
不眠症や睡眠障害の改善に、沖縄の伝統野菜「クワンソウ」が効果があることをご存知でしょうか。
寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めるなど、夜しっかり眠れないと疲れがとれず、そのせいで昼間もダルくなって眠くなり、そしてまた夜眠れなくなって、そのうちに悪循環から抜け出せなくなってしまいます。
その悪循環を断ち切るには夜しっかり眠ることが肝心です。
クワンソウは安眠の手助けをしてくれる体に優しい植物です。では、睡眠サプリメントにも配合されているクワンソウとはどういうものなのか?その有効成分は?睡眠に効果がある理由は?副作用や依存性はあるのか?
これら、すべてについて見ていくことにしましょう。
この記事の目次
クワンソウとは?
クワンソウとは、沖縄を中心とした南西諸島の温暖な地域に自生している、中国原産でユリ科ワスレグサ属の多年草です。
クワンソウの花は鮮やかなオレンジ色で大きめで、ユリに似た形をしています。
秋(9月下旬~10月上旬)に咲くため「アキノワスレグサ(秋の忘れ草)」という和名が付けられています。
クワンソウは昔から、沖縄や石垣島、宮古島で食べられている伝統野菜で、現在では沖縄の「伝統的農産物28品目」の一つにも選ばれています。
沖縄では庭先や畑などで栽培されていることも多く、クワンソウを食べるとよく眠れるという言い伝えから、沖縄の方言で「ニーブイグサ(眠り草)」とも呼ばれています。
クワンソウの睡眠効果が広く知られることになったのは最近ですが、沖縄では昔から「子どもの夜泣き」や「眠れないとき」などに民間療法として好んで食べられていたようです。
クワンソウには長い歴史がある
クワンソウの歴史は古く、沖縄が琉球王朝だった時代にまで遡ります。
かつて海外との貿易がさかんに行われていた琉球には、外国とくに中国から多くの要人が渡来してきました。
琉球王府は、外交と経済にかかわる重大な国家イベントとして要人をもてなすために贅を尽くした歓待料理を用意し、その食材にクワンソウが使われたと記録されています。
また、琉球王府の医師で本草学者でもあった「渡嘉敷親雲上通寛(とかしきペーチンつうかん)」が1832年に著し王府へ献呈した琉球食療法の指導書「御膳本草」にも、クワンソウが伝統食材として掲載されています。
クワンソウは当時からさまざまな薬効をもつと言い伝えられており、一般家庭のどの庭にも植えられていたようです。
葉も茎も、若芽も根元も花びらも、余さず食べられる伝統食材として重宝されていました。
とくに花びらは、鮮やかなオレンジの色合いで見た目が華やかなことから、王室料理としても提供されていたといわれています。
クワンソウの有効成分とは?
クワンソウは、昔から眠れないときに食べる「眠り草」として親しまれていましたが、その睡眠効果が科学的に実証されたのはごく最近のことです。
同志社女子大学と大阪バイオサイエンス研究所によって、クワンソウには睡眠に関係がある「オキシピナタニン」という特殊なアミノ酸が極めて多量に含まれていることが発見されたのです。
抽出が困難なオキシピナタニンでしたが、琉球大学・同志社女子大学薬学部・大阪バイオサイエンス研究所などの共同研究により、 世界で初めてクワンソウから安定した量のオキシピナタニンを抽出することに成功しました。
「オキシピナタニン」の睡眠効果とは?
オキシピナタニンの睡眠効果を検証するため、琉球大学のグループがクワンソウの粉末を餌に混ぜてマウスに食べさせたところ、食べさせていないマウスに比べて熟睡している時間が1.5倍も伸びたと報告されています。
睡眠中に異常な脳波を示すこともありませんでした。
また、マウスにオキシピナタニンを与えてから6時間ほど間は、いつもチョコチョコと動き回っているマウスが6割ほどの動きしかしなかったとも記録されています。
マウスのような小動物の意識レベルが下がるのは大変めずらしいことで、この結果に検証を行ったグループ自身も驚いたそうです。
つまりこのオキシピナタニンには、心身をリラックスさせる鎮静効果があり、自然な睡眠を誘発する効果があることが明らかになったのです。
「オキシピナタニン」の睡眠効果はグリシンの100倍以上
オキシピナタニンの機能解析では、マウスやラットによる検証でグリシン(睡眠効果があるとされるアミノ酸)の100倍以上の安眠効果があることもわかっています。
睡眠中の脳波にも異常がないので、強制的な眠りではなく快眠であると考えられます。
この研究結果から、マウスが起きている時間が40分短くなり、深い眠りであるノンレム睡眠時間が40分増えたとなっており、その効果がグリシンの100倍以上だったということです。
オキシピナタニンには、睡眠改善作用に加えて優れた鎮静作用ももっているので、鎮静剤としてのリラックス効果も確認されています。
クワンソウ(オキシピナタニン)に副作用はある?
