
入眠障害とは、寝床に入ってもなかなか眠りにつくことのできない症状の不眠症です。寝つくまでに30分から1時間かかるのであれば、入眠障害である可能性が高いです。
通常では、布団に入ってから平均14分ほどで入眠すると言われていますので、入眠に30分~1時間もかかるのは相当長いということになります。
とは言っても、このように寝付きの悪い日が時々あるだけなら、入眠障害ではありません。
仕事が休みの朝に思い切り寝坊して、いつもより睡眠時間が長かった日や、明るいうちに少し長めの昼寝をしてしまい、夜あまり眠くならないことなどは、誰にでも起こり得ることです。
このようの場合であれば、特別に心配する必要はありません。
この記事の目次
入眠障害に加齢は関係しない?
入眠障害は、年齢による影響をほとんど受けません。
夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」や、朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」タイプの不眠症では、年齢につれて有症の確率が高まりますが、入眠障害にはその傾向はありません。
成人の約8%は寝付きの悪さに悩んでいるという統計調査の結果もありますが、その結果においても寝付きの悪さと年齢に大きな関係性はないとされています。
入眠障害かどうかの見極め方
入眠障害かどうかを判断するためには、セルフチェックも有効ですが、個人の感じ方でも判断ができます。
もし寝付くまでに日々30分以上の時間がかかっていたとしても、それが苦痛ではなく、日中の活動に悪い影響がなければ、その場合も入眠障害ではありません。
あくまでも「寝つきが悪いことで苦痛を感じていたり、生活に支障が出ているかどうか」が、入眠障害のポイントとなります。
一般的には、入眠までに時間がかかることが毎日だったり、特別な理由がなくても眠れないという場合など、眠れないことが習慣となっているケースでは入眠障害の可能性が高く、寝付きが悪いことで十分な睡眠時間がとれていない場合があります。
慢性的な睡眠不足は、気がつかないうちに少しずつ集中力を削いでいくため、仕事のミスや家庭内での怪我に繋がる恐れがあります。
疲れが取れない原因にもなるので、しっかり対策していきましょう。
人はどうやって眠っている
脳と体の眠る準備が出来ていなければ、もちろん寝付きは悪くなります。
眠る準備として必要な体の状態には、以下の3つが挙げられます。
・交感神経が緊張していない
・脳内から睡眠物質であるメラトニンが分泌されている
・適度な低体温
この3つが揃うことで、睡眠の準備が整って眠ることができるのです。
入眠障害では、脳と体が何かしらの原因によって眠る準備が整っていないことになります。
眠りの準備を妨げる入眠障害の原因にはどんなことが挙げられるのか、その対策としてはどうすればよいのかを次で見ていきましょう。
入眠障害を引き起こす原因と対策
<入眠障害の原因その1>
精神的なストレス
入眠障害第一の原因は精神的ストレスです。
人の脳は、眠る前に記憶の整理をします。
意識的に行っているのではなく、脳の働きとして自動的に思い起こすことが多いため、今日あった出来事や明日のスケジュールなどを整理する人もいますし、悩み事や考え事をする人もいます。
寝付きの良い人であれば、何も思い出さずに寝てしまう人もいるでしょう。
この眠る前の時間に、何かしらのストレスを持っている人は、ネガティブなことを考えてしまう傾向にあります。
そうすると、交感神経が活発になり寝付くのが難しくなってしまうのです。
本来、交感神経は日中の活動時間に優位となる神経ですので、血圧や血糖値を上げる働きをしています。
体の活動をサポートする自律神経ですので、交感神経が活発になると体が起きた状態と何ら変わりがないため、寝付けなくなってしまうのです。
▼対策としては
ストレスが原因で眠れないときは、ストレス状態を緩和してあげることが有効です。まずは、寝る前にリラックスタイムを作ってみましょう。
カフェインの入っていないハーブティーなどのドリンクを飲んだり、音楽を聴いたりして気持ちを落ち着けます。
特に香りには精神的を安定させる作用があるので、アロマを取り入れるのも良いでしょう。入浴時にバスアロマを使ってみたり、オイルマッサージなどで体を休めてあげてください。
また、寝る1間前からは照明を間接照明に切り替えるなど、強い光を見ないようにすることも、精神的に作用します。
寝る前の読書は、続きが気になってしまったり、脳を活性化させてしまうので、控えた方が良いでしょう。
<入眠障害の原因その2>
体温が高いままになっている
入眠時、体温は約1℃まで急激に下がります。これは大人も子供も同じです。
体温が低下することで、これまで活動していた脳と体が休息し、眠る準備に入るのです。ですから、体温が高いと寝付きが悪くなることになります。
