
もっと眠っていたいし、まだ起きる時間ではないのに目が覚めてしまう…このような症状が出るのが早期覚醒という不眠症です。
一般的にお年寄りは早起きだと言われますが、実は早期覚醒というケースが大半を占めています。
「起きようと思っている時間より早く目が覚めてしまう」「目が覚めた後にもう一度眠ることができない」と言った2つの症状が週に3回以上あり、その状態が何か月も続くようであれば、早朝覚醒である可能性が高いです。
この記事の目次
早期覚醒は年齢に関係する
早期覚醒は中途覚醒と同じように年齢が上がるにつれて症状が出やすくなります。また、早期覚醒は男性にあらわれやすいという特徴があります。
ただし、早期覚醒は年齢に関係なく『うつの初期症状』としても見受けられるため、慎重な判断が必要となります。
早期覚醒を引き起こす原因と対策とは
<早期覚醒の原因その1>
生理的な睡眠時間の減少
早期覚醒は加齢によって症状が出てくることが多く、実際に主な症状に悩む方の多くが高齢者です。
個人差はあるものの、人は年齢が上がるにつれて睡眠サイクルがどうしても短くなります。
通常、夜になると眠くなり、朝になると目が覚めるというサイクルであり、そのサイクルを司っているのが体内時計です。
体内時計は一般的に24時間よりも少し長めの24時間10分~25時間ほどに設定されていることが多いのですが、このサイクルが加齢によって年々短くなっていきます。
体内のサイクルが24時間よりも短くなれば、朝早く目が覚めることになっていくのです。
このようにサイクル自体が短くなっていくのには、日中の活動量も深く関係しています。
加齢によって活動量が低下し、日中にあまり動かないでいると、暗くなってから寝ようとしても、以前よりもエネルギーが使われていないため、交感神経の切り替えがうまく行えず、眠りが浅くなり中途覚醒の割合も高くなっていきます。
それに加えて、昔はもっと眠れたのにどうしてだろうと不安に思う気持ちや、今晩も眠れなかったどうしようという焦りがストレスとなり、余計に眠れない状態になってしまうこともあるのです。
ストレスは交感神経を刺激してしまうため、眠りたいのに眠れなくなるという悪循環に増々陥ってしまいます。
▼対策としては
加齢による睡眠サイクルの減少は生理現象でもありますので出来るだけ気にせず、可能な限り日中の活動量を増やすように心がけましょう。
仕事や家事・育児などで体を動かし、趣味や好きなことに取り組み、スポーツなども積極的にしてみることで、心地よい疲労感が得られ、眠りは深くなっていきます。
<早期覚醒の原因その2>
体内時計の乱れ
個人差はありますが、私たちの体は加齢による生理現象として睡眠時間が少しずつ短くなっていきます。
それは元から備わっている体内時計のサイクルが短くなるためですが、体内時計のサイクルが短くなる要因としては、生活習慣の変化なども関係します。
通常の睡眠のリズムであれば、眠り始めて3時間頃にノンレム睡眠という深い眠りがやってきます。睡眠サイクルの中では浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を3~5回ほど繰り返して朝を迎えますが、このレム睡眠とノンレム睡眠は脳や体の疲れを回復する役割を担っています。
しかし、生活習慣の乱れや加齢に伴う日中活動の減少によって睡眠が浅くなると、夜中や朝早く目が覚めやすくなってしまうのです。
夜中に1度ぐらい目が覚めることはどんな人にもあることですが、夜中の覚醒回数が多くなると、早朝覚醒の原因につながります。
そして、早朝覚醒で朝早く目が覚めたときに、まだ夜明け前にもかかわらず家事や運動などの活動を始めると、その活動に合わせて睡眠ホルモンであるメラトニンが早めに分泌されるため、夜も早く眠くなり、そして翌朝も朝早くから目が覚めるという悪循環に陥ってしまいます。
入眠時間と起床時間が慢性的に前進してしまう状態を、「睡眠相前進症候群」と言います。この状態も睡眠障害のひとつで、高齢者に多いのが特徴です。
▼対策としては
早期覚醒を防ぐ対策としては、体内時計を正常に戻すことが必要となります。これには「高照度光療法」という方法が効果的です。体内時計は2500ルクス以上の強い光に反応するという特徴があり、この特徴を利用して早朝覚醒を予防、改善させます。
