
「GABA(ギャバ)」と聞いてはじめに思い浮かべるのがチョコレートいう人は多いと思います。
『ストレス社会で闘うあなたに』というキャッチコピーで売り出された一口サイズのチョコレートで、この商品こそチョコレートやココアの原料であるカカオに含まれる「GABA」という成分に着目し、GABAという名前を世に広めたお菓子ではないでしょうか。
実は、GABAというのは脳や脊髄に多く含まれているアミノ酸の一種です。
そして、このアミノ酸を摂取することでメンタルバランスを整えるというのが、チョコレートの「GABA」のコンセプトです。
GABAの効果は、主に血圧低下・中性脂肪の抑制・腎臓機能の強化・リラックス効果など多岐に渡ります。
チョコレートのおかげで、ストレスに効果があることはよく知られていますが、それ以外にも一般的に知られていない作用がたくさんあります。
その一つが『安眠効果』です。
不眠症などの睡眠障害にGABAはどのくらい効果的なのでしょうか?また、GABAを摂取した際には副作用はあるのでしょうか?
今回はGABAの睡眠効果と副作用について検証していきます。
この記事の目次
GABA(ギャバ)とは?
GABAは1961年に中枢神経を抑制する伝達物質として医療用薬品に認定されました。正式名称をγ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)と言い、英語名の頭文字をとって「GABA」と呼ばれています。
<脳や脊髄に多く含まれるアミノ酸の一種で、その効果は様々です。経口摂取することで得られる効果は多く、食品への応用も積極的に研究されています。
GABAの歴史について
GABAが初めて発見されたのは1950年、哺乳動物の脳からでした。
この発見によって研究や検証実験が進み、GABAが抑制系神経伝達物質であることが判明したのです。
GABAを主成分にして医療用医薬品が承認されたのは1961年、その間にはGABAが消化官にも神経伝達物質として作用していることが解き明かされるなど、およそ10年間の間にGABAの研究は大いに進みました。
その後、GABAという名称が一般に知られるようになってきたのは1984年頃になります。
GABAを含んだお茶によって、リラックスの効果や脳細胞の代謝が活発になるなどの働きが徐々に注目されるようになったのです。
そして2005年には、ストレスの多い現代人に向けたGABA含有量の高いチョコレートが発売され、その知名度は一気に知られるようになりました。
現在では、その他の食品にも活用されるようになり、さらなる研究も進んでいます。2001年以降は食品成分としても定められ、医薬品としての扱いを超えた幅広い活用に期待が高まっています。
不足したらどうなる?
GABAは神経伝達物質なので、精神的な興奮作用効果のあるドーパミンやグルタミン酸と同じ物質です。
同じ神経伝達物質としても、ドーパミンやグルタミン酸と異なる点は、GABAは興奮物質の過剰分泌を抑えて神経を穏やかにする抑制の働きです。
ですので、体内のGABA量が不足しているとドーパミンやグルタミン酸の活動を抑える役割をする物質が弱く、精神的に高ぶった状態が続いてしまいます。
睡眠に関することで言えば、夜布団に入っても目が冴えてなかなか眠れないという状況が多くなります。寝つきの悪い人はGABAが足りていないということが、原因の一つとして考えられるでしょう。
近年の研究でも、長い間不眠症に悩まされている人は、睡眠障害のない正常な状態の人と比較して、およそ3割体内のGABA量が不足しているということが分かってきました。GABAが不足することで睡眠の質が悪くなり、不眠症になりやすい可能性が出てくるのです。
GABAが活動を抑制しているドーパミンとグルタミン酸の作用についても触れておきましょう。
ドーパミン
ドーパミンは生体内アミンの一種で「カテコラミン」という物質にカテゴライズされます。普段食べている食物の中に含まれている「フェニルアラニン」や「チロシン」などがアミノ酸の元になり、そこからドーパミンは作られています。
興奮作用や気持ちを昂らせる働きがあるため、ドーパミンが分泌されているときには食べることも忘れて何かに没頭していることも多く、趣味など好きなことをしているときには「空腹を感じない」ことが起こります。
実際にそのような体感したことがある方も多いのではないでしょうか。
グルタミン酸
グルタミン酸は旨味成分として知られていますが、体内で生成することができる非必須アミノ酸の一種です。
ドーパミン同様、興奮神経物質で、アンモニアなどの毒素を分解し尿の排出を促す効果もあります。脳を活性化する作用があるので、記憶力を向上させたり認知症の予防にも効果的であると言われます。
ただしグルタミン酸を過剰摂取すると脳細胞に影響を及ぼす恐れがあるので、摂り過ぎには注意が必要です。
不足する理由は?
