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欧米人に多い大人の「うつぶせ寝」メリット・デメリットと枕の選び方

  • 最終更新日:2017.07.26
  • 公開日:2017.07.25
欧米人に多い大人の「うつぶせ寝」メリット・デメリットと枕の選び方

「うつぶせ寝」とは「腹臥位(ふくがい)」とも言い、文字通り、胸やお腹などを下にして寝る事です。

そして、仰向けや横向きを中心として眠っている生活に、うつぶせ寝を組み込むことで身体に良い効果を得ようとする療法を「腹臥位療法(ふくがいりょうほう)」と言います。

医療の現場では、高齢者や障害者が安静にし過ぎたり長期間動かさずにいたりすることで起こる障害、全身や局所が機能しなくなったり形が変わってきたりという障害を、予防・改善するために行う事があります。

また、呼吸器系に問題を抱えている患者さんへの治療法としても利用されています。

しかし、一般的にはあまり知られていない睡眠方法で、実践している人も少ないのではないでしょうか。

では、うつぶせ寝によって得られる良い効果とはどのような事なのか、デメリットはないのか、うつぶせ寝をする時は何に気を付けるべきなのかなどをまとめてみました。

大人でも欧米人に多い「うつぶせ寝」

大人でも欧米人に多い「うつぶせ寝」

 

日本人は、赤ちゃんの時から仰向け寝をしています。

日本は昔から布団の文化であるため、赤ちゃんをうつぶせに寝かせると窒息してしまう危険があるからです。

そのためお母さんは、母乳やミルクを飲ませた後に赤ちゃんを抱っこして背中を軽くさすり、ゲップをしっかり出させてあげてから仰向けに寝かせます。

このような赤ちゃんの頃からの文化的習慣で大人の日本人には仰向け寝が多いのでは、と言われています。

ですが欧米では、母乳やミルクを飲んでいる赤ちゃんはうつぶせ寝でした。

現在では安全面から赤ちゃんの仰向け寝が推奨されていますが、やはり昔からの習慣などでうつぶせ寝にするお母さんが今でも少なくないようです。

その習慣からでしょうか、欧米人には大人でもうつぶせや横向きで寝る人がほとんどです。

そのため、日本人に多い肩こりや腰痛も少ないと言われています。

 

赤ちゃんと高齢者は要注意!

うつぶせ寝とは、自分自身で体勢を変えることが出来る大人が行うべき寝方です。

寝返りが打てない赤ちゃんは鼻や口を塞いでしまう事があり、乳幼児突然死症候群(SIDS)の原因にもなってしまいます。

自分で寝返りが打てる生後6ヶ月頃までは仰向けに寝かせてあげましょう。

また、高齢者がうつぶせ寝をする場合は、呼吸のトラブルや、骨が弱っていたり脆くなっている事もあり得ますので、自己判断でせずに医師の指導や管理の下で行ってください。

 

うつぶせ寝で得られる良い効果とは?

うつぶせ寝で得られる良い効果とは?

自然に腹式呼吸になり睡眠の質が上がる

うつぶせで寝ると、胸を圧迫されていかにも呼吸がしづらそうに見えますが、実は仰向けで寝るよりも深い呼吸が出来るのです。

私たちは睡眠中に腹式呼吸をしており、腹式呼吸の時の肺は横や背中側に大きく膨らみます。

ところが仰向けに寝ると、腹式呼吸の際に開く助骨の動きがブロックされてしまい、肺が膨らみきれずに呼吸が浅くなってしまいます。

それがうつぶせ寝になると、逆に胸式呼吸の際に開く助骨の動きをブロックして、腹式呼吸の際に開く助骨がゆるみ、横隔膜が下がって肺にたくさんの空気が入り、自然に腹式呼吸が行えるのです。

腹式呼吸を行うには横隔膜が充分に働く必要があるわけです。

そして睡眠時に腹式呼吸になるという事は、1回の呼吸が大きくなって空気を換気する量も増え、肺が大きく膨らむことで筋肉も大きく動き、筋肉の大きな動きによって代謝もアップしまう。

呼吸が深くなるため睡眠の質も上がり、短時間でも疲れが取れる、まさに理想の睡眠法だと言えます。

 

うつぶせ寝は、いびきや睡眠時無呼吸症候群を予防する

睡眠中にいびきをかいてしまう大きな原因と言われているのは、舌が喉の奥に沈み込んで気道を塞いでしまう事です。

しかしうつぶせ寝なら、舌の付け根が重力で落ちてしまう事もなく、舌が気道を塞ぐ事もありませんのでいびきの軽減につながります。

また、自然に気道が確保されるため「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」のように、気道圧迫によっておこる症状の改善や予防にもつながるのです。