これだけ睡眠効果が髙いなら副作用も心配なのでは?と思われがちですが、これまでクワンソウを食べたことによる副作用は報告されていません。
「日本食品医薬品安全センター」による試験でも毒性は確認されておらず、依存性もありません。
睡眠導入剤として服用されることが多いベンゾジアゼピン系薬物の場合は「ベンゾジアゼピン速波」という独特な脳波の乱れがあらわれますが、オキシピナタリンの摂取では脳波の乱れもなく、自然な眠りにあるとして睡眠薬より安全だといわれています。
古来より「子どもの夜泣き」などにも使われていたクワンソウ、今ではその安全性と副作用のないことから、さまざまな睡眠サプリメントの主成分として配合されています。
ただ、副作用がないからと頼りすぎてしまっては、かえって効果が薄れてしまうこともありますので用法や用量は必ず守ってください。
「オキシピナタニン」の真の効果は?
睡眠効果があるといわれるオキシピナタニンですが、実はまだ全てが解明されているわけではありません。
オキシピナタニンを摂取するとなぜ眠たくなるのか、その根本ともいえる部分がはっきりしていないのです。
ですが、食べることでのみ効果があらわれるという事実は判明しています。
つまり手術や注射などで体内に直接入れても、同じような効果は得られないということです。
本来は体内に入ったら、胃や腸や肝臓など、どこかしらに必ず吸収されるものなのですが、オキシピナタニンはどこにも吸収されていないことがわかっています。
言い方をかえれば、それだけ負担をかけずに摂取できるということです。胃や腸や肝臓などに問題を抱えている人でも安心して使用することができるのです。
では、なぜオキシピナタニンには睡眠効果があるといわれているのか。
実は、オキシピナタニンが優れているのは睡眠導入や安眠維持の効果というより、覚醒を抑える効果なのではないかと考えられています。
つまり、眠りに誘う働きはリラックス効果によるシナジー効果ではないかということです。
とはいえ、オキシピナタニンを摂取したあとには、グリシンを摂取したあとと同じような傾向、末梢血管の拡張作用が認められているため、血管が大きくなって体の熱が放出されやすくなることは事実です。
体内の温度が下がることで、寝ついてすぐに深い睡眠に入ることができるのです。
オキシピナタニンの真の効果は、体をリラックス状態にもっていくことで得られる睡眠効果、といったところでしょうか。
クワンソウのその他の成分
クワンソウは余すところなく食べられる、睡眠効果の高い伝統野菜です。
特に葉と茎に寝つきをよくする効果があるとされており、夜中に目が覚めることも少なくなると実証されています。
花びらには、鎮静作用・貧血予防効果・抗ストレス作用があるといわれています。
また血中のコレステロール値を下げるβシトステロールや、脳や神経の機能を高めてくれるヒドロキシグルタミン酸も含まれています。
根には鎮静作用があり、疲労回復や新陳代謝を良くするアスパラギン酸、体の組織を修復して疲れを癒すリジンなども含まれています。
クワンソウには、どの部分をとっても疲労を回復して安眠に導いてくれる成分が含まれているのです。
民間療法として古くから親しまれていたのも頷けます。
クワンソウに含まれるオキシピナタニンはどう摂取するのが一番いい?