人間の脳は、ドーパミンなどによる興奮作用をGABAの抑制作用によって抑えることで均衡を保っています。
しかし現代社会におけるストレス過多でGABAを異常消費するため、体内の絶対量が足りていない人が増えてきています。
現代人がどのくらいストレスを感じているのかと言えば、ストレスを感じる頻度を調査した統計によると、毎日ストレスを感じる人が約24%、週に2~3回程度ストレスを感じる人が約18%となり、ストレスを感じないと答えた人の割合を除くと、全体では週に2回以上はストレスを感じる人が半数にも及ぶという結果があります。
このような調査結果からも、現代社会で働く人の多くが何かしらのストレスを抱えているのが浮き彫りになりますし、日々ストレスが蓄積されて不眠症になる人が増加したり、うつ病を患ったりと、現代社会は体にも心にも不調があらわれやすい環境にあるのです。
不足による不調
体内のGABA量が不足すると抑制神経の働きが弱まるため、興奮したり精神的に高ぶった状態が続き、些細なことでイライラしたり、体と心のバランスが取れにくくなって気分が落ち込むなど、悪化すると病気になってしまう可能性もあります。
GABAにはリラックス感を促す作用もありますが、その効果が得られず人によっては睡眠障害に陥ることもあるのです。
GABA量が不足すると不眠症になりやすくなるだけでなく、体に不調があらわれ、その不調による睡眠障害を併発する恐れさえ出てきます。
GABAと睡眠の関係
GABAは睡眠や健康に欠かせない神経物質ですが、実はこのGABAという物質は、睡眠中に生成されています。
言い換えると、サプリメントなどから摂取せずにGABAを増やすためには、睡眠が不可欠ということです。
しかし、GABAはストレスによって減少しますので、日中強いストレスにさらされ、それが積み重なり体内GABA量が不足した状態が続くと、夜の寝つきが徐々に悪くなっていきます。
GABAが減少したタイミングで不眠症になってしまうということは「GABAが生成されない=夜眠れない」という悪循環に陥ってしまいます。
このサイクルを何の対応もせずに脱却するのは恐らく難しいでしょう。
効果的な摂取方法
強いストレスの元、GABA不足に一度陥ってしまった場合、体内のGABA量を増やすためには食事やサプリメントで外部摂取を行う必要があります。
手っ取り早く体内量を増加させるにはサプリメントを利用する方法もありますが、できれば食事から摂取できる方が望ましいです。
GABAは穀物や野菜、果実や発酵食品など植物性食品に多く含まれているので、ストレスを感じたときはもちろん、日頃から積極的に摂るようにすると良いでしょう。
食事からの摂取
野菜類ならトマトやナスなどの夏野菜、主食としても食べられるのはじゃがいもやかぼちゃです。
キャベツやニンジンにも含まれますので、食事の際には献立にサラダをプラスするなどの工夫をすると良いでしょう。
デザートに果実類を食べるときには、ぶどうやみかん、柿などを選ぶようにします。季節によっては柚子やビワ、ネーブルなどにも多く含まれるので取り入れてみてください。
発酵食品ではぬか漬け、発芽玄米、キムチなどに多く含まれます。
中でも発芽玄米の中には多くのGABAが含まれていますので、毎食ではなくても良いので、3回の食事のうち一食は玄米にするなど、生活習慣上無理のない範囲で白米から玄米に変えてみることもおすすめです。
このようにGABAは食事からも摂取できる物質なので、できるだけ規則正しく栄養価の高い食事をするように心がけてみましょう。
それだけでも睡眠の質はいくらか改善される可能性があります。
サプリメントからの摂取
食事から摂取しGABAの効果を実感するのに継続が大事なため、すぐに効果を実感したいという人にはサプリメントがおすすめです。
サプリメントで摂取する場合には、1日あたり100mg以上のGABAが含まれているものを選びましょう。
サプリメントに含まれる成分の中に、ラフマ葉が配合されているとGABAの作用をより高めてくれます。
他にグリシンやテアニンが含まれているものであれば、睡眠改善効果がより高まるでしょう。サプリメントには、他にどのような成分が配合されているかにも注目して選ぶと良いですね。
