
ドラールは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
ベンゾジアゼピン系薬剤は脳の神経を沈める働きがあり、不安や緊張をほぐして、気分をリラックスさせてくれるため、睡眠にも高い効果を発揮してくれることから不眠症の治療薬として使われていますが、このドラールは1999年に久光製薬と田辺三菱製薬から販売された睡眠薬です。
副作用も少なく、安全性が高いことから多くの不眠症の方に愛用されていますが、ここではそんなドラールの薬の強さについて見ていくことにしましょう。
ドラールの効果や副作用、そして効かない場合のことについても紹介させていただきます。
この記事の目次
ドラールの特徴
ドラールは成分名をクアゼパムと言います。
ベンゾジアゼピン受容体に作用して、GABAの働きを促し、脳の活動を抑制することで、リラックスをもたらし、睡眠につなげていく睡眠薬ですが、不眠症治療の他にも麻酔前投薬として使用されています。
ドラールはベンゾジアゼピンω1受容体に単独で作用するため、非ベンゾジアゼピン系に近い作用を持つ薬として認識されることもありますが、代謝した成分はω2受容体にも作用するため、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬という位置づけになります。
現在では15㎎と20㎎が取り扱われています。
ドラールの用法
ドラールを不眠症の治療薬として使用する場合、成人は1回20㎎を就寝前に服用することとされています。
いずれの場合も年齢や症状によって容量は決められていきますが、一日の最高摂取量は30㎎です。
他の睡眠薬同様、食事やアルコール、カフェインと一緒に服用した場合、薬の作用が強く、または弱まることもありますので、服用の際には注意するようにしましょう。
ドラールの強さは?
睡眠薬の強さはその作用時間によって分類されています。
分類の基準についてまずは見ていくことにしましょう。
睡眠薬の分類は以下の4種類に分けることができます。
睡眠薬の強さ | 出現時間 | 持続時間 |
---|---|---|
超短時間作用型 | 10~15分 | 2~4時間程度 |
短時間作用型 | 15~30分 | 6~10時間程度 |
中間作用型 | 30分 | 20~25時間程度 |
長時間作用型 | 30分~1時間 | 24時間以上 |
持続時間は半減期を基準に計算しており、薬の濃度が半分になるまでかかる時間を示しています。
その薬の強さを知る目安となりますが、ドラールはその中でも長時間作用型に分類されています。
ドラールは薬の血中濃度がピークになるまでに3.5時間となっており、比較的長時間作用型の中では効果が現れるのが早いタイプの睡眠薬と言えます。
また、半減期までは36時間と長く薬の作用が持続する睡眠薬ですが、この時間眠気が襲ってくるというものではなく、実際に効果が現れる時間は、8時間から12時間といったところです。
ドラールの薬の強さとしては、「やや強め」と言えるでしょう。
ドラールの効果とは?
ドラールはベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるため、ベンゾジアゼピン受容体に働き、脳の興奮を抑え、睡眠に誘導してくれる薬ですが、その効果は具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
ここではドラールの詳しい効果について見ていくことにしましょう。
1.熟眠できる
ドラールは、他のベンゾジアゼピン系の睡眠薬同様、ベンゾジアゼピン受容体に働く睡眠薬ですが、その中でも特にω1受容体に強く働きかける薬です。
そのため、熟睡できる効果をより得られ、熟眠障害に有効な睡眠薬と言えます。
熟眠障害は寝ているはずなのに、起きてみるとあまり寝た気がしない、倦怠感が残りよく眠れていない感じが残ると言った睡眠障害の一つです。
全く眠れないと言った睡眠障害と違い、睡眠薬を使用する目的が手に取るようにわからないため、睡眠薬とは無縁の睡眠障害と言った印象を受けますが、ドラールであればその熟眠効果を得ることができますので、改善が見られます。
2.睡眠の基盤を形成してくれる
長時間作用型であるドラールは半減期までの時間が長く36時間と長く、薬の成分が起きた後も体の中に蓄積されていきます。
永遠に蓄積されていくわけではなく、一定量がたまると定常状態となり、その薬の量を保持する仕組みとなっていますが、このことがスムーズな睡眠をもたらしてくれる効果につながります。
つまり、日中から夜眠る準備を整えてくれる薬なのです。
