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睡眠に重要なアセチルコリンって?効果的な増やし方

睡眠に重要なアセチルコリンって?効果的な増やし方

現代の日本人には、夜にちゃんと眠れていない方が多いようです。寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に目が覚めてしまうなど、眠れるように工夫しても質の良い睡眠がとれていない方、それは副交感神経系の働きを司る「アセチルコリン」が不足しているからかもしれません。

そして、睡眠不足がさらにアセチルコリンを減少させているのかもしれません。睡眠に欠かせないアセチルコリンは、睡眠や覚醒だけでなく記憶や学習などにも大きく関わっており、アセチルコリンの分泌不足はアルツハイマー型認知症などを引き起こす危険性も出てくるといわれています。

アセチルコリンとはどんな物質でどんな働きをするのか、睡眠にどう関係しているのか、また、少なくなってしまったアセチルコリンを増やす方法はあるのかなどを見ていきましょう。

 

そもそも「アセチルコリン」って何?

アセチルコリンとは、交感神経と副交感神経からなる「自律神経」や「運動神経」の末端から放出される「神経伝達物質」の一つです。

神経伝達物質は他にもいくつかありますが、アセチルコリンは、自律神経の興奮を気管支や消化管などの各器官に伝達したり、運動神経の興奮を筋肉に伝達するという役割を持っています。

 

アセチルコリンの働きとは?

アセチルコリンの働きとは?

 

具体的に、アセチルコリンがどのような働きをするのか見てみましょう。

 

交感神経での働き

運動などで身体を活発に動かしている時に働く神経が交感神経で、「闘争と逃走の神経」と呼ばれています。闘いで相手と対峙している時や、自分に危害を及ぼす相手から必死で逃げる時などのように、心身ともに活発に活動している状態で働くのが交感神経ということです。

交感神経が興奮すると、交感神経の末端からアセチルコリンが放出され、アセチルコリンによって交感神経の興奮が各器官に伝達されて、アドレナリンとノルアドレナリンも多量に分泌されます。

そして、アドレナリンとノルアドレナリンがα受容体やβ受容体に作用することで運動時と同じような状態となるのです。たとえば、瞳孔は開き、唾液は粘っこくなり、心臓の鼓動は速くなって、血管の収縮から血圧は上がり、消化機能は抑制されて胃液なども分泌しづらくなり、尿意もあまり感じないという状態です。

 

副交感神経での働き

副交感神経は、交感神経とは逆に働く神経です。交感神経が心身ともに活発に活動している状態で働くのに対して、副交感神経は心も身体もゆったりとしている状態の時に強く働きます。たとえば時間を気にせず食事をしている時や、テレビを見ながらくつろいでいる時、また睡眠中も心身ともに休めている状態ですね。

このように副交感神経が興奮して優位になった時、副交感神経の末端から神経伝達物質であるアセチルコリンが放出されます。アセチルコリンはアセチルコリン受容体に作用してリラックスさせ、心臓の鼓動はゆっくりとなり、血管が広がって血流が良くなるため血圧も下がり、尿や便が排泄されやすくなります。

また、食事の時は消化に関わる機能が活発になるため、唾液が分泌されたり、食物の消化が進んだり、胃酸の分泌量が増えて胃や腸がよく働くようになります。

そして睡眠時には、精神が安定して眠りにつきやすくしてくれ、深い眠りに誘います。

 

運動神経での働き

私たちが立ったり座ったり歩いたりと、手や足を思い通りに動かせるのは、同じく神経伝達物質であるドーパミンとアセチルコリンの関係によるものです。

ドーパミンには、脳を覚醒させて集中力を高めたり、興奮や快楽を司るというとても前向きで活動的な役割があります。そのドーパミンが脳内の中心部で分泌されたのちに、運動神経の末端でアセチルコリンが放出され、アセチルコリンが分泌されることで筋肉を収縮させ、歩く・走る・座る・手を動かすといった行動が行えるのです。

ところが、ドーパミンとアセチルコリンの分泌量がともに適量で、バランスが適切でないと運動障害が起こります。代表的なのがパーキンソン病で、脳内のドーパミンの減少によって運動神経の働きが低下して発症すると考えられています。

ドーパミンの量が減るとアセチルコリンが増加して、アセチルコリンが減少するとドーパミンの量が増えてしまうため、バランスの乱れから、筋肉のこわばりや手足の震え、足がもつれるなどの運動障害が引き起こされるのです。

 

アセチルコリンと睡眠の関係は?