GABAの副作用
GABAはあまり副作用がないとされていますが、実際には摂取量によっては問題が発生することもあるようです。
特に大量摂取には注意が必要で、1日1000mg以上を摂取した場合、動悸・息切れ・吐き気・痙攣などの症状があらわれる恐れがあります。
GABAは1日あたり100mg程度が適量とされているため、1000mgのように適量を超えての過剰摂取はやめておきましょう。
逆に10mg程度では摂取量が少なすぎるためGABAの効果はあらわれにくくなるようです。ただし、少量の摂取でも、人によっては息苦しさや呼吸が浅くなるケース、また顔や手足に痺れが出ることもあるようです。
サプリメントでGABAを摂取する際は、不安感や吐き気などいつもと違う異変を感じるようなことがあれば、すぐに使用をやめて医師に相談しましょう。
また持病があり薬を飲んでいる場合や高血圧、うつ病などを患っている時にも、摂取前にかかりつけの医師に相談してから取り入れるようにしてください。
摂取後に得られる睡眠効果
GABAを摂取すると、体温が下がるという報告があります。
人間の体は体温が低下すると眠気を感じるようになっています。この眠気は体温が下がることで感じる自然な眠気です。人間の体は基本的に昼間と比べて夜間には体温が下がるようになっています。
なぜなら日中は体を動かしたり活動することで自然と体温は上がるのですが、夜は体を動かさないためにそれほど体温を高く保つ必要もありません。
体は夜になり睡眠モードに入るので代謝が低下し、そうすると体内ではあまりエネルギーが発生しなくなります。
体が眠る準備に入るため深部体温は下がるので、つまり、睡眠というメカニズム自体が体の深部温度を下げているということになります。
夜は眠らなくても体温が下がりますが、眠ることでさらに体温は低下します。
ですので、体温が高すぎると質の良い睡眠を得ることができませんし、質の良い睡眠を得るためには深部体温を下げて眠りのための準備をする必要があるとも言えます。
体温を下げる方法はGABA量を増やす以外に、入浴することで行えます。入浴後は体が冷めることで体温が下がり、そうすると自然に眠気がやってきます。
体内のGABA量を増やし、眠る前の入浴によってダブルで体温を下げる準備をすれば、睡眠改善はより効果的になるでしょう。
GABA摂取で成長ホルモンが増加
GABAには内臓の働きを活発にする効果もあります。
主に血液中のコレステロールを下げたり、中性脂肪に作用しますが、他に成長ホルモンの分泌を促す働きもあります。
成長ホルモンは疲労回復や組織の修復など主に体のメンテナンスを行うホルモンです。ノンレム睡眠時に分泌が増えるため、不眠症の人は分泌量が少ない傾向にあります。
GABAには成長ホルモンの分泌を促進する効果があるので、睡眠障害の人は分泌量の少ないホルモンを補うこともできます。
まとめ
夜寝る前にドーパミンやグルタミン酸が強く影響していると、興奮して眠りにつくことは難しいですが、体内のGABA量が十分であれば、その昂りを抑えて眠りにつきやすい体の状態は自然と作られます。
さらにGABAはその体温を下げる効果で睡眠をサポートしてくれるのです。
もしサプリメントなどでGABAを摂取する場合には、この効果を発揮させるため、睡眠の30分から1時間前に摂取することをおすすめします。
睡眠が改善されると体の疲れが残らないため、頭がすっきりしてストレス耐性も出てきます。
また昼間にしっかりと活動できるとその晩もまた質の良い睡眠をとることができ、起床と睡眠のサイクルが徐々に正常化してきます。
次の日に大事なプレゼンテーションがあるときや、緊張するシーンが想定できる時には、あらかじめGABAを摂取しておくというのも一つの方法です。
生活の中にGABAをうまく取り入れることで、ストレス緩和や質の良い睡眠、そしてリラックス効果が得られるぜひ活用したいアミノ酸です。
ただし摂り過ぎると副作用が出る可能性があるので、必ず適量を守って摂取しましょう。量と用法を守れば、今の社会に生きる現代人の強い味方となってくれるはずです。