
一昔前までは、羽毛布団や羊毛布団はとても高価な寝具でした。一組購入するのにローンを組むこともあったぐらいです。
もちろん、今でも羽根布団や羽毛布団は高級品ですし、それこそ分割でしか買えないようなとても高価なものもあります。
とはいえ、昔に比べれば羽毛布団も羊毛布団も手に入れやすくなり、化学繊維の布団も、軽くて暖かい質の良い物が出回っています。
毛布も然りです。
重くないのに温かい、肌触りの良い毛布がたくさんあります。
ですが、羽毛布団を使う人も増えて布団や毛布は日に日に進化を遂げているのに、性能と機能の変化に関係なく、従来通りの敷き布団を敷いて毛布を掛けその上に掛け布団を掛けて寝る、という順番で寝ている人がかなり多いようです。
その、昔ながらの方法で寝るのは正しいのでしょうか。
私たちは、布団や毛布の温める機能を有効に活用できているのでしょうか。
そこで今回は、最近話題にもなっている、毛布の正しい使い方についてご紹介したいと思います。
毛布は掛け布団の下にするか、それとも上にするか、毛布の位置によって何がどう違ってくるのか、毛布をもっと有効に使う方法など、知っておくと安眠に役立つ情報をお知らせしていくことにしましょう。
この記事の目次
睡眠中の寝具の役割とは
私たちは、昼間は交感神経が優位な活動モードになっているため脳も身体も緊張状態にあります。
そして夜になると、副交感神経が優位な休息モードとなります。
眠くなるのは副交感神経によって睡眠ホルモンのメラトニンが分泌されるからで、手や足から熱を放出して身体の中心の深部体温を下げていきます。
睡眠とは、寝ている間に体温を下げて脳や身体に休息を与え、一日の疲れを心身共に癒す時間なのです。
睡眠中も体温を少しずつ下げ続けるために、寝ている間も汗をかいて体内の熱を外に放出しています。
ですから、布団や毛布といった寝具には、寝ている間の汗や熱による水蒸気を素早く吸って、素早く乾かしてくれる機能が求められるのです。
寝汗でベタついたままでは、体温がスムーズに下がらないため安眠できず質の良い睡眠は得られません。
また、寝苦しさから夜中に目覚めることが続けば、中途覚醒という睡眠障害になってしまう要因にもなりかねません。
つまり、布団であれ毛布であれ、肌に直接触れる寝具には高い吸湿性と放湿性が必要で、使用している布団と毛布の素材によって掛ける順番は決まるということです。
羽毛布団の性質と機能
羽毛布団は最高級の布団と言われており、保湿性や放温性が高く、軽量で暖かいという特徴を持っています。
布団の詰め物に水鳥の羽毛や羽根を使っているためとても軽くてしなやかで、寝ている間も身体にフィットしてくれます。
吸湿性や放湿性にも優れているので、適度な温度と湿度を常に保って快眠をもたらしてくれるのです。
そして、羽毛布団の温め効果をより実感するには、羽毛布団が肌に直接触れるようにすることが重要です。
羽毛には、人間の体温を感知して膨らむという性質があります。
膨らむことで空気の層を作って保温性を高めます。
ですから毛布を羽毛布団の下にすると、肌と羽毛が密着しないために体温は感知されず、羽毛が膨らむこともなく保温性が軽減してしまうのです。
また、私たちは寝ている間に寝返りを繰り返しますが、身体が右に左にと動くうちに軽い羽毛布団はズレてしまい、身体に密着している毛布だけが残ることになりかねません。
そしてヘタをすると、夜中に寒くなって目が覚めてしまいます。
これでは羽毛布団の温め効果が充分に発揮されているとは言えません。
正しい毛布の位置は布団の上がいい?下がいい?
