントロールし、夜にしっかり眠れるよう生体リズムのズレを補正しようという治療法です。



高照度光療法の効果は?

高照度光療法の効果は?

 

高照度光療法のいい点は、目に光をあてるだけということです。

これまで不眠症や睡眠障害の治療といえば薬物療法が主流でした。

ですが薬には副作用があらわれるものもあり、常用すると依存性が出てくるものもあります。

高照度光療法は専用の器具で20分~1時間という一定時間光を浴びる必要があるものの、薬を服用するのと変わらない60%の有効性が認められています。

副作用については、目が一時的に痛くなるという可能性もあるようですが、とある特別養護老人ホームでの事例では「大きな副作用はない」とされていました。

また1~2週間という短期間で改善したという報告資料もあります。

不眠症や睡眠障害が軽症の方ほど有効性が高く、早期に高照度光療法を行うほど実感するのが早いといわれています。

 

どんな症状の人に効果がある?

どんな症状の人に効果がある?

 

高照度光療法は、生体リズムのズレや乱れからくる不眠症や睡眠障害の人に効果が期待できます。

寝つきにくい、夜中に目が覚めてしまう、やけに早く目が覚める、熟睡できないなど、原因が生体リズムにあるのならどんな症状でも当てはまります。

また季節性のうつ病、とくに冬の間にうつ症状があらわれて春になると回復する「冬季うつ病」には効果抜群の治療法です。

ただし不眠症も睡眠障害もうつ病も、ストレスが要因となっている場合にはあまり効果を発揮できません。

 

高照度光療法によって改善が期待されるその他の症状

その他、具体的に下記のような症状の方にも高照度光療法は効果があると考えられています。

 

アルツハイマー型認知症

これはアルツハイマー型認知症の病状や進行具合そのものが良くなるということでありません。

高照度光療法によって睡眠時間や起きている時間の生体リズムが改善されるため、夜の徘徊などがなくなりぐっすり眠ってくれることで介護する人の負担が大幅に減るのではないかということです。

 

小児慢性疲労症候群(CCFS)

10時間以上眠る「過眠」や午前0時以降に眠る「睡眠相後退」などが重症化して疲労がたまり、不登校や引きこもりとなる子どもが増えています。

子どもの場合は睡眠障害が体の不調を引き起こすことが多く、高照度光療法などによって睡眠のリズムを整えてあげることで、疲労を取り除いて症状を改善できるといわれています。

 

時差ボケ・不規則な勤務状況による不眠症や睡眠障害

海外出張のたびに襲われる時差ボケや、夜間勤務が多い職種の人など、体内時計にズレが生じた場合には高照度光療法が効果的です。

強い光によって体内時計をリセットして体を覚醒させ、夜にはぐっすりと質の良い睡眠が得られるため脳も体もしっかりと休ませることができます。

 

高照度光療法を受けるには?

高照度光療法を受けるには?

 

高照度光療法の装置は、日本では睡眠障害専門の外来がある病院など限られた場所にしか設置されていません。

たとえば子どもなどは高照度光治療室を備え付けた施設に治療のため入院するケースもあるようですが、退院すれば以前と同じように症状が悪化してしまうこともあります。

また家庭用として販売している高照度光治療器もあるのですが、据え置き型になっている高額なもので、動かせないためその場にいてじっとしていなければなりません。

毎日一定の時間を高照度光治療器の前で動かずに過ごすのは現実的に継続しづらいというのが実際のところで、治療効果を得るには難しいと購入を踏みとどまる人も少なくはないようです。

高照度光療法に効果があるとはいえ、日本ではあまり普及していないのが実態といえるのです。

 

高照度光療法に使う照明装置とは?

