
日本人のほとんどが、あお向け寝か横向き寝で寝ていると言われています。
2006年の春にとあるホテルで1200名余りの宿泊客からアンケートを取ったところ、あお向け寝が44.5%で、横向き寝が44.4%となっており、横向き寝には女性が多い事も分かりました。
そして実際に日本人の約43%が横向き寝だとの統計もあります。
しかし、普段から横向き寝をしている人の中には「朝起きた時に肩が痛いのはなぜ?」「横向き寝をしているから肩が痛いのかな?」といった疑問を抱えている場合も少なからずあるようです。
では、横向き寝は身体に良いのか悪いのか、横向き寝で肩が痛くなる原因は何なのかという疑問を解消するとともに、横向き寝の正しい寝姿勢や、横向き寝で肩が痛い時の対策などを紹介していくことにしましょう。
この記事の目次
東洋医学で正しい寝姿勢とされている横向き寝
寝る姿勢は、あお向け寝・横向き寝・うつ伏せ寝と大きく3つに分かれますが、うつ伏せ寝にあまり馴染みがない日本人は、あお向け寝か横向き寝で寝る人が大半を占めるようです。
ちなみに東洋医学では、健康を維持するには横向き寝がもっとも良いと古くから推奨されています。
横向き寝は、母親の胎内にいる時とほぼ同じような姿勢になるため、無理のない自然な形であり理想的な寝姿勢だと言い伝えられているのです。
横向き寝は左と右どっちが下がいい?
理想の寝姿勢とは、身体の右側を下にして、足を軽く曲げて身体がSの形になるような姿勢です。
重い肝臓がある右側を下にする事で、内臓や筋肉に負担をかけず、全身がリラックスしやすい姿勢です。
また、胃の出口がある右側が下になれば、消化吸収を促して身体への負担を軽減する事が出来ます。
そのため、食後すぐに右側を下にして10~30分横向き寝で休息すると痩せる、という夢のようなダイエット法まであるほどです。
ですが、必ずしも右を下にしなければならないとは限りません。
左側を下にして横向き寝をした場合も、リンパの流れが改善・心臓の負担を軽減・肝臓のデトックス機能アップ・脾臓の機能アップなどのメリットがあるからです。
また、妊婦さんには血液の循環を良くするために左側を下にして寝るのが適切だと言われています。
つまりどちらを下にして横向き寝をしてもそれぞれ良い点があるという事です。
睡眠中には何度となく寝返りを打つのですから、右左に関係なく寝つく時に楽だと感じる方を下にするのがベストです。
横向き寝で肩が痛くなる原因
枕が合っていない
普段から横向き寝をしている人が肩が痛いと感じる場合、もっとも多い原因として枕が合っていない事が挙げられます。
人間の頭というのはとても重く、枕が合っていないとその重みを肩や首で支える事になってしまうのです。枕を外して横向き寝をしてみると、頭の重みで肩と首が引っ張られる感じを受けるでしょう。
逆にあえて高すぎる枕を使って横向き寝をしてみると、肩や首にかなりの負荷を感じます。
そこまで極端ではないにしろ、枕が合っていないという事は、睡眠中ずっと肩や首に負担をかけているという事なのです。
また、枕が低い場合には肩がつぶれた状態になってしまい、血流が悪くなるのも肩こりの原因となります。
睡眠中には寝返りを打ちますが、どの寝姿勢になっても枕が合っていない以上、常に肩と首には負担がかかっている状態となってしまうのです。
寝返りを打つ回数が少ない
睡眠中にあまり寝返りを打たない人は、長い時間にわたって同じ方の肩を下にして寝ている事になります。
長時間の同じ姿勢は、起きている時でもつらいものです。
しかし睡眠中では自分で姿勢を変える事も出来ないため肩は圧迫されたままとなります。筋肉は、同じ姿勢を続けて動かさずにいる事で凝ってしまいます。
つまり睡眠中に寝返りを打つ回数が少ないと、同じ姿勢でいる時間が長くなり、肩の筋肉は動かされることもなく圧迫され続けるという事です。
この状態では、肩が痛くならない方が不思議ですね。
では、なぜ寝返りを打つ回数が少なくなるのでしょうか。原因は寝具にあると言えます。
マットレスや敷布団が柔らかすぎて身体が沈み込み、寝返りが打ちにくい状態かもしれません。枕がフカフカしすぎて頭が埋まり、向きを変えられないのかもしれません。
いずれにしても、今使っている寝具を見直す必要があるでしょう。
巻き肩になっている
