
眠かったはずなのにいざ布団に入ると眠れなくなる、そんな経験はありませんか?
本来、夜には眠気を起こす副交感神経が優位に働いてスムーズに寝つけるのですが、あれこれ考えているうちに交感神経が優位になってきて、脳が興奮状態のままとなり寝つきにくくなってしまう時があります。
眠れないと焦れば焦るほどイライラが募って、ますます興奮状態に・・・。
そんな時には、副交感神経が優位に働けるような呼吸法で気持ちを落ち着かせましょう。
心身共にリラックスできれば、心も穏やかになりスムーズに眠りにつくことができるでしょう。
そこで今回は眠れない時にすぐに寝れる、さらに横になりながらできる4つの呼吸法をご紹介します。
本当に1分で寝れた!という人たちが続出の呼吸法もありますので、参考にして下さい。
この記事の目次
1,「腹式呼吸」
呼吸とは、私たちの意識と関係なく行われるものです。
寝ている時も起きている時も、無意識のうちに「吸って、吐いて」を繰り返しています。
こうして身体の中に酸素を取り込んでいるのは、交感神経と副交感神経からなる「自律神経」が働いているからです。
食物を食べて消化するために胃が活動するのも、食物を栄養として取り込むのも、余分な食物を便として排出するのも自律神経の働きによるものです。
暑い時には汗をかいて寒い時には鳥肌を立てて体温を維持できるのも自律神経のおかげなのです。
そして緊張したり不安になった時、人は無意識に深呼吸をしています。
これもまた、自律神経の働きによって不安定な気持ちを落ち着かせようとしているのです。
腹式呼吸の効果
腹式呼吸には気持ちを落ち着かせてリラックスさせる効果があります。
通常の生活で行っている呼吸は、ほとんどが「胸式呼吸」です。
胸式呼吸とは胸に空気を取り込む浅い呼吸で、交感神経を活性化させる呼吸法となります。
腹式呼吸と比べると浅い呼吸で息を吸い込む回数も多くなり、興奮状態になるとさらに回数が増えてきます。
対して腹式呼吸は、ゆっくりとした深い呼吸で息を吸い込む回数も少なくなります。
気持ちをリラックスさせる副交感神経に働きかける呼吸法です。
眠れないというのは、交感神経が活性化したままで気持ちが高ぶっている状態ですので、腹式呼吸を行って気持ちを落ち着かせてあげましょう。
腹式呼吸に慣れてくれば、副交感神経を自分でコントロールすることも可能になるかもしれません。
仰向けに寝ながらできる腹式呼吸のやり方
1,仰向けに寝転んでリラックスします。
2,次にお腹の上に両手を当てて、体内の空気を口から全部吐き出してしまいます。
もう吐き出せないところまできたら、今度は鼻からゆっくりと息を吸い込んでいきましょう。
この時、お腹に空気を貯めていくようにお腹をふくらませます。
3,そして次に、口からゆっくりと息を吐きだします。
お腹をへこませながら、身体の中の悪いものをすべて出し切るように、ゆっくりとゆっくりと、鼻から息を吸う時の倍ぐらいの時間をかけて吐き出してしまいましょう。
この流れを繰り返すのが腹式呼吸です。
慣れない最初のうちは1日に5回ぐらいから始めて、慣れてきたら1日に10~20回ほど行うというのが基本になりますが、自分の体調によって回数を変え無理のないように行ってください。
腹式呼吸は毎日続けることで早く身に付きますので、回数にとらわれずに継続していきましょう。
また、腹式呼吸をする際にイメージトレーニングを加えると効果がアップします。
鼻から息を吸う時には山の清々しい空気や草原の草の香りなど気持ちが和むものをイメージして、口から息を吐く時には、身体の中に潜んでいるイライラとした感情や不安感など無くしてしまいたいものが身体から出ていくのをイメージしましょう。
2,「丹田(たんでん)呼吸法」
「丹田呼吸法」とは腹式呼吸をさらに発展させた、下腹部に重点をおく腹式呼吸です。
「丹田」とはお腹の奥にある腹筋のことで、場所でいうとおへそから指三本分ほど(約5㎝ほど)下の、身体の内部中心あたりとなります。
分かりにくければ、仰向けに寝転んで腹筋のあたりに両手を当て、上半身を少し起こして腹筋運動をしてみてください。