高照度光療法に使用する専用の装置は、早朝や夜に2時間ほど光を浴びることによって体内時計のズレを補正して生体リズムを整えるものです。

高価な据え置き型ではありますが、自宅で行える高照度光療法用のライトも販売されています。

ただ使用するにあたっては、光の量や使用時間など専門性を必要とします。

自分の感覚や自己判断で使用するとかえって悪化してしまう事もあり得ますので、一度はきちんと病院で診察を受けて、専門医の指示に従って使用してください。

また病院によっては、診察後に医師から使用方法の指示を受けたうえで、自宅でも治療が行えるよう貸出してくれるところもあるようです。

 

日本初、身につけて使用する高照度光療法の治療器

日本初、身につけて使用する高照度光療法の治療器

引用参照元:日刊工業新聞ニュースイッチ
 

これまでは高照度光療法の治療器といえば据え置き型のものでしたが、2016年10月に持ち運びができる日本で初めてのゴーグル型光治療器が登場しました。

室蘭工業大学が企業と共同開発したもので、ウエアラブル型の体内時計調節器「ルーチェグラス」として病院や医療機関向けに発売されたものです。

従来のものと大きく違うのは、顔に装着するタイプのウエアラブル型であるため装着したままでも自由に動けるという点です。

重さも70gと軽量で負担も少なく、装着していても前方の視界を遮ることはありません。

そのまま食事することも、室内を移動することも、本を読むこともできます。

朝日ほどの明るさである10,000ルクスの強い光を、目に優しい自然光に近い発色で網膜に効率よく照射する仕組みとなっています。

使用時間は1日につき30分間と短いので毎日続けることは難しくないと思われ、不眠症や睡眠障害などで悩んでいる人が手軽に高照度光療法を行える画期的な治療器になると効果が期待されています。

また顔に装着するタイプの光治療器には、ポーランドとアメリカのスタートアップで生み出されたスマホと連動するアイマスク「NEUROON(ニューロン)」もあります。

このアイマスクを装着して眠っている間に、光によって体内時計を調節したり、脳波や心拍数などを計測して睡眠の質を分析するというものです。

 

日照時間が短い国での需要が多い

日照時間が短い国での需要が多い

 

高照度光療法は不眠症や睡眠障害だけでなく「冬季うつ病」の治療にも効果を発揮します。

日照時間が短い国では冬季うつ病は深刻な問題で、スウェーデンなどは人口の9割が多かれ少なかれ冬季うつ病を訴えるようです。

そのためウエルネスセンター「ニルバーナ(Nirvana)」では高照度光療法が行える照明をサンルームに備えており、1時間20ユーロ(約2600円)で利用できるようになっています。

高照度の光でメラトニンの分泌を抑える効果があるため、うつ症状が和らいで力が湧いてくるのだそうです。

深い霧で有名なイギリスも冬場には日が差すことが極端に少なくなるため、科学博物館などの公共施設にも高照度照明が設置されているところがあります。

またロンドン警視庁も、警察職員の仕事効率が向上するように高照度光療法の照明装置を導入しているとのことです。

四季がある日本では高照度光療法はあまり馴染みがないかもしれませんが、日照時間が短く太陽の光を浴びることが少ない国では、高照度光療法は薬物療法より効果ありとみなされているのです。

 

光治療器と光目覚まし時計の違いは?

光治療器と光目覚まし時計の違いは?

 

光治療器(高照度照射装置)は、不眠症や睡眠障害などを高照度光療法で改善するための治療器具です。

「光目覚まし時計」とは、光によって目覚める効果を目的とした目覚まし時計です。

目覚まし音で起きる従来の目覚まし時計は、どういう睡眠状態であるかに関係なく大きな音で無理やり起こされます。

ですが光目覚まし時計は、たとえば朝7時に起きるようセットしたらその時間に向けて少しずつ光が強くなっていきます。

そして太陽光のような光になった時、人間の「朝日が昇ったら目覚める」という習性により自然に目が覚めるのです。

目覚まし音で強制的に起こされた場合は慌てて目覚ましを止めてまた眠ってしまうということもありますが、徐々に強くなっていく光なら体も目覚める準備ができるので、無理なく自然に目覚めることができるという人が多いようです。

光によって体内時計もリセットされますので、深刻な不眠症や睡眠障害ではなく一時的な不眠の場合などには、光目覚まし時計で目覚めるだけでも生体リズムを整える効果が充分に得られます。



高照度光療法の照明装置がないときは?

