
独特の強い香りと苦味のあるセロリは、好き嫌いがはっきりと分かれる、ちょっとクセのあるお野菜ですよね。
ですが、このセロリに意外な効果や睡眠効果があるってご存知でしたか?
今回は、セロリがもつ栄養素や効果だけでなく、苦手な人でもチャレンジしやすい料理法や活用法もご紹介していきます。
この記事の目次
万能薬としての歴史をもつセロリ
セロリの原産地はヨーロッパから中近東にかけての高地で、湿地帯といわれる地域です。
そもそもは食用として使われていたわけでなく、古代エジプトではミイラを作るための防腐剤として、古代ローマや古代ギリシャでは防臭剤やワインなどに香りを付ける香料として重宝されていました。
整腸作用や強壮効果のある薬としても利用され、二日酔いを治す方法として、セロリで編んで作った冠を頭にかぶるという民間療法もあったとか。
古代から中世にかけては、不安・不眠・風邪・歯痛・リウマチ・関節痛などあらゆる方面に効果があるとされたため、ヨーロッパでは「万能薬」とも呼ばれていたようです。
セロリの食用野菜としての歴史
16世紀になると、薬用植物としてイタリアで本格的に栽培されるようになりました。
そして17世紀頃には、食用としてイタリアやフランスが利用するようになります。
さらに18世紀にはイギリスが、19世紀にはアメリカが品種改良を行い、現在私たちがスーパーマーケットで見かけるような形の品種が確立されていったのです。
セロリの和名は「オランダ三つ葉」ですが、加藤清正が朝鮮出兵の際に人参の種だと騙されてセロリを持ち帰ったという俗説から「清正人参」という面白い呼び名もあります。
現在のセロリの形に近いものが日本に伝わったのは1800年頃で、オランダの商船によって運ばれてきたといわれています。
ですが、セロリ独特の香りや苦味のため日本国内ではなかなか普及せず、本格的に栽培されて流通するようになったのは戦後以降です。
日本人が欧米の食文化を知っていくうちに、和食だけだった食卓は洋風化して主食が魚から肉へと変わっていき、セロリも食用野菜としての地位が定着してきたのです。
セロリの栄養素
セロリは100gあたりのβカロテン量が44μgと少ないため、緑黄色野菜ではなく淡色野菜に分類されます。
ビタミン類やミネラル類、食物繊維の含有量も緑黄色野菜に比べると少なめです。
そのため栄養素を補うという意味では物足りなく感じますが、ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB16・ビタミンC・ビタミンE・βカロテンといったビタミン類、カリウムやカルシウムなどのミネラル類、食物繊維と、栄養バランスを整えるに充分なたくさんの種類の栄養素が含まれています。
それらの幅広く含まれた栄養素が相乗効果を起こし、不眠症などの睡眠障害はもちろん、血行不良や冷え性、むくみや高血圧、便秘解消、老化防止、美肌作りなどにも嬉しい効果をもたらしてくれます。
セロリの香り成分で不眠症の改善・精神安定
セロリのあの独特な強い香りには、約40種類もの香り成分が含まれています。
主な成分としては「アピイン」「セネリン」「アビオイル」「テルペン」などがあります。
「アピイン」や「セネリン」はポリフェノールに分類される成分の一種で強い抗酸化作用があり、自律神経に働きかけて精神を落ち着かせる抗不安作用もあるため、ストレスからくる不眠症にも有効だとされています。
「アビオイル」や「テルペン」には神経の興奮を鎮めてリラックスさせる効果があります。
またセロリには、ストレス解消に有効なビタミンCや、滋養強壮を高める効果のあるミネラル類も含まれています。
これら香り成分と栄養素の相乗効果によって、ストレスが緩和されて気持ちが落ち着き、イライラや不安や緊張が和らいでリラックス状態になり、高い睡眠効果が得られるのです。
なお、セロリの香り成分には鎮痛作用もあるため、頭痛や生理痛などの痛みにも効果が期待できます。
二日酔いからくる頭痛にも有効です。
ちなみにセロリの種から抽出した精油は、アロマオイルとして鼻から吸引しても安眠効果があるとされ、アロマテラピーにも利用されています。
冷えからくる不眠症も改善
セロリの葉の部分には「ピラジン」という香り成分が多く含まれています。
このピラジンには血液をサラサラにする効果があり、セロリに含まれているビタミンEにも末端血管を広げて血流を改善する働きがあります。
