
昔から「寝る子は育つ」と言われていますが、その理由をご存知でしょうか?
成長に睡眠が欠かせないのは当然だとなんとなく分かってはいるけど、人に説明できるほど理解しているわけではない、そんな方も多いと思います。
そこで、なぜ寝る子は育つと言われているのか、睡眠と成長はどう関係しているのか、背を伸ばすにはどのような睡眠方法が良いのかなど、効果的な睡眠をとるための具体的な方法も交えながらご説明していきます。
この記事の目次
「寝る子は育つ」って本当?
はい、本当です。
背を伸ばす、つまり身長を伸ばすためには「骨」が伸びなくてはなりません。
そして、骨を伸ばすには「成長ホルモン」と呼ばれるタンパク質が分泌される必要があります。
その成長ホルモンがたくさん分泌されるのは夜、寝ている間なのです。
ですから、眠るべき時間にしっかり眠った子どもは、成長が著しい時期に充分な成長ホルモンが分泌されるため、ちゃんと成長して背も伸びるのです。
もちろん、しっかり眠れていなかったからといって成長できないわけではありません。
ただ、成長しづらいとは言えそうです。
なぜなら、睡眠が不充分では骨をしっかり休ませることができないからです。
睡眠には、成長ホルモンの分泌だけでなく、横になって眠ることで骨を休ませる役目もあります。
人間が起きている間は、骨に対して常に縦方向の重力がかかっています。
骨が伸びようとしても伸びられない状態です。
しかし、横になって眠ることで骨は重力から解放され、やっと伸びることができるのです。
寝ている時間が長ければより骨は伸びて、結果的には背が伸びるというわけです。
睡眠時間と成長の関係
本来、小学生の適切な睡眠時間は9時間半~10時間半と言われており、中学生でも9時間程度は眠るように勧められています。
しかし現実には、日本の小学校で睡眠時間が8時間未満の子どもが31%、10時間以上の子どもは約4%となっています。
実際の平均睡眠時間は、小学生が8時間41分で、中学生は7時間46分です。
驚くことに、1~2時間近くも不足していることがわかります。
ところが世界では、9時間以上寝ている子どもが50%以上もいます。
フランスやイギリスに至っては、10時間以上の睡眠をとっている子どもが半分以上もいるのです。
つまり、世界から見ても日本の子ども達は圧倒的に睡眠が不足しているという事です。
スポーツにおいて背の高い相手に苦戦を強いられる場面が多々ある日本人ですが、日本人が欧米人のように高身長になりにくのは、多少なりとも睡眠時間の不足が関係しているのかもしれません。
背を伸ばすためには「成長ホルモン」の充分な分泌が必須
「寝る子は育つ」というのは成長ホルモンの充分な分泌によるものですが、では成長ホルモンとはどのような役割を持っているのでしょう。
成長ホルモンとは脳の下垂体から血液中に分泌されるタンパク質で、このホルモンが血管を通して体内を流れていくことで、軟骨組織に働きかけて骨を伸ばしてくれるのです。
また、体内のあらゆる部分に関わるタンパク質の合成を促す働きもあるため、骨だけでなく骨を支える筋肉や皮膚をも成長させてくれます。
ですから、この成長ホルモンをたっぷり分泌させることが、背を伸ばすことや成長には欠かせないのです。
さらに、成長ホルモンには身体全体の細胞を新しくしてくれる役割もあり、ケガや病気の回復にも大いに貢献しています。
そしてもちろん、大人の美と健康にとっても重要なホルモンです。
「成長ホルモン」を充分に分泌させるには
成長ホルモンがもっとも分泌されやすいのは夜です。
それも、22時~2時の間がとくに活発になると言われています。
ただし、この時間に寝てさえいればいいという事ではありません。
成長ホルモンを活発に分泌させるには条件があるのです。
深い眠りに入っていること
睡眠で大事なのは「睡眠時間」と「眠りの深さ」です。
睡眠は、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」の2つに分けられます。
寝ついてすぐはまずノンレム睡眠になり、この最初の深い眠りでもっとも多く成長ホルモンが分泌されるのです。
この時間が22時~2時の間であれば言う事なしですね。
寝ついて最初に訪れるノンレム睡眠は、個人差はあるものの約70~90分間と言われていますが、この深い眠りに入って初めて成長ホルモンは分泌されます。
もし不眠症になってしまっていると、やっと寝ついても眠りが浅かったり度々起きたりで、成長ホルモンは分泌されにくくなってしまいます。
最近では子どもの不眠症や睡眠障害も少なくありません。