高照度光療法の照明装置がないときは?

 

高照度光療法は太陽光に近い強さの光を一定時間浴びることで体内時計のズレを治して元に戻すというものですから、より照度が高い太陽光そのものをあびることで高照度光療法と同じような効果が得られます。

ただ朝の忙しい時間に光をあびるというのは億劫に感じますし、そのぶん早く起きて外に出なければならないという毎日続けるには面倒な部分もあります。

ですがもしも朝の散歩が習慣づいたら、高照度光療法にも負けない効果を手に入れることができます。

朝早く起きる、30分~1時間ほど散歩する、毎日続けるなど、不眠症や睡眠障害の方は少しずつでも実践できるように頑張ってみましょう。

 

高照度光療法を行うときの注意

 ストレスなど精神的なものが要因となっている場合は効果がない

高照度光療法は、強い光をあびることにより体内時計をリセットし、メラトニンの分泌を抑えて不眠症や睡眠障害などを改善するものですから、光をあびていない事が原因ではないストレス性のものに関してはほとんど効果が得られません。

 

医師の指示なしに食事制限をしない

高照度光療法を効率よく行って効果を得るためには、そのために必要な栄養素をちゃんと摂取する必要があります。

不眠症や睡眠障害で生活のリズムが乱れてしまうと、食欲がなくなったり食べ過ぎてしまったりと食生活にも影響が出てしまいがちです。

栄養のバランスに気を配って、医師から食事制限を受けていないかぎりは3食しっかりと食べましょう。

 

高照度光療法には専用の機材を使用する

不眠症や睡眠障害に効果的な照明装置を自分で作る、という人もいるようですが、高照度光療法は最低限の明るさとして2500ルクスは必要です。

2500ルクスとは天気がいい日の室内の明るさほどになります。

家庭の照明は700ルクス、オフィスの室内照明で1,000ルクス、コンビニの光でも1,500ルクスしかないのですから、これを自作でとなるとかなり難しいことです。

光の質も違ってきますので、高照度光療法を行う場合にはちゃんとした専用の機材を使いましょう。

 

せめて1ヶ月間は続けよう

高照度光療法は、早い人で3日ほど、1~2週間もすればほとんどの人がなんらかの効果を実感してきます。

とはいえ個人差はありますので、体質や体調によっては多少ズレることがあります。

「2週間たっても効果が感じられないから」と諦めずに、せめて1ヶ月間は続けてみましょう。

また「もう眠れるようになったから必要ない」とすぐにやめずに、やはり最低でも1ヶ月は続けてください。

不眠症や睡眠障害が治ったと思っていても、高照度光療法をやめたらまた再発してしまったという人も少なからずいるのです。

 

高照度光療法は朝起きてすぐに行う

高照度光療法には「昼間の光を浴びた後の場合、その効果が弱まる」という研究データがあります。

自宅で高照度光療法を行う際には、朝起きてすぐのなるべく早い時間に光をあびましょう。

朝食のときに食べながら光をあびれば、時間のロスにもならず効率的です。

 

まとめ

まとめ

 

高照度光療法とは、不眠症や睡眠障害や冬季うつ病などに効果のある光による治療法です。

薬物療法のような副作用もほとんどなく依存性もなく、専用の機材と知識さえあればすぐに治療を始めることができます。

アメリカやヨーロッパでは薬物療法より信頼されており、公共施設には無料で使用できる照明装置が設置されているほどなのです。

日本にはまだ高照度光療法を行える病院は少ないですが、不眠症や睡眠障害などに悩んでいる人は、薬物療法だけでなく高照度光療法もぜひ試してみてください。



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