
うつになると夜になかなか眠れなかったり、眠ってもすぐに起きてしまうという、いわゆる「不眠症」の症状に悩まされます。
うつという病気は不安や悩みなどいろいろなことが原因で起こりますが、うつになると常に倦怠感があったり、気分が落ち込んだり、やる気が出ないという状態が長期間続きます。
その症状の中には眠れないという不眠の症状があるという人が多く、眠りたいのに眠れないという非常に苦しい状況に陥ります。
また、うつによって睡眠が充分取れないということでうつ症状が悪化したり、身体的な健康をも害することがあります。
では、うつによる不眠症はどのように対策、改善すればよいのでしょうか?
この記事の目次
うつのほとんどは不眠症
現代病とも言われる「うつ病」に悩まされて人は年々増加するばかりですが、そのほとんどの人が眠れないといった不眠症の症状に悩まされています。
うつ病であるという診断基準には不眠や睡眠障害という項目があり、うつ病が原因で不眠症であるのか、不眠の症状があるということでうつ病と診断されるのか・・・という問題は非常にデリケートな問題で、正にうつと不眠症というのは非常に関係性が高く、表裏一体であると言えます。
うつによって不眠症になるのはどうして?
うつ病というのは人間関係のもつれや健康不安、失恋、身近な人との別れ、仕事の悩みなど様々な要因で精神的に落ち込んだり、やる気が出ないという状態が長く続くことを言います。
気分が沈んだ状態が長時間続いて精神的な活力がなくなることが生きる力の低下につながり、人間が生きるために必要な欲求を低下させます。
人間が生きていくために必要な食欲、性欲、睡眠欲などがうつ病であることで徐々に低下していきますが、睡眠欲が落ちることで不眠症になることが多いのです。
うつであることで不眠症になったり、不眠症がうつを悪化させたり、うつと不眠症は相互的な関係にあり、一方が悪化すれば双方が悪い状態になります。
しかし、その反面、どちらかが改善されることでうつや不眠症は軽くなることもあります。
不眠症のタイプとは?
不眠症にも色々なタイプがありますが、うつが原因で不眠症になる場合の不眠の症状の多くは、なかなか寝付けないタイプの入眠困難型、朝早くに起きてしまう早期覚醒型の不眠症です。
もちろん、夜中に何度も目が覚めるという中途覚醒型の人もいますし、全ての症状に悩まされている人もいます。
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不眠症に関わる脳内物質
人間の脳の中には精神状態に大きな影響をもたらす脳内物質というものがあります。
気分が盛り上がったり、心臓がドキドキしたり、幸せを感じるときに出るのがドーパミンですが、その反対に恐怖や不安などのマイナスの感情を感じると出てくるのがノルアドレナリンで、これらの脳内物質を正しく制御してくれるのがセロトニンというものです。
人間は快楽や興奮の状態だけが続いたり、不安や恐怖を常に感じている状態では精神を健康に保つことができません。
脳内物質のバランスを保つことがすなわち心の健康につながるのでうつや不眠症を考える時に脳内物質のバランスを整えることが大切になってきます。
うつ病を引き起こす原因の一つに考えられるのが脳内物質セロトニンの働きの鈍化が関係しているといわれています。
現在においても、うつ病の治療方針の中心になる抗うつ薬はセロトニンを増やすための薬です。
また、不眠症である人はメラトニンという睡眠ホルモンの分泌量が少ないといわれていますが、メラトニンはセロトニンによって分泌されるので、結果として不眠症の人はうつになりやすく、うつの人は不眠症になりやすいという構造になります。
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不眠症対策の方法
【1】睡眠の環境を見直す
良い睡眠を取るためには環境を整えることが大切です。
不眠症であるならばなおさら睡眠環境を見直してみましょう。部屋の温度は暑過ぎても寒すぎてもよく眠れません。
また、室温だけでなく布団の中の温度も大切です。部屋の温度は少し涼しいくらいで布団をかぶって眠る方がよく眠る事ができるとされています。
部屋の明かりもできるだけ真っ暗である方がよく眠れます。窓には遮光カーテンをつけるなど光が入らないように工夫しましょう。
騒音も睡眠を妨げますので、ドアや窓でしっかり防音したり、厚めのじゅうたんを敷くと良いでしょう。
【2】規則正しい生活