ピラジンとビタミンEのダブル効果で血液の循環が良くなり、冷え性の緩和が期待できるのです。
身体が冷えると、なかなか寝つけなくなる入眠障害などの不眠症にもなりやすいので、セロリの茎と葉で冷え性を改善して良質な睡眠をとりましょう。
また冷え性だけでなく、血流の改善はコレステロールの低下や動脈硬化の予防につながります。
血行が良くなると新陳代謝も活発になるため、血行不良からくる肩こりや腰痛、関節炎やリウマチなどの痛みも緩和されます。
むくみを解消・高血圧の予防
セロリは「カリウム」の含有量が他の野菜より多く、100gあたり410㎎と豊富に含まれています。
カリウムというとキュウリやスイカに多いイメージですが、セロリのカリウム含有量はキュウリの2倍、スイカの3倍以上と、実はサニーレタスやサラダ菜と同等の高い数値なのです。
カリウムには利尿作用があり、体内の余分な水分を体外へ排出してくれるためむくみの解消につながります。
また、過剰な塩分を取り除き血圧の上昇を抑える作用もあるので高血圧の予防にもなります。
イモ類にもカリウムは多く含まれていますが、カロリーの面から考えるとセロリの方が気にせず食べられますね。
夏場はとくにカリウムが欠乏しがちですので、積極的に摂ってほしい栄養素です。
食欲不振の改善・疲労回復
リラックス効果がある「アビオイル」には、食欲を増進させる・口の中をサッパリさせるといった効果もあるといわれています。
キャベツの成分として有名な胃腸薬の名前にもなっている「ビタミンU(キャベジン)」も含まれていますから、胃酸の過剰な分泌を抑えて、胃腸の粘膜を保護して補修するといった働きをしてくれます。
食欲不振やストレスからくる胃痛、二日酔いなどに有効です。
またセロリには、糖質の代謝に関わっている栄養素で「疲労回復ビタミン」とも呼ばれる「ビタミンB1」や、ビタミンB1を保持する役割をもつ「マグネシウム」が含まれているため疲労回復にも充分な力を発揮します。
これらの働きがあるからこそ、古代から滋養強壮剤として利用されていたのでしょうね。
便秘を解消・ダイエットの味方
セロリの食物繊維は100gあたり1.5gとなっており、この数値は野菜の中で特別に多い含有量ではありません。
ですが、そもそもカロリーが100gあたり15キロカロリーと低いので、摂取カロリー数からみれば食物繊維はかなり豊富な野菜といえます。
しかも、100gあたり1.5gの植物繊維のうちの1.2gは不溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維とは水に溶けにくい繊維質で、腸内の有害物質や老廃物を絡め取って体外へ排出してくれる働きがあります。
また、水分を吸収しやすいため膨らんで満腹感を得やすくなり、便のかさを増やして快適な排便に導く効果もあります。
セロリは低カロリーなので、ダイエット中の頼もしい味方にもなってくれるでしょう。
ただし、食べ過ぎてしまうとお腹が張ったり、消化しきれずに下痢になったりということもあり得ます。
適度な量を心掛けてくださいね。
老化の予防・美肌作りにも
セロリには、身体の中でビタミンAに変換されるβカロテンやビタミンB群・ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類・食物繊維など、実に多くの栄養素がバランスよく含まれています。
期待できる相乗効果として、
・肌のハリや潤いを保つ
・メラニン生成を抑制する
・血行を良くして肌のくすみやくまを改善する
・ターンオーバーを促して肌状態を整える
・抗酸化作用で老化を予防する
・肌荒れを防いでくれる
・肌荒れやニキビの予防と改善
など、美肌作りや美肌維持に嬉しい効果が期待できるのです。
セロリの薬膳酒
セロリをお酒に漬け込むだけの薬膳腫は、作り方も簡単で、毎日少しずつ飲むことで健康維持に役立ちます。
材料は、セロリ400g、35度くらいのホワイトリカー600mlです。
まず、セロリは茎を8割、葉を2割くらい用意して、よく水洗いして水気を拭き取ります。
次に密閉型の瓶を用意して、セロリを容器に入る長さに切って入れ、ホワイトリカーを注ぎ込みます。
これでセロリ薬膳腫の完成です。
1ヶ月ほど冷暗所に置けば飲めるようになりますが、3ヶ月ほど経つとさらに熟成されてまろやかな味を楽しめます。
ストレートでも美味しく飲めますが、ガムシロップやレモンを少し加えて炭酸割りにするのがオススメです。
