
睡眠中の歯ぎしりは自分自身ではなかなか実感がなく、家族や知人に指摘されて気がつく場合が多いものです。
歯ぎしりが酷いので他人とは泊りがけの旅行に行きたくない・・と考えてしまう人もいますが、睡眠中の歯ぎしりは音の問題だけでなく身体に対しても色々な問題点があります。
睡眠中の歯ぎしりの原因とは何でしょうか?
また、不眠との関係、歯ぎしりの対策についてみていくことにしましょう。
この記事の目次
歯ぎしりってどんなもの?
上下の歯を磨り合わせたり、歯を強く噛み締めることを歯ぎしりといいます。
その際、本人でもびっくりするような音がするので非常に厄介で、歯ぎしりしていることを恥ずかしいと感じる人もいると思います。
歯ぎしりにも色々ありますが、最も多いのはギリギリギリやキリキリキリという激しい音で長時間続くことタイプです。
上下の歯を強く磨り合わせることで音が鳴り、この歯ぎしりをグライディングと言います。また、ギリギリという音ではありませんが、カチカチと上下の歯を打ち鳴らすものもありますが、これは歯ぎしりの中でもタッピングといいます。
カチカチと歯を打ち鳴らすタッピングタイプの歯ぎしりは稀です。
また、歯ぎしりと言っても上下の歯を強く噛み締めるだけで音が全くしないというクレンチングというものもあり、様々な歯ぎしりがあるのですが、2種類以上のタイプの症状がある場合は混合型と呼んでいます。
歯ぎしりはいつ起こる?
睡眠時に歯ぎしりをすると周りも驚くような大きな音がするときがあり、この音で起きないのかと歯ぎしりしている本人も疑問を持つこともあるでしょう。
この歯ぎしりは睡眠時でも特に浅い睡眠であるノンレム睡眠の時に起こることが多いとされています。
深い睡眠であるレム睡眠は筋肉の動きも抑制されていますが、ノンレム睡眠になるとその筋肉が開放されるため、レム睡眠からノンレム睡眠に切り替わる時に頬の筋肉が動くことで歯ぎしりが起こるのです。
「歯ぎしりしているかも?」と不安に感じているなら
家族と同室に寝ている人は、自分が歯ぎしりをしているのか、しないのか、どの程度の歯ぎしりなのかということをある程度把握できます。
しかし、独り暮らしの人や独りで寝ているという人は睡眠中の自分の歯ぎしりの程度や頻度はよく分からないものです。
自分の歯ぎしりの音は聞いたことがなくても、朝に起きたとき、何となく歯や顎が痛く感じたり、だるいような感覚があったり、歯が頻繁に欠けたり、自覚できるほど短くすり減っていたり、起きている時の癖で、歯を噛み締めることが多いと思う人は睡眠中に歯ぎしりをしている可能性があります。
独り暮らしの人で歯ぎしりしているか不安な人はビデオなどで睡眠中の様子を録画して確認する方法もありますので確認してみると良いでしょう。
歯ぎしりを放置しておくと、歯がボロボロになったり、顎の疲れが慢性的になったりして良くありません。
歯を強く擦り合わせることで歯を保護しているエナメル質が壊れますし、知覚過敏の原因になったり、腰痛、肩コリの原因にもなります。
女性で歯ぎしりをする人は、顔が大きくなりエラが張ってくるので美的概念としても気になるところ。
歯ぎしりすることで睡眠中も常に顎の筋肉を動かしているので顎周りの筋肉が発達し、顔が大きくなってしまいます。
歯ぎしりしているかもと不安に思っている人は、放置せずに対策を考えていきましょう。
歯ぎしりの原因とは?