腹筋が硬くなっていませんか?その一番硬い部分が丹田です。
リラックスする丹田呼吸法の効果
この丹田は、東洋医学や気功などでは気を溜めたり、身体の気の循環を良くするために使われ、武道的には「胆力」が出ている場所だと言われている重要な部位です。
丹田呼吸法は、丹田を上手に使うことで深い呼吸をし、リラックス効果や脳の活性化、新陳代謝の促進などの効果が期待できるのです。
また丹田を意識することによって、緊張を克服して自信をもつ、肝がすわる、といった人間の芯の部分にゆとりが生まれるような感覚をも手に入れられます。
とくに不眠症においては、丹田呼吸法の「副交感神経に働きかけて精神の安定を促す働き」がかなり効果的だと言われているのです。
腹式呼吸から丹田呼吸法へとレベルアップしておけば、副交感神経を自分でコントロールするのがさらに容易になってくることでしょう。
横に寝転んでする丹田呼吸法のやり方
実は、丹田呼吸法にはとても多くのやり方が存在しているのです。
椅子に座って行う方法、布団や座布団の上にあぐらや正座で行う方法、仰向けに寝転んで行う方法など、調べるとたくさん出てきます。
ですが、どの方法で行うにしてもポイントは同じです。
ですから今回は、「横になりながらできる呼吸法」として寝転んで行う方法をポイントを抑えながらお伝えしていきます。
まず、そのまま眠ってしまってもいいように、布団の上に仰向けに寝転びます。
丹田の位置、おへそから指三本分ほど(約5㎝ほど)下にある腹筋に両手を当てて丹田を意識してください。
次に身体の中の空気をすべて吐き出し、その後は鼻から吸って鼻か口から吐き出す腹式呼吸を行います。
ポイントは、できるだけたっぷり鼻から息を吸って、できるだけ時間をかけて口から息を吐き出すこと、つまり「たっぷり吸って長く吐く」ことです。
そして、息を吸う時も吐く時も丹田を意識することです。
丹田から吸うように大きく息を吸いこみ、丹田から息を吐き出すような気持ちで吐く息に意識を集中してください。
3,「内観法」
内観法とは、江戸時代に臨済宗の僧侶・白隠禅師が猛烈な禅修行によって「禅病」に罹った際、山中に棲む白幽という仙人のおかげでやっと克服できた体験から唱えた健康法です。
「仰臥禅(ぎょうがぜん)」という寝たままの姿で行う禅、「寝禅」で行います。
病気で起き上がれない人でも床に入ったまま行える禅として、多くの人々が関心を寄せるようになりました。
内観法には、禅の「頭寒足熱(下腹部から下肢および足の裏まで温かくして気持良くする観想法)」という考えが基本として流れています。
体がポカポカして眠くなる内観法の効果
内観法は、呼吸器病・神経症・ストレスによる不眠症・慢性緊張型頭痛など、精神面からくる症状の治療に向いており、現代でも「日常生活で実現可能であり優れた健康法」だと考えられています。
身体が温まっていくのが実感でき、気付かないうちに眠ってしまうなど、冷え性・不安・不眠症などで眠れずに悩んでいる方には朗報とも思える健康法といえます。
内観法のやり方
「放下着(ほうげちゃく)」の姿勢をとる
仰臥禅は、ベッドでも布団の中でも畳の上でも、寝転べる場所ならどこでも行えます。
身体が沈み込むようなクッション性のある寝具より、煎餅布団のような背筋がピンと伸びる平らな場所に、仰向けに寝転んでください。
そして、丹田呼吸法のようにお腹の上に両手を乗せるのではなく、「放下着」の姿勢をとります。
仰向けに寝転んで目を閉じ、両腕は脇から卵一個分ほど自然に開き、両足は腰の幅ほどに開いて全身の力を抜く、次に両足を強く伸ばして踏み揃え、背伸びなどで一度全身に力を入れた後、「フ~ッ」と身体中の息をすべてすっかり吐き出してまた全身の力を抜くといった姿勢です。
その時、雑念も一緒にすべて吐き出して心を空っぽにしましょう。
「数息観(すそくかん)」
そして、「数息観」という呼吸数を数えながら丹田呼吸を行う方法を用います。
まず、心の中で「ひと~つ、ふた~つ、み~っつ」と数えながら、ゆっくり深々と鼻から息を吸います。