ゆっくりしかも確実に不眠に働いてくれますので、眠気も他の睡眠薬と違い、穏やかに自然に近い状態で現れるようになります。
不眠症で悩む方にとってはまさしく理想の眠りが手に入ると言う訳です。
3.抗不安作用
ドラールはベンゾジアゼピン系の睡眠薬に分類されていることもあり、薬が代謝されることでベンゾジアゼピン受容体のω2に働きます。
その効果が先ほども記載した通り、日中にまで長く効くことになりますので、毎日抗不安作用が得られることになります。
仕事で受けたストレスや悩みを緩和させ、リラックスした気持ちにさせてくれますので、日ごろからストレスがたまりやすい方、不安が原因で眠りを妨げている方にとっては効果の高い睡眠薬と言えるでしょう。
4.覚醒に働く
睡眠障害の中には先ほど挙げた熟民障害の他に、中途覚醒や早朝覚醒などがありますが、ドラールは薬の作用時間が長いため、こうした覚醒型の睡眠障害にも高い効果を発揮してくれます。
「寝たはずなのに、途中で目が覚めてしまう」「朝まだ眠いのに、目が覚めてしまう」「夜中に何度も起きてしまう」と言った症状を感じることなく、朝までぐっすり眠ることができます。
5.長時間作用型睡眠薬としては副作用が少ない
ドラールはベンゾジアゼピン系の睡眠薬に分類されていますが、ω1受容体に強く働き、反対にω2受容体に穏やかに作用します。
ω2受容体は筋弛緩作用をもたらすこともあり、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬はふらつきや転倒などが副作用として常に挙げられますが、ドラールの場合、こうした副作用である筋弛緩作用が少なくなります。
また、前向性健忘や依存などもベンゾジアゼピン系の睡眠薬にはよく見られる症状ですが、健忘も作用時間が長く、穏やかに薬が効いていくことからあまり心配の必要がありません。
依存に関しても、長時間作用型の睡眠薬に分類されるため非常に少なくなっています。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を代表する副作用が全体的に少ないこともドラール特有の効果と言えるでしょう。
ドラールの副作用とは?
ドラールはその効果でも挙げた通り、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬特有の副作用が見られることの少ない薬です。
しかし、全く副作用がないと言う訳でもありません。
人によっては副作用が強く出てしまうこともありますので、ここではドラールの副作用についても触れておくことにしましょう。
1.持ち越し
持ち越しとはドラールの分類されている長時間作用型のように薬の作用時間が長い睡眠薬に見られる副作用の一つです。
薬の効果が日中まで消えることがないため、倦怠感などの症状となって現れることがあります。
頭痛やめまいなどの症状も報告されていますので、ドラールの副作用として覚えておく必要があるでしょう。
朝になってもボーっとしていて勉強や仕事にならないという場合には、医師と睡眠薬の処方について考え直す必要があります。
持ち越しの副作用がある場合、日中行動してしまうと事故や怪我につながってしまうことも考えられます。
日中に負担になることのない睡眠薬に変えてもらうことが一番と言えるでしょう。
2.食後の服用に注意
ドラールは脂性の睡眠薬であるため、食事と一緒に消化されてしまうという特徴があります。
そのため、食後の服用には十分に注意が必要となります。
ドラール上の主成分であるクアゼパムが食事と共に吸収されると通常より吸収する速度が速まってしまうため、一気に血中の濃度が上がってしまいます。
報告では2倍から3倍に跳ね上がることもあるとのことですので、食後の服用は避けてくださいね。
3.眠気
ドラールは薬の半減期までの時間が36時間と長いため、薬の作用がいつまでも続くことになります。
体質によっても異なりますが、やはり眠気となって表れるケースは少なくありません。
「朝になっても起きることができない」「昼まで眠気がずーと続いている」というのであれば、これは副作用と考えられます。
もちろん人によってはさほどではなく、あまり気にする眠気でないとケースもありますが、一日中、もしくは昼を過ぎても眠いというのはやはり薬が合っていないと言えるでしょう。
中間作用型、もしくは短期作用型のもので自分の症状に合った睡眠薬に変更してもらった方が良いかもしれません。
4.ベンゾジアゼピン系の副作用である健忘やふらつき、依存
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中でもドラールはω1受容体に強く結びつき、ω2受容体にあまり作用しない薬ですが、やはり人によってはベンゾジアゼピン系の睡眠薬特有の健忘やふらつき、依存が見られることがあります。