「巻き肩」とは、肩の関節が身体の前方に巻き込まれてしまっている状態です。
デスクワークでのパソコンの使いすぎなど、前傾姿勢をとる時間が長い人が癖になりやすい症状で、スマートフォンを見る時の姿勢が原因となる人が多い事から「スマホ巻き肩」と呼ばれる事もあるようです。
また、横向き寝の習慣が巻き肩を増長するとも考えられています。
肩を下にして寝ると、肩甲骨は自然に開いて背骨から離れてしまい、肩が前方に巻き込まれるような姿勢になります。
この姿勢が癖になると、あお向けで寝ると背中に圧迫感を感じるようになり、楽な姿勢である横向き寝を続けるようになってしまうのです。
巻き肩になると、肩甲骨が前に引っ張られるため背中や肩甲骨周りが凝りやすくなって、肩の痛みや首の痛みを引き起こしてしまうのですが、あお向けで寝ると背中に違和感があるためやはり横向きで寝る、すると余計に巻き肩が悪化する、という悪循環に陥ってしまいがちです。
横向き寝の習慣があって肩が痛いと感じる人は、猫背や巻き肩になっていないかチェックしてみてください。
横向き寝で肩が痛い時の対策
自分に合った高さの枕とは
横向き寝で寝る時の理想的な寝姿勢とは、頭と首と背骨が真っ直ぐ並行になっている姿勢です。この姿勢になるには、枕が高すぎても低すぎてもいけません。
枕が高すぎると肩にも首にも負担がかかり、低すぎれば首が下がってやはり肩にも首にも負担となり、さらに肩がつぶされる事で血流も悪くなります。
今使っている枕で平行な状態が作れているか、実際に横向き寝になって誰かに見てもらってください。
見てもらう人がいない場合には、横向き寝で寝てみた時に深呼吸がしやすいかどうかで判断しましょう。
深呼吸がしづらければ、枕の高さが合っていないという事になります。タオルなどで高さを調節して、自分の身体に合った枕の高さを見つけましょう。
寝返りの回数は寝具で変わる
一般的に、睡眠中に寝返りを打つ回数の目安は20回位と言われています。
寝返りを打つ事で、長時間同じ姿勢になることなく身体の負荷を分散でき、血液やリンパの流れが良くなり、痛みの物質が溜まるのを防いでくれるのです。
ですから、身体に合っていない寝具を使っていると寝返りを打つのが難しくなって、寝ているだけで身体のあちこちに負担がかかってしまいます。
たとえばマットレスや敷布団、身体が沈みすぎて姿勢を変えにくくなっていませんか。柔らかな布団は気持ちが良いものですが、身動きが取れないようでは寝返りは打てません。
枕にしても、長年使っていけば徐々に弾力を失います。頭が埋まってしまうような枕では寝返りの邪魔になってしまいます。適度な高さと弾力を兼ね備えた枕を使用しましょう。
また、寝返りを打つのに充分な大きさも必要です。
頭を右に左にと向きを変えても、枕からずり落ちたりしないようなサイズの物を使ってください。
巻き肩のチェックとストレッチ
巻き肩のチェックをするには、まず真っ直ぐに立って、背筋は力を入れない程度に伸ばしましょう。そして、肩と腕の力を抜いて自然に両手を下に垂らしてください。
さて、あなたの手の甲はどっちを向いていますか。
手の甲が外側を向いているなら問題はありませんが、やや前を向いていたり、完全に前を向いていたら巻き肩の可能性大です。
力を抜いた状態で手の甲が前を向くという事は、前に向いている分だけ肩が前方に巻き込まれているという事になるのです。
毎日少しずつでもストレッチを行って改善していきましょう。座ったままでも立っていても出来る簡単なストレッチは『肩回し』です。
やり方としては、まず両肩に指先を付けます。
右の肩には右手の指先を、左の肩には左手の指先を付けて、肘を後ろから前へ、前から後ろへと回します。
この時、肘で大きな円を描くようなイメージで回し、肩甲骨が開いたり閉じたりするのを意識しましょう。
ゆっくりと大きく回してください。1回につき前後10回ずつを1セットとして、好きな時間に行いましょう。
肩が痛い原因が巻き肩にあるならば、ストレッチを行う事で改善されていきます。
横向き寝の人が枕を選ぶ時のポイント
横向き寝に合った高さとサイズの枕を選ぶ
高さと大きさ、ともに実際に横向き寝をして試してみましょう。あお向き寝と横向き寝では、必要な高さが違います。
