
悩みや不安、仕事でのストレスなどを抱えていると、どうしても寝付けなくて慢性的に眠れないという不眠症になってしまいます。
不眠症を解消するために病院に行って睡眠薬を処方してもらったり、ドラッグストアで睡眠改善薬などを利用して不眠症を解消する方法もありますが、やはり自宅で、自分自身の不眠症を解消していくことが大切です。
自分で不眠症改善のためにできる方法としては、日頃からの食べ物や食習慣を見直すことがあります。
私たちの体は毎日口にする食べ物によって大きく影響されています。
不眠症についても日頃から不眠に影響する食べ物を避け、不眠症に効く食べ物というのがありますので、そのような食べ物を意識的に摂取していくのが効果的です。
では不眠症に効果のある食べ物とはどのようなものがあるのか、またどういった成分が睡眠にいいのか見ていきましょう。
この記事の目次
不眠症を緩和する物質と食べ物
日本人はストレスを抱えて不眠症に悩んでいる人が非常に多く、国民の2割ほどが何らかの睡眠に関する悩みを抱えていると言われています。
眠りたいのに眠れないというのは想像以上に苦しいもので、眠れないと言うこと自体がストレスになり不眠症を悪化させます。
不眠症を甘く見て放置するのは不眠症を慢性化させるので避けることが大切ですが、食べ物の中には食べることで睡眠を深くしたり、目を覚ましにくくさせる作用を持つものがあります。
セロトニンと不眠症
セロトニンはドーパミン、ノルアドレナリンと共に三大神経伝達物質で心の安定を作ります。
セロトニンが不足すると精神的に不安定な状態になりやすいので、不眠症だけでなくうつ病を発症してしまう場合もあります。
セロトニンは心の安定や安らぎと非常に大きな関係がある物質で「幸せホルモン」と言われ、セロトニンが睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促し、自然な睡眠を生みだすのです。
セロトニンが不足するとなかなか眠れないという入眠障害になりやすい傾向があります。
セロトニンを増やすためには早寝早起や日中に太陽の光を浴びて運動すること、食べ物をよく噛むこと、腸内環境を良くするといった方法がありますが、セロトニンを増やすためにはトリプトファンという物質が必要となります。
ですが、このトリプトファンは体内では作られない物質ですので、食事などから体内に積極的に摂ることが大切です。
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セロトニンとトリプトファン
セロトニンは腸内や血液内などを中心に全身に存在していますが、精神の安定や睡眠に作用するセロトニンは特に脳内にあるセロトニンとの関係が深いとされています。
なぜなら腸内に多く存在しているセロトニンは体のバリア機能が働いていることもあり、残念ながら脳内に侵入することができないのです。
睡眠を促すための脳のセロトニンは脳内で作る必要があります。
脳内でセロトニンを生成する場合、ほう線核という器官で作られますが、その際に必要な物質が「トリプトファン」です。
トリプトファンは体内で生成することができない物質なので体外から食べ物で補う必要があります。
トリプトファンが多く含まれている食べ物
睡眠を促すセロトニンという物質を脳内で生成するために必要なのがトリプトファンですが、トリプトファンは体内で生成されないために食事などから体内に補給する必要があります。
ですのでトリプトファンが多く含まれている食べ物を食べることが重要です。
トリプトファンはたんぱく質をたくさん含む食べ物に多い傾向があります。
例えばトリプトファンが多い食べ物の種類として
・豚肉
・牛肉
・鶏肉
・その他肉類全般
・スジコ
・たらこ
・クロマグロ
・カツオなどの魚類
・パスタ
・米、蕎麦などの穀類、
・チーズ類
・ごま、ナッツ類、
・豆類、
・バナナ、
・牛乳
・納豆
などに多く含まれています。
ただし、肉類や魚類など動物性たんぱく質に含まれるBCAAというアミノ酸はトリプトファンを脳内へ届きにくくする性質があるために、動物性たんぱく質からトリプトファンを摂取するよりも植物性たんぱく質からトリプトファン摂取する方が、脳内でセロトニンを生成する材料として使いやすいでしょう。