これはω2受容体に対し強く作用が出てしまう体質などが理由として考えられますが、こうした副作用は転倒や事故につながりかねません。
特に薬を飲み始め4、5日経った定常状態になったころに、発症することが多くなっていますので、十分気を付けておいた方が良いでしょう。
ですが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中でもドラールでこのような副作用が見られることは本当に少なくなっています。
過剰に心配し、服用を踏みとどまる必要はありません。
容量、用法を守らない、長期服用や乱用などが引き金となるようですので、まずは処方を守ることを心掛け、ドラールと付き合っていくことが大切と言えるでしょう。
5.その他の副作用
ドラールにも他の睡眠薬同様、稀に重篤な副作用が報告されています。
わずか0.1%未満ではありますが、過剰反応や呼吸抑制などが見られることがありますので、副作用として頭に入れておくことは必要です。
このような症状が見られた場合には、直ちに使用を中止し、医師に問い合わせることをお勧めします。
ドラールのデメリット
ドラールのデメリットとして薬価の高さが上がられます。
これは先発で発売されたアメリカでの価格に影響されているものですが、他の睡眠薬と比べ割高となっているため、デメリットと言えます。
今では日新製薬、東和薬品、日医工などからクアゼパム錠としてジェネリック医薬品が発売されていますので、そうしたものを使用すると成分も変わらず安価な値段で同じ効果を得ることができます。
ドラールはこんな方におすすめ
ドラールは長時間作用型の睡眠薬ですので、やはり入眠に適した睡眠薬とはあまり言えません。
入眠できないと悩んでいるのであれば、短時間作用型、中間作用型の睡眠薬の方が適しています。
しかし、他の睡眠障害に関してはドラールの服用が向いていると言えるでしょう。
ドラールは、ω1受容体に深く結びつくこともあり、熟眠障害に適した薬です。
「しっかり眠ることができない」「寝たはずなのに、スッキリ感がない、倦怠感ばかり残る」というのであれば一度ドラールを使用してみる価値が十分あります。
また、中途覚醒や早朝覚醒にも高い効果を発揮してくれます。
薬の効果が持続するため、睡眠中どんな時間に覚醒してしまってもすべてをカバーすることができます。
長時間作用型の大きなメリットと言えますが、覚醒の症状で悩んでいるのであればドラールの使用を考えてみるのもいいでしょう。
ドラールでも効かないと感じたら・・・
ドラールは長時間作用型の睡眠薬で、作用時間も長く、ひどい不眠症にも効果の高い薬です。
しかし、そんなドラールでもあまり効果がないと感じる場合もあります。
ドラールは、睡眠を定着するための睡眠薬でもありますので、最低でも1週間は継続して飲むことが大切です。
それでも十分な効果が得られない場合には、ソメリンなどはピークまでの時間はドラールと比べより長くなりますので、すぐ効くタイプの睡眠薬とは言えませんが、半減期までの時間が42時間以上になります。
まずは必ず医師とよく相談の上、新たな睡眠薬を再検討してみましょう。
まとめ
ドラールは長時間作用型のベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。
血中濃度が最も高くなるピークは3.5時間であるため、あまり即効性は期待できません。
入眠障害などでお悩みの方にはあまり向いている薬とは言えないでしょう。
その反面半減期までの時間が36時間と長く効果が作用することになります。
もちろんすべての時間、睡眠をカバーするというものではありませんが、飲み続けることで薬の効果が持続して一定量蓄積されるため、睡眠の基盤を作ってくれるお薬となっています。
飲み続けることで眠る習慣ができ、また、日中の精神の安定が維持され、不眠症に効率よく効いてくれます。
中途覚醒や早朝覚醒には他の薬同様その効果も期待できますが、他にも熟眠障害の悩みも解決してくれます。
これにはドラール特有の受容体への効果が関係しており、睡眠へ特化した受容体への作用が熟眠へと導いてくれます。
効果が高いにもかかわらず、副作用が少ない点もドラールの嬉しいポイントです。
自分の症状と見比べてドラールを使ってみようかと考えているのであれば、ぜひ医師と相談し検討してみると良いでしょう。
ただし、決して弱い薬ではありません。
睡眠薬の中でもやや強めのお薬ですので、長期服用を避け、一時的な不眠の治療薬として使っていくようにしてください。