
人間は休息をきちんととることで、しっかりと活動できます。
睡眠を充分取ることができずにいつも疲れている人は、起きている時間も集中できませんし、活動的にはなりません。
睡眠と活動は非常に密な関係にありますが、現在国内では何らかの不眠症の悩みを抱えている人が大勢います。
不眠症は、症状が軽いうちに何らかの対処を取らないと生活習慣病になったり、うつ病や精神疾患につながることが多いので不眠を放置せずに早めに病院など専門の医療機関に相談することが大切です。
しかし、初めて不眠症で医療機関を受診するとなると、どこの病院に行けばいいのか、どのタイミングでいくべきなのか分からないことも多いのが現状ではないでしょうか?
ここでは、不眠症の人が病院を利用する場合の留意点や注意点について考えていくことにしましょう。
この記事の目次
病院に行くべきかどうかの判断
人は明日や近日中に何か特別な行事や仕事、予定などがあるとその数日前から神経が休まらずにあまり眠れないという症状が出ます。
例えば、明日自分の結婚式があるとなると緊張して前夜などはなかなか寝付けないでしょうし、1週間後に大切な仕事のプレゼンを控えているときなども神経が常に張り詰めている状態になり眠りが浅くなり日中に眠気に襲われるということもあります。
このように眠れない原因は比較的近い将来のことで、眠れない理由が自分でもはっきりしている場合は、それらの行事が終わることで精神状態が安定し、神経も緊張から開放されるので再びよく眠れるようになります。
1ヶ月未満の期間、このような状態であってもまた眠れるようになれたなら特に早急に病院を受診しなくても問題はありません。
不眠の症状がある場合でも、体を温めたり、マッサージしたりとちょっとした工夫で眠りやすい状況を作ったり、ドラッグストアなどで市販の睡眠改善薬などを購入して服用してみるとある程度の症状は改善されるでしょう。
何日くらい眠れないと病院に行くべき?
なかなか寝付けない、寝ても何度も夜中に起きてしまうという睡眠障害の状態が1ヶ月以上続くと、体の健康に影響してきますし、日中の活動にも支障が出ます。
慢性的な不眠は常に疲れが取れないという倦怠感ややる気のなさにもつながりますし、酷い状態になると不眠がうつ病の原因になったりします。
眠れないということに不安を覚えて、どんどん不眠の症状が酷くなり、負のスパイラルに入るというのが一番怖いことですし、不眠症を慢性化させてしまう恐れがあります。
人には不安や悩みがいろいろあって、不眠症になる原因というのは人それぞれ異なりますので、根本的な問題を解決するというのは非常に難しいことですが、眠れないということで今まで健康状態が悪くなるというのは見過ごせません。
このような状態にならないためにも、不眠の状態が1ヶ月を過ぎても改善しないという場合は、早めに病院などの専門の医療機関を受診し、不眠症のしかるべき対処をした方がよいでしょう。
不眠症は何科に相談するの?