うつ病になると夜になかなかしっかり眠れないので朝や昼から眠ってしまったりしますが、出来るだけ規則正しい生活をして就寝時間や起床時間を一定に保ちましょう。
体内時計をしっかりキープすることで自律神経のバランスが良くなります。
また、規則正しい食生活も大切です。うつで食欲がないからといって、空腹のまま眠ると良い睡眠は取れません。
油っこい食べ物は避けて胃に優しい炭水化物などを夕食で食べて眠るようにしましょう。
【3】眠る前の水分
眠る前はあまりたくさんの水分をとるとどうしても夜中に尿意で起きてしまうので、適度に水分補給することが大切です。
また、就寝間際にコーヒーや日本茶などのカフェイン飲料を摂るのも寝つきが悪くなります。
眠れないからと言ってアルコールを飲んで眠ろうとする人がいます。
確かに、お酒を飲むことで一時的に眠りにつきやすいということはありますが、不眠を解消するためにアルコールを飲むと体が徐々にアルコールに慣れてくるために少量のアルコールでは眠れなくなります。
中途覚醒の症状を引き起こす原因にもなりますので、不眠症の人はお酒によって睡眠を確保するのはやめましょう。
【4】眠る前のタバコ
タバコに含まれるニコチンには精神を刺激する働きがあります。
うつで精神的に辛いとタバコで気分を紛らわせようとする人もいますが、眠るためには逆効果ですので就寝前のタバコはやめましょう。
【5】軽い運動
うつな気分でなかなか外に出る気分にならないかも知れませんが、良い睡眠を取るためにも軽い運動をおすすめします。
無理のない程度に軽くウォーキングなどを目的に外に出てみると体力も使いますし、気分も明るくなります。
【6】深く考えない
就寝前にあれこれと考え事をしたり、悩んでいては絶対に良い睡眠は取れません。
悩むことをやめることが出来れば最初から苦労はないという事はよくわかりますが、うつを改善するためにも意識的にクヨクヨするのを出来るだけやめてみましょう。
非常に難しそうですが、これさえ出来ればうつも不眠症も一気に解決します。
うつの改善が不眠症を解消する
うつによる不眠症を改善するためには、うつ病を治療し改善することが大切です。
当たり前の理論ですが、うつと不眠症は相互作用があるのでうつを改善するとおのずと不眠症も改善されます。
うつを治すには脳内物質のセロトニンを増やすことが大切です。
セロトニンが増えると睡眠を促すメラトミンが増加し不眠が改善されます。
【7】セロトニンを増やすには?
うつを改善するためにはセロトニンを増やすことが不可欠ですが、このセロトニンを作るにはトリプトファンとビタミンB6を摂取することが大切です。
特にトリプトファンが大切なのですが、これは体内では作ることのできない必須アミノ酸なので食べ物から体内に取り込むことが大切です。
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【8】トリプトファンを含む食品
トリプトファンを含む食品には、鰹節、豆腐、大豆製品、牛乳、卵、チーズ、ケール、ひまわりの種などがあります。
鰹節をたくさん食べることはできませんが、鰹節は和食に欠かせない出汁の材料です。
また、豆腐などは私たちの食生活に非常に身近なものですので、味噌汁などの出汁はしっかり鰹節で取って毎日いただくと良いでしょう。
ケールというのは健康食品の青汁などの原料に入っていますので上手に利用するとよいでしょう。和食中心のバランスのよい食生活をするのが理想です。
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【9】ビタミンB6
セロトニンの生成にはトリプトファンだけでなくビタミンB6や炭水化物の摂取も不可欠です。
ビタミンB6を多く含む食品には玄米、大豆、アボガド、魚類、レバーなどもあります。
また、バナナはセロトニンを活性化するために必要な栄養素を全て含んだ優れた食品です。
まとめ
うつによる不眠症に悩んでいる場合、うつと不眠は相互作用があるということを理解しておくことが大切です。
うつが改善されると不眠も改善されますし、不眠が改善されるとうつも改善されます。
このため、一つの方法に頼るのではなく、うつや不眠症を改善する方法に多方面から取り組むことが大切です。
悩みや不安のない人はいませんし、誰しもがうつになり不眠症になる可能性がありますが、気持ちを大きく持ってあまり小さなことにクヨクヨしないで前向きに物事を捉えること、規則正しい生活をすること、睡眠の妨げになるようなことをしないということで少しでもうつによる不眠を対策し、改善していきましょう。