ストレス
歯ぎしりの原因は色々と考えられますが、原因として一番多いのが「ストレス」です。
ストレスのない人はなかなかいませんが、上手く発散できずにいるとストレスが溜まって睡眠中に歯ぎしりが起こります。
ストレスを感じている人は、無意識の内に精神や肉体にダメージを与えることがあります。
悩みや不安がある人はストレスを溜め込んでいる可能性がありますので注意しましょう。
また、引越し、転職、転入、転校、入学などが多いシーズンは自分を取り巻く人間関係や生活環境が一変するために大きなストレスになりますし、近親者が病気になって入院したり、身内が他界したりした人は精神的なダメージや喪失感、絶望感などを強く感じることが多くなっているためストレスを溜めてしまいがちです。
歯の詰め物が取れたり、歯が欠けたりという経験があった人は歯ぎしりをしている可能性がありますし、以前よりも歯ぎしりが酷くなっている可能性も考えられます。
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歯並びが悪い
歯のためには上下の噛み合わせが良い方が良いのですが、噛みあわせが良いためには歯並びが良いことが条件となります。
歯並びの良い人でも歯ぎしりをすることもあるので、原因は歯並びだけとは言えませんが、歯並びが悪いと噛み合わせが悪くなるので歯ぎしりが酷くなることがあります。
上下の噛み合わせが悪いのに、歯ぎしりをすると噛み合わさっている部分に大きな負担がかかりますのでその部分の損傷が大きくなります。
お酒やタバコ
因果関係がはっきりしていませんが、お酒のアルコールやタバコのニコチンを摂取すると歯ぎしりが酷くなると言われています。
日頃からお酒の量が多い人やタバコを多く吸う人は注意する必要があります。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは胃から食道へ胃酸が逆流することで、食道が炎症を起こすことを言います。
本来、胃から食道には消化物は逆流しませんが、食道には胃酸などの逆流を防ぐ機能がありませんし、胃のように胃酸から粘膜を保護する機能もないので、何らかの原因で胃酸が食道に逆流すると強い胃酸によって食道が傷ついたり、胸やけなど不快な症状が起こります。
このような逆流性食道炎も歯ぎしりの原因ではないかと言われています。
睡眠中に歯ぎしりをする患者の逆流性食道炎を治療することによって歯ぎしりが減少するという報告もあります。
うつ病の薬
抗うつ薬を服用するとセロトニンの再取り込みを阻害してしまう副作用があり、睡眠時に歯ぎしりを起こすということが考えられます。
遺伝的性格的要素
家族に歯ぎしりをする人がいると、歯ぎしりをする可能性が高いとされています。
遺伝的要素や性格的な要素が似ているからではないかと考えられます。
真面目で一生懸命何事も取り組む人や競争意識が強い人、他人に攻撃的な人、いつも忙しそうにしているというような性格の人は睡眠時に歯ぎしりをすることが多いとされています。
歯を食いしばる癖がある人
上下の歯を常に食いしばって生活をしている人がいます。
いわば「癖」ということになりますが、日中の癖は夜に眠っている間にも記憶されており、起きている時と同じことをしてしまっている可能性がありますので歯を食いしばるのが癖であるという人は注意しなければいけません。
歯ぎしりの対策10選
1,リラックスして眠る
歯ぎしりの一番の原因はストレスとされていますので、まずはストレスを溜めない生活をすることが歯ぎしり対策としては一番有効です。
ストレスを溜めやすい性格というものもあるのでどうしようもないケースもありますが、自分が心地よい精神状態、リラックスできる精神状態をできるだけ保つことが大切です。
眠る前にゆっくりお風呂に浸かって筋肉をほぐしたり、リラックスを心がけたり、アロマを焚いてゆったりしてみる、照明を暗めにして心を落ち着かせるというような工夫も大切です。
また、ストレス発散のために熱中できるような趣味を持ったり、ストレス解消の運動をしたり、ストレッチで身体の緊張を減らしてみるのも良いでしょう。
自分ではストレスをコントロールできない人は、心療内科や精神科など専門の医療機関を受診するのも方法です。
2,お酒やタバコを控える
身体の調子を整え、心身ともにストレスのない健康状態を保つためにもお酒やタバコは極力避けた方が良いでしょう。
全面的に禁止できないとしてもお酒を飲む量やタバコの数量を少しずつ減らすことで歯ぎしりが少なくなるかも知れません。
3,マウスピース
睡眠時の歯ぎしりが気になる人はナイトガードと言うマウスピースを就寝時に装着して寝ると効果があります。
歯科医など口腔の専門家に相談してマウスピースを作ってもらう方法と市販のマウスピースがあります。
歯科などであればしっかり型を取って自分に合ったマウスピースを作ることができます。
歯ぎしりが原因となると保険が適応されますので、マウスピースの費用は5000円ほどです。
一方、市販のマウスピースは樹脂をお湯につけるなどして柔らかくしたものを歯に噛ませて自分で型を取ってマウスピースを作って使用します。
費用は非常に低価格ですが、自分で型をしっかり取ることができないと、噛み合せに影響が出ますし、物によっては奥歯までマウスピースが届かないものもありますので注意しましょう。
4,歯の矯正