眠れないという不眠症の症状は、人によって原因や症状の出方が様々で自分は何科の病院を受診すべきなのか迷ってしまいます。
不眠の原因は様々ですが、とにかく不眠の症状を軽減することが大切ですので、「不眠症には何科!」という風に固定観念で考えないで、もしいつも体調を崩した時に行く病院があるのならば、まずはその病院に相談してみるのがよいでしょう。
何科を受診して良いが分からずに不眠症を放置するよりも、とにかくどの科の医師にでも「眠れない」という症状があることを説明すれば、ほとんど場合、他の専門病院を紹介してくれたりしますし、ちょっとした睡眠薬ならばどの科の医師でも処方してくれます。
全くかかりつけ医がいないという人は、地域の病院を検索して睡眠障害の専門科のいる病院や睡眠外来のある病院を受診すると良いでしょう。
睡眠障害専門の病院
不眠症に悩む患者が多いことから、最近では睡眠障害を専門とした外来を持つ病院や睡眠障害専門のクリニックがあります。
それらの多くの医師は睡眠障害の専門家として日本睡眠学会が定めた基準をクリアした睡眠医療認定医という認定を受けた医師である場合がほとんどです。
睡眠医療認定医という認定資格はこれらの専門機関の医師だけでなく様々な科の医師が取得しています。
病院の睡眠外来など専門の科が地域にない場合でも、酸睡眠医療認定医の資格を持った医師が地域にいる場合が多いので、インターネットなどで日本睡眠学会のホームページで睡眠医療認定医のリストを検索してみましょう。
内科
病院の中で風邪を引いたり、腹痛があった場合など内臓に関係する病気を扱うのが内科です。
内科ならばときどき受診するという人は、不眠症だということを内科医に相談することで治療が可能です。
大きな総合病院などは内科でも、循環器内科や呼吸器内科、消化器内科、内分泌内科という具合に分かれている場合もありますし、もっと細かく心臓内科、腎臓内科という風に臓器ごとに分かれている病院もあります。
睡眠障害の場合は、内科でも総合内科という分野がある場合はそちらを受診するのが良いでしょう。
分からない場合は、受付で症状を確認して適切な内科を案内してくれます。
心療内科、精神科
現代人は非常にストレスや悩みを抱えて心や精神に支障をきたしている患者も多いですし、心や精神の状態が悪いことで体調に不調を訴える場合も良くあります。
精神的な問題が内臓などの病気に発展している場合などは、心療内科という診療科を受診するのも方法です。
原因がよくわからなくても、なんとなく心配があり体調が悪い場合などは心療内科を受診します。
それに対して、心や精神が病気になってしまっていることを治療するのが精神科です。心の治療を専門にしていますので、不眠症に詳しく、治療にも対応しています。
漢方科
漢方というのは、東洋医学の考え方により漢方薬で治療を行いますので、一般的な西洋医学の病院とは全く性質の異なるものですが、最近では、西洋医学の世界でも東洋医学の考え方を取り入れる病院も増えてきています。
西洋医学の医師であると共に漢方医の専門家でもあるという医師も多くなりました。
大きな総合病院の中にも漢方科という診療科があるという場合もありますし、専門として扱っている漢方クリニックなどもあります。
漢方の考え方は、西洋医学とは全く違った診察方法によって患者の体質などや病気を見極めたり、心と体のバランスを漢方の力を用いて整えることによって心身ともに健康な体を目指します。
不眠症というのは西洋医学による血液検査などから原因が分かるケースもそう多くはありません。自分でもその理由も分からないという場合が多いのです。
漢方科では体のいろいろなバランスを見ることによって治療しますので西洋医学で治らなかった不眠症が治るということがあります。
漢方科などあまり馴染みがないという人も気軽に相談してみると良いかもしれません。
婦人科
最近の婦人科は、産婦人科とは切り離して、女性特有の体調や病気を専門に扱っている医療機関も多くなりました。
女性の体は非常にデリケートで月経や女性ホルモンのバランスに体調や心が大きく左右されます。
女性が不眠症を訴える場合、更年期障害であったり、女性ホルモンのバランスが崩れているということが多くあります。
そのため、婦人科を受診して不眠症であることを相談すると睡眠薬を処方してくれたり、女性特有の病気が原因していなかというようなことを調べてもらえます。
自分の不眠症はどのタイプか知っておく
眠れないという睡眠障害にも様々なタイプがあります。また、タイプによって医療機関では処方する睡眠薬の種類や量も変わってきます。
このため、自分の不眠の症状はどういったものなのかということを病院の受診を受ける前にしっかりまとめておくことが大切になってきます。
睡眠障害にもいろいろありますが、なかなか寝付けないというのが入眠障害、夜中に何度も起きてしまうのが中途覚醒、朝早くに目覚めてしまうのが早期覚醒になります。
寝ているにも関わらず起きた直後からすっきりしない、しっかり眠れないというが熟眠障害です。
このような症状がいつごろからどれぐらいの頻度で起こっているのか、原因はあるのか、日中の活動はしっかりできているのか、体調不良などに陥っていないかというようなことを問診で聞かれます。
毎日何時に寝て何時に起きて、トータルで何時間くらい眠れているのかというような詳しい情報を病院の医師に的確に提示できると、症状が把握しやすくなりますので診断のための対処方法も明確になってきます。
自分の不眠症状は客観的に見てどの様なものなのかできるだけわかりやすく説明できるようにしておけると良いでしょう。
病院で処方される不眠症の薬は?