朝早く目が覚めたときは、出来るだけ強い光を見ないようにしましょう。カーテンの隙間から朝日が差し込んでいるようであれば、遮光カーテンなどで部屋を暗くするなど寝室環境を整え、朝早くに強い光を見ないように工夫します。
そして、眠気が強くなってくる夕方に、光を取り込みしっかりと部屋を明るくしましょう。目から入ってくる光を意図的にコントロールすることがポイントです。
夕方に強い光を浴びて体内時計のリズムを後ろにずらすことができれば、前倒しになっている睡眠サイクルを後ろ倒し、睡眠時間を伸ばすことにもなるので、早朝覚醒を改善できるというわけです。
高照度光療法を専門的に行う場合には、専用機器も必要となりますが、まずは太陽の光や部屋の明かりを上手く調節して早期覚醒を改善させていきましょう。
早い時間に朝日を浴びてしまわないよう寝室環境を整えたり、寝るまでは十分に部屋を明るく保つ、就寝時に間接照明をやめてみるなどの方法を続けてみましょう。
<早期覚醒の原因その3>
うつ病の可能性
早期覚醒の症状がある場合、うつ病を発症しているケースも考えられます。その場合には、朝早く目が覚めてしまうという他に、これまで好きだったことに興味がなくなったり、何もやる気が起こらなかったり、気分が落ち込みがちだったりと、気持ちにも変化があらわれます。
うつ病は約10%の人が経験すると言われている病気です。脳内の神経伝達物質の働きが悪くなり、ストレス、病気、環境の変化など、複数の要因が絡み合うことでうつを発症します。うつ病によって早期覚醒が引き起こされている場合には、うつ病の治療も並行して行うことが必要です。
▼対策としては
朝早く目が覚める以外にも、気分の落ち込みや気持ちの変化など、いつもと違う症状があらわれていると感じるようであれば専門機関の受診が一番の対策と言えます。うつ病は個人で判断することが難しい病気であるため、自己判断は危険です。
うつの症状があるかもしれないと思いながらも、医師の受診を受けない場合、治療が困難になるケースも珍しくありません。「もしかしてうつからきている早期覚醒?」と感じた場合には、とりあえず一度医師の診察を受けておくと安心と言えるでしょう。
<早期覚醒の原因その4>
寝具が合っていない
朝早く目が覚める早期覚醒の要因として、寝具が体に合っていない場合も考えられます。起床時に腰や首に痛みを感じるのであれば、その痛みによって目が覚めてしまっているケースが考えられるのです。
気がつきにくいですが、経年劣化により枕やベッドなどの寝具が体にフィットしてくれなくなります。体の痛みや寝ているときの姿勢に無理が生じることで、無意識のうちに目が覚めてしまうことがあるのです。
対策としては
寝ている状態で、寝返りがしにくい、朝起きると体のあちこちに痛みを感じると言う方は寝具の見直しをしてみましょう。枕やマットレスなど体を支えるすべてのものをチェックしてみてください。
もし、クッション性が悪くなってしまっているものや形が変形しているものがあれば、新しいものに交換しましょう。最近では体にフィットする寝具をオーダーメイドで制作してくれる店舗も増えてきています。
睡眠障害を改善するためですので、自分の体に合った良いものを選んでみても良いかもしれません。
まとめ
他にも早期覚醒は、年齢に関係なく、運動不足のために眠りが浅くなっている可能性が考えられます。
仕事や家事で忙しい人は日常生活の中で積極的に動いているように感じている方も多いようですが、実はそれほど運動量がないということも多いのです。ある程度体が疲労していないと、深い睡眠を得ることは難しいと言われています。
自分で運動量が不足していると感じている人は、出勤時に一駅分歩いてみる、もしくは自動車での買い物をやめて自転車にしてみるなど、日常生活の中で少しでも体を動かすよう心がけましょう。ジムなどでしっかり運動できるのであれば、リズム感のある運動を行ってみてください。
リズム感の必要な運動は、脳内物質であるセロトニンを増やす効果が期待できます。セロトニンは夜になると睡眠ホルモンのメラトニンに変化し、夜眠りやすくしてくれる働きをしてくれます。ランニングマシンやジョギング、エアロビクスなど音楽を使うスポーツを積極的に取り入れてみるといいでしょう。
いずれにしても朝早く目が覚めてしまうのには、「眠りが浅い」という原因が根底にありますので、まずは夜ぐっすりと眠れるように対策を取ってみることがベストと言えるでしょう。