羽毛布団を使う場合、毛布は熱が逃げてしまうのを防ぐために使いましょう。
つまり暖かい状態を作るには、羽毛布団が肌に直接触れるように先に掛けて、羽毛で温まった熱を逃がさないように羽毛布団の上から毛布を掛けることです。
また、羽毛布団でなくても、空気の層を作って暖かい状態を作るタイプの掛け布団なら、毛布をその上から掛ける方が熱が逃げずに温め効果はアップします。
ただ、毛布に厚みがあって重い場合には、掛け布団がつぶされてしまい、空気の層ができずに保温性も低下します。
特に羽毛など膨らむ性質を持つ布団では、空気の層をつぶさない適度な重みの毛布を上から掛けるようにしてください。
ちなみに、冷え症の方や不眠症や睡眠障害でスムーズに眠りに入ることが出来ない方は、羽毛布団が肌に直に触れることで冷たく感じて、余計に寝つきにくくなるかもしれません。
そんな時は、羽毛布団に暖かい素材の掛け布団カバーを付けましょう。
布団に入った瞬間から温かく感じて、ストレスなく寝つくことが出来ます。
身体の上に毛布を掛けるのは必ずしも間違いではない
羽毛布団は肌に密着させた方が保温性が高まります。
また、純羊毛など動物性繊維の掛け布団の場合にも同じ効果があります。
ですが、日本人が昔から使っている綿布団やポリエステルなどの化学繊維で作られた布団には、肌に直接触れても羽毛のように膨らむこともなく特別な保温効果もありません。
つまり、羽毛布団ではない掛け布団の場合は、毛布を掛け布団の上にするのが必ずしも正解ではないということです。
綿布団やポリエステルなどの化学繊維で作られた布団なら、これまで通り身体の上に毛布を掛けて、その上から布団をかけてもなんら問題はありません。
ただし、毛布が肌に直接触れるわけですから、睡眠中の汗をしっかり吸ってくれる吸湿性と吸った汗でムレることのないような放湿性を持った毛布を選ぶ必要はあります。
ですから、ただ「身体の上に毛布を掛けるのは間違い」というのではなく、布団と毛布の素材によって掛け布団の上にするか下にするかは違ってくるということなのです。
カシミヤ・シルク・ウールなど天然素材の毛布は布団の下がいい
毛布を上にするか下にするかは、毛布の素材がもつ特性によって変わってきます。
保温性や吸湿性や放湿性、そしてなにより肌触り、それらを考慮した上で正しい使い方をする必要があります。
カシミヤ・シルク・ウールなどの天然繊維の素材には、羽毛布団にも負けない吸湿性と蓄熱性があります。
動物性繊維のムレることなく熱を蓄える特性を持っているので、羽毛布団の上に掛けてしまっては、その効果が発揮されずにもったいない事になります。
薄くて軽い天然繊維の毛布を、肌に直接触れるように布団の下に掛けましょう。
アクリルやポリエステルなど化学繊維系の毛布は布団の上がいい
アクリルやポリエステル、マイクロファイバーを使った化学繊維系の素材は、熱を逃がしにくい特性を持っています。その反面、化学繊維には天然繊維のような吸湿性がほとんどありません。
ですから、肌に直に掛けると汗を吸わずにムレてしまいます。
羽毛布団などが蓄えた熱を逃がさないよう、布団の上から使用しましょう。
ただし、毛布の重みで羽毛布団がつぶされないよう、軽めの毛布を上から掛けるようにしてください。
ちなみに、コットンも天然繊維ではあるのですが、汗を吸っても乾きにくい、放湿性が低いという特徴があります。
肌に直接触れると汗でムレてしまいますので、化学繊維と同じく、薄めの物を布団の上に掛けて使いましょう。
敷き布団に毛布を敷くと暖かさがアップ
布団内の熱を保温するのは、40%が掛ける寝具で、残り60%は敷く寝具だと言われています。布団の中の暖かい熱の半分以上は敷き布団を通して逃げてしまっているのです。
ですから、敷き布団の上にこそ毛布を敷いて保温性をアップさせましょう。
身体の下に毛布を敷くことで、熱を逃がすことなく暖かさが増して朝までずっとポカポカです。
冷え症の方や寒さが厳しい地域の方は、是非とも試してみてください。
敷き布団に敷く毛布の素材としてはシルクがオススメです。
織り合わせてある細い糸の間にたくさんの熱を含むため、優れた保温力を持っています。吸湿性も高くムレないのも美点ですが、やはり風合いの良さで群を抜いていますね。
1日の1/3は睡眠時間とも言われていますので、長い時間を過ごす寝具には肌触りの良さを求めたいものです。
また、敷き布団用の敷パッドも市販されており、冬用の暖かい物や夏用の涼しげな物と実にバラエティーに富んでいます。実際に触ってみて、寝心地の良さそうな敷パッドを選ぶのもいいですね。