摂取するための料理
不眠症を改善するために必要なトリプトファンはいろいろな食べ物に含まれているので、基本的にはバランスの良い食生活をしていると自然にセロトニンを生成するために必要な量を摂取できます。
バランスの良い食生活を送るためにも、できるだけ簡単で楽しく、美味しく、季節にあった旬の食材を使ってトリプトファンを体内に上手に摂取していくといいでしょう。
朝食などにはバナナを一口大に切って、ヨーグルトをかけたバナナヨーグルトがおすすめです。
手軽にできるので毎日食べるのも苦になりませんね。
マグロをしょうゆに漬け込んだものをご飯の上に乗せて、マグロどんぶりなどは簡単で美味しいレシピです。
また、チーズや牛乳などの乳製品と穀物を使ったリゾットやパスタも良いですし、冬ならば豆乳をベースにした豆乳鍋というのは栄養もたっぷりで、体も温まります。
トリプトファンの含有量が多いからという理由で一つの食べ物に固執するのではなく、毎日植物性たんぱく質を豊富に含んだ食材を使ってバランスの良い食事を考えましょう。
摂るのに有効な時間帯
トリプトファンを食べ物によって体内に取り込むことで脳内物質であるセロトニンが生成されて、セロトニンが睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促します。
このことからも体内にトリプトファンが摂取されてから睡眠に直接影響するメラトニンの分泌までにある程度の時間が必要になるため、就寝直前にトリプトファンを含む食べ物を摂取してもあまり睡眠には効果がありません。
つまり、トリプトファンを摂取してその日の夜にしっかり眠りたいというのであれば、朝食か昼食でトリプトファンを摂取するようにしましょう。
1日の摂取量
トリプトファンの通常の必要摂取量は体重1キロあたりで1ミリグラムのトリプトファンが目安とされています。
体重が40キロの人は40ミリグラムのトリプトファンの摂取が最低必要となります。
良い睡眠をとるためには、できるだけ多くのトリプトファンを摂取すると効果的ですが、通常の食事だけで摂取不足を感じるのであればトリプトファンのサプリメントを利用すると良いでしょう。
気をつけなければいけないのは、トリプトファンの摂取過多です。
1日に6000ミリグラムを超える過剰摂取を毎日続けていると肝硬変や肝機能障害など体への健康被害の問題もありますので注意しましょう。
ただし、普通の食生活をしていてトリプトファンの過剰摂取になることはまずありませんので安心しましょう。
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グリシンと不眠症
グリシンとはアミノ酸の一つで、甘みやうま味、静菌作用がありグルタミン酸と同じく調味料として使われています。
グリシンは睡眠を改善したり、抗うつ効果があったり、美肌効果があることがわかってきました。
人間は夜になると日中に上がった体温を下げることによって眠気を生み、良質の眠りを得ることができます。
眠るためには体温を下げることが需要になってくるのですが、グリシンには血管を広げる作用があり血流を増やす効果があります。
血流が多くなると体の深い部分の体温を下げることにつながり、入眠に良い効果を及ぼすのです。
眠っていると深い睡眠のノンレム睡眠と浅い睡眠のレム睡眠が交互に訪れますが、そこにグリシンを摂取すると深い睡眠であるノンレム睡眠の時間を増やすことができるとされています。
グリシンはアミノ酸から生成できるので体内でも生成できますし、食べ物からも摂取できるのでバランスの良い食生活を送ることで基本的には不足することはないと考えられています。
グリシンを多く含む食べ物
グリシンを多く含む食材には、伊勢えび、クルマエビ、うに、ほたて、ズワイガニ、クロマグロなど魚・甲殻類や牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類などの動物性たんぱく質があります。
動物性たんぱく質よりも含有量は減りますが油揚げ、納豆、枝豆などの豆類もグリシンを多く含む食べ物です。
いつどれくらい摂取する?