睡眠時無呼吸症候群の人は安定した深い呼吸が出来ないため、酸素不足となって身体が覚醒状態になったり、夜中に何度も目が覚める中途覚醒と言われる睡眠障害を起こしたりと、非常に質の悪い睡眠となっています。

ですが、うつぶせ寝をする事で腹式呼吸となり、大きくて深い呼吸が楽に出来るようになります。

呼吸がスムーズに行えるようになると、眠りも深くなって良質な睡眠を得ることができます。

不眠症など睡眠障害でお悩みの方も、一度うつぶせ寝を試してみるのもいいかもしれませんね。
関連記事
>>睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状と、自分でできる4つの対策

 

 

血行が良くなり脳の働きも活性化する

私たちの身体は、背骨の前に太い動脈が通っており、常にたくさんの血液を運んでいます。

ですが、仰向けに寝る事でその太い動脈は内蔵に圧迫されてしまい、全身の血液の流れが悪くなってしまうのです。

しかしうつぶせ寝をすれば、動脈は内蔵の圧迫から開放されて、血液の流れが良くなり身体も温かくなります。

うつぶせ寝は、血行を良くするには一番適した寝方と言えるかもしれません。

そして、血行が良くなると代謝も上がり、免疫力アップにもつながります。

また、脳卒中や不整脈などを予防する効果も期待出来ます。

さらに、腹式呼吸で酸素が充分に取り込まれる事で血液中の酸素濃度も上昇し、血行が良くなる事で脳に充分な酸素が供給されるようになり、脳の働きも活発化するというわけです。

ちなみに、うつぶせ寝の姿勢の場合、骨盤周辺の筋肉の緊張が緩和されて血行が良くなるため、痔の改善に効果的だとも言われているようです。

 

痰(たん)を排出して雑菌の増殖を防ぐ

とくに女性が嫌がる痰やよだれには、吸い込んで肺や気管につまった雑菌や古い細胞を身体の外に出すという大事な役目があります。

そして、痰やよだれは疲れが溜まるほど排出量が増加するので、なるべく早く体外に出さなければなりません。

ですが、仰向けで寝ていると、痰もよだれも外に出ることが出来ずに気管や食堂の間を行ったり来たりする事になり、ウロウロしているうちに雑菌が増殖して、空咳が出たり肺炎の原因になったりもします。

しかし
うつぶせ寝なら、痰やよだれが出やすくなって雑菌が増殖するのを防ぐ事ができ、気道を塞ぐ心配もありません。

「寝ているうちによだれが出てるなんて汚いし恥ずかしい」と思われるかもしれませんが、痰もよだれもいつかは排出しなければならない雑菌や古い細胞です。

うつぶせ寝で気管がキレイになってくれば分泌されなくなりますので、数日間だけ辛抱しましょう。

 

うつ伏せ寝の悪い影響

うつ伏せ寝の悪い影響

 

身体にたくさんの良い効果を与える「うつぶせ寝」ですが、正しい体勢と正しい方法で行わなければデメリットも生まれてきます。

たとえば、
うつぶせ寝は仰向け寝に比べて胸部に圧迫を与える姿勢になりますが、正しい体勢で寝なければ圧迫する力は強くなり、長時間にもなると身体に大きな負担がかかります。

また、うつぶせ寝では下を向いて寝ますので、顔は横を向く事になり、うつぶせ寝で顎にかかる負担重量は仰向け寝より5kgほど多くなります。

ですから、
あまり長い時間同じ体勢を続けていると、歯並びが崩れたり、顎を不自然な方向に押さえ続けることによって起きる「顎関節症」になってしまう事も考えられます。

そして、顔を横に向けて寝るという事は、首や肩を多少ねじって寝る事になります。

首がねじれている状態は頸椎に負担をかけてしまい、頸椎の前弯カーブが損なわれてストレートネックを招く要因になると指摘する人もいます。

さらに、長時間同じ姿勢をとる事によって、首や肩や背中にかかる負担は増していき、首の痛みや肩こり、背中のつっぱりを引き起こす事にもなり得ます。

もし腰を反らせるようなうつぶせ寝をしてしまうと、腰痛までも招いてしまいます。

加えて
女性の場合、うつぶせ寝で胸部のクーパー靭帯(乳腺提靭帯)に負担がかかり、バストの下垂や型崩れの原因になるのではと言われています。

そして、うつぶせ寝では顔が枕や布団に触れている状態となるため、寝具の痕が肌に残ってしまう可能性があります。

ガーゼを1枚敷くなどひと工夫すれば大丈夫でしょうが、敏感肌などで肌への負担や衛生面を重視した場合には、うつぶせ寝はあまりオススメできません。

 