首からの肩幅に合った高さがなければ、横向き寝では低すぎる事になり得るのです。一般的には、10cm前後の高さは必要だと言われています。
そして、寝返りを打てる充分なサイズとして、幅60×縦35cm程度は欲しいところです。
頭との接触面が広く三点をきちんと支えられるものを選ぶ
安定した寝姿勢とは、頭(後頭部)と肩と首、この3点をしっかりと支えて頭を安定させ、肩や首に負担をかけない姿勢です。
この姿勢で寝る事が出来れば、神経が圧迫される事もなく、睡眠中は常にリラックスした状態となり質の良い睡眠を得る事が出来ます。
そのためには、頭との接触面が広くなくてはなりません。
接触面が狭いと、点で支えるような状態になるため首筋が不安定になり、首を支える肩にも負荷がかかってしまいます。
また、頭から肩にかけて隙間があるようでは、首や肩が宙に浮いている状態となってしまい、やはり緊張を強いられます。
頭と肩と首、すべてがピッタリと密着して、なおかつ肩にも首にも負担がかからない高さと硬さがある枕を選びましょう。
低反発は弾力が弱い
肩首に負担がかからない硬さという意味では、低反発素材はオススメ出来ません。
低反発というネーミングに惑わされそうですが、低反発とはすなわち反発力が低いという事なのです。反発力がないと頭が跳ね返されることなく埋まってしまい、自然な寝返りを打つ回数も減ってしまいます。
寝返りが打てなければ、長時間同じ姿勢になってしまうため肩も首も凝ってしまうのです。
低反発の枕は、眠る時に頭を包み込んでくれる感覚で横になれるため寝つきは良いかもしれません。
ですが「朝起きたら肩が痛い」「首がだるい」という症状があるのであれば、寝返りがスムーズにできる硬さがあって、肩をしっかり支えて筋肉を休めてくれる高反発の枕がオススメです。
横向き寝専用の枕
市販の枕は、ほとんどがあお向け寝向けに作られている物です。そのため、あお向けで寝た時の高さが基準となっています。
ですが横向き寝をした場合は、あお向け寝よりも布団から頭までの高さが若干高くなります。そのため、横向き寝をした時に枕がしっくりこず、朝起きても肩や首が痛くなるのです。
しかし最近では、横向き寝で肩が痛いという人向けの「横向き寝専用枕」が市販されています。
横向き寝専用枕は横向き寝の時の頭の位置に合わせて設計されていますので、頭と首と肩が平行になりやすく肩を圧迫する事もなく、リラックスして眠れるようになり、肩の痛みも改善されることでしょう。
普段から横向き寝で寝る習慣がある人は、是非一度、横向き寝専用枕を試してみてください。
今まで紹介した内容を考えて作られた横向き専用枕「YOKONE」はオススメです。
「枕外来」がある整形外科院長、山田朱織先生の「自分に合った枕の作り方」
用意する物は、玄関マットが1枚とタオルケットが1枚ですが、必要があればバスタオルを使う事もあります。
<作り方>
1.まず玄関マットを蛇腹に3つ折りにします
2.次にタオルケットを、縦に2つ折りしてから横に2つ折りにします。
3.最後に3つ折りして玄関マットに重ねれば完成です。
後は、完成した「玄関マット枕」に頭を乗せて、タオルケットの枚数で細かく高さを微調整します。高ければタオルケットをはずし、低ければタオルケットを増やすといった具合ですね。
一番ベストな高さの目安は、呼吸がしやすく首が楽に感じる高さです。
また、横向き寝になって両手をクロスして胸に当て、身体の中心であるおでこと鼻と顎が一直線で床と平行、この状態であれば最適の高さと言えるそうです。
まとめ
横向き寝には、メリットもデメリットもあります。ですが、寝つく時の姿勢はそれほど重要ではありません。
それよりも、自分の身体に合った寝具を使う事が大事です。
睡眠中は意識がないため、少々身体に不具合があっても気づかないものです。
ですが、その不具合が積み重なっていけば睡眠の質は悪くなって、本来身体を休めるはずの睡眠が意味をなさなくなってきます。
私たちが生きていく上で、睡眠はとても重要な役割を持っています。
脳と身体を休める、機能を回復させる、損傷した部位を修復する、それらすべてが睡眠によって行われているのです。
良質な睡眠を得る事の重要性を再確認して、不眠症や睡眠障害などで健康を損なう事がないよう、今一度ご自分が使っている寝具を見直してみましょう。