歯並びが悪いことだけが直接歯ぎしりに影響するわけではありあませんが、歯科などで歯の矯正治療をした人の中には歯ぎしりが減ったり、顎の痛みやだるさが軽減される人も多いので、専門家に歯ぎしりや噛み合せ、歯の矯正について相談してみるのも良いでしょう。
5,低周波治療
低周波を口の周りの筋肉に当てて筋肉をほぐし、歯ぎしりを治療するという方法が低周波治療です。
歯科でも特に歯ぎしりの治療に力を入れているところで行われているようで、歯科ならばどこでも受けることができると言う治療ではありませんが、治療したい方に効果のある方法です。
治療を受けたい人は事前に医療機関に問い合わせた上で治療を行っているかどうか確認してみると安心です。
6,抗うつ薬の中止
抗うつ薬を服用していると副作用で歯ぎしりを起こすことがありますので、抗うつ薬を処方している医師に歯ぎしりのことを相談した上で、抗うつ薬の服用を中止できるかどうか検討してみましょう。
ですが、抗うつ剤の服用によって歯ぎしりが改善されるというケースもあり、個人によって抗うつ剤の使用だけが原因と考えにくいケースもありますので、まずは医師に相談してみると良いでしょう。
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7,漢方薬
歯ぎしりに漢方薬の治療ができることに驚く人も多いでしょうが、歯ぎしりの原因の多くはストレスから来るものですので自律神経に影響する「肝」の気のめぐりを良くする漢方薬を使うと歯ぎしりに効果があります。
肝の気がスムーズに流れると身体全体のこりが取れて、寝ている時もリラックスして眠る事ができるようになり歯ぎしりが軽減されます。
「抑肝散」という漢方薬が歯ぎしりの治療には一般的ですが、漢方の専門家に相談して適切な漢方を処方してもらいましょう。
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8,筋肉をほぐす
歯ぎしりは頬や口の周りの筋肉などが緊張していると起こることがあるので、口の周りの筋肉をリラックスさせるようにマッサージしてみると良いでしょう。
9,ツボ
針灸や整体などでは、首残りや頭痛、顔の筋肉を緩めるツボを刺激することで、歯ぎしりの改善を図る方法が取られています。
また、ストレスを軽減させるツボを刺激し、睡眠時の歯ぎしりを治していくケースもあるようです。
具体的には、首の後ろにある、完骨や翳風、顎にある頬車と言うツボ、手にある中渚を刺激していきます。
筋肉の可動域を広げ、ストレスをなくしていき、歯ぎしりを減らしていきます。
自分でも行うことができますので、試してみるのもいいでしょう。
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10,枕の高さ
枕の高さが高いことで睡眠中に歯ぎしりが起こることがあります。
高い枕は寝ている間の首や肩の動きを妨げ、筋肉を硬直させますので、この枕の高さを枕を低くすることで歯ぎしりが改善できます。
自分の眠る姿勢に合った枕に変えると言う方法もあります。
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歯ぎしりの治療はどこへ相談する?
歯ぎしりを専門家に相談する場合は、歯科や口腔外科が一般的です。
歯科であっても歯ぎしりの治療に力を入れているところもありますが、睡眠中の歯ぎしりの原因はストレスであることが多いので心療内科や精神科へ相談する方法もあります。
歯ぎしりをあまり気にしないことも大切
歯ぎしりの一番の原因はストレスです。
治すためにはストレスを溜めないこと、ストレスを発散することが大切と前述しましたが、歯ぎしりをすること自体がストレスになっている人がいます。
歯ぎしりは自分以外の人に迷惑をかけることになる場合もあり、他人と旅行に行くときなど、心配で眠ることができないなど、ストレスに感じてしまう方も多いようですが、あまりその事ばかり気にしていては不眠症の原因となってしまいます。
歯ぎしりは不眠症の原因となり誰もが悪いイメージばかり持つ傾向がありますが、実は歯ぎしりすることで体内のストレスを発散させようとしている結果なのです。
歯ぎしりによる影響をできるだけ軽減したのであれば、むしろ気を楽にして歯ぎしりを受け入れることも大切です。
まとめ
まとめ
睡眠中の歯ぎしりは人によっては凄まじい音がするので自分以外の人に迷惑をかけることもあり、気になるという人も、その一方あまり気にしていないと言う方もいることでしょう。
歯ぎしりはその音だけが問題ではなく体に与える様々な影響が大きな問題です。
たかが歯ぎしりと何の改善法も試さず、放置してはいけません。
歯ぎしりをそのままにしていることで、歯が磨り減ったり、明らかに歯が短くなったり、歯にヒビが入ったりすることがあるのです。
また、歯ぐきが痛い、知覚過敏になる、歯の詰め物や差し歯が取れてしまう、起きた時に顎がだるいといった自覚症状が出ている場合は歯ぎしりに対する適切な処置を取りましょう。
歯ぎしり改善には自分で出来るものと専門家による治療があります。
歯ぎしりには複数の要因が考えられますが、一番の原因はストレスであるとされています。
日頃からストレスがあると考えている人はできるだけストレスを溜めないような生活をしたり、溜まったストレスを発散する対策を考えましょう。
また、口周りの筋肉が凝り固まっていることも原因の一つなのでマッサージなどをして口周りの筋肉を和らげて眠るようにしましょう。