
最近は、子供の睡眠障害で悩むお母さんお父さんが増えています。
不眠症は大人が発症するものと言うイメージがありますが、子供にも不眠の症状がみられることがあります。
生活のリズムを整えたりすることで改善するケースも多くありますが、不眠症が深刻化してしまうこともあり、医療機関で診察が必要なケースも少なくありません。
子供にとって睡眠は体の成長のためにも、脳の発育のために不可欠なもの。
また、毎日の生活にも大きな影響を及ぼすため、正しい知識を持って親が対処してあげることが大切です。
ここでは子供の不眠症とその原因、対策について見ていくことにしましょう。
この記事の目次
子供に見られる不眠の症状と原因
まずは子供によくみられる不眠の症状とその原因について紹介していくことにしましょう。
自分の子供の症状と照らし合わせ、どの症状に当てはまっているのか、まずは知ることが重要です。
個々の症状に準じ、できる対策から始めてみましょう。
1.不眠症
子供が夜布団に入っても眠ることができない場合、この不眠症が疑われます。
夜型の生活や夜遅くまで電子機器を使うなどしているのが主な原因と言われていますが、朝起きる時間がどうしても遅くなってしまうため、学校生活を送ることが困難となり、症状がより悪化すると頭痛や吐き気、イライラ、集中力の低下などがみられるようになります。
日常の些細なストレスが原因となる場合もありますので、注意が必要です。
2.夜驚症
夜驚症は夜中に子供が突然叫び、布団から起き上がる睡眠障害の一つです。
親はその大きな声にびっくりして起きてしまうため気づくことが多くなっていますが、子供に問いただしても記憶がないことがほとんど。
およそ子供が眠ってから1時間から2時間経過したノンレム睡眠時に30秒から5分ほど大きな声や起きる行動を起こすため、記憶が全くないと言う特徴があります。
その後は何もなかったように朝まで眠る子も多いため、特に心配の必要のない睡眠障害です。
その原因は脳機能の発達不足と言われているため、一般的に大きくなるにつれて、症状が改善していきます。
特に医療機関などを慌てて受診する必要はありません。
ただし、成長につれ症状の改善がみられない場合、夜叫ぶ頻度が多い場合には、睡眠外来で一度受診をしてみると良いでしょう。
3.睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に呼吸が止まってしまう、または呼吸が浅くなってしまう深刻な睡眠障害です。
子供の気道が狭いことが原因となり起こる睡眠障害ですが、酸素量が足らず、きちんと眠ることができないため、日中に何らかの症状が表れることも多く、大きな病気の要因にもなります。
正確に子供の睡眠時無呼吸症候群を知ることは難しいですが、もし自分のお子さんに呼吸が止まってしまう、呼吸が弱くなってしまうなどの症状がみられる場合には睡眠外来で正しい判断を仰いでみると良いでしょう。
4.睡眠時遊行症(夢遊病)
夜うろうろと歩き回る症状がある場合、この睡眠時遊行症(夢遊病)が疑われます。
大半は部屋などを歩き回り、その後眠るケースが多く、就寝から1~2時間経過したノンレム睡眠時に行動が見られます。
その原因は子供の脳にあると言われています。
子供の脳は未発達であるため、睡眠と現実の区別がつかないことがあり、眠っているのに体だけ動かし、脳が起きてしまうと言う現象を引き起こすことがあります。
決して珍しい不眠の症状ではなく、5歳から12歳の約15%に見られる睡眠障害ですので、特別な心配はいりません。
子供の睡眠時遊行症(夢遊病)は成長とともに症状が治まっていくことがほとんどです。
5.過眠
大人の過眠症とは、夜きちんと眠っているにもかかわらず、日中に眠気を感じてしまう睡眠障害ですが、子供の場合、落ち着きがない、怠け者、注意散漫、集中力が足りないと言った症状が表れます。
過眠症はナルコレプシー、いわゆる脳の覚醒維持機能が未発達なため起こると言われています。
成長ともに、症状が治まることも多いので、まずは様子を見守ってあげるようにしましょう。
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>>睡眠障害ナルコレプシー(過眠症)の4つの症状と原因・対策とは?