アセチルコリンと睡眠の関係は?

 

交感神経と副交感神経のどちらにも作用するアセチルコリンは、脳内では記憶や認知、また睡眠や覚醒に対する神経伝達物質としての働きがあり、身体の面では休息やエネルギー調節に関わる働きを持っています。つまり、活動するにも休息するにも必要不可欠な神経伝達物質だということです。

アセチルコリンの分泌量が適切であれば、交感神経が優位な時は頭が冴えて集中力が増すため仕事も家事もスムーズにはかどり、副交感神経が優位な時には頭も身体もリラックスしてしっかり休めることができます。睡眠時の寝つきも良くなり、朝にはすっきり目覚められます。

ただ困ったことに、十分な睡眠が得られないとアセチルコリンは減少していきます。不眠症など睡眠障害を抱えている場合、しっかりと眠ることができないため、睡眠に必要なアセチルコリンを増やすことができないのです。

ですが質の良い睡眠にはアセチルコリンが不可欠となります。すなわち、睡眠にはアセチルコリンが必要でアセチルコリンには睡眠が必要という堂々巡りとなり、そのままにしておくと睡眠障害がいつまでも改善されないという悪循環が生まれてしまうのです。

 

アセチルコリン不足でアルツハイマー型認知症になる?

アルツハイマー型認知症とは記憶や認知機能が低下する認知症の一種です。発症する原因は明確にされていませんが、アルツハイマー型認知症の方の脳内ではアセチルコリンの分泌不足が見受けられます。そこで有力なのが「コリン仮説」です。アセチルコリンを分泌する神経細胞が死滅することでアセチルコリンの分泌量が減少し、アセチルコリン不足によって記憶や認知機能が低下するというものです。

また、高齢者がアルツハイマー型認知症を発症する割合は高く、アセチルコリンの分泌量が高齢者になるほど減少することも明らかとなっているため、コリン仮説はアルツハイマー型認知症の原因として有力と考えられています。

 

アセチルコリンが不足したらどうなる?

では、交感神経にも副交感神経にも作用するアセチルコリンが不足するとどうなってしまうのでしょうか。症状には個人差があり誰にでも起こるとはいえませんが、まず自律神経系の働きにはさまざな影響が現れます。

内臓機能が低下する・腸内環境が悪化する・集中力や記憶力、学習機能が低下する・眠りが浅くなり日中に眠気がくる・血圧の上昇や低下・体温の低下・便秘や下痢・気分が落ち込んで無気力になるなど、数え上げたらキリがありません。

アセチルコリンは、私たちが生きて生活していく上で根本的に必要な機能に深く関わっています。ですから、もしもアセチルコリンが不足してしまうと、これまで普通に営んできた日常生活に、大いに支障をきたすことが考えられるのです。

 

アセチルコリンが不足する原因は?

アセチルコリンが不足する原因は?

 

アセチルコリンが不足する原因にはいくつかありますが、まずは「加齢」によるものです。アセチルコリンは年をとるにしたがって減少していく物質ですので、高齢になるほどアセチルコリンは不足しがちです。そのため、アルツハイマー型認知症を発症する確率も上がっていきます。

また、習慣的にタバコを吸う方もアセチルコリンが不足しやすいといえます。喫煙している年数が長い方やヘビースモーカーの方ほど、アセチルコリン不足は深刻だといえます。

そして、ジャンクフードなど栄養の偏った食事ばかりしている方、ダイエットなどで極端な食事制限をしている方、不規則な生活をしている方、慢性的な睡眠不足や睡眠障害の方、ストレスが多い方などもアセチルコリンの分泌が減少しやすい傾向にあります。

アセチルコリンという物質は、高齢による場合を除けば、それほど不足しやすいものではありません。規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事を心掛けて、アセチルコリンの減少を食い止めましょう。

 

喫煙者がアセチルコリン不足になりやすい理由とは?