大人のうつぶせ寝の正しい方法

うつぶせ寝にはメリットもデメリットもあるため賛否両論あるようですが、正しい体勢で寝ればデメリットを防ぐ事もできます。

重力に逆らわずに身を任せて、自分なりの楽な、呼吸がしやすい体勢を探しましょう。

まず、お腹のおへそ辺りに幅の広い柔らかい枕を置いてその上にうつ伏せになります。顔を左右どちらかの楽だと感じる方へ向けて、枕の中心ではなく端に乗せます。

次に、顔を向けている方(顔が右向きなら右側)の腕と足を上げて、肘と膝を窮屈にならない程度に曲げます。

そして反対側の腕と足は伸ばします。この体勢の時、身体と布団の間にすき間があると無理な姿勢になります。

胸の下や脇などにクッションやタオルなどを差し込んで、自然な呼吸が出来るよう高さを調整してください。

自分が一番くつろげる体勢を探してみましょう。

 

うつぶせ寝は枕やクッション選びがポイント

うつぶせ寝は枕やクッション選びがポイント

 

うつぶせ寝をする時は枕やクッションを選びますが、使う場所によって硬さを変える必要があります。

おへそ辺りに置く大きめの枕は、体重がかかっても身体を包み込んでくれるような柔らかい物が良いでしょう。

頭を乗せる枕は、上半身を支える役目もありますのでしっかりした作りを選びましょう。

あまり柔らかすぎると、顔が沈み込んで呼吸が苦しくなったり、頭が沈み込んで寝返りが打ちにくくなります。

ですが、硬すぎると胸部への圧迫が強くなります。

自分好みの適度な硬さを選んでください。

また、うつぶせ寝用の抱き枕などを使うのも良い方法です。



 

絶対に無理をしない

これまでうつぶせ寝をした事がない人は、急にうつぶせ寝をすると違和感や窮屈さを感じるかもしれません。

最初のうちは少々息苦しく感じますが、腹式呼吸に切り替わったら逆に楽な呼吸が出来てきます。

もしいつまでも呼吸がしづらかったら、その体勢は合っていないのかもしれません。

体勢を変えてみるか、いっそうつぶせ寝を止めた方が良いでしょう。

それでも「身体に良いはずだから」と無理に続けてしまうと、関節痛や腰痛や脱臼骨折などを引き起こす事もあります。

うつぶせ寝は、楽で呼吸がしやすい体勢でなければ意味がありません。

それどころか、逆に身体に負担をかけるだけです。

うつぶせ寝でしっくり来ない場合は、横向きとうつぶせの中間、半うつぶせ寝から始めてみてはいかがですか。

 

うつぶせ寝は長時間しない方がいい?

うつぶせ寝は長時間しない方がいい?

 

うつぶせ寝で楽な体勢を、とは言っても首や肩や顎には少なからず負担がかかっています。

あまり長い時間同じ姿勢のままだと負担はさらに大きくなって、首の痛みや肩こり、歯並びの崩れや顎関節症になってしまう原因となるのは否定出来ません。

女性の場合はバストへの影響も無視出来ませんね。

これはうつぶせ寝に限った事ではありませんが、私たちはずっと同じ姿勢のまま何時間も眠るより、寝ている間に何十回も寝返りを打つのが望ましいのです。

むしろ子どもや健康な人ほど多く寝返りを打ちます。

ですから、うつぶせ寝にしても長時間行う必要はまったくありません。

睡眠は寝付いてから最初の15~30分が重要なので、その間さえうつぶせ寝をしていれば効果は得られます。

ただし、大きすぎたり柔らかすぎる枕やクッションは、寝返りを打つ邪魔になるかもしれません。

くれぐれも枕とクッションは、寝返りの事も考えて慎重に選んでくださいね。

 

まとめ

まとめ

 

寝る時の体勢というのは、自然と本人が楽な姿勢を選んでいるようです。

仰向けでしか寝付けない人もいれば、誰に勧められたわけでもなく気付いたらうつぶせ寝をしていたという人もいます。

まして、寝付いた時の姿勢はどうあれ、寝返りを打つことで色んな姿勢になるのですから、あまり一つの寝方にこだわる必要もないと思います。

ですが、これまでうつぶせ寝が選択肢になかった人が試しに行ってみたら意外に熟睡出来た、というケースもあります。

慣れてくればより深い眠りに入れる場合も多いので、不眠症で眠れない人や、睡眠障害を抱えて悩んでいる人、睡眠時無呼吸の傾向がある人など、一度うつぶせ寝を経験してみるのも良いのではないでしょうか。

そしてもし、快適な睡眠や深い眠りを実感できたら、無理のない範囲で続けてみてくださいね。

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