6.悪夢障害
大人と比べ、子供は悪夢を頻繁に見ることが多くなっています。
人は寝ている間、脳の記憶部分を整理していると言われていますが、大人より怖い体験の多い子供は悪夢を見ることで、この記憶を整理、消化しています。
そのため悪夢を見たからと言って不眠につながることはありませんが、きちんと対処してあげないとこうした悪夢が続くことになり、怖くて眠れない不眠症に陥ってしまいます。
お子さんが悪夢を見る頻度が多い場合には、親の対処法が間違っているのかもしれません。
抱っこをして落ち着かせてあげたり、夜眠る前に楽しいことを思い出すなどすると不眠症につながりにくく、睡眠の改善がみられることがあります。
7.睡眠時遺尿症
赤ちゃんが夜寝ていておしっこをしてしまうことは良くあることですが、このおねしょが肉体的に健康であるにもかかわらず、5・6歳になっても治らない場合、それが原因となって十分な睡眠がとれないことがあり、そのことが不眠症の引き金となります。
睡眠時遺尿症は別名、夜尿症と呼ばれることもありますが、お漏らししてしまったことで起きてしまう、または、膀胱に尿が十分溜まっていないにもかかわらず排泄が我慢できないために起きてしまうなど様々な要因が絡み合い眠ることができなくなるケースがあります。
他にも、朝起きて親が気付きおねしょを叱ったことで、それがコンプレックスとなり、不眠の症状につながることもありますので、注意が必要です。
5・6歳になってもおねしょが治らないケースは全体の約20%、小学校低学年まで続くケースは10%、高学年になっても睡眠時遺尿症がある子供は5%もいるため、珍しいことではありませんが、成長とともに改善がみられることも多く、まずは様子を見るのが一番です。
ですが、自律神経の乱れや脳の発育が未熟で抗利尿ホルモンの分泌が少ないために起こる症状でもあり、睡眠をとることが睡眠時遺尿症改善の一番の近道となります。
寝る前にしっかり、排尿させたり、おねしょをしても精神的負担にならないよう親が叱らないことも、不眠症の改善につながりますので、心掛けてみると良いでしょう。
ただし、睡眠時遺尿症は稀に尿路感染症や尿崩症が原因のこともありますので、一度小児科で相談してみることも必要かもしれません。
成長過程とともに改善が見られないようであれば、また日常生活に支障がある場合には、専門家の手を借りて治療を行っていくと良いでしょう。
子供の不眠症改善に大切なこと
このように様々な原因が引き金となる子供の不眠症ですが、睡眠改善のためには原因そのものを排除することが一番重要です。
しかし、子供の場合、身体的な原因だけでなく、日々の生活に根本原因があることも多くなっていますので、まずは子供の生活を見直すことで対策を行っていくと良いでしょう。
毎日の生活の中で実行できる対策を紹介していくことにしましょう。
1.毎日同じ時間に起床させる
子供がきちんと眠るためには、まずは正しい体内時計を習慣づけさせる必要があります。
そのためにも毎朝同じ時間に起こしてあげましょう。
休みの日など、就寝時間が遅くなり、どうしても朝ゆっくり寝かせてしまうことも多いと思いますが、毎朝同じ時間に起きることで、正しく体内時計がリセットされますので、子供も夜心地よく睡眠に入ることができます。
そのためにも、起床後はすぐにカーテンを開け、日光の光の力を借りて、効果的に体内時計を修正していくと良いでしょう。
2.トリプトファンの含まれる朝食を食べさせる
朝食をとることと、夜眠ることは全く関係ないと思ってしまいがちですが、実は朝食をしっかりとることで心地よい目覚めと眠りを手に入れることができます。
人は目覚めると体温が上昇し、眠りにつくときには体温を下げますが、朝食をとることでこの体温の上昇効率が上がります。
つまりより快適な目覚めが手に入ると言う訳です。
また、朝食のメニューとしてよく食べる卵や納豆、ベーコン(肉類)や魚にはトリプトファンが多く含まれており、このトリプトファンは体内で形を変えて、質の良い睡眠に導いてくれます。
トリプトファンは、体内でセロトニンを作り出し、そのセロトニンは睡眠ホルモンの一つとして知られているメラトニンの材料となります。
十分なメラトニンが分泌されれば、良い睡眠が得られると言う仕組みがあります。
睡眠ホルモンの材料であるセロトニンが、その前の成分であるトリプトファンが不足してしまうと快眠することができないだけでなく、不眠症に直結してしまいます。
このトリプトファンは必須アミノ酸であるため、体内で作り出すことができず、毎日口から摂り入れる必要があります。
朝からトリプトファンを摂取することで、睡眠のための準備を整えられるのです。
子供にしっかり朝食をとらせ、眠りのホルモンそのものから改善していき、快眠につなげてあげましょう。
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>>トリプトファンを含む食品と睡眠効果とは?