病院で医師に不眠の症状を説明するとほとんどの医師が不眠症を改善するために、睡眠薬を処方します。
睡眠薬の種類や強さ、処方する期間などは様々ですが、初めて睡眠薬を病院で処方された人は睡眠薬に不安を覚える人もいると思います。
睡眠薬は長期間使用することで薬が段々効きにくくなったり、少量では効かなくなったり、睡眠薬がないと寝付けないという依存状態になるというような悪いイメージがあるためです。
少し前は睡眠薬の中でもバルビツール酸系の薬が処方されることが多く、このような副作用的な症状に苦しむことも実際に多かったのですが、最近ではバルビツール酸系の睡眠薬はあまり使われなくなり、代わってベンゾジアゼピン受容体作動薬(GABA受容体作業薬)が主に使われることが多くなりました。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬というのは脳の興奮を抑える神経伝達物質を促したり、体の筋肉の緊張をとってリラックス状態を作ったりすることによって睡眠効果を出します。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬は医師の処方どおりに服用していれば大きな副作用の心配はありませんので、不眠症で悩んでいる人はまずは病院の処方する睡眠薬を利用して不眠を改善しましょう。
不眠症状があってもなかなか病院に行けない人は?
不眠の症状があって眠れないという症状が長期に渡って続いていても、なかなか病院に行けない、行きたくないという人がいます。
不眠の症状に悩む人は多くの場合、生活に大きな不安があったり、心配事があったり、人に言えない悩みがあったりと不眠の症状よりも心の問題や壁が大きく立ちはだかるからです。
心の病気というのは根が深く、なかなかすぐには改善しません。
うつ病などは不眠症と大きく関係している症状ですが、自分でうつ病であることを自覚出来ない場合もありますし、診療内科や精神科に行くということが大きなハードルになって一歩を踏み出せない人やその家族は多いのです。
しかし、眠れないという不眠症の症状は長期間放置すると心の病をどんどん進行させますし、体調も悪くなります。
自律神経などに支障が出てくると体の中の全てのことが悪い方向に向かって行ってなかなか元の状態に戻れなくなります。
このような最悪の状態を避けるためにも、根本的な問題を解決することも大切ですが、まずは眠れないという不眠の症状を病院で取り除いてもらいましょう。
病院で処方された睡眠薬により眠れるようになれば、心のバランスも良くなりますし、体調も良くなります。
自分ひとりではどの病院に行ったらいいのか分からないという人やその家族は、医師だけでなく周りの人に相談してみると良い病院を紹介してもらえたり、詳しい医師を知ることができるかもしれません。
不眠症やうつであることを自分ひとりで抱え込むのではなく家族の人や周りの友人に相談して病院を受診してみましょう。
まとめ
眠れないという不眠の状態が1ヵ月以上の長期間に渡って続く場合は、そのまま放置せずに、病院に行って専門医、もしくは医師の専門外でも医師の診察を受けて不眠症に対する治療を始めることが大切です。
睡眠医療認定医のいる睡眠障害専門のクリニックや外来を受診するのが望ましいですが、内科、診療内科、漢方科、精神科、婦人科などでも睡眠医療認定医の資格を持った医師がいる場合があるので、日本睡眠学会のホームページで調べてみましょう。
また、かかりつけの医師が全くの専門外の医師であっても不眠症であることを相談することで適切な専門医を紹介してくれます。
一人で不眠症を悩んでいないで家族や周りの人たち、かかりつけの医師に気軽に相談して1日でも早く不眠症の症状を改善させていきましょう。