オキシピナタニンを効率よく摂取するには、年齢や体重や摂取方法に多少の違いはあるものの、寝る2~5時間前に100mg以上のクワンソウサプリを服用するのがいいようです。
夕食後に飲めば、寝る時間のころには自然に眠たくなってくるでしょう。
不眠症で寝つきが悪い方や睡眠障害を抱えている方がどうしても眠りたいと思った場合は、オキシピナタニンを500mgほど服用してみてください。
睡眠導入剤と同じぐらいの効果は得られるようです。副作用は確認されていませんので、より安心して利用できると言えそうです。
不眠に効くクワンソウのお茶
クワンソウはお茶として飲んでも効果があり、子どもや妊婦さんでも安心して飲めます。入手が難しいクワンソウですが、クワンソウ茶ならインターネットでも購入できます。
おいしい飲み方としては、沸騰したお湯にクワンソウの茶葉をティースプーン1杯ほど入れて弱火で煎じます。
熱いうちに飲んだほうが香ばしさが感じられるのでおすすめです。入浴後や寝る前のリラックスタイムにいただきましょう。
ちなみに、クワンソウ茶に即効性は期待できないと思ってください。
「毎日無理せず続けられる」「美味しいから飲んでいる」ぐらいの気持ちで始めるのがいいでしょう。
クワンソウは他の薬と併用しても大丈夫?
クワンソウには、特に一緒に飲んではいけないという薬はありません。
ですが、カフェインやアルコールと一緒に飲むのはやめましょう。カフェインには覚醒作用があるのでせっかくの睡眠導入効果が薄れてしまいます。
アルコールには興奮・利尿作用がありますので、クワンソウがもつ鎮静作用がうまく働かなくなってしまいます。
どちらも快眠のためには妨げとなりますので、やはり寝る前には飲まないようにしましょう。
また、持病をもっている方やアレルギー体質の方、不眠症や睡眠障害で睡眠導入剤を使用している方、普段からお薬を飲む必要がある方などは、必ず担当医や薬剤師に相談してから摂取するようにしてください。
クワンソウの入手方法
生の新鮮なクワンソウはインターネットでも見つけることができず、なかなか入手困難です。
どうしても食べたい場合は、やはり沖縄に行くしかないかもしれません。
クワンソウの旬は、1月下旬~5月下旬と比較的長いようです。沖縄観光をするついでに本場のクワンソウを楽しむのもいいでしょう。
現在、沖縄ではクワンソウを県指定の「伝統的農産物28品目」の1つに指定しており、「沖縄クワンソウ普及協会」などによる積極的な普及活動が行われています。
クワンソウ料理を食べさせてくれるお店もたくさんありますので、一度訪れてみてはいかがですか。
お土産として持ち帰りができるクワンソウ料理もありますし、乾燥したクワンソウの葉で作られるクワンソウ茶ならば1年中インターネットで購入することもできます。
クワンソウの食べ方
クワンソウは、お腹をこわしたり、下痢になる可能性があるので生で食べてはいけません。
つぼみと茎には、必ず火を通してから食べましょう。クワンソウのシャキシャキとした食感は、火を通しても失われることなく美味しくいただけます。
クワンソウの葉は乾燥させてお茶として飲まれることが多いのですが、ハンバーグの具やギョーザの具として混ぜて使われることもあります。
炒め物にしてもいいでしょう。
茎や花びらは、さっと湯通ししてサラダや和え物や酢の物、お浸しや味噌汁の具材としても利用されています。心地よい歯応えとクセのないさっぱりとした味が好まれているようです。
花びらの天ぷらは色合いも豪華で、まさに食卓に華を添えるといったところですね。つぼみは炒め物がおすすめで、「金針菜(キンシンサイ)」で検索すれば同じ科の食材がでてきます。
クワンソウの根は、食材というより、医食同源の考え方のもとお酒に漬け込んで薬膳酒として味わうことが一般的なようです。
また、沖縄県内のご高齢の方々に伺ったところ、風邪をひいた時や元気がない時、眠れなくてつらい時やイライラしている時などには、クワンソウの葉や茎と豚肉を一緒に煮込んだ料理を食べ、また子ども達にも食べさせていたとのことです。
昔も今も、クワンソウは民間療法的に食されてきた伝統があるのです。
まとめ
沖縄で古来より民間療法として食べられているクワンソウにはオキシピナタニンという成分が含まれており、その優れたリラックス効果と睡眠効果により、不眠の症状を改善することができます。
とくに深い眠りであるノンレム睡眠の持続を維持する働きがあるので、寝入ってもすぐに目覚めてしまう早期覚醒や、寝ている間に何回も目覚めてしまう中途覚醒に効果的です。
グリシンの100倍以上もの安眠効果があるオキシピナタニンを極めて多く含んでいるクワンソウは、眠れなくて困っている方、不眠症や睡眠障害でお悩みの方にとって、まさに救世主となることでしょう。
副作用や依存症の心配もない伝統野菜のクワンソウを、快眠のためにぜひ取り入れてみてください。