3.眠る前のゲームやスマホは控えさせる
夜眠る直前までスマホやゲームをしている子供が最近多くなってきていますが、もし子供の睡眠の質を心配しているのであれば、眠る2時間から3時間前までにはスマホなど電子機器の使用をやめさせると良いでしょう。
特に光が強く、目のすぐそばで使うことの多いスマホなどは、その強い光が、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を抑えてしまうことがあり、継続して使用することで不眠の原因となってしまいます。
子供に使用を控えさせることは難しいとは思いますが、睡眠のためだと言い聞かせ、使用をできるだけ控えさせてみると良いでしょう。
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4.ストレスレスな生活を
ストレスは大人だけのものと言うイメージを持っている方も多いと思いますが、子供でも日々の生活でストレスを感じる場面があります。
初めての経験や緊張する体験、怖い思い、環境の変化、受験など色々なことがストレスとなっているのです。
こうしたストレスを上手に排除できることが不眠症には一番の対策となりますが、子供の場合、一人で解決することは非常に難しいと言えるでしょう。
親がストレスレスの生活環境を整えてあげたり、話を聞いてあげるなど対策を取ってあげるとベストです。
しかし、心がまだ発育過程である子供は例え親が対策を取ったとしても、完全に処理できずに思わぬ睡眠障害を引き起こしてしまうことも少なくありません。
ストレスはうつ病など心の大きな病気を招くこともありますので、様子を観察した上で必要であれば、専門機関に相談してみると良いでしょう。
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>>ストレスと不眠症の関係とは?原因と正しい解消法
5.夜の食事にも注意
子供の眠りのためには、夜口にするものにも気を使ってみると良いでしょう。
大人にとっては、さほど気になることのないカフェインもその一つです。
緑茶やコーラ、コーヒーなどには多くのカフェインが含まれています。大人にとっては、何でもないものでも子供にとっては眠りを妨げる原因となってしまいます。
また、夕食で消化に時間のかかる肉類や揚げ物を食べることも多いと思いますが、ステーキなどの肉類や揚げ物などは、消化まで約4時間もの時間を要します。
眠る時間に胃が働いているとなれば、当然その眠りは浅いものとなりますので、睡眠障害につながることになります。
夕食を早めの時間帯に変更したり、消化の良い食べ物に切り替える、夕食の時間帯に応じてメニューを考えてあげることも子供の睡眠問題を解決する方法と言えるでしょう。
6.適度な運動をさせる
最近では、小学校などでも放課後に遊ぶことが禁じられており、そのまま帰宅する子供が増えています。
また、学力を向上させるために塾に通うことも常となっているため、どうしても運動量が減少しがちです。
しかし、眠るためには適度な運動がとても重要。運動量が足りないと、体が疲れていないため、上手く眠りにつくことができません。
毎日運動を取り入れることは簡単ではありませんが、学校や塾へ行く際に歩いて通う、眠る前に単純なストレッチなどを行うことで、運動量を増やしてみると良いでしょう。
可能であれば、スイミングなどのスポーツ系の習い事を取り入れ、習慣的に運動量を増やす工夫をしてみましょう。
まとめ
最近では、大人ばかりでなく、子供の不眠症も多くなってきています。
しかし、子供の不眠症は大人よりも深刻です。
「眠たくなればそのうち寝るようになるだろう」「少しは眠れているから大丈夫だろう」などと軽視してはいけません。
不眠症を放置すると治療が困難になるだけでなく、うつ病や自律神経失調症など重症化するケースも少なくありません。
まずは、生活の見直しから始めていきましょう。
軽度の不眠症であれば、毎日の生活サイクルを見直すことで質の良い睡眠を取り戻すことができます。
子供の不眠対策はどれも継続がポイント。根気よく、子供と一緒に対策に取り組んでいきましょう。
温かい目で見守りながら、子供の睡眠改善を目指しましょう。
ただし、生活の対策だけで不十分なケースも考えられます。
一定期間対策を試みても改善が見られない場合には、速やかに専門医に相談することも大切です。
子供と二人三脚で治療に専念することも、スムーズな改善に向かえる方法の一つですので、親としてベストな判断をしてあげましょう。