就寝前は、体が寝る準備を始めるため、本来であれば体温を下げようと温度調節がされるはずですが、夜遅くに食事をしたり、寝る前に熱いお風呂に入るなどの生活習慣によって、体温を上げてしまっているのです。
▼対策としては
体に入眠準備をさせるためには、体温を上げる行動を控える必要があります。
仕事でどうしても帰りが夜遅くなる場合には、胃や腸に負担をかけない食事を摂るようにしましょう。
高カロリーの食事は、消化のために体が燃焼するため体温が上がってしまいます。消化の良い食品か、できるのであれば会社で早めに食事を済ませてしまいます。
あまりに時間が遅くなるようであれば、晩はスープなどで終えて、朝食でカロリーを摂ります。
熱いお湯に浸かるとサッパリはしますが、体には負担がかかってしまうので、38~440℃程度のぬるめの入浴にとどめましょう。
また、体温の調節には手足の末端から熱を放出して温度を下げようとしています。この体温度調節を邪魔しまいようにするのも大切です。
冬場は布団の中で体が勝手に温度調節をしてくれますし、寒い場合は体が冷えないように毛布を足すなどするため、比較的調整が簡単です。
ところが、夏場はエアコンで体が冷えすぎると、今度は体が危機を感じ、生命維持のため体温を上げようとします。そのため、逆に寝付きが悪くなってしまうのです。
エアコンはドライ機能などを使って室温を下げすぎないように気をつけましょう。
<入眠障害の原因その3>
強い明かりを見すぎている
現代人の生活では、寝る直前までパソコンやスマホの画面を見るのが習慣化していますが、目から強い光が入ってくると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられてしまい、入眠の妨げになります。
メラトニンは500ルクス以上の明るさの下で分泌が減少します。
リビングの蛍光灯の明るさが大体300~500ルクスのため、パソコンやスマホ、そこにテレビの光が加われば、寝る前のリビングではメラトニン分泌が減少する明るさにあるということです。
▼対策としては
やはり眠る2時間前くらいには強い光を見ないようにしましょう。寝る前のパソコン・スマホはもちろん、できればテレビも消した方が良いでしょう。
寝る前にメールのチェックくらいしたいという人は、画面の照度を落とすようにしましょう。
テレビはラジオに切り替えるなどの工夫も大切です。就寝の1時間前には、蛍光灯の明かりから間接照明に切り替えるだけでも効果があります。
何気なく寄っている仕事帰りのコンビニも意外と強い明かりのため、帰りの遅い人はなるべく寄り道せずに帰る方が得策です。
<入眠障害の原因その4>
体内時計がズレている
体内時計がズレていると寝付きも当然悪くなります。
体内時計はメラトニンの分泌をコントロールしているため、このリズムが崩れるということは、メラトニンが分泌されるタイミングも崩れることになります。
毎日起床時間が決まっている人は体内時計が乱れることはあまりありませんが、深夜勤務や交代勤務で働いている人は、特に体内時計が乱れがちです。
日中眠り深夜に活動する人は、太陽の光を浴びる機会が少ないため、体内時計の遅れを戻せなくなることが多く、入眠障害を発症しやすいのです。
通常であれば、夜は眠り、朝は起きるという睡眠のリズムのはずが、体内時計の周期が後方にずれることで夜になっても眠れなくなってしまいます。
体内時計はもともと24時間よりも長い周期で動いているため、体内時計を毎日調整しなければ、眠る時刻が少しずつ後ろへずれていくのです。
眠る時刻が後ろにずれるということは、通常眠る時間に眠れず、ひどい場合には夜ベッドに入っても明け方に眠くなるということも起こり得ます。
▼対策としては
体内時計のズレを直すには、太陽の光を浴びることが必要となります。
日中活動する人はそれほど意識しなくても、朝日光を浴びていると思いますので、毎日自動的に体内時計を調整していますが、夜型の人や夜勤の場合には、一日中全く日光に当たらない可能性も考えられます。
そんなときは、メラトニンのサプリメントを使うのも一つの方法です。
体内時計ズレに慣れてしまうと睡眠相後退症候群という別の睡眠障害を引き起こす可能性もあるため、入眠障害の自覚がある場合には早めに対処しましょう。
まとめ
入眠障害は症状が悪化することで睡眠時間自体が短くなるケースもあるのです。
仕事や子供の学校の支度などで起きる時間が決まっているのにもかかわらず、夜眠れないことで、寝不足が慢性化してしまいます。
寝不足は脳を鈍化させるため、仕事でミスをしたり、場合によっては事故や怪我にもつながってしまうことも。さらに眠れないことがストレスになってしまい、ひどくなるとうつの発症や日中に全く活動できなくなってしまいます。
夜眠れないだけ・・・と安易に考えるのは非常に危険です。症状が軽いうちに、早めの対処法を心がけ、症状の改善を目指しましょう。