適した時間帯に適した睡眠時間をとれていないと、身長だけでなくさまざまな成長に支障をきたしてしまう可能性も出てきますので注意してあげましょう。
空腹状態であること
成長ホルモンが睡眠時に分泌されるのはご存知の方も多いでしょうが、意外に知られていないのが「成長ホルモンは空腹時に分泌される」という事実です。
成長ホルモンが分泌されるには「血糖値が下がっている」状態が必要です。
ですから、たとえ22時~2時の時間帯に熟睡していても、満腹に近い状態では血糖値が上がったままなので成長ホルモンが分泌されづらくなってしまうのです。
また、胃や腸の中に食べ物が残っていると眠りが浅くなってしまいます。
寝ている間は消化機能が低下しますが、それでも消化しようと血液が胃や腸に集中するため内臓はしっかり休むこともできません。
身体がちゃんと休めていないと深い眠りに入りづらく、翌日まで疲れが持ち越してしまうこともあります。
夕食は、寝る3時間前までに済ませておくようにしましょう。
あまりお腹が空きすぎても睡眠の妨げになりますが、だからといって夜食などは厳禁です。
背を伸ばす睡眠方法5か条
成長ホルモンを充分に分泌させて背を伸ばすには、質の良い睡眠を心がけることが大事です。
成長期の子どもに必要な生活習慣を挙げてみましたので、日々の生活に取り入れてみてください。
1,寝る直前までテレビやスマホなどを見ない
テレビやスマホなどの画面をみることは視神経を興奮させてしまう原因でもあり、刺激を与えるため精神的にも興奮した状態になってしまいます。
せっかく身体が寝ようとしているのに脳が起きたままでは、睡眠の質が落ちてしまい深い眠りにも入れません。
深い眠りに入れなければ成長ホルモンが分泌されにくくなり、背を伸ばす妨げとなってしまいます。
もし寝る直前までテレビを見る習慣があればやめるようにして、せめて寝る1時間前までとしましょう。
また、寝る前のストレスも快眠の妨げとなります。
布団に入ったらリラックスして眠りにつけるよう、ちょっとしたお説教や小言などは次の日に持ち越しましょう。
寝つきが悪くなると不眠症の引き金となる場合もありますので、心静かに眠れるようにしてあげてください。
2,寝る1時間くらい前の入浴を習慣にする
睡眠においての入浴には2つの利点があります。
1つは、興奮する作用がある交感神経を抑えて、リラックスする働きがある副交感神経を優位にするという利点です。
入浴前に見ていたテレビ、友達とのLINEやメールでのやり取りなど、湯船にゆったりと浸かることで、たくさんの興奮材料から解き放ってくれます。
2つ目は、深部体温の上昇です。
人間は、身体の内部の深部体温が下がることで眠気が起きます。
そこで、湯船にじっくり浸かって身体の中から温め、体温を上げて、身体の表面の血流を良くすることで外部へ熱を放出しやすくします。
すると、お風呂から上がった後の深部体温は、入浴で上がった分だけよけいに低くなっていき、より深い眠りに入りやすくなるのです。
体内の臓器の働きも低下していき、休息しやすい状態になります。
入浴後は徐々に深部体温が下がっていきますので、就寝時間のおよそ1時間前、冬場の寒い日なら30分前にはお風呂から上がっているようにしましょう。
3,質の良い睡眠には運動が必要
子どもならば、体育の時間などで身体を動かす機会も多いでしょう。
大人の場合は、なかなか時間が作れないなどの理由で身体を動かすことは少ないかもしれませんね。
ですがやはり、良質の睡眠をとるためには適度な運動が必要です。
ストレス発散という観点から見ても、運動が担っている役割は大きいものです。
ただ、睡眠という視点で考えると、運動する時間帯がとても重要になってきます。
まず、寝る前にジョギングをするなどの激しい運動は論外ですね。
脳も身体も交感神経が活発になってしまって、眠れる状態ではなくなるためです。
もっとも効果的なのは午前中の運動で、夕方までに運動を終えるのが望ましいと言われています。
夜にウォーキングをしている方も見受けますが、できれば朝起きてすぐに朝日を浴びながら行う方がより効果的ですよ。
朝日には睡眠のリズムを作る働きもありますので、まさに一石二鳥です。
また、寝る前に行うならヨガや軽いストレッチがいいでしょう。
ヨガの呼吸法は瞑想に通じるものがあり、寝つきを良くする効果があります。
汗をかかない程度の軽い運動でより良い眠りを手に入れてください。
4,睡眠環境を見直す
心地良く眠れる環境も、質の良い睡眠のためには欠かせないものです。
寝室は眠りやすい環境ですか?外からの騒音がうるさかったり、光が入って明るかったり、部屋が散らかっていたりしていませんか?