次に1~2秒ほど息を止めて息を吐くための準備をしましょう。
その後、同じく心の中で数えながら、ゆっくりと鼻から息を吐き出します。
息を吸う時に5秒ほど、1~2秒止めて、息を吐く時は吸う時よりもゆっくりと行います。
最初のうちは1呼吸に10秒でも難しいかもしれません。
しかしより効果を求めるなら、目安として1呼吸につき15秒ほどを目指しましょう。
ちなみに、仰臥禅は「夜の就寝前」と「朝の起床前」に寝床の中で行うのが原則となっています。
また、かかる時間もそれぞれ30分ずつが標準と言われていますが、時間がなければたとえ3分でも5分でも良いとの事です。
朝の忙しい時間に30分というのは無理かもしれませんが、3分ぐらいなら続けられそうですね。
4,「4・7・8呼吸法」
「1分で眠れる」と話題になったのが、この「4・7・8呼吸法」です。
この呼吸法は、『癒す心、治る力ー自発的治癒とはなにか』の著者であり、健康指導者として広く知られているアメリカのアリゾナ州立大学医学部のアンドルー・ワイル博士によって提唱された、簡単に心を落ち着かせる呼吸法です。
ヨガの呼吸法をベースにした、瞑想方法の一種であるこの呼吸法を、アンドルー・ワイル博士は「くつろぐ呼吸(Relaxing Breath)」と呼んでいます。
どんなに神経や心が高ぶっていても、この呼吸法で落ち着くことができるというものです。
1分で眠れる人続出!?「4・7・8呼吸法」の効果
巷では4・7・8呼吸法を実践してみた方もたくさんいるようで、試してみたという動画も見受けられます。
実際にやってみた方の感想で多かったのが、本当に1分で眠れた・手順がわかりやすいので簡単にできる・眠るだけでなく他でも応用できた・数字を数えることに意識がいくので雑念が生じにくい・2日目からリラックス効果が実感できたと、かなり好評価を得ているようです。
4・7・8呼吸法のやり方
まず準備として、いったん口から息を完全に吐き切ってしまいます。
次に口を閉じて、4秒かけて鼻から息を吸います。
7秒間息を止めます。そして、8秒かけて口から息を吐き出します。
以上を1セットとして4回行いましょう。
慣れてきたら8回に増やしてもいいそうです。
ポイントは、息を吐く時に舌の先を上の歯の内側に置き、吐く息に少々の抵抗を与えるようにすることです。
RではなくLの発音をする時の位置に舌を置くということですね。
息は力まないようにゆっくりと吐き出してください。
リラックス効果や心の安定は、息をゆっくりと吐き出す際に生じるものですから。
また、数を数える時も無理にゆっくりにする必要はありません。
もし息が苦しくなるようならカウントを速めても大丈夫です。
リラックスするのが目的ですから、自分のペースでカウントしましょう。
ただし、「4・7・8」という比率が大事なので4・7・8の間隔だけは変えないで守ってください。
呼吸に関しては、無理に息をたくさん吸ったり止めていたりすると苦しくなってしまいます。
リラックスするためにも、普段しているような楽な呼吸の延長で行いましょう。
息を止める時に力が入ってしまうのも逆効果になってしまいます。
身体の力を抜いて力まないようにしてください。
なお、4・7・8呼吸法を提唱しているアンドルー・ワイル博士によると、朝と晩に2回ずつ訓練をしておくとさらにスムーズに寝付けるようになるとの事です。
今は4・7・8呼吸法を練習できるアプリもあるそうですので、呼吸法が上手くできない方はアプリを利用して練習するのもいいかもしれません。
まとめ
眠るための呼吸法も心を落ち着かせるための呼吸法も、要は同じです。
深い呼吸やゆっくりとした呼吸がリラックス効果をもたらして心が安定し、副交感神経が優位に働ける環境を作り出してくれるのです。
眠れないからと焦って呼吸法を試すのではなく、普段からゆったりとした呼吸をするよう心掛けていれば、眠りに入るまでの時間も短くなり、日常生活でも心に余裕が生まれるのではないでしょうか。
今回ご紹介した呼吸法の中で、もし自分に合っていると思えるものがあったら、ぜひ今夜からでも試してみてくださいね。