睡眠を促すためには就寝前にグリシンを3グラムほど摂取することで深い睡眠を得られるといわれていますが、あまり就寝直前に飲食すると内臓が休まらないという、他の理由で睡眠を妨げかねません。
そこで睡眠を邪魔しないためにも就寝時間の2~3時間前までの食事でグリシンを摂り入れるようにしましょう。
また、胃がもたれて睡眠を妨害することを避けるためにも、油をできるだけ使わない方法で調理しましょう。
その他の不眠症改善物質
酸化リアル
酸化リアルという物質は、疲労回復に効果のあるビタミンB1の吸収を良くし、体内でビタミンB1を保持しやすくします。
酸化リアルはたまねぎの匂いとしても知られていますが、たまねぎの摂取はビタビンB1の摂取につながるので神経を落ち着かせて、リラックスしやすくなり睡眠を促し不眠症改善効果が期待できます。
クワンソウ
クワンソウとは眠り草と呼ばれ、沖縄や石垣島で不眠症改善するために昔から食べられている伝統的な野菜です。
マウスを用いた科学的実験でもクワンソウは睡眠を促す効果があると実証されています。
クワンソウを摂取することで深い眠りに入っている時間が通常の1.5倍になったというデータもあります。
クワンソウに含まれるオキシビナタニンが活動量を減少させるために脳が休息できることで熟睡度が上がります。
残念なのは、沖縄地方でないとなかなか入手困難な地元野菜の食べ物ということです。
テアニン
お茶に含まれるテアニンは心地よい眠りを促す成分とされています。
テアニンを摂取すると脳が沈静化されてリラックスするのでα波が出て、良質の眠りを得ることができることから不眠症の改善成分ととして注目されています。
テアニンを摂取するためにはお茶から摂取するのが良いのですが、カフェインレスのお茶から摂取することが大切です。
その為にも麦茶やハーブティーなどのお茶を選びましょう。
就寝前に大量に水分を摂ると安眠できませんので、量は1~2杯が適量です。くれぐれもお茶の飲み過ぎには注意しましょう。
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DHA
脳は、ほとんどが脂肪により形成されています。
同じ脂質で脂肪酸であるDHAは脳内に欠かすことのできない物質であり、脳内に入ることのできる栄養素の一つでもあります。
脳にDHAが十分に蓄えられているとセロトニンの分泌がスムーズになります。
また、DHAはセロトニンの働きを促進する効果があるとされていますので、睡眠と関係の深いセロトニンが精神状態をリラックスさせ、さらには睡眠の質が上がると言うわけです。
DHAはマグロ、さば、さけ、さんま、いわしなどの魚類に多く含まれています。
GABA(ギャバ)
GABAは神経伝達物質で、目を覚ます作用を抑制するので不眠症改善の効果があると考えられています。
GABAを摂取することで心穏やかになり、リラックスすることができるので効果的です。
GABAはバランスの良い食事をしていれば自然に体内で生成されますが、不規則でバランスの悪い食生活をしているとGABA不足となり、リラックスの度合いが下がります。
GABAを効率よく摂取するためには、主に発酵食品を摂取することが重要です。
キムチ、チーズ、ヨーグルト、特に発酵玄米などは普通の白米の約10倍のGABAを含んでいるので1日お茶碗1杯分を食べるだけで1日に必要なGABAを充分摂取することができます。
睡眠を妨げる食べ物
カフェイン
カフェインは日中に眠気を感じたときや集中したい時には非常に効果のある物質ですが、裏を返せば、睡眠を妨げる物質ですので特に不眠症の人が夜にカフェインを含むものを口にすると眠れなくなってしまいます。
カフェインはリラックス効果があるので夜に飲むことで非常に精神が安定するのですが、カフェインに弱いという人が摂取すると、その覚醒効果が8~14時間ほど持続します。
このような人は夜だけでなく昼間にカフェインを摂取したということが、夜の睡眠を阻害していることにもなりかねませんので注意しましょう。
カフェインを多く含む飲み物には、コーヒー、エスプレッソ、紅茶、日本茶、コーラなどがあります。
また、ちょっと疲れたときに飲むというような栄養ドリンクにはカフェインがほぼ入っているので注意しましょう。
コーヒーなどのカフェインは効果が表れるためには30~40分の時間が必要ですので、コーヒーを飲んでも、飲んですぐに眠ればあまり影響はないかもしれません。
寝酒は逆効果
夜になかなか寝付けないので寝酒にちょっと一口だけ日本酒を飲んだり、ウィスキーを飲んで眠るほうが良く眠る事ができるという人がいます。
確かに、アルコールを眠る前に飲むとアルコールに弱いという人は特に眠気が一気に来て、気分もほろ酔いになってリラックスして眠りやすいかもしれませんが、実は寝酒というものは睡眠を妨害するものなのです。
入眠は良くても、夜中に何度も起きてしまうというような中途覚醒の睡眠障害を引き起こしやすいので注意しましょう。
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まとめ
良質の睡眠を促すためには脳内にセロトニンという物質を生成することが大切で、そのためにはトリプトファンという物質を多く含む食事をすることが大切です。
また、グリシンという物質は血流を良くして睡眠を促します。
これらの物質はバランスの良い食生活を送っていると基本的に摂取不足ということはありませんが、バランスの悪い食生活を送っている方は不足してしまう物質です。
不眠で悩んでいる場合は、まず日頃から眠りに良い効果があるとされる食品を中心にバランスの良い食事を心掛けるようにしましょう。