ただし、快眠のためには湿度のことも考えなければなりません。
せっかく掛け寝具に吸湿性があっても、敷き寝具が汗を吸わずにベタついてしまっては意味がないので、保温性だけでなく吸湿性と放湿性も高いものを選びましょう。
タオルケットは毛布の代わりになる
羽毛布団は直接肌に触れるように掛けて、その上に毛布を乗せるというのは正しいのですが、毛布によっては重くて羽毛をつぶしてしまい、羽毛が膨らまずに保温効果が発揮できなくなる場合もあります。
かといって羽毛布団の上に掛ける用の毛布をわざわざ購入するのはもったいないですね。そのような場合には、夏にしか使わないと思われがちなタオルケットを利用しましょう。
羽毛が蓄えた熱を逃がさないようにするのが目的であれば、毛布でなくてもタオルケットや薄い肌掛け布団で充分なのです。
タオルケットは、汗や湿気を吸い取る吸湿性に優れています。パイル系のタオルケットなら保温力もあります。
羽毛布団の上に掛けるだけでなく、敷き布団の上に敷いてもいいですよ。
熱を逃がさないので暖かく眠ることができるでしょう。
天然繊維と化学繊維をうまく組み合わせる
もしも今お使いの掛け布団と毛布が両方とも天然繊維なら、また両方が化学繊維だったら、どちらも同じ特性を持っていることになり温め効果が軽減してしまいます。
天然繊維と化学繊維、それぞれの長所を活かすにはなるべく両方を組み合わせて、どちらの特性も充分に発揮されるようにしましょう。
ただし、天然繊維のウールと化学繊維のフリースといった組み合わせは、静電気が起きやすいので避けるようにしてください。
毛布のような風合いを持つ掛け布団カバー
今や掛け布団カバーにも進化が見られ、これまでのサラサラした生地だけでなく、冬用の柔らかく暖かそうな掛け布団カバーも出回っています。
この掛け布団カバーを羽毛布団につければ毛布要らず、そう言い切る人もいるほど人気があるようです。
たしかに、羽毛布団に直接触れてもカバーがあるため冷たいと感じずに済みますし、軽い毛布を上から掛けているのと同じような効果が得られるのかもしれません。
重たい布団が苦手な方や頻繁に寝返りをうつ小さな子どもには、布団で圧迫感を感じることもなく、寝返りで布団がズレる心配もないため、とても便利な掛け布団カバーと言えるでしょう。
冷え症の人は毛布をフル活用する
羽毛布団の上に毛布を掛けて、敷き布団には毛布を敷いて寝ているけどそれでも寒い、という極度の冷え症の方は毛布をフルに活用しているようです。
まず敷き布団に保温性と吸湿性のある、毛布のような肌触りの敷き布団カバーを敷いて、身体に直接触れるものは天然繊維の薄手で超軽量な毛布にして、羽毛布団を掛けて、その上からまた熱を逃がさないために化学繊維の軽くて薄い毛布をかける、言うなれば毛布のトリプル使いですね。
敷きと中掛けと上掛け、毛布の素材を活かして使い分けます。
これだけすれば寒さ知らずと思いきや、マットレスの下に銀色の断熱シートも敷くという念の入れようです。
冬になると寒さで寝つけなくて困っているという方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
快適な睡眠を得るためには、普段使っている布団や毛布の性質をしっかり理解して、それぞれの持ち味を最大限に活かす使い方をすることが大事です。
冷え症でなかなか寝つけないという方はもちろんですが、不眠症や睡眠障害で苦しんでいる方も、眠りやすい環境を作ることは不眠を改善する足掛かりになると思われます。
今一度ご自分が使っている布団や毛布の使い方が適切であるかを見直してみてください。
ポイントは素材です。
掛け布団も毛布も、羽毛やシルクやカシミヤなどの天然繊維には高い保温性と放湿性があります。
直接肌に触れている状態で寝ても暖かくムレにくいのが特徴です。
アクリルやポリエステルなどの化学繊維とコットンは、保温力には優れているものの吸湿性に欠けます。
身体の上に直に掛けてしまうとムレて寝苦しくなるので、羽毛布団など天然繊維の上に掛けて使いましょう。
吸湿性の高い天然繊維の布団や毛布は肌に触れる場所で、保温性はあるが吸湿性の低い化学繊維やコットンの布団や毛布は肌から離れた場所で使う、と覚えてください。
この異なった特質を持つ寝具をうまく組み合わせることで、寒さ知らずの夜を過ごすことができ、朝までぐっすりと眠れる良質な睡眠が得られます。
ぜひ試してみてくださいね。