タバコにはニコチンという物質が含まれていますが、このニコチンはアセチルコリンとよく似た構造と働きを持っています。そのため日常的に喫煙している方は、脳内で「アセチルコリンの分泌はもう十分だ」と間違って認識してしまい、分泌量が抑えられてしまうのですす。

ですが実際にはアセチルコリンの分泌量は不十分なので、イライラしたりストレスが溜まりやすくなってしまいます。日常的に喫煙している方は、アセチルコリン不足になりやすいことを自覚して、食事やサプリメントなどで積極的に摂取するようにしましょう。

 

アセチルコリンを増やす方法とは?

アセチルコリンを増やす方法とは?

 

アセチルコリンを減少させないためには質の良い睡眠をとることが大事ですが、食事や運動、学習することでも増やすことができます。

 

アセチルコリンを食事で増やす

アセチルコリンの材料に「コリン」があり、アセチルコリンの合成に欠かせないのが「レシチン」です。ということは、コリンやレシチンを豊富に含んでいる食事をすればアセチルコリンを増やせるということですね。

そこでオススメなのが卵黄です。卵黄にはレシチンが含まれており、そのレシチンの中には「ホスファチジルコリン」という成分が含まれているのです。しかも、卵黄に含まれているコリンは他の食物よりも圧倒的に多い量です。

また、納豆や味噌といった大豆製品にもコリンは含まれていますが、加工されていろいろな栄養素が混じっている大豆製品よりも、他の栄養素が少ない卵黄はダイレクトにコリンを摂取できるのです。

ただし、卵はコレステロールが高いため食べ過ぎには注意が必要です。食事に制限がある方やコレステロールが心配な方は、サプリメントで摂取する方法もありますので検討してみてください。

 

アセチルコリンを運動で増やす

アセチルコリンはアセチルコリン受容体を介して作用するので、運動などで筋肉に刺激を与えてアセチルコリン受容体を活性化させることも効果的です。アセチルコリン受容体を活性化させるとアセチルコリンがより消費されて、消費した分を補おうと分泌量が増加すると考えられるためです。

また、適度な運動によって交感神経が働き、定期的に休憩をはさむことで副交感神経も働きます。どちらの場合でもアセチルコリンは分泌されますので、交感神経と副交感神経を交互に行うことでアセチルコリンを効率的に消費することができます。

 

アセチルコリンを学習で増やす

アセチルコリンは、記憶や認知などを司る脳内の「海馬」の働きにも深く関与しています。しかし、海馬への刺激が減ってしまうと、本来必要であった海馬へのアセチルコリン分泌量が減ってしまいます。海馬の働きが低下することによって、アセチルコリンもそれほど必要がないと判断されて、分泌量を削られてしまうのです。

つまり逆に考えると、年齢に関係なく海馬を刺激すれば、新しいことにチャレンジして情報を与えればどうでしょう。海馬も活性化して、新しい情報を記憶したり学習するためにアセチルコリンの分泌が必要となります。

すると、アセチルコリンの分泌はこれまでのように正常化され、記憶や認知機能が低下するアルツハイマー型認知症になる危険性もぐっと減ってくるというわけです。

 

まとめ

アセチルコリンとは、私たちが通常の生活をとどこおりなく送るために、欠かすことも不足させることもできない重要な神経伝達物質です

 

アセチルコリンとは、私たちが通常の生活をとどこおりなく送るために、欠かすことも不足させることもできない重要な神経伝達物質です。もし不足すれば、脳や身体のさまざまな面で支障をきたしてしまいます。

そして、アセチルコリンが正常に分泌されるには良質な睡眠が必要で、良質な睡眠のためにはアセチルコリンが必要なのです。睡眠とは脳と身体を休ませる最高の手段で、とくに脳は睡眠でしか休むことができません。

なかなか寝つけない、眠ってもすぐに目が覚めるなど睡眠障害をお持ちの方は、まず生活習慣を見直してみて、規則正しい生活と適度な運動、アセチルコリン不足を補える食生活を心掛けてください。

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