部屋が散らかっていたら片付けさえすれば解決しますが、音や光で眠りにくい環境であれば、耳栓やアイマスクなどを使ってみるのはいかがでしょうか。
音や光を遮断することで、スムーズに寝つくことができます。
そして、寝具も重要なポイントです。
柔らかすぎる布団や枕は、身体や頭が沈み込んでしまいます。
すると寝返りが打ちにくくなって、同じ姿勢のままで長時間眠ることになり、血流が悪くなってしまいます。
肩こりや腰痛を訴えるようなら要注意です。布団だけでなく枕も見直してみましょう。
適度な弾力と高さのある、寝返りのうちやすい、身体にフィットした寝具に替えてあげてください。
また、子どもは新陳代謝が活発なので寝ている間にもよく汗をかきます。
そのため、寝汗がベタついて寝苦しくなり、眠りが浅くなってしまうこともあります。
オーガニックコットンなどの、汗をかいてもすぐに吸収して乾かしてくれる、かつ頻繁に洗濯してもへたらない素材のパジャマを着せて寝かせましょう。
5,起床時間は一定にする
休みの日など、普段なら起きている時間なのにとくに予定がないからダラダラと寝ている、なんて事はないでしょうか。
さらに、ご飯を食べたらまた眠くなって昼寝をしてしまい、夜になると目が冴えてしまって眠れないということはありませんか?
これらはまさに睡眠の質を下げる行動です。
休みの日はのんびりと過ごしたいものですが、そのしわ寄せはすべて翌日以降に回ってきてしまいます。
まず、ずっと寝ていたい気持ちもあるでしょうが普段と同じ時間、もしくは30分から1時間ほど遅い時間には起きるようにしましょう。
たとえ、明日は休みだからと前夜に寝るのが遅かったとしても、起床時間を大幅に変えてはいけません。
また、昼寝は30分以内で昼の3時頃までにしてください。
それ以降に長時間寝てしまうと、夜になってもいつもの時間に眠れなくなってしまいます。
睡眠のリズムを乱してしまうのは簡単ですが、元に戻すのは思っているより大変です。
ヘタをすれば、そのまま戻らずに睡眠障害を患う危険性さえあるのです。
大人に限らず、子どもでも睡眠障害に悩まされているケースは少なくありません。
休日前だからと多少の夜更かしは大目に見ても、起こす時間は出来るだけ一定の時間にしましょう。
まとめ
「寝る子は育つ」は本当だと言えますが、問題は睡眠の質です。
質の良い睡眠がとれていなければ育ちにくくなります。
そして、子どもが良質な睡眠をとってすくすくと成長してくれるためには、家族の手助けが必要になってきます。
子どもが寝たら大きな音を立てない、テレビの音が漏れないよう小さくする、寝る前には叱らない、夕食は寝る3時間前には済ませる、寝る前の入浴、朝は決まった時間に起こすなど、毎日の小さな習慣を大事にしてあげましょう。
塾や習い事でなにかと忙しい現代の子ども達、親御さん達も忙しい毎日を送っておられることでしょう。
ですが、この時期の子どもの睡眠がいかに大切かを心に刻んで、できる限り質の良い睡眠がとれるよう支えてあげてくださいね。