食前酒や食後酒としても、ドレッシングやシチューの香り付けにしてもいいですね。
セロリのお茶・生ジュース
不眠症やめまい・高血圧には、セロリをすりおろしてお湯で割り、ハチミツを加えたものが効果的です。
また、セロリの葉の部分だけを使ったセロリ茶も試してみてください。
セロリの葉を洗って適当な大きさに切り、1日から3日ほど天日干しにして乾燥させ、乾燥したら熱いお湯にセロリの葉を入れて2~3分ほど蒸らせば出来上がりです。
セロリの葉だけが余ったという時にはオススメですよ。
なお、リンゴや人参などを合わせて作ったセロリの生ジュースには、脳血栓や心筋梗塞を予防する効果があるといわれています。
セロリのお風呂
セロリの葉を入れたお風呂に入ると、冷え性が緩和されて寝つきが良くなります。
血行不良による痛みや肩こり、腰痛なども楽になり、香り成分でリラックス効果も期待できます。
湯冷めもしにくくなるので、布団に入る頃には身体が冷えて眠れないという不眠症にも有効です。
セロリ風呂の作り方は、まず、セロリ2~3本分の葉を茎から外してよく洗いましょう。
洗ったセロリの葉は、包丁で小さく刻んでください。
それを、お茶のパックやガーゼなどの袋に詰めて出来上がりです。
湯舟に入れてしばらく揉み、湯船に浮かべたまま入浴しましょう。
セロリの香りを楽しみながら、ゆっくりと入浴タイムを楽しんでください。
セロリの葉も残さずに食べよう
セロリは、茎よりも葉の部分により多くの栄養素が含まれています。
栄養や効能を余すところなく摂取するには、茎だけでなく葉の部分も一緒に食べるのが理想的なのです。
セロリを選ぶ時のポイントは茎が太く肉厚なもの、葉は淡い緑色をしているものにしましょう。
では、セロリ嫌いにも「美味しい」といわせる、茎も葉も使った「セロリの葉のスープ」をご紹介します。
・お鍋のお湯にベーコンとセロリの茎を入れて、味や香りが染み出たら具をすべて取り出します。
・お鍋を火から下ろしセロリ1本分の葉をちぎって入れ、フタをして10分ほど蒸らせば完成です。
このスープをセロリ嫌いでも美味しいと感じる理由は、セロリの葉に含まれている「フタライド類」という香り成分にあります。
この成分には味の深みや厚み・持続性などを上げる働きがあるため、葉を入れて蒸すことでスープのコクが増したのです。
そして、葉には茎の5倍もフタライド類が含まれています。
ということは、茎も葉も一緒に調理した方が茎だけで調理するより美味しい、といえるのではないでしょうか。
なお、スープのベースとなるものはベーコンに限らず何でもいいので、色々なスープで試してみてください。
セロリの葉の部分は細かく刻んで冷凍しておけば、スープやシチューなどにちょっと入れるだけで風味がアップしますよ。
また、セロリの栄養素は熱に強いので、炒め物にも揚げ物にも適しています。
セロリにはお肉の臭みを消してくれる働きもあるので、お肉の煮込み料理やソテー、ステーキなどにも活用できますね。
アメリカでは大人気のセロリ
アメリカでは、大人から子供まで幅広い世代で日常に欠かせない便利な野菜として親しまれています。
アメリカの主流となるセロリは「パスカル」という品種で、全体が鮮やかな緑色をしていて、あまりスジがなく、太めのフキのようにほぼ同じ幅で伸びており内側がくぼんでいます。
アメリカの家庭では、子ども向けのポピュラーな食べ方として、短めに切ったセロリのくぼみの部分にピーナッツバターやクリームチーズを乗せて食べるというオヤツがあります。
アメリカのピーナッツバターは甘味が控えめなためセロリとの相性も良く、昔から根付いている人気のレシピなのです。
まとめ
安眠のためアロマテラピーにも使われるセロリの香り成分には、精神を落ち着かせてリラックスさせる働きやストレスを緩和させる働きがあります。
これらの作用は質の良い睡眠を得るためには欠かせないものです。
さらに、血液の流れを良くして冷え性を改善する働き、胃痛や生理痛などの痛みを和らげる働きもあります。
不安・緊張・興奮・冷え・痛みなどは安眠を妨害する要因で、そのままにしておけば不眠症という睡眠障害になってしまう引き金にもなり得ます。
セロリは11月~5月頃までが旬の時期ですが、スーパーに行けばほぼ1年中購入することができる、食用と薬用を兼ね備えた万能野菜です。
これまでセロリが苦手だった方も、質の良い睡眠をとるため、この機会に試してみてはいかがでしょうか。